親子で学ぶドローン第6弾。スカイ博士とひなたが、重ねて撮った写真から地図や立体の模型を作るしくみを紹介。

ドローンの写真はどうやって地図になるの?
重ねて撮る理由と点群・オルソ画像を親子で学ぼう

工事現場の土の山が、パソコンの中でくるくる回る。ドローンが撮った写真は、どんな計算で地図や立体の模型に変わるのでしょう。今回は、写真を重ねて撮る理由と、高さを求めるしくみを、クイズと紙の工作でたどります。
第4弾「ドローンの目には何が見える?」など、これまでの回を読んでいなくても、ここから読めます。

今回のナビゲーター

スカイ博士

スカイ博士:ドローン研究ひとすじ40年。「なぜだと思う?」と問いを返します。

ひなた

ひなた:小学4年生。口ぐせは「なんで? やってみたい!」。みんなの代わりに、気になることを聞きます。

ひなたひなた

おじさんが働いている工事現場で、ドローンが飛んでいたの。あとで事務所のパソコンを見せてもらったら、現場の土の山が立体になって、くるくる回せたんだよ! 写真を撮っただけなのに、どうして立体になるの?

スカイ博士スカイ博士

写真を1枚撮っただけでは、立体にはならん。撮り方と、そのあとの計算に工夫があるんじゃ。

ひなたひなた

工夫って?

スカイ博士スカイ博士

ドローンは、少しずつ重ねながら、たくさんの写真を撮る。コンピューターはその中から同じ場所を探して、高さを計算するんじゃ。両目で見ると物の近さがわかるのと、よく似た考え方じゃよ。

今日の問い

写真を撮っただけで、どうして地図や立体の模型になるの?

かぎは、同じ場所を、少しちがう位置から見ること。親指の実験と図を見ながら、その理由を探してみましょう。

読み終わったら「なぜ重ねて撮るの?」「どうして高さがわかるの?」「点群とオルソ画像は何がちがうの?」を、おうちの人に話してみてください。

まず第1〜5章で写真のしくみを読み、続きは第6章と紙の工作へ。途中で休んで、分けて読んでもだいじょうぶです。「大人の方へ」は、気になったときに開けます。

第1章 写真1枚は、まだ地図ではない

地図は、町を小さくして真上から見たようにかいたものです。たとえば、本当は同じ長さの2本の道なら、地図でも同じ長さになるようにかきます。だから、地図の上の長さを使って、本当の長さを調べられます。

では、ドローンで町の写真を撮ったら、そのまま地図として使えるでしょうか。下の図の、右上にある高いビルを見てください。左の写真ではビルの横の面が見え、屋上が外側へずれて見えます。本当のビルがななめになっているわけではありません。カメラから見る向きのために、そう写るのです。

図1。写真と補正後の地図を比較。高い建物の屋上は写真の中心から外側へずれ、横から見た光線でもその位置の違いを示す。
図1|上の左右のビルと、下の横から見たビルを見くらべましょう。屋上は根もとよりカメラに近く、写真の外側へずれて写ります。右上は、建物の高さによるずれまで直した場合のイメージです。 図を押すと大きく表示できます。
ひなたひなた

真上から撮っても、ビルがななめになっちゃうの?

スカイ博士スカイ博士

そうじゃ。屋上はカメラに近く、根もとは遠い。近い所と遠い所では、写真に写る場所がずれるんじゃ。土地のでこぼこも同じで、山の上と谷の底では、ずれ方がちがう。

高さによるずれを直して、地図のように真上から見た形にした写真を、オルソ画像といいます。ここでは「地図のように使える写真」と覚えてください。仕事で長さや面積を測るときは、できあがった写真のずれが十分に小さいことも確かめます。ずれを直すには、「どこが、どれくらい高いか」を知る必要があります。高さは、どうやって調べるのでしょう。

大人の方へ|縮尺とオルソ画像の補足

地図全体で長さを縮める割合がそろっていることを、縮尺が一定と表します。縮図・拡大図は6年生の算数で学びます。このブログでは、小学4年生が「同じ長さの道は地図でも同じ長さ」とイメージできれば十分です。

空中写真では、地面から高い物ほど、また写真の中心から外側ほど、位置のずれが大きくなります。オルソ画像(正射画像)は、このずれを高さのデータで補正したものです。地面の高さだけで補正した場合など、使うデータによっては建物の傾きが残ります。図1の右上は、建物の高さまで補正した例です。

クイズ 1

同じ長さの道が2本あります。地図ではどうかく?

  1. 2本とも、地図の上でも同じ長さにする
  2. 1本だけ長くする
  3. 写真で長く見えたほうを、長くかく
答えを見る

答え:1。 地図では、同じ長さの道は同じ長さになるようにかきます。写真には高さによる位置のずれがあるので、地図のように使うには、そのずれを直す必要があります。

第2章 写る位置のずれから、高さを調べる

やってみよう|親指でたしかめる

うでをまっすぐのばして、親指を立てます。親指を、遠くにある物(窓のわく、時計など)に重ねてください。顔と親指を動かさずに、右目だけで見たあと、左目だけで見ます。親指は、遠くの物に対してどちらへ動いて見えますか?

今度は、親指を顔に近づけて、同じことをしてみましょう。動き方は大きくなりましたか? 右目と左目は少しはなれているので、同じ物でも見える向きが少しちがいます。そのちがいは、近い物ほど大きく、遠い物ほど小さくなります。わたしたちは、このちがいを手がかりの一つにして、物が近いか遠いかを感じとっています。

ひなたひなた

ほんとだ! 顔に近づけたら、すごく動いた。

スカイ博士スカイ博士

ドローンの写真でも、同じことが起きる。同じ高さでカメラを真下に向け、少し場所を変えて撮った2枚の写真をくらべると、高い所、つまりカメラに近い所ほど、写る場所が大きくずれる。そのずれと、カメラの位置や向きなどを使って、高さを計算できるんじゃ。

親指の実験を、空から見ると?
近くの親指は「高いビルの屋上」、遠くの窓は「地面」にあたります。空にあるカメラからは、屋上のほうが近いからです。

図2の写真Bを見て、屋上の▲と地面の●の矢印を指でなぞってみましょう。どちらの矢印が長いですか? 塔そのものが動いたのではなく、カメラが動いたため、写真に写る場所が変わったのです。

図2。同じ塔を撮影位置A・Bから見比べる。写真Bは写真Aの目印を薄く重ね、屋上の三角が地面の丸より大きく左へずれて写ることを長短の矢印で示す。
図2|同じ高さでカメラを真下に向け、A・Bから撮った模式図。写真Bの薄い印は写真Aの位置、矢印は写る位置のずれを示します。屋上の▲は地面の●より大きくずれています。 図を押すと大きく表示できます。

コンピューターも、少しずつ場所を変えて撮った写真を見くらべます。写る位置のずれと、撮影した場所やカメラの向きなどを使って、たくさんの点の位置と高さを計算します。

クイズ 2

同じ高さでカメラを真下に向け、少し場所を変えて撮った2枚の写真をくらべました。写る場所のずれがいちばん大きいのはどれ?

  1. 地面にかかれた白線
  2. どれも同じだけずれる
  3. 高いビルの屋上
答えを見る

答え:3。 屋上はカメラに近いので、撮る場所を少し変えただけで、写る位置が大きく変わります。親指の実験で、近くの親指が大きく動いて見えたのと似ています。実際の計算には、カメラの位置や向きなども使います。

第3章 少しずつ重ねて、たくさん撮る

高さを計算するには、同じ場所が2枚以上の写真に写っていなければなりません。そこで地図づくりのドローンは、決められたコースを自動で飛びながら、一定の間かくで真下の写真を撮っていきます。まっすぐのコースを同じ高さで何本も並べ、行ったり来たりするように飛ぶのが基本です。

写真は、ほんの少しだけでなく、大きく重ねて撮ります。図3の「8割」は、写真の長さを同じ大きさに10こに分けたうちの8こ分。「6割」は6こ分です。長さ10cmの写真なら、8割は8cm、6割は6cmが重なると考えるとわかりやすいですね。数字を暗記するより、同じ家や道が何枚にも写ることに注目しましょう。

図3。3本のコースを往復しながら撮影。進行方向は8割、隣のコースは6割の範囲が重なる例。
図3|重なった所には、同じ家や道が写ります。8割は10こ分の8こ分、6割は10こ分の6こ分です。数字は2017年改正の国土地理院マニュアルの一例で、撮影後に重なりを確認できる場合の条件です。 図を押すと大きく表示できます。
ひなたひなた

そんなに重ねたら、写真がいっぱいになっちゃうよ。

スカイ博士スカイ博士

そのとおり。じゃが重なりが足りないと、写真と写真のあいだにすき間ができたり、高さを計算できない場所が生まれたりする。同じ場所をいろいろな位置から写して、高さを計算できるようにするんじゃ。

同じ目印が、はっきり写るように撮る

写真がぼやけていたら、小さなマンホールや屋根のかどを見分けられません。地図づくりでは、見つけたい目印がはっきり写るように、飛ぶ高さやカメラを選びます。

大人の方へ|画素の細かさと地上画素寸法

デジタルの写真は、小さな色の点(画素がそ)が集まってできています。地図づくりでは、写真の1つの点の一辺が、地面のどれくらいの長さにあたるかを決めてから飛びます。これを地上画素寸法(ちじょうがそすんぽう)といいます。国土地理院の2017年改正のマニュアルでは、作りたい点群の正確さに合わせて、1つの点の一辺が地面の1〜3cm以内になるように撮ることが標準とされていました。同じカメラなら地面に近づくほど、また同じセンサーと高さなら望遠のレンズを使うほど、1つの点があらわす範囲は小さくなり、細かく写ります。

くらべてみましょう。国土地理院のウェブ地図「地理院地図」で写真を細かく表示したとき(ズームレベル18)、1つの点はおよそ50cmです。1〜3cmで撮るドローンの写真が、どれだけ細かいかがわかります。

ここでの「画素」は平面の写真を作る小さな点です。第4章の「点群の点」は、計算で求めた位置・高さを持ちます。両者を区別して説明してください。

天気や時間にも気をつける

国土地理院のマニュアルは、風が強くない、明るい時間に撮ることをすすめています。太陽が低いと影が長くなり、影の中は暗く写って、形や色を見分けにくくなります。雨や雪の日、突風のおそれがある日も、撮影には向きません。

大人の方へ|重複度・地上画素寸法・精度は、作りたい成果から逆算する

国土地理院「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」(平成28年3月、平成29年3月改正)の三次元点群作成(第3編)では、位置精度を0.05m・0.10m・0.20m以内の3区分とし、撮影する空中写真の地上画素寸法をそれぞれ0.01m・0.02m・0.03m以内とするのが標準でした。解説では、0.05mは出来形管理、0.10mは起工測量や岩線計測、0.20mは部分払い出来高計測での利用例が挙げられています。

重複度は、撮影後に実際の重複度を確認できる場合は同一コース80%以上・隣接コース60%以上、確認が難しい場合は同一コース90%以上・隣接コース60%以上で計画します(第57条運用基準)。その後、2020年3月の作業規程の準則改正で三次元点群測量の編が新設されてUAV写真点群測量が規定され、2023年3月の改正で「第4編 地形測量及び写真測量(三次元点群測量)」に再編されました(最新の一部改正は2025年3月)。公共測量では、最新の準則と発注者の仕様で数値を確認してください。

実務では、要求精度・地上画素寸法・重複度・対地高度・バッテリー本数・処理時間が連動します。より細かく撮ると、写真枚数や処理時間が増えることがあります。必要な成果物と精度を先に決め、撮影や処理にかかる時間も見積もります。

第4章 コンピューターが「同じ場所」を探す

地図づくりの写真は、多くの場合、ドローンのカメラの記録カードに保存されます。第5弾で見た映像の電波は、操縦するための映像です。飛行が終わったら写真をパソコンに取りこみ、専用のソフトウェアで計算します。

最初の仕事は、写真の中から目立つ点を見つけることです。道路の白線のかど、マンホール、石、屋根のはしなど、まわりと色や明るさがはっきりちがう場所が目印になります。こうした点を特徴点とくちょうてんといいます。

次に、別の写真にも同じ特徴点が写っていないかを探します。「写真Aのマンホールと写真Bのマンホールは同じ物だ」とわかれば、それが2枚の写真をつなぐ手がかりになります。この作業を、たくさんの写真の組み合わせでくり返します。

同じ点がいくつもの写真で見つかると、コンピューターは「それぞれの写真を、どこから、どの向きで撮ったのか」と「それぞれの点が、どこに、どの高さにあるのか」を、まとめて計算できます。親指の実験で見た「ずれ」を、たくさんの写真で調べるのです。

計算で位置と高さがわかった点に、写真の色をつけて並べると、色のついた点がびっしり集まった立体ができます。これが点群てんぐんです。小さなビーズを空間に並べて、家や木の形を作るところを想像してみてください。写真を細かく切ったものではなく、一つ一つの点に「場所と高さ」が入ったデータです。

図4。写真の特徴点を見つけ、共通の点を結び、複数の撮影方向から位置と高さを計算して、色のついた点群を作る4段階。
図4|上から順に見て、同じ屋根のかどがどこに写っているか探しましょう。点の位置と高さを計算し、色もつけて並べると、点群になります。 図を押すと大きく表示できます。
ひなたひなた

写真を見くらべるのって、まちがいさがしみたいだね。

スカイ博士スカイ博士

おもしろいたとえじゃ。ただしこちらは「同じところさがし」じゃな。しかも数えきれないほどの点を、コンピューターがいっぺんに探すんじゃ。

「同じところ」が見つけにくい場所

写真を計算するソフトウェアの説明書や国のマニュアルは、苦手な場所をいくつも挙げています。

  • 水面:一面が同じような色で、波や光の反射が写真ごとに変わるため、同じ点を見つけにくくなります。
  • 雪原や砂浜:模様がほとんどなく、どこを見ても同じに見えます。
  • 鏡やガラス:まわりの景色が写りこみ、見る向きで見え方が変わります。
  • 動く物:車や人は、写真ごとに位置が変わります。
  • 似た模様のくり返し:ちがう場所を、同じ場所だとまちがえることがあります。

こうした場所では、点がまばらになったり、まちがった高さの点が混じったりします。国のマニュアルには、まちがった点を取りのぞく作業(点群編集)や、模様の少ない場所に目印を置いたり白線を引いたりする工夫が書かれています。

クイズ 3

写真から点群を作るとき、いちばん苦手なのはどこ?

  1. 白線やマンホールのある駐車場
  2. 波が立っている広い池
  3. 石や草がまじった空き地
答えを見る

答え:2。 水面は一面が同じような色で、波や光の反射が写真ごとに変わるため、同じ点を見つけにくくなります。白線やマンホール、石や草は、目印になりやすい場所です。

第5章 点の集まりから、地図と立体の模型へ

点群ができれば、そこからいろいろな形のデータを作れます。おもなものを3つ見てみましょう。

地図のように使える写真「オルソ画像」

第1章で、写真は高い物ほどずれて写ると書きました。場所ごとの高さがわかれば、そのずれを計算で直せます。直した写真をつなぎ合わせると、真上から見た地図のような1枚の大きな写真になります。これがオルソ画像です。必要な精度を満たしていれば、長さや面積を測ったり、地図に重ねたりできます。国土地理院は、空中写真から作ったオルソ画像を、国の地図を新しくする作業にも使っています。

好きな角度から見られる「立体の模型」

点と点を三角形につないでいくと、面ができます。その面に写真をはりつけると、工事現場の土の山や建物を、好きな角度から見られる立体の模型(3Dモデル)になります。ひなたがパソコンで見たのは、これです。国のマニュアルにも、点群から作った面に写真をはりつけて、立体の写真地図を作れることが書かれています。

「表面の高さ」と「地面の高さ」

写真から作った点群には、写真に写った面の高さが入ります。真上から撮れば、木は葉の上、建物は屋根の上です。これが「表面の高さ」。それに対して、木や建物の下にある「地面の高さ」を知りたい仕事もあります。下の図で、木の上を通る線と、地面を通る線を見くらべてください。

ただし、写真に写らない地面の高さは、写真からは計算できません。葉のすき間から地面に光が届けば測れるため、森の下の地面を知りたいときは、第4弾で見たLiDARのほうが向いています。

図5。点群からオルソ画像、3Dモデル、高さデータへ。断面図ではDSMが屋根や木の上、DEMが地面を通る。
図5|点群から、地図のような写真や、回して見られる立体の模型を作ります。下の図は「木や屋根を含む表面」と「地面」の高さのちがいです。DSM・DEMという名前は、今は覚えなくてもだいじょうぶ。写真に写らない地面は、写真だけでは求められません。 図を押すと大きく表示できます。
ひなたひなた

じゃあ、工事現場の土の量も、点群があればわかるの?

スカイ博士スカイ博士

土の山の形がたくさんの点でわかれば、土がどれくらいあるか、量を計算できる。工事の前と後をくらべれば、どれだけ土を動かしたかもわかるんじゃ。じゃが、それには位置と高さが正しくなければならん。最後の章で、その話をしよう。

クイズ 4

オルソ画像について、正しいのはどれ?

  1. ドローンが撮った写真を、そのまま1枚ならべただけのもの
  2. 木の下の地面まで写した写真
  3. 高さによるずれを直して、地図のように真上から見た形にした写真
答えを見る

答え:3。 オルソ画像は、場所ごとの高さを使って写真のずれを直したものです。写真に写らない木の下の地面は、オルソ画像でも見えません。

大人の方へ|オルソ画像と表面・地面の高さデータ

表面の高さのデータは数値表層モデル(DSM)、地面の高さのデータは数値標高モデル(DEM)と呼びます。地面の点を選び、写真では足りない場所を別の測量で補うなどして作ります。子どもには、名前の暗記より「木の下の地面は写真に写らない」というちがいを確かめてもらってください。

国土地理院は、数値標高モデルを使って中心投影の空中写真を正射変換し、つなぎ合わせて電子国土基本図(オルソ画像)を作成しています。一方で同院は、災害時に自動処理で作った正射画像について、構造物などに歪み・ズレ・不連続が生じて見える場合があると注記しています。オルソ画像は、使った高さデータと編集の程度で品質が変わるため、受け取り時に作成方法を確認しておくと誤読を防げます。

公共測量マニュアル(平成29年改正)の点群編集では、地形以外の点や不要な点を除き、樹木・草・構造物・車両なども必要に応じて取り除いてグラウンドデータを作ります。土木施工での点密度は、100m²に1点以上(低密度)、0.25m²に1点以上(標準)、0.01m²に1点以上(高密度)の区分が示されていました。地表が植生に完全に覆われ、写真に地面が写らない地区は、写真による測量の対象になりません。森林や急斜面の地形はUAVレーザ、開けた現場で色付きの現況が必要なら写真測量、と使い分けや併用を検討します。

第6章 位置を正しくする目印と、答え合わせ

写真の計算でまずわかるのは、点どうしの位置関係、つまり「形」です。地図として使うには、それを地球の上の正しい位置と高さに合わせなければなりません。ドローンは第3弾で見たGNSS(GPSなど)で撮影した場所を記録できますが、測量の仕事では、地上に置いた目印で位置をそろえたり、確かめたりします。

位置合わせの基準になる「標定点」

撮影の前に、地面に白と黒の大きな目印(対空標識たいくうひょうしき)を置き、その場所の位置と高さを、測量の機械で正確に測っておきます。このように位置と高さを測り、写真の位置合わせの基準に使う点が標定点ひょうていてんです。目印は、その点を写真の中で見つけるためのものです。空から写真を撮ると、目印も写ります。コンピューターは、写真に写った目印と地上で測った位置を結びつけて、点群全体を正しい位置と高さにそろえます。

答え合わせの点「検証点」

目印とは別に、答え合わせのための点も置きます。これを検証点けんしょうてんといいます。検証点も地上で正確に測っておきますが、位置をそろえる目印としては使いません。できあがった点群で検証点の場所を調べ、地上で測った値とのちがいをくらべます。ちがいが決められた範囲におさまれば合格、おさまらなければ、写真や計算を見直したり、撮り直したりします。

答え合わせの点は、位置を合わせる目印からはなれた所にも置きます。目印のすぐそばだけでは、ほかの場所のずれに気づけないからです。

ひなたひなた

テストの答え合わせみたい!

スカイ博士スカイ博士

そのとおり。目印にぴったり合わせただけでは、ほかの場所が本当に合っているかはわからん。だから、目印とは別の場所で確かめるんじゃよ。

地図と立体の模型は、どこで役立つ?

  • 工事:工事の前と後で地面の高さをくらべ、運んだ土の量を計算します。国のマニュアルにも、工事でできあがった形や、工事の進み具合を確かめるのに使えることが書かれています。
  • 災害:2026年7月の熊本の地震では、国土地理院が地震の翌日に飛行機から空中写真を撮り、正射画像(オルソ画像)を作って公開しました。その画像を読み取って、斜面がくずれたと考えられる場所などを地図にもまとめています。2024年の能登半島地震では、空中写真から計算で作った表面の高さのデータを使い、地形の変化を立体で確かめられるサイトも公開されています。
  • まちづくり:国土交通省は、建物の形や高さを再現した3D都市モデルを整備しており、2025年度末までに329都市で作られています。防災やまちづくりの計画に役立てられています。

飛行機から撮った空中写真でも、ドローンの写真でも、重ねて撮って高さを計算し、目印でそろえるという考え方は同じです。

クイズ 5

検証点の役目として、正しいのはどれ?

  1. できあがった点群の位置が正しいか、答え合わせをする
  2. ドローンが迷子にならないように、電波を出す
  3. 写真の重なりを増やすために、地面に置く
答えを見る

答え:1。 検証点は、地上で正確に測っておいた答え合わせの点です。点群で調べた位置とくらべて、ずれが決められた範囲におさまっているかを確かめます。

大人の方へ|標定点と検証点の配置・精度

目印は、測る範囲を外側からぐるりと囲むように置き、内側にも置きます。国土地理院のマニュアル(2017年改正)では、外側に3点以上、内側に1点以上を置き、いちばん高い場所と低い場所にも置くことが標準とされていました。

同じマニュアルでは、検証点は標定点からできるだけはなれた場所に、標定点の数の半分以上を置くこととされていました。目印のすぐそばだけで答え合わせをしても、ほかの場所のずれには気づけないからです。

公共測量マニュアル(平成29年改正)では、標定点・検証点の位置はTS点の設置に準じた観測で求め、位置精度0.05mの点群ではTSを用いて観測することとされていました。RTK法・ネットワーク型RTK法を使う場合は2セット観測し、セット間較差はX・Yが20mm、Zが30mmを標準としています。点検では、標定点の残差と検証点の較差が、X・Y・Zの各成分で所定の位置精度以内かを確かめます。

撮影位置を高精度に記録できるRTK・PPK方式の機体を使い、標定点を減らす運用もありますが、可否は要求精度・発注者の基準・現場条件で変わります。方式にかかわらず、検証点による精度確認は残すのが基本です。なお、国土地理院が作成する正射画像のうち精度管理を行っていないものは「技術資料」として登録され、測量作業には使えないと明記されています。状況把握用のデータと測量成果は、分けて扱います。

親子で挑戦|窓わくドローンで地図づくり

紙の窓わくで、同じところを探そう

窓わくをのぞいて地図の一部を写しとり、その「写真カード」をつなぎ直して、もとの地図を組み立てる遊びです。重ねて撮る理由、同じところさがし、目印と答え合わせを、手を動かして確かめます。

このワークは、写真から地図を作る考え方を体験するためのモデル(たとえ)です。高さの計算までは再現していません。高さのしくみは、第2章の親指の実験で確かめてください。第3章の撮影例では進む方向に8割以上重ねますが、この遊びでは、カードの数をへらすために半分ずつ重ねます。

用意するもの

  • A4の紙2枚(1枚は町の地図用、1枚は1マスが1cmの方眼紙。白い紙に1cmごとの線を引いても使えます)
  • 厚紙1枚(工作用紙や、おかしの箱など)
  • カード6枚(まず試すだけなら2枚。トレーシングペーパーなど、下の絵が透ける紙を7cm×7cmに切ったもの)
  • えんぴつ、色ペン、ものさし、セロハンテープ
  • はさみ(厚紙に窓を開けるときは、大人といっしょに)

じゅんび

  1. 町の地図をかく。 たて9cm、よこ12cmのわくの中に、道、家、木、学校などをかきこみます。大きな池と、何もない広い畑を1つずつ入れておきます。
  2. ★と●をかく。 地図の中に★を3つ、●を1つかきます。★は「標定点」で、わくの角の近くなど、たがいにはなれた所に。●は「検証点」で、★から遠い所に。方眼紙にも同じ大きさのわくをかき、ものさしで測って、同じ位置に★を写しておきます。●の本当の位置は「わくの左から何cm、上から何cm」と測り、大人が別のメモに書いて、かくしておきます。
  3. 窓わくとカードを作る。 厚紙のまん中に、6cm×6cmの四角い窓を開けます。カードにも、四方に5mmの余白を残して6cm×6cmのわくをかき、上になる辺に小さく印をつけます。

まずは2枚だけでやってみよう

じゅんびができたら、下の手順1でカードを2枚作り、もとの地図をかくします。同じ家や道が重なるように、2枚をつないでみましょう。

「同じ物が2枚ともに写っていなかったら、つなぐ場所はわかるかな?」。話し合えたら、今日はここまででもだいじょうぶです。続けたい人は、残り4枚を作って、★と●でも確かめましょう。

6枚で町全体を作る手順

  1. 1本目のコースを撮る。 窓わくを地図の左上の角に合わせて置き、カードの6cmのわくを窓に重ね、見えるものだけを同じ大きさでなぞります。カードの向きは毎回そろえます。これが写真カードの1枚目です。窓わくを右へ3cmずらして2枚目、さらに3cmずらして3枚目を写します。
  2. 2本目のコースを撮る。 3枚目の位置から窓わくを下へ3cmずらして4枚目を写します。そこから左へ3cmで5枚目、さらに左へ3cmで6枚目を写します。カードのすみに、1〜6の番号を小さく書いておきます。
  3. 地図をかくす。 もとの地図は裏返して、見ないようにします。
  4. カードをつなぐ。 カードをまぜてから、同じ物(同じ家、道の曲がり角、木)が写っているカードどうしを重ねて、地図を組み立てます。重ねる目安は、紙の端ではなく6cmのわくの半分(3cm)です。
  5. 目印でそろえる。 組み立てたカードを方眼紙にのせ、カードの★が方眼紙の★にできるだけ重なるように動かして、テープでとめます。手で写したずれがあるので、全部がぴったり合わなくてもかまいません。
  6. 答え合わせ。 カードの●の位置と、メモしておいた●の本当の位置をくらべて、左右・上下に何マスずれたかを記録します。1マスは1cmです。●を合わせ直さず、そのままのずれを記録しましょう。

チャレンジ:別のカードに、池や畑の模様だけをかいてみましょう。家や道、★などの目印は入れません。そのカードは、どこにつなげばよいかわかりますか?

表は横にスクロールできます →

カード写っている目印重なっていたカードつなぐときに気づいたこと
1   
2   
3   
4   
5   
6   

ワークシート|印刷して書きこめます。●のずれ(__マス)は、表の下に書きましょう。

ふりかえり

  • いちばんつなぎやすかったカードはどれ? どうして?
  • 池や畑だけのカードは、どこにつなげた?
  • ★で位置をそろえたあと、●は左右・上下に何マスずれた? ★が合っても、ほかの所がずれることはあるかな?
ふりかえりの一例を見る

正解はひとつではありません。気づいたことを言葉にできれば十分です。

  • つなぎやすかったカード:家や道の曲がり角など、形のはっきりした物が写っているカードです。コンピューターが特徴点を目印にするのと同じです。
  • 池や畑だけのカード:どこも同じに見えると、置き場所を決めにくくなります。本物の写真測量でも、水面や模様の少ない場所は苦手です。重なりを大きくして、まわりの目印がいっしょに写るようにするのは、そのためです。
  • ★と●:カードをつないだだけだと、地図全体が少し回ったり、ずれたりします。★に合わせると、全体の位置をそろえられます。手で写したずれは残ることがあります。●は★に合わせるときに使っていないので、正しくそろったかどうかを、かたよりなく確かめられます。本物の検証点も同じ考え方です。
図6。紙の窓わくで町を6枚に写す。上段は左から右へ1・2・3、下段は右から左へ4・5・6。星3個で位置を合わせ、丸1個で確かめる。
図6|12cm×9cmの町を、6cmの窓で3cmずつずらして写します。カードの6cmのわく同士を半分ずつ重ね、★で位置をそろえ、合わせるときに使わなかった●でずれを調べます。 図を押すと大きく表示できます。
ひなたひなた

同じ家を探したら、カードがつながったよ。★で位置を合わせても、●には少しずれが残ることがあるんだね。

スカイ博士スカイ博士

それが目印と答え合わせの力じゃ。本物の地図づくりでも、空から撮るドローンと、地上で目印を測る人が、力を合わせておるんじゃよ。

保護者の方・先生へ|「縮図」と「地図記号」の学びにつながります

このワークのねらいは、①重なりがあるからこそ写真をつなげること、②形のはっきりした目印がつなぐ手がかりになること、③全体の位置は基準となる点でそろえ、別の点で確かめること、の3点を体験することです。高さの計算は再現していないため、第2章の親指の実験と組み合わせてください。

6年生の算数では縮図や拡大図を学び、縮図を使って測りにくい長さを求める活動も行います。オルソ画像は、縮尺がそろった写真という意味で、縮図の考え方を身近に感じられる教材になります。3年生の社会で学ぶ方位や地図記号を使ってカードをかくと、地図のきまりの復習にもなります。

発展として、国土地理院の「地理院地図」では、画面右上の「ツール」から「3D」を選ぶと、地図や写真を立体で見られます。住んでいる町や学校のまわりを立体で表示し、ビルが立体になっているか、地形の高さだけが表されているかを、本文の「表面の高さ」と「地面の高さ」と結びつけて話し合ってみてください。

今日わかったこと

  1. 同じ場所を見くらべるために、写真を重ねて撮る。同じ家や道のかどが、写真どうしをつなぐ手がかりになります。
  2. 写る位置のずれから、高さを計算する。カメラの位置や向きなども使って、場所と高さのわかる点の集まり「点群」を作ります。
  3. 点群を使って、地図や立体の模型を作る。高さによる写真のずれを直したものが、地図のように使える「オルソ画像」です。

仕事で使う前には、位置を合わせ、別の点で答え合わせをします。見た目がきれいでも、正しい位置とは限らないからです。

自分の言葉で話してみよう

図を見てもだいじょうぶ。おうちの人に、理由を説明してみよう。

  1. 写真をすき間なく並べるだけでなく、重ねて撮るのはなぜ? 「同じ場所」という言葉を使って話そう。
  2. 親指の実験で、近い親指にあたるのは「屋上」と「地面」のどちら? なぜそう思う?
  3. 図5で、点群とオルソ画像を指さそう。それぞれ、どんなもの?
説明の例と、読み返す場所を見る
  1. 重ねる理由:同じ場所が何枚にも写ると、同じ目印を見つけて、写る位置のずれをくらべられるから。迷ったら第3章と第4章へ。
  2. 親指にあたるのは屋上:空にあるカメラに近いから。カメラの場所を変えると、地面より大きくずれて写る。迷ったら第2章の実験と図2へ。
  3. 点群:場所と高さのわかる点が集まり、町や建物の形を表したもの。オルソ画像:高さによるずれを直して、地図のように真上から見た形にした写真。迷ったら第5章と図5へ。

例と同じ言い方でなくても、理由とちがいが伝わればだいじょうぶです。用語を覚えただけになっていないか、図を指しながら話してみましょう。

ひなたひなた

写真がたくさん集まって、点になって、地図や模型になるんだね。

スカイ博士スカイ博士

うむ。きれいな立体ができても、位置や高さが合っているとは限らん。別の点で答え合わせをして、使いたい仕事に十分な正確さかを確かめるんじゃ。

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SkyLink Japanは、測量・点検・農業・防災などの現場で使うドローンやロボットを、必要とする人へ届ける仕事をしています。このシリーズでは、技術が人の暮らしとどうつながるのかを、親子で考えるきっかけをお届けします。

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