
GMOの不正アクセスを教訓に|ドローンの写真・点群を守るバックアップと復旧手順
納品前日に、解析PCが使えなくなったら。元の写真も点群も、そのPCにしか残っていないと、納品の作業も止まります。工事が進んだ場所や一度きりの点検では、同じ状態のデータを取り直せないことがあります。
バックアップの保存先とあわせて、普段のPCやクラウドが使えないとき、誰が、何を、どこから戻すかを決めておきます。
このブログでは、GMOの不正アクセスを教訓に、ドローンの写真・点群を扱う企業のバックアップと復元テストを図解します。担当者と期限を書き込める無料チェックリスト(PDF・Excel)も用意しました。
GMOの不正アクセスから、自社の保存先を点検する
GMOインターネットは、2026年10月に「お名前.com デスクトップクラウド」での不正プログラムの設置と、取引口座のログイン情報などが第三者に取得・不正利用された可能性を公表しました。サービスの停止に加え、利用者の端末を預かる調査や、情報の拡散防止への対応も続いています。
ドローン業務でも、作業に使う環境と、復旧に使うデータが同時に使えなくなる場合があります。解析PC、社内共有フォルダー、クラウドのどれか一つに原本も成果物も集まっていれば、その保存先への障害や侵害で、仕事を再開するための材料まで失うおそれがあります。
このブログの図解と保管例は、一般企業向けの平時の対策です。GMOの実際のバックアップ構成を示したものではありません。同サービスの対象利用者は、PCの起動・再接続・バックアップ操作も含め、公式窓口からの最新案内を優先してください。
事件の仕組みやPCへの影響は、GMOの不正アクセスを図解したブログで説明しています。このブログでは、保存と復旧の作業に絞って進めます。
出典・参考資料
写真・点群に加え、再処理の条件も残す
納品したLASやオルソ画像が残っていても、修正依頼に対応できるとは限りません。写真から作り直す案件なら元の写真、レーザー計測なら使用機器に応じた計測原本や軌跡、処理の設定も必要になります。
まず一つの案件を選び、納品済みの成果物を、別の担当者が作り直すために必要な一式を書き出します。下表はその確認例です。すべての機器が同じファイルを出力するわけではないので、使用機材と納品仕様に合わせて決めます。
| データのまとまり | 保存するものの例 | 復元時に確かめること |
|---|---|---|
| 撮影・計測の原本 | 元の写真・動画、計測原本、機器に応じた測位(GNSS)・姿勢(IMU)・軌跡データ | 対象範囲と撮影・計測日時、ファイルの欠落 |
| 位置と高さの基準 | 標定点・検証点の記録、座標系、標高の基準、使用した基準点 | 元の成果と同じ位置・高さの基準で扱えるか |
| 処理の途中と設定 | 処理プロジェクト、調整・分類の設定、使用ソフトの名称・版 | 必要なソフトで開き、参照先が切れていないか |
| 納品と品質の記録 | 点群、オルソ画像、図面、精度確認の記録、納品確定版 | 顧客へ渡した版と一致し、予定の操作ができるか |
| 再開に必要な環境 | ソフトの導入手順、ライセンスの管理窓口、復号鍵の保管先と担当者 | 代替PCで使えるか。パスワードや鍵を案件資料へ直書きしない |
原本、作業中のデータ、納品確定版は分け、案件番号と版が分かる名前を付けます。容量が大きいからと一律に消すと、再計算に必要な原本まで失いかねません。保管期間は、顧客との契約や社内の保存方針とそろえます。
クラウド同期とバックアップを使い分ける
クラウド同期は、複数の場所で同じファイルを使うための機能です。同期対象のファイルを削除・上書きすると、その変更もほかの場所へ反映される場合があります。バックアップでは、削除や上書きの前のデータを残し、必要な時点へ戻せるようにします。
OneDriveなどには、ごみ箱や版の履歴、過去の時点へ戻す機能があります。ただし、利用条件や保持期間があり、完全に削除されたファイルは戻せない場合があります。「クラウドだから大丈夫」と判断せず、管理者に何日前の版まで、誰が、どの操作で戻せるかを確認しておきます。
RAID(複数のディスクを組み合わせて使う仕組み)を備えたNAS(ネットワークで共有する保存機器)も、故障したディスクへの備えと、誤削除・侵害への備えを分けて確認します。同じ管理者権限で保存先と履歴を消せるなら、別の保護されたコピーが必要です。
出典・参考資料
- Microsoft Support:Restore your OneDrive(2026年11月2日確認)。クラウドの復元機能にも契約・保持期間・削除状態による条件があること。
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3-2-1ルールで分け、まとめて消せない保管先を作る
バックアップの基本には、元データを含めて3つ、2種類の媒体、1つは別拠点にする「3-2-1ルール」があります。IPAの2026年版の解説書でも、ネットワークから隔離した保管や、過去の版を残す世代管理とあわせて紹介されています。
外付け媒体を取り外し、コピーの変更・削除を制限する
外付け媒体を使うなら、バックアップや復元に必要なときだけ接続し、検証が終わったら取り外して保管します。つなぎっぱなしでは、PCからアクセスできる保存先として同時に被害を受けるおそれがあります。
クラウドや専用ストレージでは、一定期間の変更・削除を制限する機能も選択肢です。「イミュータブル」は、こうした変更しにくい保管の考え方を指します。機能名だけで選ばず、管理者が保持期間を短縮できるか、設定の変更に承認が必要かまで確認します。
バックアップの管理権限を分け、復号鍵も別に保管する
違うサービスにコピーしていても、同じIDで全部を消せるなら被害が重なるおそれがあります。日常の作業とバックアップ管理の権限を分け、管理者には多要素認証を設定します。暗号化した媒体の復号鍵を、失われる可能性があるPCの中だけに置かないことも必要です。
担当者が不在でも復旧できるよう、代替担当者と鍵の保管先を決めます。チェックリストには鍵やパスワードそのものを書かず、管理窓口と承認手順を記録してください。
出典・参考資料
- IPA:情報セキュリティ10大脅威2026 解説書[組織編](2026年3月、本文50〜51ページ)。バックアップ対象・3-2-1ルール・隔離・世代管理・復元確認。
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どの時点のデータを、何時間で戻すかを決める
「毎晩バックアップしている」だけでは、日中に撮った写真をどこまで戻せるかが分かりません。何時間分のデータ損失まで許容できるかと、停止から何時間で業務を再開するかを、案件の担当者と決めます。
RPO:どの時点まで戻せればよいか。例えば「前日の終了時まで」か、「その日の撮影分も残す」かを決めます。
RTO:何時間で業務を再開したいか。データをコピーする時間だけでなく、PCやソフトを用意し、開いて確認する時間も含めます。
翌朝に成果を納める案件なら、前夜のバックアップに必要なデータがそろっているかを確かめます。現場で撮った原本や、PCへ取り込んだ直後のデータを、どこへコピーするかも決めておきます。再計算できる中間データは、処理時間と保管容量を比べて残す範囲を決められます。
顧客へ約束する復旧時間は、データ一式を戻すテストをしてから決めます。回線やデータ容量に加え、代替PCの準備とソフトのライセンス確認にかかる時間も含めて測ります。
復元してソフトで開くところまで試す
コピーの完了表示だけでは、仕事を再開できるかは分かりません。バックアップを初めて作ったときと、決めた見直し時期、保存先やソフトを大きく変えたときに、正常な別環境へ戻し、普段のソフトで使うテストを行います。
- 戻す時点と対象を選ぶ案件、必要な一式、バックアップの日時を記録する。
- 正常なテスト環境を用意する本番の原本を上書きしない端末・フォルダーを使う。
- コピーを戻し、そろっているか確かめる件数・容量と、必要に応じてファイルのハッシュを照合する。
- 業務用ソフトで開く写真の表示、点群の読み込み、プロジェクトの参照先を確認する。
- 時間と課題を記録する業務再開までの実測時間、残った課題、担当者と改善期限を残す。
写真を数枚戻すテストで、バックアップから取り出して表示する操作を試せます。ただし、数枚で成功しても案件一式の復旧時間は分かりません。重要な案件では、必要なデータ一式を戻してテストします。点群を開く、断面を確認する、成果物を出力するところまで試し、所要時間を記録します。
ハッシュは、ファイルの内容を識別するための値です。コピー前後の値を比べて、内容に違いがないかを調べます。ただし、ハッシュの一致は、感染していないことの証明にはなりません。
撮影後と納品後の手順にも組み込む
現場から戻ったら、案件フォルダーへ取り込み、別の保管先へのコピーを検証します。原本カードの再利用は、その確認を終えてからにします。処理や納品の区切りでは、確定版と使用した設定を残し、バックアップの失敗や容量不足を担当者が見つけられるようにします。
クラウドを利用する場合は、停止や解約の前に一式を取り出せるかもテストします。出力形式、取り出しにかかる時間や費用、契約終了後の期限が、自社の復旧目標に合うかを確認してください。
出典・参考資料
- IPA:情報セキュリティ10大脅威2026 解説書[組織編](2026年3月、本文50〜51ページ)。バックアップ対象・3-2-1ルール・隔離・世代管理・復元確認。
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感染が疑われたときは、復元を急ぐ前に相談する
普段と違う大量のファイル変更や暗号化、身代金の要求などを見つけた場合は、社内の責任者・保守会社へすぐ連絡します。感染が疑われる端末に、保管していた外付け媒体を慌ててつなぐと、残っているコピーまで危険にさらすおそれがあります。
ネットワークからの隔離、同期やバックアップの上書き・削除処理の停止、ログや証拠の保全は、事前に決めた初動手順と責任者の判断で進めます。調査前の初期化や、侵害された可能性のある環境への上書き復元は、独断で行わないでください。
バックアップがあると復旧の選択肢は増えます。しかし、情報の持ち出しを取り消すことはできません。外部流出への対応と、業務を再開するための復旧を、それぞれの担当者が進められる体制も必要です。
出典・参考資料
- IPA:情報セキュリティ10大脅威2026 解説書[組織編](2026年3月、本文50〜51ページ)。バックアップ対象・3-2-1ルール・隔離・世代管理・復元確認。
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無料チェックリストで、保存と復旧の担当を決める
20項目のチェックリストと復元テスト記録を用意しました。バックアップの実行記録や保存先を確かめながら、担当者・確認状況・対応期限を書き込めます。
- PDF・3ページ:保存・保管・権限、日常運用・復旧、復元テスト記録を印刷して確認。
- Excel・2シート:確認状況、担当者、期限、根拠・対応と、復元テストの実施結果を記録。
登録不要。別タブでPDFが開くか、ファイルのダウンロードが始まります。パスワードや復号鍵そのものは記入しないでください。
次の案件で、必要なデータ一式を戻してみる
まず、撮り直せない写真や点群を含む案件を一つ選んでください。保存先を書き出し、普段のPCが使えないと仮定して、別の担当者が必要な一式を戻せるかを試します。戻せなかったファイルや分からなかった操作を記録し、担当者と改善期限を決めます。
納品後の修正や再確認に備え、次の担当者が原本と処理の設定を取り出せる状態で残します。保存先と復旧手順は、飛行・計測・処理の工程と一緒に決めておきましょう。
出典の確認日:2026年11月2日。GMOの公表事実と、編集部がドローン業務向けに作成した保管・復元の例を区別しています。
出典・参考資料
- GMOインターネット:不正アクセスに関する第2報(2026年10月22日)。不正プログラムの設置、認証情報の取得・不正利用の可能性、サービス停止。
公式資料を開く - GMOインターネット:不正アクセスに関する第9報(2026年10月27日)。対象利用者への当時のバックアップ・ネットワーク断・電源断の要請。
公式資料を開く - GMOインターネット:不正アクセスに関する第16報(2026年10月29日公表・10月30日追記)。対応継続と、その後の公式発表への案内。
公式資料を開く - IPA:情報セキュリティ10大脅威2026 解説書[組織編](2026年3月、本文50〜51ページ)。バックアップ対象・3-2-1ルール・隔離・世代管理・復元確認。
公式資料を開く - IPA:SECURITY ACTION管理システムリリースのご案内(2026年4月の変更案内)。中小企業向け基本対策へのバックアップ追加。
公式資料を開く - Microsoft Support:Restore your OneDrive(2026年11月2日確認)。クラウドの復元機能にも契約・保持期間・削除状態による条件があること。
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