ドローン測量はどこまで進んだか。建設現場を背景に、飛行中のドローンと開いたドックを配置した構成イメージ

ドローン測量はどこまで進んだか|ゼネコン・建設コンサルの最新実証に見る「人が測りに行かない現場」

高さ約70mの崖で、掘削面は日々変わる。測量のたびに人が現場へ向かう代わりに、ドックを設け、東京から週1回の計測を続けた――大林組が公表した事例です。

国の要領にドローン測量が載ってから10年。いまは撮影したデータを点群化し、土量計算や報告資料づくりまでつなぐ現場が出てきました。測量のたびに現場へ行く回数を減らす取り組みです。

ゼネコンと建設コンサルタントの発表をたどり、遠隔測量がどこまで現場で動いているか、公共工事へ広げる際に何が残るかを確かめます。

連載「ドローンと3Dデータで変わる測量・建設現場」(全2回)

第1回 現在編:ドローン測量はどこまで進んだか(このブログ)

第2回 将来編:ドローン測量は「標準工程」になるのか――国の制度と2027〜2030年の予測

このブログの要点
  • 「ドローンで撮って点群化」は、2016年から国の要領にある技術です。日本建設業連合会の会員調査では、土木でドローンを導入している企業はすでに9割近くに達しています
  • 大手の先行事例では、ドック(自動充電ポート)・遠隔運航・衛星通信・クラウドでの自動処理・AI・BIM/CIMの組み合わせです。トンネルでは四足歩行ロボットや常設LiDARなど、ドローン以外のセンサーも使い分けています
  • 公表事例の多くは、まだ「1つの現場での実証・継続運用」です。公共工事や公共測量で当たり前に使われるには、制度・基準・発注の仕組みに加え、機材の選択肢も整う必要があります

空撮から「現場の3Dを取り続ける」へ

国の要領・基準が変わった時期と、企業が新しい運用を公表した時期を年代順に並べました。

時期ドローンの役割主な出来事
〜2015年空撮(写真・映像での記録)現場の記録や広報が中心。鹿島建設は2015年に、ドローン写真測量を大規模造成の土量管理に適用
2016〜2019年写真測量・レーザー測量で点群をつくるi-Construction開始(2016年度)。UAV写真測量による出来形管理の要領と、国土地理院の「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」が2016年3月にそろう。UAVレーザーは出来形管理の要領が2017年3月、公共測量のマニュアルが2018年3月
2020〜2023年計測手段が増え、要領・基準に定着3次元計測の各要領を一斉改定(2020年3月)。UAVレーザーなどを公共測量の作業規程の準則に統合(2023年3月)。遠隔臨場の原則適用(2022年度)、BIM/CIMの原則適用(2023年度)。ドローンポートの現場実証が始まる
2024〜2026年ドック常設・遠隔運航・クラウドでの自動処理・AIi-Construction 2.0(2024年4月)。ICT施工の原則化(2025年度〜)。自動充電ポート付きドローンの1年常設と遠隔運航、レベル3.5飛行による現場外への拡大
次の段階現場の3Dデータを自動で取り続けるセンサーの一つドローン、常設LiDAR、重機のセンサーなどで、現場の3Dを継続的に更新する方向へ

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

出典・参考資料
補足|LiDARは「2020年代の新技術」ではありません

ドローン搭載のレーザー(LiDAR)は、2017〜2018年にはすでに国の要領・マニュアルに入っています。鹿島建設は2016年に、UAVレーザーで20haを約13分で計測し、測点の90%が地上レーザーとの差±4.5cmに収まったと発表しています。国の要領に組み込まれた後、現場の条件に合わせて写真測量とレーザー測量を使い分ける段階へ進んできました。

土木工事では、ドローン測量は広く使われています。日本建設業連合会が2024年10月に公表した会員調査では、土木工事でドローンを導入している回答企業は9割近くで、用途は測量、出来形管理、竣工検査でした。3次元測量とICT建機も、それぞれ9割超が導入しています。

出典・参考資料

ドック・通信・処理ソフトをどうつなぐか

大手各社の発表では、撮影の自動化に加え、データ転送から報告までの作業をつなぐ試みが目立ちます。

図の右側では、現場での操縦や処理を減らし、担当者が遠隔地で結果を確かめる流れを描いています。各社が実際にどこまで進めたか、事例を見ていきます。

大林組:ドックを1年常設、東京から週次測量

継続運用大林組が2025年8月に発表したのは、上信越自動車道の落石対策工事(群馬県安中市、発注者は東日本高速道路)での取り組みです。トンネル坑口の上にある高さ約70mの崖で、約9万5,000m³の岩塊を掘削する現場でした。

  • 2024年7月から、自動充電ポート付きドローンを現場に常設
  • レベル3(無人地帯での補助者なしの目視外飛行)で、週1回2フライト。運航はKDDIスマートドローンが東京都内のオフィスから遠隔で担当
  • 自動離着陸、クラウドへのデータ転送、点群化と解析、掘削量の算出、時系列の断面図による進捗報告資料の作成までを自動化
  • 1年間無事故で、週次の測量を継続

従来は、現場でドローンを操縦し、点群の生成と解析に2人で2日かかっていました。それが約20分の遠隔運航に変わり、週次測量のために毎回現場へ行く必要がなくなったとしています。背景として同社は、掘削面が日々変わるため定期的な測量が欠かせないものの、人が測るのは時間と労力の負担が大きく現実的ではなかった、と説明しています。

大林組は、その前の現場から運用範囲を少しずつ広げてきました。

時期現場到達点区分
2023年川上ダム(三重県)自動充電ポート付きドローンと衛星通信(Starlink)で巡視・計測・点群生成を自動化。移動を含め345分の業務が60分に(現場監理業務80%削減)実証
2024年〜能登・国道249号の啓開工事(石川県)平日毎日、都内から遠隔運航。3次元モデル・土量計算・出来高管理に使い、1日約75分を削減。地震と豪雨の被害把握にも活用継続運用
2024〜2025年上信越道 北野牧工事(群馬県)1年常設・レベル3・週次の遠隔自動測量。点群化から掘削量、報告資料まで自動化継続運用
2026年相模ダムリニューアル工事(神奈川県)レベル3.5で飛行範囲を現場の外へ広げる。点群の生成処理を約5時間から約1時間に短縮実証

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

2026年6月発表の相模ダムでは、河川やダムをまたぐ橋など、第三者が立ち入る可能性のある場所の手前で機体を一時停止。搭載カメラで人がいないことを確かめてから通過させました。この方法により、看板や補助員による立入管理が不要になったと同社は説明しています。

レベル3では飛行できる範囲が限られていました。レベル3.5の活用で現場外からの巡視・点検へ範囲を広げ、今後は設計段階のBIM/CIMモデルと組み合わせた進捗管理・安全管理を目指すとしています。

出典・参考資料
現場では|公表資料から分からないこと

これらの発表には、使った機体・ポートの機種名(一部を除く)や、点群・掘削量の精度の数値は書かれていません。全社で何現場に導入したかも公表されていません。自社で同じ仕組みを検討する場合は、事例の削減時間をそのまま当てはめるのではなく、何の目的に、どの精度が必要かを先に決め、検証方法とあわせて設計する必要があります。

清水建設:測位も通信も難しいトンネルをどう測るか

清水建設が主に取り組んでいるのはトンネル工事です。山間部で通信がなく、坑内ではGNSS(衛星測位)も使えないという、測量には厳しい条件の現場です。

実証2024年8月、北海道新幹線 渡島トンネル(発注者は鉄道・運輸機構)で、KDDIグループと共同で次の実証を行いました。

  • 坑内は四足歩行ロボット、坑外はドローンにLiDARを載せて計測
  • Starlinkを使った回線で、3D点群を現場からリアルタイムに伝送。国際標準の点群圧縮方式でデータ量を約20分の1にし、伝送時間を「数時間」から10秒以内に短縮
  • 360度画像・BIM・3D点群を比べて見られるツールで、出来形の異常検知や鉄筋・コンクリート打設の検査への活用を想定

同社はこの取り組みの背景として、建設業に時間外労働の上限規制が適用された「2024年問題」を挙げ、ICTによる省人化と生産性の向上が急務だとしています。

実証2026年1月、北海道縦貫自動車道の大沼トンネル(発注者は北海道開発局)では、Skydio X10とSkydio Dock for X10を坑口前に常設。衛星通信(au Starlink Station)で約4kmの通信エリアを設け、北海道の現場と東京の2拠点、計3拠点から坑内を遠隔で巡回しました。

撮影データからガウシアン・スプラッティング(3DGS)で切羽を3Dモデル化し、サーマルカメラで壁面の漏水を検知しています。同社は、この運用体制を全国の掘削現場へ本格展開する予定としています。

出典・参考資料

鹿島建設:測量の実用化から、施工・計測の自動化へ

鹿島建設は、ドローン測量の早い実用例を持つ会社です。技術ページでは、次の2つを定番の技術として紹介しています。

  • ドローン写真測量による土量管理:誤差を±6cmまで抑え、2haなら空撮からデータ処理まで1日。コストは光波測量の5分の1以下
  • ドローンによるレーザー測量:大分川ダムで20haを13分で計測し、測点の90%が±4.5cmの範囲に収まった(2016年に実用化を発表)

定常運用同じページでは、3次元CADをもとにしたBIM/CIMダムシステムを、施工するすべてのダムで標準的に採用しているとしています。

ここ数年の同社の発表では、空からの測量に加え、重機そのものの自動化が目立ちます。自動化施工システム「A4CSEL」を使った成瀬ダム(秋田県)について、国土交通白書2025は、ITパイロット3人が現場から約400km離れた神奈川県から最大14台の自動化建機を管制したと紹介しています。2023年5月には月28.1万m³の打設で国内最高を更新しました。

2025年9月には、現場の複数箇所にカメラとLiDARを常設し、現場全体の3Dモデルを継続的に更新する取り組みも発表しました。測量、施工、進捗把握をつなぐ動きです。

出典・参考資料

広い土工ではドローン、定点の計測には常設センサー、施工には自動化建機。鹿島の発表を追うと、作業に合わせて機材の役割を分けていることが分かります。

大成建設・竹中工務店・前田建設工業:現場ごとに異なる自動化の形

大成建設、竹中工務店、前田建設工業も、現場の条件に合わせて計測や施工の自動化を進めています。

会社取り組み区分
大成建設トンネル掘削の出来形を3D-LiDARで計測。所要時間は約2分(従来の3Dレーザースキャナー方式は約15分)実証試験運用
大成建設山岳トンネルのデータ基盤「DataPit」。展開図やBIM/CIMモデルの作成が月約3日から約5分に定常運用2026年6月から全国の山岳トンネル全現場に展開
大成建設ドローンと3Dスキャンを使った建物・施設のデジタル点検定常運用2025年11月に本格運用を開始
竹中工務店BIMを地図として使い、GNSSが届かない建物内でドローンやロボットを自律移動させる開発。2025年6月にセンシンロボティクスと資本業務提携実証
竹中工務店空間IDを使った四足歩行ロボットの現場巡回。職員の確認作業時間を約30%削減実証2027年の実用化が目標
前田建設工業能登半島地震の復旧工事で、約500km離れた拠点から衛星通信で重機を遠隔操作。生産性は有人の約0.5倍実証
前田建設工業盛土工事で振動ローラを自動運転。敷均し・転圧の作業人員を50%削減実工事に初適用(2026年6月)

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

出典・参考資料

建築現場の屋内など、屋根や床でGNSSが届きにくい場所では、別の方法で機体の位置を推定する必要があります。竹中工務店はBIMを地図として使う方法や、SLAM(自己位置推定と地図作成を同時に行う技術)の開発を進めています。

ドック常設は、準大手・中堅・地域の建設会社にも広がった

ドローンポートを常設し、遠隔から定期的に測る取り組みは、2025〜2026年に大手以外でも公表が相次ぎました。

  • 安藤ハザマ×WorldLink & Company(SkyLink Japan運営会社)(2025年4月):大規模造成の現場で、固定の充電ポートを持つ自動運用型ドローンとスマートフォン計測の点群を自動処理し、土量の変化と出来高を工程と連動したダッシュボードに表示。計測作業と現場確認の移動時間をいずれも約80%削減
  • 西松建設・五洋建設・KDDIスマートドローン(2025年11月):立坑にドックを常設し、遠隔・周期的に自動測量。平面誤差±20mmを確認し、2人で約2時間かかっていた計測を約15分・1人に
  • 日特建設・KDDIスマートドローン・KDDI(2025年9月):約65km離れた拠点から、ドックとStarlinkでのり面工事の現場を遠隔測量
  • 東急建設・KDDIスマートドローン・KDDI(2026年5月):能登の道路復旧工事で遠隔運航測量。画像の取り込みやクラウドへの手動アップロードを自動化し、処理作業を約50%削減
  • 旭建設×扶和ドローン(WLCグループ)(2026年5月):宮崎県日向市の道路改良工事でドックを使い、本社の「DXルーム」から自動飛行→3次元測量→点群化(約45分)までを自動化
  • 熊谷組(2026年3月):重機に載せたカメラの映像から、掘削中のトンネル切羽を3Dモデル化。撮影のために作業を止める必要が実質なくなった
出典・参考資料

ドックを使う事例では、LTEや衛星通信を介し、外部または本社から運航しています。機材の所有形態に加え、定期計測を誰がどこから運航するかを決めておく必要があります。

建設コンサルは「飛ばす」より「発注者の台帳へつなぐ」

建設コンサルタントの発表では、撮影したデータを発注者の台帳、GIS、点検記録につなぐ仕組みが中心です。

パシフィックコンサルタンツ:約10kmの飛行を県のGISへつなぐ

実証2024年12月、長野県の阿南町から天龍村にかけて、災害時の道路緊急点検を想定した実証を行いました。国土交通省の「民間提案型官民連携モデリング事業」で、長野県が出したニーズに同社の提案が組み合わされたものです。

  • 国産ドローンで片道約10kmを、レベル3.5(無人地帯での補助者なしの目視外飛行)で自律飛行
  • 飛行中の映像をリアルタイムに配信
  • 録画映像をAIで解析して異常を検出
  • 検出した異常の画像を、GIS技術で「長野県インフラデータプラットフォーム」へ出力

背景には、長野県の緊急輸送道路の多くが被災リスクの高い山岳地帯を通り、道路啓開に必要な情報を早く得にくいという課題があります。

出典・参考資料

建設技術研究所など:AI判読と3Dデータを河川・砂防管理へ

  • 建設技術研究所:自動飛行・遠隔監視・AIを組み合わせ、河川やダム、砂防の土砂流出箇所を自動で検出するシステムを開発(2025年10月)。渓流での実証で巡視時間を約2時間から30分程度に短縮し、サービス化を準備中。2025年12月からは、航空レーザー測深(ALB)で取った3D河道データを使う河川管理システム「X-EVA」を自治体向けに提供
  • オリエンタルコンサルタンツ:ドローンの写真と衛星画像をAIで分類し、河道の変化箇所を抽出する仕組みを、甲府・浜松・福知山などの河川国道事務所での試行を経て、2022年10月からクラウドサービスとして運用
  • アジア航測:国交省近畿地方整備局 紀伊山系砂防事務所向けに、ドローンの点群やCIMモデルを統合し、差分で変状を確認して点検台帳まで自動出力するデータ基盤の試行運用を2025年度から開始。レベル3.5で離陸場所から3km先の河川・砂防施設を撮影し、3Dモデルをつくる実証も行った
出典・参考資料

各社の発表で目立つのは、撮影データを発注者の台帳やGISにつなぐ工夫です。ドローンで集めた情報を、日々のインフラ管理で使える形にしています。国の河川巡視でもレベル3.5を取り入れる動きがあり、制度面は第2回で詳しく扱います。

測る手段は増え、ドローンは「センサーの一つ」になりつつある

現場の3Dデータは、上空からの写真やレーザー以外でも取れます。場所ごとに使われる計測手段を並べました。

計測手段向いている場面基準・事例
UAV写真測量広い造成・土工の起工測量、出来形2016年から要領化。鹿島建設の土量管理(±6cm)
UAVレーザー樹木の下の地表、広い範囲2017〜2018年に要領化。鹿島建設(20haを約13分)
地上レーザー(TLS)法面や構造物の詳細2026年度から、法面の植生工の厚さ計測にも使えるように
ハンディ型LiDAR SLAMGNSSが届かない屋内、狭い場所国土地理院のマニュアル(2022年6月、2026年3月改正)。出来形管理では基準化に向けて検証中
常設LiDAR・カメラトンネル、ピットなど定点の常時計測大成建設、鹿島建設
重機のセンサー・カメラ施工しながらの計測熊谷組の切羽3D化。ローラの施工履歴データは要領化済み
スマートフォン小規模な現場の面管理民間提案から要領化(2022年3月)

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国の基準も同じ方向に動いています。3次元計測による出来形管理の要領は、2025年度に計測技術ごとの構成から共通化・再編され、提出書類も簡素化されました。民間企業からの技術提案を検証して要領に取り込む国土技術政策総合研究所の制度では、2019年度からの累計で35技術が基準類に反映されています。

出典・参考資料

広い範囲を定期的に撮るならドローン、坑内や屋内の定点なら常設センサーやハンディ型LiDARが候補になります。機材を選ぶ前に、必要な更新頻度と精度を決めておくと、候補を絞りやすくなります。

なぜ大手はそこまで自動化するのか

自動化の背景には、測量や施工を担う人の減少があります。

現場で手を動かす人が、30年で約3割減った

指標数値
建設業の就業者数ピーク(1997年)685万人 → 2025年 478万人(30.4%減)
うち技能者455万人 → 296万人(技術者は41万人で横ばい)
年齢構成55歳以上が36.6%(全産業32.8%)、29歳以下が11.9%(全産業17.0%)
生産年齢人口2020年度 約7,509万人 → 2040年度 約6,213万人(約2割減)
時間外労働2024年4月から建設業にも上限規制を適用(原則 月45時間・年360時間)

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

出典・参考資料

技能者は1997年の455万人から2025年には296万人に減りました。限られた人数と労働時間で工事を続けるには、移動と測量にかかる手間を減らす必要があります。

測量の担い手も減っている

測量業の登録業者は、2025年度末で10,924業者。22年連続で減り、ピーク(2003年度末の14,750業者)から25.9%減りました。個人と資本金5,000万円未満の法人が9割を占めます。

国土地理院の測量行政懇談会では、測量技術者の高齢化と若い技術者の不足による将来の担い手不足、新しい技術に対応した測量教育のあり方が論点になっています。2024年の測量法改正で測量士・測量士補の資格のあり方を検討する規定が設けられ、2026年度には資格制度を継続的に検討する常設の委員会が設けられる予定です。

出典・参考資料

守るべきインフラは、急速に古くなる

施設2025年3月2030年3月2040年3月
道路橋(約73万橋)約42%約54%約75%
トンネル(約1万2千本)約28%約35%約52%
河川管理施設(約2万8千施設)約26%約41%約64%

※建設後50年以上たつ施設の割合。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

出典・参考資料

i-Construction 2.0は、全国の市区町村の4分の1に技術系職員が配置されていないとも指摘しています。老朽化が進む施設の点検や補修を、発注側も限られた人数で判断しなければなりません。

現場が自動化を求める理由

  • 日々の測量を人がやり切れない:掘削面が日々変わり、定期的な測量が必要だが、人手では負担が大きすぎる(大林組)
  • 危険な場所から人を離す:トンネルの切羽、崖、被災地での落石・転石のリスク(清水建設、前田建設工業、熊谷組など)
  • 労働時間の上限と担い手不足:2024年問題への対応、高齢化による熟練者の減少(清水建設など)
  • 国の方針:i-Construction 2.0の「2040年度までに省人化3割」への対応(各社)

担い手が減る × 守る対象が増える × 残業に上限があるだから「人が現場へ測りに行く回数」を減らす方向へ進んでいる

建設業の就業者数685万人 → 478万人1997年から2025年、約3割減
建設後50年以上の道路橋約42% → 約75%2025年3月から2040年3月の見通し
人手が減る一方で、維持管理するインフラは古くなる。数値は上の表と出典に基づきます。

遠隔測量を公共工事に広げる条件

遠隔測量は、一部の現場で継続運用されるようになりました。公共工事や公共測量に広げるには、導入範囲、成果の精度、発注方法を分けて確認する必要があります。

多くは「1つの現場」の話にとどまる

ドック常設や遠隔運航、レベル3.5での運用は、公表資料の上では多くが特定の現場での実証か継続運用です。全社標準や全現場展開を明言しているのは、鹿島建設のダムでのBIM/CIM、大成建設のトンネルのデータ基盤など一部に限られます。

ドックの選択肢と、運用継続のリスク

ドック測量では、機体・ドック・処理ソフトの組み合わせが作業の流れを左右します。定期飛行からRTKによる位置補正、画像転送、点群化、土量計算、報告まで通して動くかを確かめる必要があります。DJI Dock 3に対応するMatrice 4Dは、RTKを使った高精度マッピングに対応します。米国のSkydioも2026年7月に、Dock for X10からRTKを使ってマップ撮影を行う機能を公表しました。DJI以外の選択肢も出始めています。

国内の公共工事で使うなら、撮影後の処理と成果の精度を機種ごとに確かめる必要があります。今回確認した公表事例でも、機種名や精度が示されていないものがあります。導入時には、機体だけでなくドック、通信、クラウド、保守まで含めて代替可能か確かめておきたいところです。

機材を長く使うなら、調達条件の変化も考えておきたいところです。政府機関等の重要業務では、2020年の方針に基づき、調達時に情報漏えいや事後の機能制限などのリスクを考慮します。この方針は民間での中国製ドローンの利用を一律に禁じるものではありません。今後、製造国や供給元に関する条件が厳しくなれば、特定の中国製機体やクラウドに依存した運用は、更新や継続が難しくなる可能性があります。

国産や友好国製の機体・ドック・処理ソフトでも、必要な精度と保守体制を満たす選択肢が広がれば、調達先を一社に絞らずに済みます。規制や供給の条件が変わっても運用を続けられることが、普及には欠かせません。

出典・参考資料

精度の確認と、成果への責任

今回参照した発表には、点群の精度が書かれていないものもあります。公共工事の出来形管理や公共測量の成果として使うには、要領や作業規程の準則が定める精度を満たしていることを確認し、その方法を説明できなければなりません。自動で3Dができることと、それが成果として認められることは別の話です。

発注と費用の仕組み

国の直轄土木工事では、ICT施工の実施率が2025年度に93%に達しました。一方、2016〜2024年度に国の直轄工事を受注したC・Dランクの企業では、ICT施工の経験がある割合は58.4%です。3次元モデルづくりなどBIM/CIMにかかる費用は、いまも受注者の見積をもとに計上されており、建設コンサルタンツ協会は標準的な歩掛の設定を求めています。

出典・参考資料

遠隔運航を広げるための制度と体制

大林組が相模ダムで飛行範囲を広げられたのは、2023年12月に新設されたレベル3.5を使ったからです。それでも、第三者の上空を補助者なしで目視外飛行するにはレベル4の要件を満たす必要があります。複数の現場のドックを1つの拠点から回すには、多数機を同時に運航するための体制づくりも欠かせません。制度の詳細はレベル3.5飛行の解説、ドック運用の条件は自動飛行と現地無人運用の違いで整理しています。

出典・参考資料

大林組の週次測量のように、現場への移動を減らした例はすでにあります。公共工事・公共測量に広げるには、成果の精度、発注仕様、運航体制、機材を継続して調達できるかを確認しなければなりません。

導入を検討する現場では、測る対象、頻度、必要な精度、成果を確認する担当者を先に決めたいところです。その条件から、ドローン、ドック、地上センサーを選べます。

第2回(将来編)へ

では、国はどこまで制度を変えようとしているのか。

第2回では、i-Construction 2.0、ICT施工の原則化、BIM/CIM、国土地理院の作業規程の準則、レベル3.5・多数機運航・ドローン航路を取り上げます。国の施策と業界からの要望がどう重なっているかを見ながら、2027〜2030年の建設現場を考えます。

自社の現場で「測りに行く回数」をどこまで減らせるか、整理したい段階からご相談ください

ドローンポートを使った定期計測、写真測量とレーザー測量の使い分け、点群処理、遠隔運航の体制づくりについて、SkyLink Japanにご相談いただけます。

いまの機材と運用の見直しで済む部分と、機材や体制の追加が必要な部分を分けて整理するところから始めます。

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