「レベル3.5にすれば、補助者なしで飛ばせるの?」——導入を検討すると、まずここが気になるのではないでしょうか。レベル3.5飛行は、無人地帯での目視外飛行を効率化する運用方法です。ただし、「自動飛行できる機体なら、誰でも補助者なしで飛ばせる」制度ではありません。この記事では、必要な条件と手続きを整理しながら、自社の業務に向いているかを順番に見ていきます。
30秒でわかる結論
補助者・立看板・周知を、機上カメラ+技能証明+保険で置き換える仕組みです。
ただし、立入管理区画、飛行前の現場確認、緊急時の体制、経路を特定した許可・承認申請は残ります。河川・送電線・道路・森林・離島物流など、長距離・線状・反復の業務に向いています。
まず結論|押さえておきたい6つのポイント
お急ぎの方は、まずこの6点だけ押さえてください。細かな根拠や実務条件は、このあと順番に解説します。
- ✓レベル3.5は資格名でも、独立した法区分でもありません。 航空法・施行規則に「レベル3.5」という語はありません。国土交通省の審査要領(カテゴリーⅡ飛行) 5-4(3)c)カ)(ⅲ) の括弧書きで名付けられた、カテゴリーⅡ飛行の中の一運用形態です。
- ✓立入管理措置そのものが不要になるわけではありません。 撤廃されたのは「補助者の配置」「立看板の設置」「周知」といった手段であって、立入管理区画の設定義務は残ります。区画は「飛行範囲の外周から製造者等が保証した落下距離の範囲内」と定められています。
- ✓機上カメラは「目視の代替」ではなく「立入管理措置の代替」です。 解釈通達は「飛行状況を専らモニターを用いて見ること」は目視にあたらないとしています。したがってレベル3.5は依然として目視外飛行であり、目視外飛行としての手続きが必要です。
- ✓確認すべき範囲は「進行方向の飛行経路の直下及びその周辺」です。 「飛行経路全体」でも「立入管理区画全域」でもありません。カメラの画素数・解像度の数値基準はなく、地上設備・カメラ・通信装置の構成として確認できることを事前に確認するという性能規定型です。
- ✓飛行前の現場確認は残ります。 審査要領は「飛行前に、飛行させようとする経路及びその周辺について…現場確認すること」を求めています。補助者を外しても、現地に誰も行かなくてよいという意味ではありません。
- ✓包括申請の対象外です。 「補助者を配置しない目視外飛行」は飛行経路を特定する必要がある飛行に該当し、経路を特定しない包括申請では取得できません。
シリーズ記事:自動飛行と無人運用の全体像は記事1「ドローンの自動飛行と現地無人運用は何が違う?遠隔点検を実現する12条件」(近日公開)、投資回収は記事2、法人の役割分担は記事3で扱います。本記事はレベル3.5、目視外、補助者、立入管理、申請・運用要件に集中します。
本記事は法律相談の代替ではありません。 個別案件の適法性、特に飛行経路が要件を満たすかどうかの判断については、必ず国土交通省航空局にご確認ください。
そもそも「レベル3.5」とは?
名前は聞いたことがあっても、レベル3やレベル4との違いは少し分かりにくいものです。まずは制度上の立ち位置から見ていきましょう。
まず確認|制度上の位置づけ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法令上の根拠条文 | なし(航空法・施行規則に「レベル3.5」の語はない) |
| 制度上の区分 | カテゴリーⅡ飛行 (特定飛行のうち、 立入管理措置を講じたうえで行うもの) |
| 実体 | 審査要領 5-4(3)c)カ)(ⅲ) の要件を満たした 「補助者を配置しない目視外飛行」 の一形態 |
| 手続 | 飛行の許可・承認申請が必要(経路を特定して申請) |
| 新設 | 2023年12月。 本邦初の承認は令和5年12月8日に 国土交通省が発表 (株式会社NEXT DELIVERY、 中山間地域の配送サービス) |
国土交通省の説明資料は、レベル3.5を次のように説明しています。
デジタル技術の活用(機上のカメラによる歩行者等の有無の確認)により、補助者や看板の配置といった現在の立入管理措置を撤廃するとともに、無人航空機の操縦ライセンスの保有および保険への加入により道路や鉄道等の横断を伴う飛行を容易とするもの
そして同資料には、次の一文があります。
歩行者等の第三者の上空の飛行を認めるものではありません
ここがポイント|レベル3.5は選択肢のひとつ
ここが最も理解されていない部分です。審査要領 5-4(3)c)カ) は、立入管理区画を設定した場合の安全確保のための体制について、次のいずれかに適合することと定めています。
| 選択肢 | 内容 | 通称 |
|---|---|---|
| (ⅰ) | 立看板等の設置 +インターネットやポスター等による周知。 道路・鉄道・船舶航路・家屋等が含まれる場合は 追加の立入管理方法 |
従来型のレベル3 |
| (ⅱ) | 地上において、 第三者の立ち入りの有無を 常に検知できること |
地上センサー等による検知 |
| (ⅲ) | 第三者賠償責任保険に加入したうえで、 技能証明を保有する者が、 機体に取り付けられたカメラを活用することにより、 補助者や看板の配置などの立入管理措置をせずに、 移動中の車両・列車・船舶の上空を通過する場合を含む 道路・鉄道・船舶航路を一時的に横断する飛行を行う |
レベル3.5 |
つまりレベル3.5は、(ⅰ)の立看板・周知型の立入管理措置を、(ⅲ)の「機上カメラ+技能証明+保険」のセットで置き換える選択肢です。(オ)の立入管理区画の設定そのものは、どの選択肢でも共通して必要です。
図表で整理|「レベル」と「カテゴリー」の違い
まず押さえたいこと|2つは別の分類軸
ここは混同しやすいポイントです。「レベル」は運航形態を表す呼称、「カテゴリー」は航空法上のリスク区分です。似て見えますが、別のものとして整理すると理解しやすくなります。
レベルの定義
| レベル | 定義 | 操縦方法 の軸 |
監視方法 の軸 |
空域の軸 |
|---|---|---|---|---|
| レベル1 | 目視内での操縦飛行 | 手動操縦 | 目視内 | — |
| レベル2 | 目視内での自動・自律飛行 | 自動・自律 | 目視内 | — |
| レベル3 | 無人地帯での目視外飛行 | — | 目視外 | 無人地帯 |
| レベル3.5 | レベル3のうち、機上カメラで立入管理措置を代替するもの | — | 目視外 | 無人地帯 |
| レベル4 | 有人地帯(第三者上空)での補助者なし目視外飛行 | — | 目視外 | 有人地帯 |
カテゴリーの定義(教則第5版)
| カテゴリー | 定義(原文) |
|---|---|
| カテゴリーⅠ | 「特定飛行に該当しない飛行」 (航空法上、特段の手続きは不要) |
| カテゴリーⅡ | 「特定飛行のうち、 無人航空機の飛行経路下において 第三者の立入りを管理する措置を 講じたうえで行うもの」 |
| カテゴリーⅢ | 「特定飛行のうち 立入管理措置を講じないで行うもの、 すなわち第三者上空における特定飛行」 |
レベル1・2・3は何が違う?
この2つの違いは、別々の軸です。
- レベル1とレベル2の違い=操縦方法(手動か、自動・自律か)
- レベル2とレベル3の違い=監視方法(目視内か、目視外か)
したがって:
- 目視内で自動飛行させる → レベル2(目視外飛行の承認は不要)
- 目視外で手動操縦する → レベル3系(目視外飛行の承認が必要)
よくある誤解|「自動飛行」と「目視外飛行」は別
自動で飛ぶことと、目視外で飛ぶことは、まったく別の話です。ドローンポートを設置して自動巡回させても、それが目視内であればレベル2です。逆に、手で操縦していてもモニターだけを見ていれば目視外です。
ただし実務上は、審査要領が目視外飛行の機体要件として「自動操縦システムを装備」することを求めているため、レベル3・3.5では自動飛行機能が必要になります。これは「目視外飛行=自動飛行」という定義的な同一性ではなく、機体側の要件として自動操縦が要求されているという関係です。
「目視」とはどこまで?
解釈通達は次のように定めています。
「目視」とは、操縦者本人が自分の目で見ることをいうものとする。
飛行状況を専らモニターを用いて見ること又は双眼鏡やカメラ等を用いて見ることは、視野が限定されるため「目視」にはあたらない。
つまり、レベル3.5で使う機上カメラは、法的には「目視」ではありません。 モニターによる監視は目視に当たらないため、レベル3.5は依然として目視外飛行です。機上カメラは「目視の代替」ではなく「立入管理措置の代替」である——この区別を誤ると、記事の理解全体が崩れます。
ひと目で比較|レベル3・3.5・4
| 項目 | レベル3 | レベル3.5 | レベル4 |
|---|---|---|---|
| 空域 | 無人地帯 | 無人地帯(第三者が存在する可能性が低い場所) | 有人地帯(第三者上空) |
| カテゴリー | Ⅱ | Ⅱ | Ⅲ |
| 立入管理区画 の設定 |
必要 | 必要(撤廃されていない) | 不要(講じない) |
| 立入管理の手段 | 補助者の配置・立看板・周知等 | 機上カメラによる確認で代替 | — |
| 操縦者資格 | 技能証明は必須要件ではない | 技能証明(目視内飛行の限定解除済)が必須 | 一等無人航空機操縦士 |
| 機体認証 | — | 一次資料上、必須とする記述は確認できず | 第一種機体認証 |
| 保険 | 明示要件なし | 第三者賠償責任保険が必須 | — |
| 道路・鉄道 の横断 |
一時停止等の追加の立入管理が必要 | 立入管理措置なしで一時的横断が可能 | — |
| 第三者上空 の飛行 |
不可 | 不可 | 可 |
| 手続 | 許可・承認申請 | 許可・承認申請(経路特定) | 許可・承認+リスク評価に基づく飛行マニュアル審査 |
実務で確認|レベル3.5の10要件
ここからは少し実務的な内容です。全部を暗記する必要はありません。自社の経路・機体・体制で満たせるかを、一つずつチェックするつもりで読み進めてください。
以下はすべて審査要領(カテゴリーⅡ飛行)(制定 平成27年11月17日/最終改正 令和7年12月12日)の記述に基づきます。
要件1|飛行経路をどう設定する?
飛行経路には第三者が存在する可能性が低い場所※を設定すること。ただし、飛行経路を設定する上でやむを得ない場合には、幹線道路・鉄道や都市部以外の交通量が少ない道路・鉄道を横断する飛行(道路・鉄道の管理者が主体的又は協力して飛行させる場合は、この限りでない。)及び人又は家屋の密集している地域以外の家屋上空における離着陸時等の一時的な飛行に限り可能とする。
読み取るべき3点
- 横断できるのは原則「幹線道路・鉄道や都市部以外の、交通量が少ない道路・鉄道」
- しかも「飛行経路を設定する上でやむを得ない場合」に限る
- ただし道路・鉄道の管理者が主体的又は協力して飛行させる場合は、この限りでない
3番目は実務上きわめて重要です。管理者の協力が得られれば、交通量の条件による制約を受けません。 送電線や河川の巡視で道路を横断する必要がある場合、まず管理者との協議を検討すべき理由がここにあります。
なお教則第5版は、対象となる場所を「山、海水域、河川・湖沼、森林、農用地等の人口密度が低い地域といった第三者が存在する可能性が低い場所」と説明しています。「無人地帯」は「田舎・山間部」という意味ではなく、第三者が存在する可能性が低いと管理できる場所を指します。
要件2|立入管理区画をどう設計する?
飛行範囲の外周から製造者等が保証した落下距離(飛行の高度及び使用する機体に基づき、当該使用する機体が飛行する地点から当該機体が落下する地点までの距離として算定されるものをいう。)の範囲内を立入管理区画とし、ア)に示す飛行経路の設定基準を準用して設定すること。
ここが機体選定の実質的な分岐点です。 立入管理区画の幅は、メーカーが保証する落下距離で決まります。メーカーが落下距離を保証していない機体では、区画を設定できません。 機体を選ぶ段階で、落下距離の保証の有無を必ず確認してください。
要件3|機上カメラで何を確認する?
機体に取り付けられたカメラにより進行方向の飛行経路の直下及びその周辺への第三者の立ち入りが無いことを確認できる場合。なお、設置する地上設備(モニター等)、カメラ及び通信装置等の構成において、カメラからの映像を表示し、進行方向の飛行経路の直下及びその周辺に第三者の立ち入りが無いことを確認できることを事前に確認すること。また、各構成を変更する場合についても、同様の事前確認を行うこと。
押さえるべき3点
- 確認範囲の公式表現は「進行方向の飛行経路の直下及びその周辺」。飛行経路全体でも立入管理区画全域でもありません。
- 画素数・解像度・画角の数値基準はありません。 「地上設備(モニター等)、カメラ及び通信装置等の構成において…確認できることを事前に確認する」という性能規定型です。
- 構成を変更する場合も、同様の事前確認が必要です。カメラやモニターを別機種に替えたら、再度確認してください。
要件4|運航条件を事前に決める
同じ項が、次の体制も求めています。
使用する機体の性能、取り付けるカメラ装置や地上のモニター装置等の特性、横断する道路等の状況、周囲の地形や障害物件から想定されるリスクを十分に考慮の上、飛行を実施にあたっての地上及び飛行視程、視程障害、道路等の上空を通過して飛行する際の速度及び高度、通過を決心する際の位置及び高度、通信速度、場所及び飛行の方法に応じて生じるおそれがある飛行のリスクと対策等の運航条件等を事前に定め、設定した運航条件に基づき飛行させる。
事前に定めるべき6項目
| # | 項目 | 実務での決め方 |
|---|---|---|
| 1 | 地上視程および飛行視程 | 何m見えなければ飛ばさないかを数値で決める |
| 2 | 視程障害 | 霧、降雪、逆光など、中止すべき条件を列挙 |
| 3 | 道路等の上空を通過する際の速度及び高度 | 通過を短時間で終えるための設定値 |
| 4 | 通過を決心する際の 位置及び高度 |
★最も実務的な項目。 どこまで来た時点で 「渡る/渡らない」を判断するか |
| 5 | 通信速度 | 映像が遅延した場合の判断基準を含む |
| 6 | リスクと対策 | 場所・飛行方法に応じて想定される事象 |
4番目は、有人航空機の運航でいう decision point に相当する考え方です。「近づいてから考える」のではなく、あらかじめ決めておくことが求められています。この6項目を表にして社内標準手順に落とし込んでいる会社は多くありません。ここが差になります。
要件5|操縦者に必要な条件
- 無人航空機操縦者技能証明を保有する者であること
- 国土交通省の説明資料によれば、その技能証明は「飛行させる無人航空機の種類、重量に対応したもの」であって「目視内飛行の限定解除」を受けたものであること
- 一等・二等の別は、一次資料上、限定する記述を確認できませんでした
また、補助者を配置しない目視外飛行については、審査要領が「異常状態の把握に関し座学・実技による教育訓練を少なくとも10時間以上受けていること」を求めています。
要件6|加入しておく保険
- 第三者賠償責任保険に加入したうえで行うこと
- レベル3.5用の標準マニュアルは「第三者の負傷や交通障害等の不測の事態が発生した場合に十分な補償が可能な第三者賠償責任保険に加入していること」と記載
- 具体的な保険金額の下限は、一次資料上確認できませんでした。 「○億円以上必要」といった記述には根拠がありません
なお、これとは別に、総重量25kg以上の機体については令和7年10月1日以降の新規申請から第三者賠償責任保険の加入が必要とされています(飛行許可・承認手続)。レベル3.5の要件とは別枠なので混同しないでください。
要件7|使用する機体の条件
目視外飛行の機体基準として、自動操縦システムの装備とカメラによる機体外の監視、地上での位置と異常の有無の把握、不具合発生時の危機回避機能の正常作動が求められます。さらに補助者を配置しない場合の追加基準として、灯火または識別しやすい塗色、地上からの他の航空機・無人航空機の状況把握、針路・姿勢・高度・速度および気象状況の把握、計画経路との位置差の把握、十分な飛行実績などが挙げられています。
記事1で整理したとおり、電波断絶時の自動帰還または位置維持、GPS等異常時の位置保持・安全な自動着陸・GPS以外での位置取得のいずれか、電池の異常時の発煙発火防止と帰還・自動着陸、事故原因調査のための飛行諸元記録も機体要件です。
要件8|空域・有人機への対応
1号告示空域、その他空港等における進入表面等の上空の空域、航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域、緊急用務空域又は地表若しくは水面から150m以上の高さの空域における飛行を行う際には、一時的に150mを超える山間部の谷間における飛行など航空機との衝突のおそれができる限り低い空域や日時を選定し、飛行の特性(飛行高度、飛行頻度、飛行時間等)に応じた安全対策を行うこと。
緊急用務空域について:空港周辺、高度150m以上、DID上空等の飛行許可を得ていても、新たに設定される緊急用務空域を飛行させることはできません。 飛行には別途、国土交通大臣の飛行許可の取得が必要です。当日の指定状況の確認を、Go/No-Goチェックリストに必ず入れてください(記事3の飛行前チェックリスト参照)。
要件9|緊急時の手順を決める
全ての飛行経路において飛行中に不測の事態(機体の異常、飛行経路周辺への第三者の立ち入り、航空機の接近、運用限界を超える気象等)が発生した場合に、付近の適切な場所に安全に着陸させる等の緊急時の実施手順を定めるとともに、第三者及び物件に危害を与えずに着陸ができる場所を予め選定すること。
要件10|飛行前に現場を確認する
飛行前に、飛行させようとする経路及びその周辺について、不測の事態が発生した際に適切に安全上の措置を講じることができる状態であることを現場確認すること。
「補助者なし=現地に誰も行かなくてよい」ではありません。 撤廃されたのは飛行中の監視要員としての補助者であって、事前の現場確認ではありません。
なぜ補助者なしで飛ばせる?代替措置を解説
「補助者がいない=安全確認が減る」という意味ではありません。補助者が担っていた役割を、カメラ・経路設計・事前確認でどう置き換えるのかを見ていきます。
| 補助者が担っていた 機能 |
レベル3.5での 代替 |
残る人の判断 |
|---|---|---|
| 飛行経路下の第三者の監視 | 機上カメラによる確認 「進行方向の飛行経路の直下 及びその周辺」 |
映像を見て通過可否を判断するのは人 |
| 立入抑止(看板・声かけ) | 立入管理区画 の設定+経路選定 |
区画の設計 |
| 気象の監視 | 地上の気象情報+機体・ポートのセンサー | 中止判断 |
| 有人機の監視 | 地上での航空機の状況把握の体制 | 回避の判断 |
| 緊急着陸地点への誘導 | 緊急着陸地点の事前選定 | 着陸判断 |
| 現地の異常の発見 | 飛行前の現場確認 | 実施可否の判断 |
代替されているのは「人の目」であって「人の判断」ではありません。 標準マニュアルも、飛行場所に第三者の立ち入り等が生じた場合には速やかに飛行を中止する等、的確に対応することを求めています。
多数機同時運航と組み合わせる場合
多数機同時運航ガイドライン第二版(令和8年6月)は、適用範囲を「レベル3または3.5飛行により各機体独立形態で行う多数機同時運航(操縦者1人:機体5機を超える運航を含む)」としています。そして重要な指摘があります。
多数機同時運航ではその機体数分の機体に取り付けられたカメラによる確認及び対応が必要となることから、操縦者に対する機体数には自ずと上限があると考えられます
また「機上カメラからの映像により監視を行う場合、画像の伝送が維持される通信環境を確保すること」も求められています。
つまり、「ドローンポートを置けば1人で何十機でも回せる」という話にはなりません。 レベル3.5では1機ごとに機上カメラ映像を人が確認する必要があるため、1人あたりの機体数には構造的な上限があります。
申請前に確認|DIPS2.0での手続き
条件が整理できたら、次は申請です。レベル3.5飛行では、事前準備から許可・承認申請、飛行後の記録までDIPS2.0を利用します。ここでは手続きの全体像だけを押さえ、画面操作や入力手順は専門記事にまとめています。
詳しい画面操作・入力手順はこちら
ドローンの機体登録から飛行申請まで完全ガイド|DIPS2.0の使い方【2026年最新版】
アカウント準備、機体登録、許可・承認申請、飛行計画の通報、飛行日誌まで、実際の作業順に確認できます。
自社に合う?用途別の向き・不向き
| 用途 | 適合性 | 期待効果 | 主な障壁 | 準備すべき データ |
|---|---|---|---|---|
| 河川巡視 | 高(公的なロードマップあり) | 車両巡視2名・約5.5時間 → 約40km/日・約3.5時間 (国交省の想定) |
長距離連続飛行の機体性能、通信、橋梁・樹木による死角 | 区間長、堤防天端の状況、橋梁位置、通信実測、離着陸地点 |
| 送電線・鉄塔巡視 | 高 | 徒歩巡視・高所作業の削減、線状経路との相性が良い | 電磁環境、GNSS、山間部の通信、道路横断 | 径間長、鉄塔位置、通信実測、周辺の道路・家屋 |
| 道路・砂防・森林の広域巡視 | 中〜高 | 広域を短時間で把握 | 交通量の多い道路の横断 地形による通信断 緊急着陸地点の確保 |
経路周辺の道路種別・交通量、地形、着陸可能地点 |
| 離島・山間部物流 | 中〜高 | 移動時間の大幅短縮。レベル3.5の本邦初承認事例も配送 | 集落上空の回避、着陸地点の管理、往復の運用設計 | 発着地点、経路上の集落・道路、風況 |
| 災害状況把握 | 中(条件付き) | 早期の状況把握 | 緊急用務空域の指定、他機との輻輳、経路の事前特定が困難 | 想定経路の事前登録、空域確認手順 |
| 工場・プラント外周巡回 | 低〜中 | 距離が短く、レベル3.5の利点が出にくい | 敷地内なら立入管理がしやすく、 レベル3や目視内で足りる場合が多い |
敷地境界、第三者の立入状況 |
すべての用途が「向く」わけではありません。 特に工場・プラントの外周巡回のように、敷地内で立入管理が容易な現場では、レベル3.5にする必然性が薄いことがあります。「補助者を外すこと」が目的化していないか、確認してください。
実際どれくらい効率化できる?河川巡視の公的データ
国土交通省の「ドローンを活用した河川巡視・点検への適用検討会」の資料は、レベル3.5に関して現在唯一の公的な定量データです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| STEP1(令和8年度) | レベル3.5飛行による河川巡視・点検を 全国で100km (9地整×1河川以上×10km以上) |
| STEP3(令和16年度) | 全国直轄管理区間すべてで レベル4飛行による 河川巡視・点検を実装 |
| 試験区分 | 実証試験=飛行レベル2・3(9水系) /実用化試験=飛行レベル3.5(2水系) |
| 業務効率 | 現状:車両巡視(パト車)を 2名体制で約5.5時間 → レベル3.5により 約40km/日の区間を約3.5時間 |
| 機体要件 | 約40km以上の連続飛行が可能 (カメラ搭載で40分以上) 垂直離着陸 25kg未満推奨 通信モジュール搭載対応必須 |
この資料では、立入管理の具体的方法や補助者の有無は明記されていません。 「河川巡視は補助者なしで実施されている」と一般化しないでください。
何が変わる?削減できるもの・残るもの
| 削減できる可能性が あるもの |
残る、または増える 可能性があるもの |
|---|---|
| 経路上への補助者の配置 | 飛行計画・リスク評価(むしろ精緻化が必要) |
| 補助者の移動・連絡・待機 | 立入管理区画の設計(落下距離ベース) |
| 一部の現地派遣 | 機上カメラ・モニター・通信の 構成の事前確認 (構成変更時も再確認) |
| 長距離巡視の所要時間 | 運航条件6項目の事前設定 (視程・視程障害・速度/高度 通過を決心する位置/高度 通信速度・リスクと対策) |
| 看板設置・周知の作業 | 飛行前の経路及びその周辺の現場確認 |
| — | 有人機・地上関係者との調整(道路・鉄道管理者との協議) |
| — | 遠隔監視と緊急対応(人の判断は残る) |
| — | 記録、飛行日誌、保守 |
| — | 初期のPoCと運用設計 |
| — | 経路ごとの個別申請(包括申請不可) |
「工数が減る」のではなく「工数の性質が変わる」と理解してください。 現場の人数は減りますが、事前設計と管理の工数は増えます。年間の飛行回数が少ないと、増えた分を回収できません(費用の考え方は記事2を参照)。
迷ったらここ|レベル3.5の適用判定フロー
ここまで読んで「自社の業務は対象になる?」と迷ったら、下の図を上からたどってみてください。1つでもNoがあれば、その項目を整えてから再判定するのが安全です。

終点の意味
| 記号 | 判定 | 次のアクション |
|---|---|---|
| A | レベル3.5の検討候補 | PoC設計 → 経路特定 → 申請準備 |
| B | レベル3または別運用が現実的 | 補助者配置での運用を設計。 将来の3.5移行を見据えて記録を残す |
| C | 条件を整えれば候補になる | 機体・通信・体制の課題を解消してから再判定 |
| D | レベル4・カテゴリーⅢ等の別検討 | 一等技能証明+第一種機体認証+リスク評価が必要 |
| E | 飛行以外の手法も比較 | 固定カメラ・有人点検・外部委託と比較 (記事2の比較表を使用) |
導入前に実施|PoCで確認する10項目
PoCでは、単に「飛べた」で終わらせないことが大切です。通信・安全性・データ品質・工数削減まで、次の10項目を実測しましょう。
| # | 項目 | 測定方法 | 判定の 置き方 |
|---|---|---|---|
| 1 | 経路全体の通信品質 | 経路上の複数地点で上り下りの実効速度と遅延を実測 | 映像伝送が維持される下限を決める |
| 2 | 機上カメラの 視認範囲と遅延 |
既知の対象物を経路直下に配置し、いつ・どの大きさで見えるかを記録 | 「進行方向の飛行経路の直下及びその周辺」を確認できるか |
| 3 | 第三者侵入の検知と 中止判断 |
侵入を模擬し、検知から中止までの時間を計測 | 通過を決心する位置・高度の妥当性 |
| 4 | 緊急着陸地点 | 経路全体で候補地点を選定し、実際に到達できるかを確認 | 経路上に空白区間がないか |
| 5 | 通信断・GNSS異常時の動作 | 主回線を意図的に切断し、機体の挙動を記録 | メーカー公式資料の記載と一致するか |
| 6 | 有人機接近時の 情報取得と対応 |
地上での航空機の状況把握手段を運用して確認 | 回避の判断が成立するか |
| 7 | 操縦者のワークロード | 1便あたりの操作・監視・判断の負荷を記録 | 多数機運航を検討する場合は特に重要 |
| 8 | 撮影データの品質 | 検出したい対象の判読率 | 用途ごとに基準を設定 |
| 9 | 補助者配置を外した場合の実工数削減 | 従来手順との工程比較 | 「減った」ではなく「なくなった工程名」で列挙 |
| 10 | 繰り返し運航の再現性 | 同一経路を複数回・複数日に実施 | 季節をまたいで検証 |
▶ 通信・機体・運用体制を現地で検証する
レベル3.5のPoCで最も落ちやすいのは、経路全体の通信品質と、機上カメラで「進行方向の飛行経路の直下及びその周辺」を実際に確認できるかどうかです。SkyLink Japanでは産業用ドローン、ドローンポート、インフラ・設備点検ソリューション、保守サポートを提供しています。対象ルートでの検証内容の設計からご相談ください。→ お問い合わせ
実務ステップ|導入までの12手順
最後に、検討開始から申請・運用までを12の手順に並べました。社内のチェックリストとしても使えます。
- 経路の候補を選ぶ — 線状で、反復し、第三者が存在する可能性が低い場所を管理できる経路
- 機体を選ぶ — 製造者等が落下距離を保証しているか、必要な飛行時間・耐風性能・通信手段を満たすか
- 立入管理区画を設計する — 落下距離に基づき、経路の外周に区画を設定
- 道路・鉄道の横断を洗い出す — 交通量を確認し、必要なら管理者と協議
- 運航条件6項目を決める — 視程、視程障害、通過時の速度・高度、通過を決心する位置・高度、通信速度、リスクと対策
- 機上カメラ・モニター・通信の構成を確認する — 「進行方向の飛行経路の直下及びその周辺」を確認できることを事前に確認
- 緊急時の実施手順と緊急着陸地点を定める
- 操縦者を準備する — 目視内飛行の限定解除済の技能証明、座学・実技の教育訓練
- 保険に加入する — 第三者賠償責任保険
- PoCを実施する — 上記10項目を測定
- 申請する — 経路を特定し、レベル3.5飛行用の申請様式と航空局標準マニュアルで申請(10開庁日以上前)
- 運用体制を整える — 役割分担、承認、記録、事故対応(記事3を参照)
まとめ|レベル3.5は「手段を置き換える」仕組み
最後に、ポイントをもう一度整理します。
レベル3.5は「誰でも補助者なしで飛ばせる制度」ではありません。
カテゴリーⅡ飛行の中で、立看板・周知型の立入管理措置を、
機上カメラ+技能証明+保険のセットで置き換える選択肢です。
そして、置き換えられるのは手段であって、立入管理区画の設定、
飛行経路を第三者が存在する可能性が低い場所に設定すること、
飛行前の経路及びその周辺の現場確認、緊急時の実施手順と緊急着陸地点の事前選定、
航空機の確認体制、そして経路を特定した許可・承認申請は、いずれも残ります。
適するのは、河川、送電線、道路、森林、離島物流といった
長距離・線状・反復の業務です。
工場の外周巡回のように敷地内で立入管理が容易な現場では、
レベル3.5にする必然性が薄いこともあります。
最後に、機体選定で最初に確認すべきことを挙げるなら、
製造者等が落下距離を保証しているかです。
これがなければ立入管理区画を設定できず、
そもそもスタートラインに立てません。
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対象ルートの条件(経路の管理可能性、落下距離、道路・鉄道の横断、通信、緊急着陸地点)を整理すれば、レベル3.5の検討対象かどうかは早い段階で判断できます。SkyLink Japanは産業用ドローンの販売、インフラ・設備点検ソリューション、ドローンポート、保守サポートを提供しています。→ お問い合わせ
※ 許可・承認の取得を保証するものではありません。行政の判断を代行するものでもありません。最終的な適法性の判断は国土交通省航空局にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. レベル3.5は新しい国家資格ですか。
いいえ。レベル3.5は資格名でも、独立した法区分でもありません。航空法・施行規則に「レベル3.5」という語はなく、国土交通省の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)5-4(3)c)カ)(ⅲ) の括弧書きで名付けられた、カテゴリーⅡ飛行の中の一運用形態です。必要なのは、技能証明(目視内飛行の限定解除を受けたもの)の保有、第三者賠償責任保険への加入、機上カメラによる確認体制、そして飛行の許可・承認です。
Q2. レベル3.5にすれば立入管理措置は不要になりますか。
なりません。撤廃されたのは「補助者の配置」「立看板の設置」「周知」といった措置の手段であって、立入管理区画の設定義務は残ります。区画は「飛行範囲の外周から製造者等が保証した落下距離の範囲内」と定められており、飛行経路の設定基準を準用して設定します。国土交通省も「立入管理措置そのものが不要となるわけではありません」と明記しています。
Q3. 機上カメラはどこまで見えればよいですか。画素数の基準はありますか。
確認すべき範囲の公式表現は「進行方向の飛行経路の直下及びその周辺」です。飛行経路全体でも立入管理区画全域でもありません。また、審査要領には画素数・解像度・画角の数値基準はありません。「設置する地上設備(モニター等)、カメラ及び通信装置等の構成において…確認できることを事前に確認すること」という性能規定型です。構成を変更する場合も、同様の事前確認が必要です。
Q4. 一等の技能証明が必要ですか。
一次資料上、一等に限定する記述は確認できませんでした。審査要領は「無人航空機操縦者技能証明」としか規定していません。必要とされているのは、飛行させる無人航空機の種類・重量に対応し、目視内飛行の限定解除を受けた技能証明です。ただし、一等が必要なのは有人地帯(第三者上空)での補助者なし目視外飛行、すなわちレベル4です。個別の案件については国土交通省航空局にご確認ください。
Q5. レベル3.5は包括申請で取得できますか。
できません。「補助者を配置しない目視外飛行」は、飛行経路を特定する必要がある飛行に該当します。国土交通省の資料も「経路を特定したうえで行う飛行である」と明記しています。申請は飛行開始予定日の少なくとも10開庁日以上前(土日・祝日を除く)に提出することが求められており、不備を見込むと3〜4週間の余裕が現実的です。また、申請時に提出不要な書類(リスク評価書、機体の基準適合状況書、立入管理区画を示した地図等)も事業者側で具備しておく必要があります。
Q6. 道路や鉄道は自由に横断できますか。
いいえ。審査要領は、横断できる対象を原則「幹線道路・鉄道や都市部以外の交通量が少ない道路・鉄道」とし、しかも「飛行経路を設定する上でやむを得ない場合」に限っています。ただし「道路・鉄道の管理者が主体的又は協力して飛行させる場合は、この限りでない」とされているため、管理者の協力が得られる場合は交通量の条件による制約を受けません。また横断は「一時的」なものに限られます。
Q7. 補助者がいなければ、現地には誰も行かなくてよいのですか。
いいえ。審査要領は「飛行前に、飛行させようとする経路及びその周辺について、不測の事態が発生した際に適切に安全上の措置を講じることができる状態であることを現場確認すること」を求めています。撤廃されたのは飛行中の監視要員としての補助者であって、事前の現場確認ではありません。また、機上カメラの映像を見て通過の可否を判断するのは人であり、第三者の立入が生じた場合には速やかに飛行を中止する判断も人が行います。
Q8. ドローンポートを設置すれば、1人で複数機をレベル3.5で運用できますか。
機数には構造的な上限があります。多数機同時運航ガイドライン第二版は、適用範囲を「レベル3または3.5飛行により各機体独立形態で行う多数機同時運航」としたうえで、「多数機同時運航ではその機体数分の機体に取り付けられたカメラによる確認及び対応が必要となることから、操縦者に対する機体数には自ずと上限があると考えられます」と記載しています。また「画像の伝送が維持される通信環境を確保すること」も求められています。まずは1機での運用を確立し、段階的に増やしてください。
*本記事の制度に関する記述は2026年8月13日時点で公開されている国土交通省の一次資料に基づいています。制度は変更される場合があります。また本記事は法律相談の代替ではなく、許可・承認の取得を保証するものではありません。個別案件については必ず国土交通省航空局にご確認ください。*
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