なぜ「非中国製ドローン」が求められるのか? 「非中国製ドローン」を黄色で強調した題名と、作業台に置いた縦長の本体と吊り下げ式カメラを備えたドローンの写真風イメージ。

なぜ「非中国製ドローン」が求められるのか?|米国・欧州・日本の動向と機体選定【2026年版】

中国製ドローンを避ける動きを理解する鍵は、米中対立です。

ドローンは、測量・点検の道具であると同時に、軍事にも転用できる軍民両用の技術です。国家間の関係悪化が、データ管理や部品供給への不信を強め、調達規制と自国産業の育成につながっています。

日中関係の緊張も重なるいま、機体選びには性能・価格に加え、どの市場で、どんな政治・安全保障上の条件の下で使うかという視点が欠かせません。このブログでは、その背景から日米欧の違いと機体選定を考えます。

仕様・制度の整理は2026年10月6日時点。国際関係・市場分断、DJIの調達制限に関する出典は同年10月8日に確認。事実とSkyLink Japanの見立てを区別して記載しています。

目次を開く(12項目)

中国製ドローンが敬遠される背景は、米中対立

米中関係の悪化と戦略的競争が、ドローンを「どの国の技術・供給網を信頼するか」という問題に変えています。私たちは、非中国製を求める動きの大きな背景をここに見ています。技術上の懸念、供給途絶への備え、自国産業の育成が重なった政策です。

民間の道具が、そのまま安全保障の問題になる

飛行制御、画像・位置情報、自律航行は、点検や災害対応だけでなく、軍の偵察・監視にも利用できる技術です。米国は2025年6月の大統領令で、民間利用の拡大、米国製機の優先調達、供給網の保護、軍への配備を一つの政策にまとめました。2026年8月の関税措置でも、ドローンの軍事的重要性と外国製部品への依存を理由に挙げています。

調達側が問うのは性能だけではありません。対立する相手国に、機微なデータや重要部品の供給を依存したままでよいか。この問いが、民間の商材にも向けられています。

日中関係の緊張も、供給条件に表れている

外務省の外交青書2026は、2025年11月以降、中国が日本への批判や威圧的措置を強めたと説明しています。中国商務部は2026年1月6日、日本の軍事利用者・軍事用途などへの軍民両用品の輸出を禁止し、その背景として日本側の台湾に関する発言を挙げました。外交上の対立が、製品や部品を取引できる条件にまで及んでいます。

市場は、政治・安全保障上の距離で分かれつつある

民主主義国を中心とする米国側と、共産党が統治する中国を中心とする側。こうした政治体制や安全保障上の立場の違いが、技術・供給網の選択にも表れています。ただし、実際の境界は同盟関係、制裁、調達制度で変わり、政治体制だけで世界を二分できるわけではありません。

IMFも、米国寄り・中国寄りの国々の間で貿易が弱まる一方、両者をつなぐ非同盟国の役割を指摘しています。これは貿易全体の分析です。その上で私たちは、安全保障を重視するドローン市場でも、政治的な分断が選べる機体や部品の供給条件に表れていると見ています。

機体選びの前提

ドローンは、米中・日中の政治対立に巻き込まれた軍民両用の商材です。「性能が良いから、どこでも売れる・使える」とは限らないことが、非中国製を求める動きの核心にあります。

出典・参考資料

米国・欧州・日本では、制限する対象が違う

この政治・安全保障上の対立が、各国で同じ禁止規則になるわけではありません。米国・欧州・日本が、何を対象に、どんな条件を設けているかを見ていきましょう。

表1:日米欧の主な違い(2026年10月時点)

地域主な政策機体選定への影響
米国政府調達の制限、FCCの機器認証、関税国防・連邦機関・連邦資金と、民間の購入・使用を分けて判断する。新機種は中国製以外も対象になりうる
欧州域内生産への支援と供給網の評価EU全体で中国製を一律禁止してはいない。国ごとの調達条件も確認する
日本政府の調達方針、補助・起債の要件、国内生産支援製造国だけで決めず、案件の仕様書とデータ管理・供給網の説明が基準になる

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

米国:政府調達と民間利用に、異なるルールが重なる

米国では、対象も判断基準も違う制度が重なっています。国防総省のドローン調達・運用にはNDAA第848条、連邦機関や連邦資金を使う調達・運用にはAmerican Security Drone Act(ASDA)が関わります。州・自治体にも独自の制限があります。

ASDAによる運用と連邦資金での利用の禁止は2025年12月22日に発効しました。山火事対応や捜索救助などには例外があり、対象外国企業かどうかを判断する制度です。国防総省の部品要件とは分けて読む必要があります。

民間では、手持ちのDJI機の使用は継続できます。一方、FCCは2025年12月22日に外国製ドローンと重要部品を規制対象リストへ追加しました。日本製・欧州製の新機種も、適用除外に当たらなければ認証を受けられません。

適用除外にはBlue UAS掲載品、米国産品、国防総省・国土安全保障省の判断による条件付き承認があります。認証済みの既存機と、これから認証を受ける新機種を混同しないことが大切です。

確定した措置と、提案中の措置を分ける

2026年7月の、サーマル・LiDAR搭載機やドックなどの輸入・販売を止めるFCC案は、10月6日時点で最終決定を確認できていません。10月13日施行予定の新規則も、掲載企業の部品が一つ入ればあらゆる機器を禁止するものではなく、対象機器・論理部品の条件や、既存の認証等に関する区別があります。

9月3日にはドローンと部品への関税も発動しました。日本・EUなどの製品には、重要部品や技術の由来を輸入者が証明することで税率の上限を15%とする仕組みがあります。米国市場では、組立国だけでなく部品と技術の出所まで問われています。

欧州:域内でつくる力と、供給網の信頼性を高める

2026年10月時点で、中国製ドローンの民間での販売・使用を禁じるEU全体の規則はありません。DJI機も欧州のクラス認証を取得しています。ただし、クラス表示や飛行区分等のルールは適用されます。

欧州の中心は、域内生産への資金誘導と供給網の評価です。防衛調達融資のSAFEは最大1,500億ユーロ。EDIPでは、支援対象の防衛製品について、部品コストの65%以上がEU・関連国由来であることを求めています。

2026年2月のドローン・対ドローンセキュリティ行動計画は、ICTサプライチェーンのリスク評価、EU Trusted Drone Label、信頼できるチップの搭載を掲げています。国名を挙げた一律排除ではなく、出所と安全性を説明できる製品を育てる方向です。ラベルは2026年第4四半期の予定、サイバーレジリエンス法の本格適用は2027年12月です。

国ごとの違いもあります。フランス・ドイツでは国内・欧州製を優先する動きが見られ、リトアニアは中国・ロシア・ベラルーシ製技術の公共調達を制限しています(防衛分野には例外あり)。英国の2022年の監視カメラ方針は、ドローンを対象にしたものではありません。

私たちは、ロシアの脅威への対応と防衛産業の育成が、欧州メーカーの需要を押し上げていると見ています。DECODERはEUのドローン政策、何が変わる?|DECODERと日本への影響で解説しています。

日本:一般利用と、政府調達・補助要件を分けて考える

2026年10月時点で、日本には中国製という理由で販売・購入・使用を一律に禁じる法律はありません。国内で使う無線構成の技適など、電波法・航空法等の要件を満たして運用します。そのうえで、政府調達や補助・起債、個別の仕様書が条件を加えます。

出発点は、2020年9月14日の関係省庁申合せです。国の行政機関・独立行政法人・指定法人が、防衛・警備、重要施設の点検、救難・救命などの重要業務に使う機体を調達する際、内閣官房との事前協議等を求めています。国名による指定はありません。

運用面でも、情報の機微性に応じてネット接続を最小化し、クラウド保存を止め、飛行後にデータを消去する対策を示しています。政府が保有する機体に加え、業務委託先が使う機体も関わるため、民間企業も発注者の条件を確認する必要があります。

自治体の消防・防災では、2026年3月31日の消防庁通知が実務に直結します。緊急防災・減災事業債の対象期間を令和12年度まで延長し、申合せの調達手続を考慮した調達を対象要件として示しました。消防団向けの補助要件も定めています。

「中国製は対象外」という通知ではありません

通知は法令に基づく助言として発出されています。一方、起債・補助の対象となるには、調達手続を含む要件について整備・運用計画等の確認を受ける必要があります。仕様書の記載例には、データの送信先・保存先、更新管理、供給の安定性、本社所在地の法的環境が挙げられています。

「国内でつくる」側の政策も進んでいます。無人航空機は2025年12月に特定重要物資へ指定され、2025年度補正予算で139億円を計上。経済産業省は2030年に約8万台の国内量産基盤を目標とし、2026年9月にはプロドローンの供給確保計画が初めて認定されました。これは国内生産への支援であり、中国製の購入禁止とは別の制度です。

出典・参考資料

高性能でも、調達条件を満たすとは限らない

DJIの競争力は、機体単体ではなく、カメラ、RTK、LiDAR、サーマル、ドック、運航管理・解析ソフトまでそろう体系にあります。量産による価格競争力も強く、私たちは多くの用途で有力な選択肢だと考えています。

仕様比較では、Matrice 4Tの熱画像センサーの640×512と、超解像モードの1280×1024出力を区別するなど、機種ごとの条件を正確に読む必要があります。

経済産業省の資料では、2023年の世界市場でDJIのシェアは72.7%、2025年4月時点の国内市場では中国製が91%、日本製が3%とされています。こうした普及の大きさと、特定の政府調達に使えるかは、別の問題です。

この政治・安全保障上の背景が、データの管理者、部品・ソフトウェアの出所、供給の継続性という実務上の確認につながります。私たちは、性能・価格に次の視点を加えて選ぶことが大切だと考えています。

図1 SkyLink Japanが機体選定で重視する8つの評価軸 性能と価格を出発点に、セキュリティ、データ管理、サプライチェーン、自律性、長期供給、国内サポートを加えた8つの評価軸を示す、SkyLink Japanの機体選定の考え方。各軸の重みは用途や調達要件によって異なる。 図1 機体選定で重視する8つの評価軸 選定の出発点 まず性能と価格を見る 性能 価格 視点を広げる 用途と調達要件に合わせて評価 用途によって、どの軸を重く見るかが変わる 性能 価格 セキュリティ データ管理 サプライチェーン 自律性 長期供給 国内サポート ※SkyLink Japan作成。どの軸を重く見るかは、使う組織・場所・目的によって変わります。

図1:SkyLink Japanが機体選定で重視する8つの評価軸。スマートフォンでは図を横にスクロールできます。

出典・参考資料

データ対策だけでは、政府調達の壁を越えられない

産業用ドローンが取得するのは、高解像度画像、赤外線画像、LiDAR点群、位置情報、飛行経路、離着陸地点。点検や測量では、施設の配置、設備の劣化状況、警備上の死角まで記録されます。

日本政府が2020年に定めた調達方針も、ドローンを「情報通信機器としての性格」を持つものと位置づけ、飛行・撮影情報の外部への漏洩と機体の乗っ取りを懸念点に挙げています。データの観点から確認したいのは、次の5点です。

  1. 誰がアクセスできるか:メーカー、クラウド事業者、委託先、運航管理システムの運営者
  2. どこに保存されるか:機体、送信機、操作端末、クラウド。サーバーの所在国
  3. クラウドへ送られるか:自動で同期されるのか、利用者が操作したときだけか
  4. 外部と通信するか:地図、ログ、アップデートの通信を含めて
  5. 更新を誰が管理するか:強制更新の有無、署名による検証

メーカー側も対策を打っています。DJIは2017年にアプリのインターネット通信を止める「ローカルデータモード」の開発を発表し、Matrice 400では「操作者が許可しない限り、飛行ログや画像・動画をDJIのサーバーと同期しない」と説明しています。

日本の調達方針は、メーカーを問わず運用でできる対策も、情報の機微性に応じて求めています。ネット接続は更新などに必要な最小限とし、飛行中は接続しない。クラウド保存を止め、飛行後にデータを消去する。対象は政府機関の機体だけでなく、業務を委託した民間企業が使う機体にも及びます。

対策を示しても選ばれない。現場が感じる矛盾

ただし、こうした対策を講じれば政府調達に使える、とは限りません。米国では、2025年3月13日のGSA(米国一般調達局)監察総監室の報告が、国境施設の工事で請負企業が使ったDJI機の使用停止を勧告しました。対象外国企業製ドローンの調達等を制限する連邦調達規則(FAR)もあり、米国の政府調達には「暗にNG」という段階を超えた明示的な制限があります。例外・免除の規定はありますが、オフライン運用だけで制限が解除されるわけではありません。

日本の申合せはDJIを名指しせず、業務とリスクに応じた評価を求めています。それでも、個別の調達で「DJIは採用できない」と判断するのであれば、通信を止める対策では不足する理由や、メーカーが置かれた国の法的環境・供給網に関する条件を説明する必要があります。

SkyLink Japanの見解

私たちは、対策を評価するという説明と、対策を示しても採用につながらず、その理由も見えない判断との間に、現場から見ると矛盾があると感じます。何を改善すれば採用の余地があるのか、それとも製造国や企業を理由に、改善しても対象外なのか。調達側には、その違いを明らかにしてほしいと考えています。

データの安全性と、調達制度上の採用可否は分けて確認します。仕様書で問われる項目は官公庁・重要インフラ向けドローンの情報セキュリティ要件【2026年版】で整理しています。

技術調査・政府の懸念・メーカーの説明を分けて読む

中国製ドローンのリスクを考えるときは、確認された脆弱性と、政策上の懸念を同じものとして扱わないことが大切です。

  • 技術調査:2020年のDJI GO 4(Android版)の分析や、2023年のルール大学ボーフム・CISPAの研究は、更新機能、端末情報の収集、機体の脆弱性等を指摘しました。一方、政府向けGovernment Editionを対象とした2020年のBooz Allen Hamiltonの評価では、DJIや中国のサーバーへの接続を確認しなかったとされています。対象機種・ソフトウェア・調査条件は異なります。
  • 政府の懸念:CISA・FBIは2024年1月、中国の国家情報法などを背景に、重要インフラの機微情報が中国当局に渡るリスクを注意喚起しました。これは、特定機体で情報送信が実証されたという説明とは区別されます。
  • メーカーの説明:DJIは米国の措置に反論し、2026年には同社が費用を負担したOnDefendの評価結果を公表しました。隠れたバックドアの明確な証拠はないとする一方、特定時点の評価で、機密情報を扱えないという限界も記載されています。

このブログで挙げた技術調査は、DJI機が中国政府へデータを送信していたことを立証したものではありません。ただし、脆弱性への対応や、製造元が置かれた国の法的環境は別途評価が必要です。通信を止めるなどの技術対策を取っても、調達制度上の制限を解消できるとは限りません。私たちは、どの用途で、どのリスクを、誰が受け入れるかを先に整理することが、現実的な選定につながると考えています。

出典・参考資料

「買える」だけでなく、長く運用できるか

産業用ドローンは数年単位で使う設備です。交換用のバッテリーやモーター、更新ソフトが手に入らなくなれば、調達時に問題がなくても運用は止まります。供給網は、次の3層に分けて確認すると見通しが立ちます。

供給網は、3つの層に分けて確かめる
1

部品の出所

モーター・電池・カメラ・通信・飛行制御

誰が、どこで製造しているか

2

データと更新

運用ソフト・クラウド・ファームウェア

どこへ送り、誰が更新するか

3

運用の継続

交換部品・バッテリー・修理・代替機

何年先まで保守できるか

SkyLink Japan作成。機体の組立国だけでは、部品・ソフトウェア・保守の全体像は分かりません。

部品の調達先だけでなく、輸出管理や制裁の影響も受けます。Skydioは2024年10月、中国の制裁でバッテリー供給が減り、1機につき1個へ制限すると公表しました。台湾への販売が制裁の背景だと同社は説明しています。完成機の製造国だけでは供給リスクを判断できない例です。2026年6月にはACSL・Terra Droneを含む日本企業20社も中国商務部の「注視リスト」に載りました。

米国の認証制限や関税も、機体・部品を供給する側の条件を変えています。私たちは、「中国製か否か」に加えて、部品からソフトウェアまでの出所と、継続して使える根拠を説明することが重要になると見ています。

見積の段階で確認したいこと

交換部品とバッテリーの供給年限、更新ソフトの提供期限、国内の修理拠点、代替機と修理日数。カタログにない条件は、メーカーや国内代理店から書面で回答を得ておくと、更新計画を立てやすくなります。

出典・参考資料

NDAA準拠とBlue UASは、別の基準

「NDAA準拠(NDAA compliant)」という表示を見たら、まずどの年度の、どの条項への準拠かを確認する必要があります。ドローン分野の重要な基準である2020年度第848条は、国防総省が次のいずれかに当たる機体を調達・運用することを原則として禁じています(例外・免除の規定あり)。

  • 中国など対象国で、または対象国の企業が製造した機体
  • 対象国製のフライトコントローラー、無線、データ伝送装置、カメラ、ジンバルを使う機体
  • 対象国で開発された地上管制システムや運用ソフトウェアを使う機体
  • 対象国のネットワーク接続やデータ保存を使う機体

一方、2019年度NDAA第889条は、特定企業の通信・監視機器等を対象とする連邦調達上の規定です。Parrotの2026年8月27日付ANAFI UKRの発表は、NDAA準拠の説明で第889条を明示しています。第848条のドローン調達要件と、同じ意味で読み替えることはできません。

注意|「NDAA準拠」で分かること、分からないこと
  • 「NDAA準拠」という表記だけで、政府による認証・審査済みとは判断できません。対象条項、メーカーの表明内容、適合根拠を確認します
  • 第848条の列挙にモーターやバッテリーは含まれていません。第848条への適合だけでは、これらの部品まで非中国製とは判断できません
  • 第848条が縛るのは国防総省です。「NDAA準拠=米国の全政府機関が無条件で購入できる」ではありません。連邦機関にはASDA(企業単位の判断)が、各機関には独自のセキュリティ要件があります
出典・参考資料

Blue UASの掲載が示す範囲

Blue UASは、NDAA第848条への適合とサイバーセキュリティ評価を経た機体・部品のリストです。機体のCleared Listと、部品・ソフトウェアのFrameworkがあり、2025年12月3日に管理がDIUから国防契約管理局(DCMA)へ移りました。

掲載は、国防総省が第848条の例外手続なしに調達・運用できることを示します。米国政府全体の「公認」や、FAAの安全認証ではありません。FCCの機器認証や、TAAの原産国ルールも、それぞれ別の基準です。

Blue UASの最新公式リスト(DCMA)は直接確認できていません。メーカーの準拠表明と現在の公式掲載を同一視せず、調達時には対象モデルと確認時点を確かめてください。

出典・参考資料

「非中国製」「国産」のどこを見ているか

「非中国製」は、組立国、企業の国籍、主要部品、ソフトウェア・クラウド、政府調達要件のどれを見るかで意味が変わります。カタログに同じ言葉があっても、確認範囲は同じとは限りません。

  1. 最終組立が中国以外:組立国だけを見ている。部品は中国製の場合がある
  2. メーカーが中国企業でない:企業の国籍を見ている(米国のASDAはこの考え方に近い)
  3. 主要部品も中国製でない:フライトコントローラー、通信、カメラなどまで見ている(NDAA第848条はこの考え方に近い)
  4. 通信・クラウド・ソフトウェアも中国企業に依存しない:データの経路まで見ている
  5. 特定の政府調達要件を満たす:Blue UAS掲載、日本の申合せの手続を経た調達など、制度ごとの要件

国産機でも部品を海外から調達する場合があり、販売ブランドと実際の製造元が異なるホワイトラベル機もあります。Parrotはフランス企業ですが、ANAFI UKRは米国と韓国で製造すると説明しています。企業の本社、設計、組立、主要部品、データの経路を分けて確認すると、案件の条件と照らし合わせやすくなります。

次に読むブログ

では、何をもって「国産ドローン」と呼ぶのでしょうか。国内で組み立てれば国産なのか、主要部品やソフトウェアの出所まで見るべきなのか。次のブログでは、公共調達の考え方とHAYATE 2・GDU S200の公開仕様を手がかりに、「国産」の中身を掘り下げます。

HAYATE 2・GDU S200の仕様比較から「国産」を考える →

出典・参考資料

メーカーは、得意な用途で比べる

非中国製メーカーにも得意分野があります。順位を決めるより、自分たちの用途に近い機種から比較するほうが、候補を絞りやすくなります。

表2:主なメーカーと用途

メーカー(本社)代表機種主な用途
Parrot(フランス)ANAFI UKR、ANAFI USA小型の偵察・監視、公共安全
Skydio(米国)X10、X10D、Dock for X10警察・消防の初動、防衛、インフラ点検
BRINC(米国)Lemur 2、Responder警察・消防の初動対応
Quantum Systems(ドイツ)Vector、Twister、Trinity Pro偵察、測量・マッピング
ACSL(日本)SOTEN(蒼天)インフラ点検、政府調達、防衛向け空撮

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

Parrot ANAFI UKRとSkydio X10はSkyLink Japanの取扱製品です。BRINC、Quantum Systems、ACSLの製品は取扱製品ではありません。

ANAFI UKRに見る、調達条件と機能の結びつき

2025年6月に発表されたANAFI UKRは、非中国製、電子戦環境、政府調達という条件に合わせた製品の一例です。Parrotは、紛争地のフィードバックを開発に反映し、米国・韓国で製造して中国由来の部品を使わないと説明しています。

視覚慣性オドメトリと地図照合による光学航法、Galileoの認証信号を使う偽装検知を備えます。ただし、地表の模様が乏しい場所や、雲などで地表が見えない場合は性能が落ちると同社も明記しています。GNSSに頼らない航法も、使う場所と条件を見て評価する必要があります。

周波数ホッピング、LoRa、Wi-Fi、5Gなどの通信方式はモデル・仕様によって異なります。通信とSDカードを暗号化し、FIPS140-2準拠とされるセキュアエレメントを搭載していますが、機体全体の認証を意味するものではありません。ParrotはBlue UAS、NDAA・TAAへの準拠も説明しています。

国内で使う通信構成を確認する

ANAFI UKRとUKR GOVの日本の技適は2.4GHz帯の無線が対象です。海外仕様の通信方式・距離が、そのまま国内で使えるとは限りません。

開発の背景はなぜParrotはANAFI UKRを生み出せたのか?で詳しく取り上げています。

出典・参考資料

価格差には、生産規模と調達要件が映る

非中国製機は、同等クラスのDJI機より高価になる傾向があります。少量生産、部品の調達先の制約、供給網やセキュリティの確認、国内外での保守体制などがコストに影響します。DJIの量産と、機体・部品・ソフトウェアを一体でそろえる事業力も、価格差の一因です。

政府の調達方針は、その差を市場に表します。GAOの2024年報告では、米内務省が購入したドローンの平均単価は、2017〜2020年度の約2,600ドルから2023年度には1万5,000ドル超へ上昇しました(2023年ドル換算)。機体が足りず、山火事対応でヘリコプター等へ切り替えた部局もあります。

日本では、NEDO事業の成果として受注を始めたACSLのSOTENが、2021年度中に政府などから約500機を受注しました。使う側の条件が変わると、メーカーの投資先や製品開発も変わります。

価格が高いほど安全、安いほど危険という関係ではありません。自分たちに必要な性能と調達条件を満たしたうえで、機体価格、部品、ソフトウェア、保守を含む費用を比べることが大切です。

出典・参考資料

用途が変われば、優先する条件も変わる

「DJIか、非中国製か」という勝ち負けの構図で考えると、判断を誤りやすくなります。一般の測量、重要インフラ、公共安全、防衛では、求められる条件そのものが違うからです。

用途別に見た評価軸

用途まず問われる軸さらに加わる軸考え方
一般測量・建設精度、価格、LiDAR・RTK、解析ソフトとの連携発注者のデータ管理ルール性能とコストで選ぶ余地が大きい。DJI機を含めて比較する
重要インフラの点検(電力・通信・港湾・空港など)上記に加え、データの保存先と外部通信部品の供給継続性、委託先を含むデータ管理発注者の仕様書が基準になる。設備情報の扱いを先に決める
消防・警察・防災即応性、サーマル、夜間・悪天候での運用補助・起債の要件、申合せを考慮した調達手続、GNSSが使いにくい環境補助・起債の要件と調達仕様で候補が絞られる
防衛情報保全、通信の暗号化、電子戦下での航法と自律性部品とソフトウェアの出所、国内での整備・生産非中国製に加え、供給網全体の説明が求められる

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

日本市場は、全面的な置き換えではなく使い分けに向かうと私たちは考えています。一般の測量や建設では、DJI機が性能・価格・ソフトウェアの面で有力な選択肢であり続けます。重要インフラや公共安全では、発注者の仕様や補助要件によって、非中国製機やデータの扱いを説明できる構成が求められる場面が増えていきます。同じ組織の中で用途ごとに機体を分ける運用も現実的です。

機体を決める前に確認したい14項目

日本の企業・自治体・官公庁が機体を選ぶときに、最低限確認しておきたい項目です。すべてを満たす機体を探すより、案件の要件に照らしてどの項目が必須かを先に決めるほうが現実的です。

表3:ドローン選定時の確認項目

確認項目確認したいこと確認に使う資料
1 メーカーの本社・資本どの国の法律の影響を受けるか会社情報、IR資料
2 最終組立国どこで組み立てられたか原産地の証明、メーカーの書面
3 主要部品の供給国モーター、バッテリー、カメラ、センサーの調達先部品表(BOM)、メーカーへの照会
4 フライトコントローラー設計・製造元と、ファームウェアの開発元仕様書、メーカーの回答
5 通信モジュール無線の方式と周波数、暗号化、製造元仕様書、技適の情報
6 データの保存先機体・送信機・端末・クラウドのどこに残るかデータフロー図、取扱説明書
7 クラウドの利用自動同期の有無、サーバーの所在国、オンプレミスの選択肢利用規約、サービス仕様
8 外部との通信飛行中・飛行後の通信先、オフライン運用の可否技術資料、通信の検証結果
9 ソフトウェア更新更新の管理者、強制更新の有無、署名による検証更新ポリシー
10 NDAA・Blue UASなどの適合根拠となる文書、対象モデル、確認した時点メーカーの表明、DCMAの最新リスト
11 国内の調達方針・補助要件申合せ、消防庁の通知など案件の条件との整合発注者の仕様書、通知
12 部品・バッテリーの供給期間何年先まで交換部品を確保できるか保守契約、メーカー・代理店の書面
13 保守・修理の体制国内の修理拠点、代替機、修理にかかる日数メーカー・国内代理店の保守メニュー
14 技適と国内の通信構成海外仕様の通信方式が国内で使えるか総務省の技適検索

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

現場では

3(主要部品の供給国)と12(部品の供給期間)は、カタログや公開資料に載っていないことが多い項目です。案件で書面での回答が必要になりそうな場合は、早めにメーカーや国内代理店へ照会しておくと、入札や仕様確定の段階で慌てずに済みます。

市場の分断を踏まえ、用途から選ぶ

米中・日中関係の緊張が、軍民両用のドローンの調達や供給条件に影響しています。私たちは、安全保障を優先する用途を中心に、市場の分断が進むと見ています。

その中でも、日本では一般の測量・建設と、重要インフラ・公共安全で優先条件が異なります。DJI機から非中国製機へ一律に置き換えるより、誰が、どこで、何のために使うかを起点に、案件の条件を確かめることが現実的です。

用途を決める → 案件の条件を読む → 必須項目を選ぶ → 機体・通信・保守を比較する。

この順番で整理すれば、「非中国製」という言葉を、実際の選定条件へ落とし込めます。

用途と要件に合う機体をご相談いただけます

SkyLink Japanでは、DJIを含む産業用ドローンから非中国製機まで、用途・データ管理・予算・保守を踏まえた構成をご提案しています。仕様書や補助要件を整理する段階からご相談いただけます。

機体選定について相談する主な取扱製品を見る

出典・参考資料

出典・参考資料の一覧

地政学・軍民両用性・市場分断(2026年10月8日確認)

2026年10月6日までに確認した資料を基礎に、NDAAの条項区分、国内調達・消防庁通知、製品仕様の該当箇所と参照先を同月8日に再確認しました。公開日が明示されていない資料は「公開日記載なし」としています。

米国

欧州

日本

メーカー・研究機関・報道

※このブログは2026年10月6日時点の公開情報に基づいています。各国の規制、調達方針、係争中の訴訟、FCCの提案中の措置は変更される可能性があります。個別の調達要件への適合は、発注者の仕様書と最新の公的資料でご確認ください。

BLOG REQUEST

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