「国産なら調達できる」。機体選定の相談で、その一言が判断を左右することがあります。しかし、設計、部品、組立、ソフトウェアのどこまでを国内で担えば、国産なのでしょうか。
結論から言うと、防衛装備品には国産と整理する考え方がある一方、確認した公開資料では、公共調達全般に共通する国産ドローンの判定基準は確認できません。原産国表示やセキュリティ評価も、それぞれ別の制度です。このブログでは国会答弁と公的資料を読み解き、現場で確認すべき項目、そして国に明確にしてほしい点を考えます。
制度・公開資料の確認日:2026年10月8日(JST)。冒頭の画像は生成AIによるイメージで、特定の製品を示すものではありません。
国産ドローンの定義は、使う場面で変わる
防衛装備庁は、国内企業が主体となる開発・製造・改修に着目
2026年5月12日の衆議院安全保障委員会で、防衛装備庁は、海外から部品を調達する場合でも、防衛省の直接の契約相手が日本企業で、その企業が開発・製造・改修などを主体的に行うドローンは、国産と整理すると答弁しました。
つまり、少なくとも防衛装備品の整理では、部品がすべて日本製であることを求めているわけではありません。一方、国内で最終組立だけを担う場合や、一部の制御系を変更する場合がどこまで該当するかは、この答弁だけでは判断できません。
同年4月9日の答弁にある「国産化率の具体的な定義はない」という説明も、国産装備品の考え方がまったくないという意味ではありません。国産化率という数値の定義と、国産と整理する条件は、分けて読む必要があります。さらに、防衛装備品の整理を、消防や民間取引へそのまま当てはめる根拠も確認できません。
原産国表示は、実質的な変更が行われた国を見る
商品の表示には、景品表示法に基づく原産国の考え方があります。消費者庁は、商品の内容に実質的な変更をもたらす行為が行われた国を原産国と説明しています。運用基準では、ラベルの付加、包装、簡単な部品の組立などは、実質的な変更に含まれません。
確認した品目別の運用細則には、ドローンや無人航空機の区分はありません。ただし、細則がないことから、自由に日本製と表示できるとも、特定の工程なら必ず日本製になるとも言えません。実際の工程と表示内容を踏まえた検討が必要です。
この制度は一般消費者に向けた表示に関するものです。公共調達の適格性を直接決める規則として扱うのではなく、「どこで何を行ったか」を説明する際の別の物差しとして理解するのが適切です。
| 場面 | 主に確かめること | 注意点 |
|---|---|---|
| 防衛装備品の整理 | 日本企業が契約相手となり、開発・製造・改修を主体的に担うか | 海外製部品を使う場合も国産と整理し得る |
| 商品の原産国表示 | 実質的な変更が行われた国 | 簡単な組立だけで決まるわけではない |
| 国のサイバーセキュリティ評価 | 供給網、不正な変更、情報漏えいなどのリスク | 国産という表示だけでは確認が完結しない |
| 消防の調達仕様書記載例 | 情報管理、操縦への介入防止、供給網など5項目 | 通知は国産を一律の条件としていない |
| 型式認証・機体認証 | 機体の設計・製造過程・現状の安全基準への適合 | 国産の証明とは扱わない |
編集部作成。各制度の目的・対象は異なります。スマートフォンでは表の中を横にスクロールできます。
公共調達が問うのは、情報と供給網を管理できるか
国の調達方針は、業務とリスクを踏まえて評価する
2020年9月14日の関係省庁申合せ「政府機関等における無人航空機の調達等に関する方針について」は、国の行政機関、独立行政法人などを対象に、機微情報の漏えい、乗っ取り、ソフトウェアの書換えなどへの対応を定めています。2021年度予算に基づき、同年4月1日以降に調達手続が始まるものから適用されます。
防衛、犯罪捜査、機密性の高い測量、人命に直結する救助などの重要業務に用い、特にリスクを考慮すべきと判断される機体については、調達計画を事前に内閣官房と協議します。すべてのドローンについて、一律に国産・海外製の区分だけで決める仕組みではありません。
国家サイバー統括室が公開する統一基準群のガイドラインでも、開発・供給事業者、部品の供給者、委託先などを含むサプライチェーンが論点になります。本社等が置かれる場所の法的環境も、考慮するリスクの一つです。今回は令和7年度版の2026年6月一部改定版を確認しました。
OEMは、他社向けの製品を製造・供給する形です。ガイドラインの4.3.1は、OEM製品についても、製造者を含めた供給網を販売者が適切に管理することを要件に含める考え方を示しています。日本企業のブランドになったことだけで、元の製造者への確認が不要になるわけではありません。
出典・参考資料
対策を示しても選ばれない。現場が感じる矛盾
DJIはMatrice 400について、操作者が許可しない限り飛行ログや画像・動画を自社サーバーへ同期せず、ローカルデータモードで操作アプリのインターネット通信を止められると説明しています。情報の流れを管理するための対策です。
それでも米国の調達には、技術的な対策とは別に明示的な制限があります。2025年3月13日のGSA(米国一般調達局)監察総監室の報告は、国境施設の工事で請負企業が使用したDJI機について、使用停止を勧告しました。連邦調達規則(FAR)40.202も、対象外国企業が製造・組み立てたドローンの調達や、2025年12月22日以降の対象機の運用サービスの調達・連邦資金による調達と運用を原則禁止しています。例外や免除はありますが、米国では「暗にNG」という段階を超えています。
日本の2020年の申合せはDJIを名指しせず、業務とリスクに応じた評価や情報流出防止策を求めています。その説明の一方で、個別の調達で「DJIは採用できない」という判断が示されるなら、対策のどこが不十分なのかを説明する必要があります。
私たちは、対策を評価するという説明と、対策を示しても採用につながらない判断との間に、現場から見ると矛盾があると感じます。製造国の法的環境や供給網を理由に除外するのなら、その条件も明らかにしてほしい。何を改善すれば採用の余地があるのか、それとも改善しても対象外なのか。そこが見えなければ、メーカーも導入者も判断できません。
出典・参考資料
消防庁が示した記載例は、公式には5項目
消防庁の2026年3月31日通知「消防防災分野におけるドローンの活用について」は、調達仕様書へ盛り込む事項の例を、次の5項目で示しています。
- 飛行情報・撮影記録の外部漏えい防止
- 操縦不能・乗っ取りなどによる業務継続性の逸失防止
- サプライチェーン・リスクの低減
- 本社等が立地する場所の法的環境等の説明
- ドローンや主要構成要素の供給安定性
通信の暗号化や更新管理者の明確化は、この5項目に含まれる具体的な確認内容です。通知は国産を一律の条件とはしていません。各項目への対策を、書面等で確かめることが中心です。
また、消防庁の2020年9月16日事務連絡は、国の申合せが各消防本部・消防団へ直接適用されるものではないと説明しています。そのうえで、調達手続を考慮するよう求めています。国の機関と消防では、制度の適用関係と手続が異なることに注意が必要です。
緊急防災・減災事業債等を活用する消防本部の整備では、機能要件などに加えて整備計画の提出・確認があります。「国産の製品だから起債の対象になる」と考えず、購入する構成と計画について確認する必要があります。
判断の理由が見えないと、現場は次の提案ができない
当社は、Autel EVO MAX Mode Sを提案した案件で調達対象として認められず、その後、消防から「Mode Sは不可、HAYATE 2は可」と伝えられた経験があります。当社に説明された範囲では、両機の判断を分けた具体的な理由は確認できていません。
この経験だけで、全国共通の禁止や許可、あるいは「国産の表示が採否を決めた」とは言えません。発注者、用途、仕様書、照会内容が異なれば、結論が異なること自体はあり得ます。
ただ、理由が伝わらなければ、販売店もメーカーも、どの対策を追加すればよいのか分かりません。本社所在地の法的環境を重く見るのか、情報の送信先なのか、更新管理なのか。私たちが求めているのは、説明可能な範囲で評価項目と判断理由を示し、次の提案につなげられる仕組みです。
HAYATE 2から考える、メーカー説明の読み方
HAYATE 2はSoradynamicsの産業用ドローンで、テックウインドは国内で設計・開発・製造を手掛ける国産ドローンと紹介しています。これらはメーカー・代理店による説明として読み、その説明がどの工程や構成までを指すのか、調達時に確かめる必要があります。
2026年10月8日に確認したメーカーの製品ページは、第二種型式認証を取得予定としています。代理店も取得見込みと表示しています。取得予定と取得済みは別です。国土交通省の2026年6月19日現在の一覧には掲載がありませんが、この一覧だけで10月時点の認証の有無を確定することもできません。
編集部の見解:HAYATE 2はGDU S200相当

出典・参考資料
引用元:Soradynamics公式サイト「HAYATE 2」掲載の写真(2026年10月8日確認)

出典・参考資料
引用元:Adorama「GDU-Tech S200 Series Dual-Camera Enterprise Drone Standard Kit」掲載の画像(2026年10月8日確認)
両機は胴体やアーム、カメラの配置がよく似ています。仕様も、望遠カメラの光学10倍・ハイブリッド160倍、最大耐風速度12m/s、RTKの測位精度などが共通します。
| 比較項目 | HAYATE 2 | GDU S200 |
|---|---|---|
| 搭載カメラ | 広角+望遠 | 広角+望遠 |
| 重量(公表値) | 1.75kg(標準離陸重量) | 1.75kg(1750g) |
| 軸間距離 | 480mm | 486mm |
| 最大飛行時間(公表値) | 50分 測定条件の記載なし | 42分 無風・追加搭載物なしのホバリングで、電池残量0%まで測定 |
| 最大耐風速度 | 12m/s | 12m/s |
| 最大上昇/下降速度 | 6m/s / 5m/s | 8m/s / 6m/s |
| 最大離陸高度 | 3000m | 6000m |
| 最大通信距離(公表値) | 5km(MIC/CE) | 8km(CE/SRRC/MIC) 15km(FCC) |
| 防塵・防水等級 | IP45 | IP43 |
| 望遠カメラのズーム | 光学10倍/ハイブリッド160倍 | 光学10倍/ハイブリッド160倍 |
| RTK測位精度 | 垂直:1.5cm+1ppm 水平:1cm+1ppm | 垂直:1.5cm+1ppm 水平:1cm+1ppm |
2026年10月8日確認。HAYATE 2はテックウインド、GDU S200はGDU公式の公開仕様を比較しています。飛行時間は測定条件が異なり、同条件での性能差を示すものではありません。RTKは補正情報を用いる高精度な測位方式です。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
この外観と主要仕様の類似から、私たちはHAYATE 2をGDU S200相当の機体と見ています。公開情報を比較した編集部の見解であり、OEM契約を確認したものではありません。
調達で確かめたいのは、どの部分を国内で設計・製造・改修し、誰が品質と情報管理に責任を持つのか、という点です。
フライトコントローラーを替えれば、国産になるのか
フライトコントローラーは、姿勢やセンサー情報をもとに飛行を制御する部分です。海外製の機体へ国内で開発した制御系を載せた場合、国産と呼べるのでしょうか。DJIやAutelの機体でも同じ扱いになるのか、という問いです。
防衛装備庁の答弁には、日本企業が主体的に行う改修も含まれます。ただし、交換の内容がその条件に該当するかは個別に確認すべきで、制御基板を替えるだけで自動的に国産になるとは読めません。原産国表示でも、その変更が実質的な変更に当たるかは、基板の数や費用比率だけでは判断できません。
PX4を使う場合も同じです。PX4は国際的な開発者が参加するオープンソースの飛行制御ソフトウェアで、BSD 3条項ライセンスで利用・変更できます。国内で実装・保守することと、基盤となるソフトウェアや制御基板の出所は、別々に説明する必要があります。
経済産業省が紹介する無人航空機分野のサイバーセキュリティガイドラインも、機体だけでなく地上制御局やクラウドを含む通信の流れを評価します。制御系を変更しても、カメラ、映像伝送、送信機、アプリなどの管理は残ります。国内開発の範囲と、機体全体の情報管理を混同しないことが大切です。
ここでの置換は制度を考えるための仮定です。各社の機体で実装できるかは確認していません。実際に改造する場合は、飛行安全性、無線設備、認証の対象構成、保証条件を改めて確認する必要があります。
日本の導入現場では、同じ質問を同じ深さで聞く
測量会社にとっては取得した地形データの扱い、自治体には被災者や建物の映像、インフラ事業者には設備の詳細情報が重要になります。同じ機体でも、扱う情報と業務が変われば、確認の深さも変わります。
選定では、まず発注者が必要とする条件を整理し、候補機へ同じ質問をすることを勧めます。国内ブランドの機体だけ確認を簡略化したり、海外製という理由だけで対策の説明を読まなかったりすると、実際のリスクを比較しにくくなるからです。
| 確認する対象 | 確かめる内容 | 資料の例 |
|---|---|---|
| 設計・製造・組立 | 担当企業、実施国、国内で担う工程 | 工程表・体制説明 |
| 主要部品・供給網 | 製造者、委託先、供給停止時の対応 | 主要部品一覧・供給計画 |
| ソフトウェア | 開発者、更新配信元、更新の承認者 | 更新・権限管理手順 |
| 通信・データ | 映像・ログ・地図等の送信先、保存先、暗号化 | データフロー図・通信先一覧 |
| 認証・運用条件 | 機体・送信機の構成、周波数、必要な手続 | 認証資料・運用条件表 |
| 保守・継続利用 | 国内修理、部品供給期間、代替機、対応日数 | 保守条件・部品供給の説明 |
編集部による確認項目の提案です。部品表などは、必要に応じて秘密保持契約のもとでの開示も検討します。
価格を比べる際も、本体だけでは判断が難しくなります。更新作業の負担、予備電池、修理中の代替機、教育まで含めて比較すれば、「安く買えたが必要なときに使えない」という事態を避けやすくなります。これは国産・海外製のどちらにも共通する実務上の視点です。
今後の市場に必要なのは、説明できる国産という言葉
国産の判定と、情報管理や供給の評価を明確に分ければ、国内企業の強みも伝わりやすくなります。設計変更への対応、国内の修理拠点、部品在庫などを具体的に説明できる企業が、比較の中で評価されるようになるからです。
私たちは今後、産業用ドローンの選定では、性能表に加えて、データフローや更新管理、部品供給を説明する資料の重要性が増すと見ています。これは編集部の見通しであり、新しい共通認証制度が決定したという意味ではありません。
国に求めたいのは、国産の定義、国内で担うべき範囲、開示と確認の方法、仕様書での使い方、判断理由の説明です。用途ごとに条件を変えるなら、その違いも示す必要があります。企業の技術情報を守りながら、発注者が必要な内容を確かめられる様式や相談窓口もあれば、自治体の担当者を支えられるはずです。
まとめ:国には定義と判断の理由を示してほしい
国内のドローン産業を育てるうえでも、「国産」という言葉を説明できる形にすることが大切です。何を国内で担えば国産と整理されるのか、セキュリティは何を確認するのか。それぞれの物差しが見えれば、メーカーは説明し、導入者は比較できます。
特定の機体を支持するかどうかにかかわらず、OEMの製造者や供給網を含め、同じ要件で評価できること。そして、評価の理由を可能な範囲で伝えること。国には、定義と確かめ方、判断の理由を明確にしてほしい。機体を提案する現場からの、私たちの率直な願いです。
導入を検討するときは、まず使う業務と扱う情報を書き出し、候補機へ求める資料をそろえてください。機体選定と運用条件の整理については、SkyLink Japanのドローン導入・事業開発支援もご活用いただけます。
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出典・参考資料
出典・参考資料の一覧を開く
- 国会会議録・2026年5月12日の答弁(開発・製造・改修の整理)
- 同:2026年4月9日、衆議院安全保障委員会、小杉裕一政府参考人の答弁
- 消費者庁「商品の原産国に関する不当な表示」
- 同・運用基準(1973年10月16日通達)
- 同・原産国の定義に関する運用細則(1981年6月29日改正)
- 国土交通省「機体認証」:型式認証・機体認証の目的と検査対象
- 国土交通省・型式認証取得一覧(2026年6月19日現在)
- 内閣官房・関係省庁申合せ(2020年9月14日):対象、調達手続、適用開始時期
- 国家サイバー統括室「政府機関等のサイバーセキュリティ対策のための統一基準群」
- 同・ガイドライン(令和7年度版、2026年6月一部改定)、4.3.1(本文227ページ)
- 消防庁・2026年3月31日通知:本文2~3ページの記載例、別添1の整備要件・計画確認
- 消防庁・2020年9月16日事務連絡「政府機関等における無人航空機の調達等に関する方針について」の情報提供
- Soradynamics「HAYATE 2」(2026年10月8日確認)
- テックウインド「国産の産業用ドローンの新定番 HAYATE2」(同日確認)
- 同「HAYATE 2 ドローン」(同日確認)
- PX4 Autopilot User Guide:概要・ライセンス・運営体制
- 経済産業省「無人航空機を対象としたサイバーセキュリティガイドラインを策定」(2022年公表)
- GDU公式「S200シリーズ仕様」(2026年10月8日確認):S200の機体・カメラ・通信・RTK仕様
- DJI・Matrice 400発表資料(2025年6月10日):操作者の許可に基づくデータ同期、ローカルデータモード
- GSA監察総監室・Alert Memorandum A220036-5(2025年3月13日):国境施設の工事で使用されたDJI機に関する指摘・使用停止勧告
- 米国連邦調達規則(FAR)40.202:対象外国企業製ドローンの調達・運用サービス・連邦資金の制限、例外・免除。規定上の期限は2028年12月22日(2026年10月8日確認)
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