左にMatrice 5Tと太陽光パネル、右にAutel EVO IIIと夜の河川敷を描いた比較イメージ

DJI Matrice 5TとAutel EVO IIIを比較|赤外線点検・夜間捜索で見える違い

執筆:SkyLink Japan編集部
監修:SkyLink Japan編集長
監修範囲:メーカー公表仕様・想定用途・出典の確認
公開日時:
最終更新日時:
運営:株式会社WorldLink & Company

冒頭は、太陽光点検と夜間捜索の場面を描いた生成イメージです。

変電設備の熱画像に明るい点が映ったとき、隣り合う端子のどちらが発熱しているかまで見分けられるでしょうか。夜の河川敷では、熱源を見つけた後、地上班に護岸のどちら側へ向かうかを伝える映像が必要です。

DJIが2026年11月5日に発表したMatrice 5Tと、Autel RoboticsのEVO III 4T Pro/4N Proを、点検で残す画像と捜索で共有する映像から比べます。発熱箇所を細かく記録する、暗所で対象を探す、班を交代しながら捜索を続ける。現場で何を優先するかで、それぞれの良さが見えてきます。

両社が重視した現場の課題

DJI Matrice 5T

悪条件でも必要な情報を取る

夜の変電所で発熱箇所を見分けにくい。急な雨で飛行が止まる。谷で映像が途切れる。DJIはこの3つを設計の出発点に挙げています。高解像度サーマルと暗視、複数の障害物検知方式、中継通信を一つの機体にまとめたことで、条件が厳しい現場でも、点検や初動対応に必要な情報を集められるようにしています。

Autel EVO III

複数機で任務を続ける

Autelは、単独の機体から、任務ごとに複数機が連携する仕組みへ発展させたと説明しています。昼の巡視には広角とズーム、夜間の捜索には暗視を重視したモデルを選べます。携帯回線がない現場でも映像や位置を共有し、電池が減った機体から別の機体へ任務を渡せるため、複数の班で捜索や巡視を続けられるのが強みです。

両社の公式資料で強調されている課題を比較しています。DJIにも複数機での中継構成があり、Autelも暗所撮影と障害物検知に対応します。

太陽光点検・日中の巡視・夜間捜索で選ぶ機体

メーカー公表仕様から、用途ごとの第一候補を選びました。

DJI Matrice 5T

太陽光の発熱点検

多数のパネルを撮影し、再点検する位置を地図で渡す業務に向きます。ネイティブ1280×1024のサーマルで撮影し、DJI Terraで2Dサーマルマップにまとめます。

試験では、異常位置を現地の設備番号と照合できるかを確認します。

Autel EVO III 4T Pro

工場・港湾の日中巡視

複数の巡視先へ持ち運び、全景と異常箇所を撮り分ける業務の候補です。標準構成は3モデルで最も軽い1,545 g。広角とズームで外観を撮り、発熱が疑われる設備は熱画像をAutel IR Toolで確認できます。

試験では、予定する離隔から設備番号と異常箇所が写るかを確認します。

Autel EVO III 4N Pro

河川敷での夜間捜索

暗所で熱源と、地上班が通る経路を確かめる業務の候補です。狭い画角のサーマルで離れた熱源を大きく捉え、低照度用と長距離用の暗視カメラで周囲と遠方を見ます。

試験では、現場と同程度の暗さで護岸の形や進入口を読み取れるかを確認します。

メーカーが挙げる用途は、送電設備点検から災害対応まで

太陽光点検・日中巡視・夜間捜索は、用途に合う機種を選ぶための例です。両社の公式製品ページでは、ほかにも次の現場を紹介しています。

DJI Matrice 5T

  • 送電鉄塔・送電線・変電所:中望遠や望遠で鉄塔の部品や計器を記録します。送電線点検機能では、機体上部のLiDARで電線を捉え、線に沿う横方向の飛行を支援します。
  • 橋梁・建物・エネルギー設備:道路や橋梁、建物、石油・ガス設備、太陽光発電所など。DJIは太陽光や送電網でのサーマルマップ作成も紹介しています。
  • 公共安全・水利・地理情報:緊急時の状況把握、河川などの水利分野、写真測量や現場のモデル化。船上からの巡視・点検も想定しています。

Autel EVO III

  • 送電鉄塔・変電所:Autelも電力設備点検を挙げています。点・線・面で巡視ルートを計画し、設備の全景や気になる箇所を撮影する使い方です。
  • 施設・イベント・沿岸の警備、交通巡視:複数機で担当区画を分けて映像を共有する警備や、道路の混雑・事故現場の把握を想定しています。
  • 災害対応・捜索救助:山間部や洪水、火災、建物倒壊の現場で、熱源や被災状況を把握し、地上班が向かう経路を確認する使い方です。

送電線に沿うMatrice 5Tの点検機能は、対応する電線や飛行条件が定められています。この機能で保存する画像は可視光のズーム画像です。発熱の確認にはサーマル撮影を別に計画します。

3モデルのサーマル・飛行時間・通信を比較

表の右側は横にスクロールできます。左の比較項目は固定されています。

比較項目 DJIMatrice 5T Autel EVO III4T Pro Autel EVO III4N Pro
サーマル
画素数
1280×1024 640×512 640×512
サーマル
対角画角
45° 42° 22°
可視・暗視
カメラ
広角・中望遠・望遠(各50 MP) 広角50 MP・ズーム 低照度暗視・長距離暗視
標準重量 2,239 g 1,545 g 1,615 g
最大飛行時間 59分 Autel 2モデル共通50分(ABE41バッテリー装着時) Autel 2モデル共通50分(ABE41バッテリー装着時)
障害物検知 回転式LiDAR、ミリ波レーダー(前・上・下)、ビジョン、下方ToF Autel 2モデル共通全方向ビジョン、前方ミリ波レーダー、下方ToF Autel 2モデル共通全方向ビジョン、前方ミリ波レーダー、下方ToF
通信の特徴 DJI O4 Enterprise Enhanced、複数の中継構成 Autel 2モデル共通最大8ノードのメッシュ(機体と送信機の合計)、映像共有、任務引き継ぎ Autel 2モデル共通最大8ノードのメッシュ(機体と送信機の合計)、映像共有、任務引き継ぎ

サーマルの画素数はセンサーのネイティブ値、重量はメーカー公表の標準構成です。飛行時間は両社とも、無風またはほぼ無風で約9 m/sで飛行し、電池残量が0%になるまで測った値です。DJIの試験では追加搭載物を載せていません。

同じ場所から撮ると、どこまで写るか

太陽光パネルを同じ距離・向きから撮る場面を考えます。Matrice 5TとEVO III 4T Proは、発熱したパネルとその周りを近い広さで写せます。4N Proは写る範囲が狭く、狙ったパネルが画面内で大きく見えます。

白い枠の内側が写る範囲。黄色は発熱箇所の例です。3枚とも同じパネル列を描いた模式図です。

DJI Matrice 5T対角45° · 1280×1024画素

Autel EVO III 4T Pro対角42° · 640×512画素

Autel EVO III 4N Pro対角22° · 640×512画素

細部を比べるときは、画角と画素数を一緒に見ます。写る範囲が近い5Tと4T Proでは、5Tのほうが縦・横ともにセンサーの画素数が2倍あり、同じ部品をより多くの画素で記録できます。超解像による出力サイズはMatrice 5Tが2560×2048、EVO IIIの動画が1280×1024です。センサー自体の画素数と分けて比較します。報告書に温度を載せる場合は、放射率や反射、撮影距離も確認します。

夜間の映像と飛行条件

Matrice 5Tは広角のカラー夜景モード、EVO III 4N Proは低照度用と長距離用の暗視カメラを備えます。広い範囲を4N Proのサーマルで捜索するときは、狭い画角に合わせて飛行経路の間隔を決めます。

障害物検知には、Matrice 5Tが回転式LiDARと前・上・下のミリ波レーダー、EVO IIIが全方向ビジョンと前方レーダーを使います。細い枝や電線は飛行前に把握します。雨天時はMatrice 5TのIP55に加え、取扱説明書の条件と現場の視程・風を確認します。

捜索班への映像共有と機体の交代

EVO IIIのメッシュは、機体と送信機を合わせて最大8ノード。対応する送信機間で映像や位置情報を共有し、電池残量が少ない機体の任務を別の機体に引き継げます。班を交代するときは、担当区画と目標地点が引き継がれるかを試します。

Matrice 5Tも複数の中継構成に対応します。尾根や建物で見通せない現場では、中継機の配置と回線が切れたときの機体の動作を確認します。

点検とあわせて写真測量を行う場合

Matrice 5Tは撮影画像をDJI Terraで処理する写真測量に対応し、機体上部の回転式LiDARは障害物検知などに使われます。EVO IIIはRTKで機体位置を求めます。オルソ画像や点群を納品する案件では、両機種とも撮影・処理方法を決め、発注仕様を満たすか検証点で確かめます。レーザー点群が必要なら、取得・出力に対応した計測構成を選びます。

国内運用で確認する機材と飛行条件

国内で運用する前に、機体と送信機の組み合わせ、使える周波数やレーダー、中継や4Gに必要な機材を確認します。EVO IIIの国内向け構成の技適取得状況は、2026年11月6日時点で確認できていません。夜間や目視外の運用では、飛行計画に応じて許可・承認の要否も確認してください。

発熱箇所を設備番号に結びつけて報告するなら、Matrice 5Tの熱画像と地図が候補になります。巡視先ごとに全景と詳細を撮るならEVO III 4T Pro、暗所で熱源を捜し、班に位置を渡すなら4N Proが候補です。比較飛行には普段使う点検対象の写真や捜索区画の地図を持ち込み、撮影だけでなく報告や引き継ぎまで試してみてください。

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出典・参考資料

ウェブ資料参照日:2026年11月6日。メーカー公表仕様に基づく比較です。同じ条件での実機比較は未実施です。

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