造成現場を飛ぶドローンと3D点群。ドローン測量は「標準工程」になるのか

ドローン測量は「標準工程」になるのか|国交省・国土地理院・業界の動きから読む2027〜2030年の建設現場

ドローンを飛ばして地形を測る。そのデータは、施工や検査にどこまでつながるのでしょうか。建設現場の変化を考えるとき、飛行の技術と同じくらい、測った後のデータの使われ方が気になります。

第1回では、ドックの常設や遠隔運航などによって、人が現場へ測りに行く工程を減らす取り組みを見ました。このブログでは、国土交通省と国土地理院の制度、業界の実証をたどり、測量・施工・出来高管理・出来形検査が3Dデータを中心にどうつながり始めているかを見ていきます。

連載「ドローンと3Dデータで変わる測量・建設現場」(全2回)

第1回 現在編:ドローン測量はどこまで進んだか

第2回 将来編:ドローン測量は「標準工程」になるのか(このブログ)

このブログの要点
  • 国はi-Construction 2.0で「2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割」を掲げ、ICT施工は2025年度に土工・浚渫工で原則化されました。2026年度からは、3Dモデル上で規格値と計測結果を示せば、従来の出来形管理の書類を省略できるようになっています
  • ドローン測量はすでに公共測量の作業規程の準則に組み込まれています。合否は「検証点との差が所定の範囲に入るか」で判定され、準則にない新技術も精度を確かめれば使える仕組みがあります
  • 制度の動きは「国主導」「業界主導」のどちらかではありません。国が目標と枠をつくり、業界が技術と実績を持ち込み、業界団体が委員として入る協議会で原則化を決めるという循環で進んでいることが、公開資料から確認できます

ドローンに関わる制度は4つの層に分かれている

「ドローン測量が普及するかどうか」は、航空法だけでは決まりません。関係する制度を整理すると、少なくとも4つの層があります。

制度の層主な所管決めていること
空の制度国土交通省航空局ほかどこを、どの飛行形態(レベル3.5、多数機同時運航など)で飛べるか
公共測量国土地理院測量成果として認められる方法と精度(作業規程の準則)
ICT施工・出来形管理国土交通省(大臣官房 技術調査課など)工事でどの計測・施工方法を使うか、出来形をどう管理・検査するか
BIM/CIM国土交通省調査・設計・施工・維持管理で3Dデータをどう受け渡すか

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

空の制度が緩んでも、測量成果や出来形の基準、発注の仕組みが変わらなければ、現場の工程は変わりません。逆に、3つの下の層が3Dデータ前提に変わると、ドローンやセンサーで「測り続ける」意味が大きくなります。このブログでは下の層から順に見ていきます。

空の制度そのものの詳しい動きは、明日(10月6日)公開予定のブログ、ドローン規制は「緩和」ではなく「再設計」へで詳しく解説します。公開後は、このリンクからご覧いただけます。

国が描く2040年:i-Construction 2.0の「3つのオートメーション化」

実施済み国土交通省は2024年4月、「i-Construction 2.0」を策定しました。目標は2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、つまり生産性を1.5倍以上に引き上げることです。生産年齢人口が約2割減る一方で、災害の激甚化やインフラの老朽化で工事や維持管理の需要は増える、という見通しが根拠です。

柱主な中身測量・3Dデータとの関係
施工のオートメーション化1人で複数の建機を管理する自動施工、安全ルール、メーカーをまたぐ共通の制御信号、遠隔施工の通常工事への拡大、施工データのリアルタイム活用建機を動かすには、現況と設計の3Dデータが前提になる
データ連携のオートメーション化BIM/CIMによる3Dデータの活用、3Dモデルと2D図面の連動、属性情報の標準化による積算の自動化、デジタルツイン測量で取った点群が、設計・積算・施工へ流れる
施工管理のオートメーション化遠隔での監督・検査、画像解析による検査の自動化、プレキャストの活用、ARでの出来形確認出来形・検査が3Dデータ上で行われるようになる

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

進み具合も公表されています。2026年4月の発表では、2025年度に直轄工事で実施した自動施工は9件(前年度4件)、遠隔施工は41件(同21件)、データで現場全体を最適化する「ICT施工StageII」は111件(同45件)と、いずれも倍増しました。

方針・制度化予定2026年度は「i-Construction 2.0 躍動の年」と位置付けられ、キーワードとして「AI活用」「規模に依らない普及」「試行から本格運用へ、さらに原則化へ」が掲げられました。StageIIは2026年度から本格運用に入り、3次元モデルを工事の契約図書にするためのガイドラインの作成も予定されています。

出典・参考資料

ICT施工は「試行→本格運用→原則化」を工種ごとに繰り返してきた

ICT施工は、ドローンや3D計測が公共工事に入っていく入口です。2016年度のICT土工から始まり、毎年のように対象の工種を広げてきました。

時期主な動き区分
2016年度ICT土工を開始(UAV写真測量などによる起工測量・出来形管理)実施済み
2017〜2022年度舗装工、浚渫工(河川・港湾)、地盤改良工、法面工、構造物工、基礎工、修繕工などへ順次拡大実施済み
2025年度土工と浚渫工(河川・港湾)で原則化実施済み
2026年度地盤改良工の固結工(中層混合処理・スラリー撹拌工)を原則化。舗装工は発注者が指定する範囲を拡大。小規模工事向けの「導入型ICT活用工事」を新設(2026年4月)方針・制度化予定
2027年度以降舗装工は原則化に向けた段階措置として、発注者指定型の拡大を引き続き検討検討中

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。2026年度以降の内容は、ICT導入協議会(2026年6月)のロードマップ案によります。

直轄土木工事でのICT施工の実施率は、2016年度の36%から2025年度には93%まで上がりました。2025年度のICT土工は、1,877件中1,785件で実施されています。原則化の対象でも、GNSSの受信が悪くトータルステーションも使いにくい現場など、ICTの活用が難しい場合は必ずしもICT施工でなくてよいとされています。

原則化までの道筋にはパターンがあります。まず施工者が希望すれば使える「施工者希望型」、次に発注者が指定する「発注者指定型」を広げ、実施率が十分に上がったところで原則化する、という流れです。土工と河川浚渫工は、実施の実績が積み上がったことを根拠に2024年9月の協議会でロードマップ案が示され、2025年度からの原則化が決まりました。

施工者希望型で試行 → 発注者指定型を拡大 → 実施率が上がる → 原則化ICT施工は、この順番を工種ごとに繰り返しています

実施済み一方で課題も見えています。直轄の一般土木を受注するC・Dランクの企業でICT施工を経験したのは58.4%です。2026年4月に新設された「導入型ICT活用工事」は、2次元のマシンガイダンスから始める型、3次元の建機を使う型、全面的に活用する型の3段階で、小規模な工事でも段階的に取り入れられるようにしたものです。

出典・参考資料

出来形管理と検査は「点」から「面」へ、「書類」から「3Dモデル」へ

第2回でいちばん伝えたいのが、この章です。ドローンや3D計測の価値を最終的に決めるのは、工事の出来形(完成した形)をどう管理し、どう検査するかというルールだからです。

従来の出来形管理は、決められた間隔の断面や測点で寸法を測り、その結果を出来形管理図表などの書類にまとめて提出・検査する方法が基本でした。3D計測を使うと、点群で形状全体を「面」として管理できます。国の基準は、ここ2年でこの方向へ大きく動きました。

  • 実施済み2025年4月:3次元計測による出来形管理の要領を、計測技術ごとの構成から共通化し、精度確認試験結果報告書や出来形管理図表などの提出書類を簡素化
  • 実施済み2026年度から:3Dモデル上に規格値と計測結果を示せば、従来の出来形管理資料の作成・提出を省略できるように
  • 実施済み2026年度から:厚さの管理を1m²のメッシュごとに行う全数管理が可能に(従来は200m²に1か所の評価)。法面の植生工の厚さを地上レーザーで測ることも容認
  • 検討中ハンディ型のLiDAR SLAMは、土工の出来形に求められる精度(座標の差±50mm)を満たすことが確認され、要領への明記に向けて2026年度も実際の現場で検証を続ける

検査の側も変わっています。映像で立会や確認を行う遠隔臨場は2022年度から、工事検査への適用は2024年度から、原則としてすべての直轄土木工事が対象です。

出典・参考資料

右側の工程では、測量は「決まった日に行う作業」から「工程のあいだ更新され続けるデータ」に性格が変わります。ドローンのドック常設や常設LiDARが意味を持つのは、この工程に組み込まれたときです。

BIM/CIM:3Dモデルが「参考資料」から「契約図書」へ

実施済み国の直轄土木では、2023年度からBIM/CIMが原則適用されています。対象は測量、地質・土質調査、設計、工事で、小規模なものや緊急性の高い災害復旧は除かれます。2026年度の実施方針では、次の3つが義務項目になりました。

  1. すべての詳細設計と工事で、3Dモデルを情報の共有・伝達に使う
  2. 3Dモデルを2D図面と整合させ、機械で読み取れる属性情報を持たせる
  3. 設計から施工まで、機械で読み取れる形でデータを受け渡す

測量の段階では、3Dモデルの作成は今も「業務の特性に応じて」行う扱いです。ただし、点群(LASやCSV)から3D地形モデルをつくること、座標系や使用データを設計段階へ引き継ぐシート、土工モデルのデータ形式などは標準化が進んでいます。

次の焦点は、3Dモデルを工事の契約図書として扱うことです。BIM/CIM推進委員会では、2026年度に試行と準備を進め、2027年度の本格導入を目指す工程が示されています。試行は橋梁の下部工と砂防堰堤から始め、コンクリート構造物へ広げる計画です。2026年7月の委員会では、「ファイル単位」から「データを中心とした情報モデル」へ移る方向や、点群(LAS)にも対応した国の3Dデータ共有システムを2026年12月以降に試行運用する予定も示されました。維持管理段階への引き継ぎの要件は2027年度に定義する予定です。

委員会の議論では、課題も率直に出ています。設計と施工を別々に発注するため詳細設計の3Dモデルが現場で使われにくいこと、「3Dモデルをつくること」自体が目的化していること、などです。一方、推奨項目に取り組んだ工事・業務では、省人化の効果が21%以上だったものが約3割あったと報告されています。

出典・参考資料

SkyLink Japan予測3Dモデルが契約図書になり、国の共有システムで点群も受け渡せるようになれば、測量段階の点群は「後の工程でそのまま使われる公式のデータ」になっていきます。そのとき測量会社に求められるのは、点群をつくること以上に、座標・精度・属性が説明できる状態で渡すことです。

公共測量:ドローンはすでに作業規程の準則の中にある

マニュアルから準則本体へ

公共測量の方法は、国土地理院が定める「作業規程の準則」が基準になります。ドローンに関わる規定は、次のように広がってきました。

時期内容
2016年3月「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」を作成(2017年3月改正で、写真の重複率を90%から80%に緩め、点群の位置精度を0.05m・0.10m・0.20m以内の3区分で明確化)
2017〜2018年地上レーザー(2017年3月)、UAV搭載型レーザースキャナー(2018年3月)のマニュアルを作成
2023年3月UAVレーザー、車載写真レーザー、航空レーザー測深などを準則本体に統合。第4編を「地形測量及び写真測量(三次元点群測量)」として構成を組み替え
2025年3月衛星測位を基準とする標高への移行に合わせて「GNSS標高測量」を新設。点群から任意の位置の断面をつくる方法を標準化(2025年4月施行)

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。2026年9月時点で、2026年の準則改正は確認できていません。

UAV写真で点群をつくる測量では、点群の位置精度を3つの区分から選び、検証点との差が許容範囲に入るかで合否を判定します。どの手順で撮るかを細かく定めつつ、最後は成果の精度で判断する仕組みが、すでに組み込まれているわけです。

新技術の入口は「第17条」

準則第17条は、準則にない機器や方法でも、必要な精度と作業効率が確保できれば使えると定めています。国土地理院がマニュアルを公表している技術なら、実施計画書にマニュアル名を書けば使えます。マニュアルがない新技術は、計画機関や作業機関が自ら精度を検証し、国土地理院長の意見を聴いたうえで使います。

現場ごとに第17条で精度を検証して使う → 国土地理院がマニュアル化 → 普及したら準則本体に統合UAVレーザーは2018年のマニュアル化から2023年の準則統合まで約5年。ハンディ型などのLidarSLAMは2022年6月にマニュアル化され、2026年3月に改正

出典・参考資料

測量行政懇談会と、次の地理空間情報活用推進基本計画

国土地理院の測量行政懇談会は、学識者に加え、日本測量協会、日本測量調査技術協会、全国測量設計業協会連合会などの代表が委員を務める場です。2026年3月4日の第32回では、次期(第5期)の地理空間情報活用推進基本計画に向けた「測量行政分野の考え方」と、測量資格制度が主な議題になりました。

  • 「考え方」の文書は、建設分野ではドローンの活用で短時間・広範囲の測量や立入困難な場所の測量ができるようになり省人化が進んだこと、出来形管理に使える3次元計測技術が数多く普及したことを、社会の動向として挙げています
  • 取りまとめにあたっては、産学官へのアンケートや有識者へのヒアリングを行ったと明記しています
  • 施策としては、公共測量の情報提供や手続きのDX、電子国土基本図の3次元化と更新頻度の向上、高精度な3次元点群データの整備・更新などを挙げています

方針・制度化予定第5期の基本計画は、2026年6月の地理空間情報活用推進会議で骨子(案)がまとまった段階です。3次元・4次元の地理空間情報とデジタルツインの本格的な実装、電子国土基本図の3次元化、i-Construction 2.0などが盛り込まれています。閣議決定の時期は公表されていません(第4期は2022年度からの5年間の計画です)。

出典・参考資料
注意|「性能規定化」は国が明言した方針ではありません

公共測量の仕様を「方法の指定」から「成果の精度の指定」へ切り替えると、国土地理院や国土交通省が明言した資料は確認できませんでした。一方で、精度区分と検証点による判定、第17条の特例、計測システム全体の性能を試験で確かめる考え方など、成果の精度で評価する仕組みは少しずつ広がっています。このブログの後半で、この点を予測として扱います。

空の制度は、測る「頻度」を変える

ここで空の制度に戻ります。建設・測量から見ると、空の制度の変化が効いてくるのは「1回の測量が楽になる」ことより、定期的に、遠くまで、少ない人数で飛ばせるようになることです。

河川巡視:レベル3.5を業務に組み込む手引きができた

実施済み国土交通省は2024年11月から2026年2月まで検討会を開き、2026年3月に「ドローンを活用した河川巡視・点検の適用の手引き(Ver1.0)」と「長距離飛行型ドローンの要求性能(案)」を公表しました。全国104の河川事務所のうち64事務所に、ドローンを使った実績があります。

  • 当初のロードマップでは、2026年度から各地方整備局でレベル3.5による河川巡視を約10kmの区間で実装し、2029年度ごろに堤防を加え、2034年度には全国の直轄管理区間でレベル4へ、という段階が描かれています
  • 2026年2月の検討会では、月1回程度の巡視を置き換える「スモールスタート」が現実的とされ、AIによる異常の自動検出は2026年度には実装しないことになりました。実証でのAIの検出率(再現率)は、車両が約7割、人物が約6割、土のうは1割以下でした
  • 長距離飛行型の要求性能(案)は、VTOL(垂直離着陸型)を想定し、無風時に40km以上の連続飛行、河川管理用の自営通信を主回線にすること、サイバーセキュリティやサプライチェーンの安全性への配慮などを挙げています

関東地方整備局の荒川上流河川事務所は2025年12月、入間川の約1.6kmでレベル3.5の自動飛行を行い、UAVレーザー計測の位置精度が水平で最大3.3cmの誤差だったと報告しています。

出典・参考資料

多数機同時運航:1つの拠点から複数のドックを回す前提が整い始めた

実施済み国土交通省の多数機同時運航のガイドラインは、2025年3月の第一版で操縦者1人あたり5機までとしていましたが、2026年6月の第二版で機数の上限をなくしました。機数を段階的に増やし、リスク対策が機能するかを確かめることが前提です。

SkyLink Japan予測建設・測量で意味が大きいのは、「複数の現場 × 複数のドック × 複数の機体」を1つの運航拠点から管理する形が現実味を帯びたことです。第1回で紹介したように、大林組は東京から群馬や石川の現場のドックを遠隔で運航し、地域の建設会社でも本社の「DXルーム」から現場のドックを動かす例が出ています。現場ごとに操縦者を置く形から、運航センターが複数の現場の定期計測をまとめて担う形へ移っていくと見ています。

出典・参考資料

ドローン航路:線状インフラの手続きをまとめて引き受ける仕組み

実施済み経済産業省などが進める「デジタルライフライン全国総合整備計画」(2024年6月決定)では、2025年3月に秩父地域の送電線上空(約150km)と、浜松市の天竜川水系上空(約180km、うち約30kmで商用運用)に「ドローン航路」が開通しました。航路を運営する事業者が、リスク評価や地域の関係者との調整を事前にまとめて行うことで、運航する事業者の手続きの負担を減らす仕組みです。浜松の航路は物流と河川巡視・点検を両立させる使い方を想定しています。

方針・制度化予定目標は、河川上空で2027年度に100km、2033年度に1万km、送電網上空で2027年度に1万km、2033年度に4万kmです。航路を認証・登録する制度は2026年度の開始を目指しています。

出典・参考資料

規制改革:業界の要望が、政府の実施計画の項目になった

2025年11月の規制改革推進会議のワーキング・グループでは、日本産業用無人航空機工業会が、VTOLの技能証明の見直し、レベル3.5での「第三者」の扱いの明確化、5.8GHz帯の実験環境の拡大、低軌道衛星通信の活用を要望しました。これらのテーマは、2026年7月に閣議決定された規制改革実施計画の項目になっています。ただし、人口密度などの統計量で無人地帯を判定するという具体案は採用されていません。会議の中間答申によると、レベル3.5の実績は2025年末時点で479件です。

建設現場や測量に特化した規制改革の項目は、今回の調査では確認できませんでした。建設・測量から見た空の制度の論点は、レベル3.5の運用の明確化と、多数機・ドック運用の拡大に集約されます。

出典・参考資料

国主導か、業界主導か――仮説を検証する

ここまでの制度の動きは、国が一方的に決めたものか。それとも、ゼネコン・建設コンサル・測量業界の実証や要望を受けて国が変えたものか。公開資料を時系列で並べると、どちらか一方だけでは説明できません。

協議の場には、業界団体が常任の委員として入っている

会議主催業界側の委員(例)主な決定・議題
ICT導入協議会(2016年〜、第23回 2026年6月)国土交通省日本建設業連合会、全国建設業協会、建設コンサルタンツ協会、全国測量設計業協会連合会、日本測量調査技術協会、日本測量システム工業会などICT施工の対象拡大、原則化、技術基準の拡大
BIM/CIM推進委員会国土交通省日本建設業連合会、建設コンサルタンツ協会、全国測量設計業協会連合会、日本測量調査技術協会など原則適用の内容、3Dモデルの契約図書化
測量行政懇談会(第32回 2026年3月)国土地理院日本測量協会、日本測量調査技術協会、全国測量設計業協会連合会など次期基本計画の測量行政分野、資格制度

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出典・参考資料

「業界の実績や提案が先にあり、国が基準にした」ことが確認できる例

  • 民間提案から要領へ:国土技術政策総合研究所は2019年度から、ICT施工の技術を民間から募り、机上の調査、現場での精度検証を経て要領に反映する制度を運用しています。2026年度版までに35技術が基準類に反映されました。スマートフォンを使った面管理や地上写真測量は2022年3月に要領化され、ハンディ型LiDAR SLAMは現在も現場で検証中です
  • 実績を根拠に原則化:ICT土工と河川浚渫工は、受注者による実施の実績が積み上がったことを根拠に、協議会で2025年度からの原則化が決まりました。原則化のあとも費用は計上を続けると国交省は答えています
  • 日建連の提案に国交省が応える:国土交通省と日本建設業連合会の意見交換を受け、直轄トンネルでの省人化(自動施工)の試行(2025年度)や、遠隔臨場の通信費を協議の対象とすることの周知(2026年度)などが施策化されています
  • 民間の実装が先行:鹿島建設の成瀬ダムでは2020年7月から自動化施工が始まっていました。国の「自動施工における安全ルール」は、企業も参加した現場検証を経て2024年3月に策定されています(ただし、ルールの本文は個別の現場に触れておらず、直接の因果までは資料から確認できません)

「国が先に動いた」例もある

  • i-Construction 2.0の目標(2024年4月):国が長期目標を示し、日本建設業連合会はその後の2025年12月に、独自の生産性向上の目標を掲げる要綱をまとめています
  • 遠隔臨場:国の試行(2020年度)から始まり、2022年度に原則化されました。その後の運用改善には業界の意見が反映されています
  • レベル3.5:政府の規制改革の議論の中で、2023年12月に短期間で新設されました。背景に事業者の要望はありましたが、主な用途として想定されたのは物流でした
  • UAVレーザーのマニュアル改正:国土地理院が日本測量調査技術協会に調査を委託し(2019〜2020年)、2020年3月に改正しました。国が業界の専門知を取り込む形です

測量業務の諸経費率のように、全国測量設計業協会連合会の要望(2024年11月)の後に積算基準が改定され(2025年度)、同会が翌年に謝意を示した例もあります。ただし国土交通省は、率の設定は自らの実態調査にもとづくと説明しています。要望が決め手だったとは言えず、要望と国の調査が並行して制度改定に至った例です。

出典・参考資料

見えてきたのは「循環」だった

以上を並べると、制度は次のような循環で動いていると整理できます。

  1. 国人口減少と人手不足を背景に、長期の政策目標と制度の枠(i-Construction、提案の募集制度、協議会)をつくる
  2. 企業ゼネコン、建設コンサル、測量会社、メーカーが技術を開発する
  3. 現場実際の工事で試行・実証する
  4. 業界団体課題や制度上の問題を整理し、要望する
  5. 産学官の協議会業界団体が委員として入り、基準や原則化を議論する
  6. 国土交通省・国土地理院要領・基準・作業規程を改正する
  7. 公共工事新しい技術が採用され、実績が積み上がる
  8. 適用拡大対象の工種・用途が広がり、原則化・標準化される

↺ そして次の新しい技術が、再び「企業」の段階から入ってくる

国が「入口」と「目標」をつくり、業界が「中身」と「実績」を持ち込み、業界団体が加わる協議会で「原則化」を決める。制度はこの二重構造の循環で進んでいます。

A・B・Cに分けると、いま何が「次に来る」かが見える

調べた動きを、A(国が先行して進めているもの)、B(業界・企業の実証や要望を受けて制度化されたもの)、C(実証・要望・議論の段階で、今後制度化される可能性があるもの)に分けました。

分類項目確認できる流れ
Ai-Construction 2.0の長期目標国が2024年4月に目標を設定し、業界団体が後から独自目標を設定
ABIM/CIMの原則適用国の方針として2023年度から直轄で原則適用
Aレベル3.5飛行の新設政府の規制改革の議論の中で2023年12月に新設(背景に事業者の要望)
B民間提案技術の要領化(スマートフォンでの面管理、地上写真測量など)民間の提案 → 現場での精度検証 → 要領化(累計35技術)
BICT土工・浚渫工の原則化国の枠組み(2016年)→ 受注者の実績の積み上げ → 協議会で原則化(2025年度)
BUAVレーザーの準則統合マニュアル化(2018年)→ 業界団体への調査委託と実績の蓄積 → 準則に統合(2023年)
B自動施工の安全ルール民間の実装(2020年〜)→ 官民協議会と現場検証 → ルール化(2024年)。直接の因果は推定
B直轄トンネルでの省人化(自動施工)の試行日建連の提案 → 国交省が試行(2025年度)
CLiDAR SLAMによる出来形管理の要領化民間提案で検証が進み、2026年度も実際の現場で確認中
CICT舗装工の原則化発注者指定型の拡大を段階的に進めている
C3Dモデルの契約図書化2026年度に試行・準備、2027年度の本格導入を目指す
CBIM/CIM費用の標準歩掛化建設コンサルタンツ協会が要望。現在は見積による計上が続く

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。分類は公開資料で確認できる時系列にもとづくSkyLink Japanの整理です。

出典・参考資料

C群に並ぶのは、いずれも「3Dデータで管理・契約・積算する」方向の項目です。B群の流れがこれまでどおり繰り返されるなら、C群は2027〜2030年に順次制度化の段階へ進むと考えられます。

2027〜2030年、SkyLink Japanの予測

SkyLink Japan予測ここからは、政府が決定した未来ではありません。公開情報、政策の工程、企業の実証をもとに、SkyLink Japanが予測する将来像です。確度は私たちの評価です。

予測根拠にした公表情報確度
1. ICT施工の対象工種がさらに広がり、UAV・LiDAR・3D計測を使う機会が増える舗装工の発注者指定型の拡大、固結工の原則化、導入型ICT活用工事、民間提案制度高
2. 「この測量方法を使う」という仕様の指定から、「要求精度を満たす3D成果を出す」という性能の指定へ、少しずつ進む準則の精度区分と検証点での判定、第17条、LidarSLAMマニュアルの改正、出来形管理要領の共通化と面管理、3Dモデルの契約図書化中
3. 大規模な土工・ダム・トンネルでは、ドックを常設した定期計測が標準的な選択肢の一つになる大林組の1年常設・週次計測、中堅・地域の建設会社への広がり、レベル3.5の活用中〜高
4. 複数の現場・ドック・機体を1つの運航センターで管理するサービスが広がる多数機同時運航ガイドライン第二版(上限撤廃)、遠隔運航の実例中
5. 測量段階の点群が、設計・施工・検査・維持管理へそのまま流れるようになるBIM/CIMの義務項目、3Dデータ共有システムの試行、維持管理段階の要件定義(2027年度)中
6. 河川・送電線など線状インフラでは、レベル3.5・VTOL・ドローン航路による定期巡視が一部の業務を置き換える河川巡視の手引きVer1.0と要求性能(案)、ドローン航路の距離目標中(当面は月1回程度の置き換えから)
7. 自治体や中小規模の工事では、計測を「機材の購入」ではなく「データが届くサービス」として調達する形が増えるC・Dランク企業のICT施工経験58.4%、技術系職員のいない市区町村、導入型ICT活用工事中

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

SkyLink Japan予測|予測2「性能規定化」が進むときの目安

完全に切り替わるのではなく、「方法の指定」と「成果の精度の指定」が併存しながら、後者の比重が増えていくと見ています。その目安になるのは次の3点です。

  • 出来形管理で、計測技術の種類を問わず、面の精度と密度で判定する規定が広がるか
  • LiDAR SLAMのように、機器単体ではなく「計測システム全体の性能試験」で認める方式が他の手段にも広がるか
  • 3Dモデルの契約図書化に合わせ、発注の仕様書が「何で測るか」より「どの精度・形式で渡すか」を書くようになるか
SkyLink Japan予測|予測3・4「ドック×運航センター」が広がるときの条件
  • 通信:山間部や被災地では、携帯電話網と衛星通信の二重化が前提になる
  • 機体の選び方:国の長距離ドローンの要求性能(案)がサプライチェーンの安全性に触れているように、公共分野では調達要件が機体選定に影響する
  • 人:現場の操縦者が減る代わりに、運航管理や精度の検証、データの品質を説明できる人材が必要になる
  • 費用:ドックや運航サービスの費用が、積算や発注の中でどう扱われるかが普及の速さを左右する

「ドローン測量」という作業はなくなるのか

連載の最後の問いです。人が現場へ行き、ドローンを飛ばし、事務所で処理するという独立した作業としての「ドローン測量」は、なくなるのでしょうか。

SkyLink Japan予測私たちの答えは、「独立した作業としてのドローン測量は縮小していく。ただし、測量という行為は消えない」です。

縮小していくと考える理由は、ここまで見てきた変化がすべて同じ方向を向いているからです。ドックからの自動計測、常設LiDAR、重機のセンサー、施工履歴データ、衛星やVTOLによる広域の計測が、現場の3Dを継続的に更新していきます。出来形の管理と検査が3Dモデルの上で行われ、3Dモデルが契約図書になれば、「測量のために現場へ行く日」は大きく減るはずです。

一方で、なくならないものもあります。

  • 精度の保証:基準点、標定点や検証点による精度の確認と、その結果を説明する責任
  • 成果への責任:公共測量の成果として認められる手続きと、測量士の役割
  • 例外の現場:GNSSも通信も届かない場所、形状が複雑な構造物、災害直後の現場
  • 異常時の判断:データに異常が出たとき、現地で確かめる判断

「測量を実施する日」はなくなっていき、「測量された状態が保たれ続ける」現場へ。2030年時点でそこに届くのは、大規模な現場や線状インフラの一部だと私たちは見ています。

その世界に近づく条件は、3D成果の精度の考え方が整理されること、契約と検査が3Dを前提にすること、多数機・ドック運用の許可が定型化されること、通信が二重化されること、データを受け渡す基盤ができること、そして費用が積算の中で正しく扱われることです。どれも、このブログで見た制度の「C群」に重なっています。

立場ごとに、いまから準備しておきたいこと

立場準備しておきたいこと
ゼネコン・建設会社工種ごとに「どの頻度で、どの精度の3Dが必要か」を決める/ドックと運航を自社で持つか、外部の運航サービスを使うかを比較する/点群とBIM/CIMの座標・属性のルールを社内でそろえる
測量会社・建設コンサル検証点の配置や第17条の精度検証を、手順として型にしておく/「飛ばして納める」から「データを更新し続けて渡す」サービスへの移行を検討する/遠隔運航・多数機運航の体制と資格を計画的にそろえる
発注者・自治体3D成果で受け取るための仕様・検査の準備を進める/導入型ICT活用工事などで小規模な工事から経験を積む/受け取ったデータを保管し、維持管理で使える形で共有する仕組みを考える

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

ドローン測量は「作業」から「工程に組み込まれたデータ」へ

第1回と第2回を通して見えてきたのは、ドローン測量が「標準工程」になるかどうか、という問い自体が変わりつつあることです。ドローンによる測量は、公共測量の準則にも、ICT施工の要領にも、すでに組み込まれています。これから起きるのは、測量が一つの独立した工程であることをやめ、3Dデータを中心に組み直された工程の中に溶け込んでいく変化です。

その変化は、国が一方的に進めるものでも、業界だけで進められるものでもありません。現場の実証と実績が基準を動かし、基準が次の現場を変える。この循環のどこに自社が関わるかが、2027〜2030年の建設現場での立ち位置を決めていくと考えています。

用語メモ
ICT施工
3次元の測量データや設計データを使い、ICT建機などで行う施工。起工測量から出来形管理までを3Dデータで行う
出来形管理
完成した構造物や土工の形状・寸法が規格を満たしているかを確認・記録すること
原則化
対象となる工事では、例外を除き原則として必ず適用すること
BIM/CIM
3次元モデルに属性情報を持たせ、調査・設計・施工・維持管理の各段階で共有・活用する取り組み
作業規程の準則
国土地理院が定める、公共測量の標準的な作業方法と精度の基準
レベル3.5飛行
技能証明・保険・機上カメラを条件に、補助者などの配置を代替して行う無人地帯での目視外飛行
多数機同時運航
1人の操縦者が複数の無人航空機を同時に運航すること
ドローン航路
航路運営者がリスク評価や地域との調整を事前に行い、複数の事業者が使えるようにした飛行経路

制度の変化が自社の測量・施工管理にどう関わるか、整理したい段階からご相談ください

ドックを使った定期計測の設計、3D成果の精度検証の考え方、遠隔運航の体制づくり、ICT施工やBIM/CIMに合わせたデータの受け渡しについて、SkyLink Japanにご相談いただけます。

いまの機材と運用の見直しで対応できる部分と、機材・体制・外部サービスの追加が必要な部分を分けて整理するところから始めます。

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