ヒーローはAI生成の概念イメージです。実際の攻撃・施設・製品を撮影したものではありません。
夜通し飛来するドローンを、一機ずつ追い続けられるか。
2026年10月19日朝、ウクライナでは少なくとも55万世帯が停電しました。ロシアによる夜間の攻撃には、ミサイルと269機の無人機が使われたとウクライナ側は発表しています。
多数の目標がセンサーの画面に現れると、担当者は位置を追いながら、鳥や囮、攻撃用の機体を見分けなくてはなりません。見失ったり、別の目標と取り違えたりすれば、その後の対処にも影響します。
C-UAS(Counter-Unmanned Aircraft Systems:対ドローンシステム)は、不審な無人機を探知・追尾・識別し、必要に応じて対処するシステムです。このブログでは、ウクライナの事例からセンサーの働きと迎撃コストをたどり、日本の民間施設での通報・退避の準備まで取り上げます。
無人機とミサイルの攻撃で、55万世帯以上が停電
ウクライナ空軍の発表を転載したCensor.netによると、ロシアは10月19日朝までの夜間攻撃で、弾道ミサイル(イスカンデルM、S-400)、巡航ミサイル(イスカンデルK)と、囮を含む無人機269機を使いました。Shahed(シャヘド)型、S-8000、Gerbera(ゲルベラ)や、囮の「パロディヤ」型などが含まれます。このうち、ジェット推進のShahed型が59機とされています。
同日9時(現地時間)の暫定発表では、電子戦部隊や機動射撃班などが巡航ミサイル4発と無人機243機を撃墜または無力化したとしています。一方、25か所で着弾があり、8か所では撃墜した機体の破片が落ちました。発表時点でも攻撃は続いていました。
ウクライナ内務省は、エネルギー・民間インフラの被害が11州に及んだと伝えています。同省が掲載したゼレンスキー大統領の説明によると、キーウとキーウ州には弾道ミサイル16発が飛来し、エネルギー施設10か所超が損傷、少なくとも55万世帯が停電しました。
囮を含む
無人機の暫定値
269機の内数
この数字から、ある瞬間に何機が空中にいたか、同じ施設へ何機が接近したかは分かりません。一夜の累計と、センサーが同時に追尾する機数は分けて読む必要があります。
ジェット推進のShahed型59機のうち、撃墜・無力化されたのは43機(約73%)。それ以外は210機中200機(約95%)でした。割合は空軍の暫定発表から編集部が計算した値です。後者には囮なども含まれ、飛来条件や対処手段もそろっていないため、この差を速度だけで説明することはできません。
出典・参考資料
- Censor.net:ウクライナ空軍の2026年10月19日発表の転載(269機、ジェット推進のShahed型59機、撃墜・無力化243機など。同日9時時点の暫定値。原投稿は直接確認できず、転載内容で照合。)
- ウクライナ内務省:2026年10月19日の攻撃被害に関する発表(11州の被害、弾道ミサイル16発、エネルギー施設10か所超、55万世帯以上の停電に関する大統領発言。)
多数の目標を追い続け、鳥や囮と見分ける
同時追尾数は、位置を更新する速さとあわせて比べる
探知は「何かがいる」と捉えること。追尾は、その目標の位置と速度を更新しながら、同じ機体として追い続けることです。探知できる距離が長くても、多数の目標を追い続けられるとは限りません。
追尾が不安定になると、位置情報の更新が遅れる、別の機体を同じ機体として追う、機体の表示が消えるといったことが起こり得ます。交差した2機の追尾番号が入れ替わる現象は「トラックスワップ」と呼ばれます。
メーカーには、「何機を同時に追えるか」と「その状態で位置を何秒ごとに更新するか」をあわせて尋ねます。試験に使った機体の大きさや速度もそろえて比べます。

レーダー・RF・カメラは、捉えられるものが違う
レーダーは、反射した電波から目標の距離や速度を捉えます。光に頼らないため夜間も使えますが、天候の影響は方式や周波数によって異なります。小型ドローンは反射が小さく、鳥や地面・建物からの反射(クラッタ)に紛れたり、低空で建物の陰に隠れたりすると、捉えにくくなります。国内で使う周波数と無線局免許の要否も調べます。
RFセンサーは、操縦や映像伝送などの電波を受信します。機種や操縦者の位置を推定できる場合もあります。ただし、自律飛行する機体が、操縦用の電波を出し続けているとは限りません。
EO/IR(可視光・赤外線カメラ)は、機体を映像で確かめ、記録するために使います。レーダーなどが捉えた目標へカメラを向ける使い方があります。視野や見通しに制約があり、霧や雨の影響を受けます。可視光カメラでは逆光にも注意が必要です。
米シンクタンクCSISは、ウクライナの高い迎撃率を支える仕組みとして、音響センサー、移動式の防空チーム、電子戦の連携を挙げています。タブレットでも見られる共通の状況図を使い、各部隊が情報を共有しています。

鳥や許可機を不審機と誤認すると、警備の負担が増える
囮を攻撃用の機体と取り違えると、限られた迎撃手段を囮に使ってしまいます。民間施設でも、鳥や風船、許可を得た点検用ドローンを不審機と誤認すれば、そのたびに担当者が映像を確かめたり、作業を止めたりする負担が生じます。
誤警報が続くと、担当者が警報を軽く扱う「警報疲れ」につながるおそれもあります。探知距離とあわせて、一定時間あたりの誤警報件数と、その処理にかかる人員・時間を比べます。
探知距離は、試験に使った機体と環境まで確かめる
複数のセンサーが捉えた情報を、同じ目標の情報としてまとめることをセンサーフュージョンと呼びます。センサーごとの弱点を補えますが、同じ機体を二重に表示したり、別の機体を一つにまとめたりする誤りには注意が必要です。
カタログの最大探知距離を比べる際は、試験に使った機体の大きさ、高度、背景、天候を調べます。その距離での誤警報件数や、メーカーの社内試験か第三者試験かも確かめます。導入前の試験では、自社施設の建物や地形に近い条件を用意できるか相談します。
出典・参考資料
- 米連邦航空局(FAA):UAS Detection – Technical Considerations(2019年)(センサー、同時追尾、更新頻度、識別、データ管理などの技術上の確認項目。日本の法的要件を示す資料ではありません。)
- CSIS:Calculating the Cost-Effectiveness of Russia’s Drone Strikes(2025年2月19日)(Shahed型の費用推計、PAC-3との価格差、複数手段を連携させる防空。推計値と分析上の仮定を含みます。)
- Censor.net:ウクライナ空軍の2026年10月19日発表の転載(269機、ジェット推進のShahed型59機、撃墜・無力化243機など。同日9時時点の暫定値。原投稿は直接確認できず、転載内容で照合。)
迎撃ミサイルは高価で、増産にも時間がかかる
CSISは2025年の分析で、Shahed型の単価を1機3万5,000ドルと仮定しています。推計には幅があります。同じ分析でPatriotの迎撃ミサイル(PAC-3)は300万ドル超とされ、単純な単価の差は80倍以上になります。
補給にも時間がかかります。ロッキード・マーティンが公表したPAC-3 MSEの2025年の納入数は620発。2026年1月には、年約600発の生産能力を約2,000発へ拡大する7年間の枠組みを発表しました。いずれも全世界向けの数字で、ウクライナへの供給量ではありません。
10月19日のウクライナ大統領府の発表でも、同社との会談でPatriot迎撃ミサイルの共同生産や生産拡大を話し合ったとしています。
ウクライナでは、高価な迎撃ミサイルに加え、電子戦、迎撃用ドローン、機関砲などを組み合わせて対処しています。弾道ミサイルへの備えも必要ななか、安価なドローンへの対応で弾薬を使い続けることには、費用と補給の両面で制約があります。
迎撃手段の費用を比べる際には、機器や弾薬の単価に加え、迎撃成功率、1機に必要な弾数、補給にかかる時間を見ます。日本の民間施設では、探知・映像確認・記録・通報に必要な機器費、運用人員、保守費と、施設が停止した場合の損失を見積もります。迎撃方法ごとの費用や特徴は、「迎撃ドローンと自爆型ドローンの違い」でも解説しています。
出典・参考資料
- CSIS:Calculating the Cost-Effectiveness of Russia’s Drone Strikes(2025年2月19日)(Shahed型の費用推計、PAC-3との価格差、複数手段を連携させる防空。推計値と分析上の仮定を含みます。)
- Lockheed Martin:PAC-3 MSE増産に関する発表(2026年1月6日)(2025年の納入620発、年約2,000発への生産能力拡大を目指す7年間の枠組み。メーカー公表値。)
- ウクライナ大統領府:Lockheed Martinとの会談(2026年10月19日)(Patriot迎撃ミサイルの共同生産や生産拡大に関する協議。実際の契約・供給完了を示すものではありません。)
日本の民間施設では、探知・記録と警察への通報を準備する
飛行禁止の対象施設と、敷地周辺の規制を調べる
日本では、航空法と小型無人機等飛行禁止法がドローンの飛行を規制しています。小型無人機等飛行禁止法は2026年7月14日に改正法が施行され、対象施設周辺の飛行禁止区域(イエローゾーン)が、おおむね300mから1,000mに広がりました。イエローゾーンでも、法に違反して飛行する行為自体が罰則の対象です。
対象には、国会や首相官邸などの国の重要施設、外国公館、自衛隊・在日米軍の施設、指定された空港、原子力事業所などがあります。原子力以外の発電所、変電所、石油備蓄基地、港湾は、施設の種類だけで一律に対象になるわけではありません。
自社施設については、対象施設の指定とその周辺区域、航空法の空域規制、条例などを調べます。隣接する別の対象施設に伴い、飛行が制限されている場合もあります。
探知装置の導入と、妨害・迎撃の権限を分けて確認する
小型無人機等飛行禁止法では、警察官などが違反機を飛ばす者に退去などを命じ、一定の条件のもとで飛行の妨害や機器の破損といった措置をとれます。施設管理者に措置を命じる場合もあり、自衛官や空港管理者にも、対象施設などに応じた権限が定められています。
電波を発射する妨害装置(ジャマー)には、電波法上の制約もあります。原則として無線局の開設には免許が必要で、他の無線局の運用を阻害する混信等を与えないことも求められます。施設管理者が自らの判断で、海外と同じ妨害・迎撃手段を使えるわけではありません。
- 不審な飛来を捉え、映像などで確かめる
- 安全を確保しながら映像やログを残す
- 警察と施設の警備責任者への連絡先を決める
- 作業停止、退避、重要設備の保護を行う条件と担当者を決める

ドローンの目撃情報だけで、空港の運航が止まった
国土交通省によると、2019年には関西国際空港周辺で小型無人機らしき物体の目撃情報があり、滑走路が利用できなくなる事案が3回続きました。
ミュンヘン空港と警察の共同発表では、2025年10月2日夜にドローンの目撃情報を受けて運航を停止し、翌3日朝に再開しています。
施設の業務は、被害が出る前でも安全確認のために止まることがあります。警備担当者には、目撃された物体を映像などで確かめ、警察や施設管理者と再開の可否を判断できる情報を共有する手順も必要です。
出典・参考資料
- 警察庁:小型無人機等飛行禁止法関係(対象施設、飛行禁止区域、例外、警察官等の措置、罰則。)
- 警察庁:小型無人機等飛行禁止法に関する警察からのお知らせ(2026年改正の公布日・施行日、周囲おおむね1,000mへの拡大。)
- e-Gov法令検索:電波法(第4条の無線局免許、第56条の混信等の防止など。装置の使用可否は個別確認が必要です。)
- 国土交通省:無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール(航空法による飛行規制と関連手続き。)
- 国土交通省:主要8空港周辺での飛行禁止に関する発表(2020年7月15日)(2019年の関西国際空港周辺で滑走路が利用できなくなった3回の事案。制度の現行説明には警察庁の最新資料を使用。)
- ミュンヘン空港・連邦警察等の共同発表(2025年10月3日更新)(2025年10月2日の目撃情報を受けた運航停止と、翌朝の再開。)
C-UASを比べる8項目:追尾数・誤警報・保守費まで
メーカー資料と試験結果では、次の8項目を比べます。特に追尾数や探知距離は、試験に使った機体や測定条件をそろえて読みます。
C-UASの製品比較で確かめる8項目
| 比較項目 | メーカーや試験結果で確かめること | 導入時の注意点 |
|---|---|---|
| 探知距離と測定条件 | 機体の大きさ・高度・背景、昼夜・天候 | 最大距離を測った条件が、自社施設の環境と合っているか |
| 同時探知・同時追尾数 | 上限の機数と、その状態で位置を更新する間隔 | 探知した機数と、追い続けられる機数を分けて読む |
| 識別精度・誤警報 | 鳥・風船・許可機との判別、一定時間あたりの誤警報件数 | 警報の確認に必要な担当者と作業時間も見積もる |
| センサー同士の連携 | レーダー・RF・EO/IR・音響の組み合わせと、カメラの自動指向 | 同じ機体の重複表示や、別の機体との取り違えを試験する |
| 既存の警備設備との接続 | 監視カメラ、警備システム、通報手段との接続方法 | 自社で使っている設備と接続できるかを確かめる |
| 導入後もかかる費用 | 導入費、保守費、ソフトウェアのライセンス費、教育・訓練費 | 年額費用と運用人員を含めた総額で比べる |
| 国内での使用条件 | 技術基準への適合、無線局免許の要否、設置手続き、対処手段の可否 | 海外での導入実績と、日本で使用できる条件を分けて確かめる |
| データ管理と保守 | 保存先、通信経路、国内の修理窓口、交換部品の供給期間 | 保守終了の時期と、故障時に運用を戻すまでの手順を調べる |
導入前に、通報先・退避手順・運用担当者を決める
警報が出た後、誰が映像を確かめ、誰が警察に連絡するのか。機器とあわせて、担当者の動きを決めておきます。
例えば、警報を受けた担当者が映像を確かめ、警備責任者を通じて警察へ連絡する、といった連絡経路を決めます。作業を止める条件や退避を呼びかける担当者も、施設の状況に応じて定めておきます。
機器を選ぶ段階では、建物や地形による死角、日中と夜間の見え方、誤警報の確認にかかる時間を実地で試します。探知から通報・退避までを通して訓練し、人員と保守費も含めて運用を続けられるか確かめてから、導入を決めます。
施設の点検・撮影に使うドローンの導入相談
SkyLink Japanでは、施設の点検・撮影に使うドローンや撮影機材の選定、実証、導入・運用を支援しています。撮影したい対象、必要な映像、現場の条件をお聞かせください。
※SkyLink Japanは民生・産業用ドローンを取り扱っています。このブログは、迎撃装備や電波妨害装置の導入をご案内するものではありません。
出典・参考資料
出典・参考資料の一覧(13件)
確認日:2026年10月22日。発表主体の公表値、転載報道、分析上の推計を区別して使用しています。
- Censor.net:ウクライナ空軍の2026年10月19日発表の転載(269機、ジェット推進のShahed型59機、撃墜・無力化243機など。同日9時時点の暫定値。原投稿は直接確認できず、転載内容で照合。)
- ウクライナ内務省:2026年10月19日の攻撃被害に関する発表(11州の被害、弾道ミサイル16発、エネルギー施設10か所超、55万世帯以上の停電に関する大統領発言。)
- 米連邦航空局(FAA):UAS Detection – Technical Considerations(2019年)(センサー、同時追尾、更新頻度、識別、データ管理などの技術上の確認項目。日本の法的要件を示す資料ではありません。)
- CSIS:Calculating the Cost-Effectiveness of Russia’s Drone Strikes(2025年2月19日)(Shahed型の費用推計、PAC-3との価格差、複数手段を連携させる防空。推計値と分析上の仮定を含みます。)
- Lockheed Martin:PAC-3 MSE増産に関する発表(2026年1月6日)(2025年の納入620発、年約2,000発への生産能力拡大を目指す7年間の枠組み。メーカー公表値。)
- ウクライナ大統領府:Lockheed Martinとの会談(2026年10月19日)(Patriot迎撃ミサイルの共同生産や生産拡大に関する協議。実際の契約・供給完了を示すものではありません。)
- 警察庁:小型無人機等飛行禁止法関係(対象施設、飛行禁止区域、例外、警察官等の措置、罰則。)
- 警察庁:小型無人機等飛行禁止法に関する警察からのお知らせ(2026年改正の公布日・施行日、周囲おおむね1,000mへの拡大。)
- e-Gov法令検索:電波法(第4条の無線局免許、第56条の混信等の防止など。装置の使用可否は個別確認が必要です。)
- 国土交通省:無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール(航空法による飛行規制と関連手続き。)
- 国土交通省:主要8空港周辺での飛行禁止に関する発表(2020年7月15日)(2019年の関西国際空港周辺で滑走路が利用できなくなった3回の事案。制度の現行説明には警察庁の最新資料を使用。)
- ミュンヘン空港・連邦警察等の共同発表(2025年10月3日更新)(2025年10月2日の目撃情報を受けた運航停止と、翌朝の再開。)
- SkyLink Japan:ドローン導入・事業開発支援(機体選定、実証、導入・運用設計、映像伝送・記録取得の支援範囲。)
情報確認日:2026年10月22日。個別の導入にあたっては、設置場所・機器・用途に応じた最新の法令と使用条件を確認してください。
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