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下水道点検の未来|ドローン・ロボット・AIによる次世代インフラ点検

下水道点検の未来|ドローン・ロボット・AIによる次世代インフラ点検とは

本記事について
本記事は2026年8月時点で公表されている情報をもとに構成しています。全国特別重点調査の結果や点検基準は今後更新される可能性があるため、最新の情報は国土交通省等の発表をご確認ください。

今週8月4日(火)から7日(金)まで、東京ビッグサイトで「下水道展’26東京」が開催されています。

下水道分野では国内最大規模の展示会です。八潮市の道路陥没事故から1年半。今年は例年にも増して、ドローンや点検ロボット、AI解析といった「人が管路に入らない点検」への注目が高まっています。

そこで今回は、この開催に合わせて「下水道点検の未来」をテーマにブログを書いてみました。

いま下水道点検の現場で問われているのは、
「人を管路に入れずに、どこまで管の状態をつかめるか」です。

2025年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、下水道という「見えないインフラ」の老朽化リスクを社会全体に突きつけました。事故を受けて国土交通省は全国の自治体へ特別重点調査を要請。その結果、対策が必要な管路が全国で748kmにのぼることが明らかになっています。

酸欠、硫化水素、崩落リスク。人が管路に入る点検には、もともと大きな危険が伴います。そこにいま、ドローン・点検ロボット・AI解析という選択肢が急速に現実のものになりつつあります。

本記事では、次の4点を解説します。

  • 八潮市事故と全国特別重点調査で見えてきた、下水道管路の現在地
  • なぜ「人による点検」だけでは立ち行かないのか
  • ELIOS 3・IBIS2・ASIO Xをはじめとする点検ロボットの用途別比較
  • ドローン→3D→AI→デジタルツインへ。下水道維持管理はどこへ向かうのか

八潮市の陥没事故が明らかにしたもの

2025年1月28日の朝、埼玉県八潮市の県道交差点で道路が陥没し、走行中のトラックが転落。運転手の男性が亡くなるという痛ましい事故となりました。

陥没穴は当初の直径約10mから、約1週間で直径約40mまで拡大。周辺の約120万人に下水道使用の自粛が要請されるなど、社会生活への影響は極めて大きいものでした。

原因究明委員会の中間取りまとめ(2025年9月)によれば、現場を通る中川流域下水道の幹線管路(内径約4.75m、1983年布設・経過約42年)が、下水から発生した硫化水素に起因する硫酸腐食で損傷し、そこへ周辺の土砂が流れ込んで地中に空洞ができていたことが有力な原因とされています。

硫化水素は、管路の高低差や滞留が生じる箇所で発生しやすい気体です。コンクリート管の腐食を、地上からは見えないまま、静かに進行させます。

全国特別重点調査 ― 「どこでも起こり得る」ことが数字になった

事故を受けて国土交通省は、有識者委員会の提言に基づき「下水道管路の全国特別重点調査」を全国の地方公共団体へ要請しました。2026年4月に公表された結果がこちらです。

項目数値
調査対象団体535団体
調査対象延長約5,332km
対策が必要な延長748km(対象の約14%)
うち緊急度1(1年以内に対策が必要)201km
うち緊急度2(応急措置のうえ5年以内に対策)547km
確認された地中空洞96箇所(すべて対策済み)

出典:国土交通省「下水道管路の全国特別重点調査の結果を公表します」(2026年4月)

大口径幹線を中心とした優先調査だけで、対策が必要な区間が対象の1割超。この数字は、下水道管路の老朽化が特定の自治体の問題ではなく、全国共通の課題であることを示しています。

老朽化は、これから本番を迎える

全国の下水道管路の総延長は約50万km。地球12周分を超える長さの管が、私たちの足元に埋まっています。

このうち標準耐用年数(50年)を経過した管路は現在約7%。まだ一部に見えるかもしれません。しかしこの数字は、10年後には約20%、20年後には約4割へと一気に跳ね上がります。高度経済成長期に集中整備された管路が、これから続々と耐用年数を迎えるためです。

下水道管路に起因する道路陥没は、規模の大小を含めると全国で年間約2,600件(2022年度)。一方で、点検・調査を担う人材と予算は限られています。

増え続ける老朽管と、限られたリソース。このギャップを埋める手段として、ドローン・ロボット・AIの活用が急速に現実味を帯びているのです。

なぜ「人が入る点検」だけでは立ち行かないのか

下水道の管路内は、人間にとって本質的に危険な空間です。

下水道管路の点検は従来、潜行目視調査(人が管路内に入る調査)とTVカメラ調査を中心に行われてきました。長年の実績がある確立された手法ですが、構造的な限界も抱えています。

課題内容
酸素欠乏管路内は酸素濃度が低下しやすく、酸素欠乏症のリスクが常に伴う
硫化水素高濃度の硫化水素は短時間の暴露でも致命的。腐食が進んだ管路ほど発生リスクが高い
狭小空間小口径管(おおむね800mm未満)には、そもそも人が立ち入れない
崩落・増水リスク老朽管では崩落の危険があり、降雨時には急激な増水のおそれもある
交通規制マンホールからの進入には道路上の作業帯設置が必要で、規制のコストと社会的影響が発生する
コスト潜行目視・TVカメラ調査とも1日あたりの調査延長に限りがあり、単価が高止まりしやすい
人材不足熟練調査員の高齢化と担い手不足が進行。50万kmに対して調査体制が追いつかない

そして重要なのは、国土交通省自身が方針を明確にしている点です。道路陥没事故を踏まえた技術開発方針のなかで、国交省は「作業安全の確保や働き方改革の観点から、人ができる限り管路に入らずに点検・調査を行う」ことを目標として掲げました。

つまり「人が入らない点検」への移行は、一部の先進自治体の取り組みではありません。国の方針として位置づけられた、業界全体の流れです。

いま現場に入りはじめた点検ロボットたち

ここからは、下水道・インフラ点検の現場で導入が進む代表的な機体を見ていきます。

先にお伝えしたいのは、「どの機体が優れているか」ではなく「どの現場条件にどの方式が合うか」という視点です。下水道の現場は口径も水位も延長もさまざまで、万能な一台は存在しません。

Flyability ELIOS 3 ― 大空間を丸ごと3Dにする球体ドローン

スイスFlyability社のELIOS 3は、球体ガードで機体全体を保護した屋内点検専用ドローンです。

屋内点検・測量用ドローン ELIOS 3
ELIOS 3(画像出典:SkyLink Japan「ELIOS 3」製品ページ/提供:Flyability)

最大の特徴は、LiDARとコンピュータビジョンを組み合わせた独自のSLAM技術「FlyAware」。GPSが届かない地下空間でも安定飛行しながら、リアルタイムに3D点群マップを生成できます。4Kカメラとサーマルカメラ、16,000ルーメンのLED照明を備え、多少の接触では墜落しない耐衝突設計です。

得意分野は、大型下水道幹線、雨水幹線、共同溝、貯留施設といった大断面のインフラ空間。人が立ち入れない、あるいは立ち入るべきでない空間の状態把握と三次元化に力を発揮します。八潮市の事故現場でも、崩落リスクのある空間の捜索・調査にこの種の屋内ドローンが投入されました。

Liberaware IBIS2 ― 「人が入れない狭さ」に入る国産超小型機

国産メーカーLiberawareのIBIS2の武器は、194×198.5×58mm・重量243gという圧倒的な小ささです。

狭小空間点検に特化して設計されており、人はもちろん、一般的な点検ドローンさえ入れない空間へアクセスできます。高感度イメージセンサ(STARVIS)搭載カメラで暗所でも鮮明な映像を取得でき、粉塵環境を想定した防塵設計。管路内の距離・損傷計測に対応した「IBIS2 Chainage」も展開されています。

管理延長約4,800kmを抱える神戸市での下水道管調査など、自治体での活用実績も着実に増えています。中小口径の管路や付帯施設、閉鎖空間の「目視代替」という点で、独自の立ち位置にある機体です。

Flybotix ASIO X ― 長時間飛行とガス検知を備えたケージドローン

スイスFlybotix社のASIO Xは、カーボン製ケージで機体を保護したケージドローンです。

閉鎖空間点検用ドローン Flybotix ASIO X
ASIO X(画像出典:SkyLink Japan「ASIO X」製品ページ/提供:Flybotix)

閉鎖空間点検用としては長い最大20分程度の飛行時間と、40,000ルーメンの強力な照明が特徴。可動式LiDARによる3Dマッピングに対応し、さらにH2S・CO・O2などのガス検知センサーを搭載できます。

硫化水素リスクと隣り合わせの下水道環境において、「人が入る前の安全確認」と「点検そのもの」を一体で行える。この組み合わせは実務上の大きな強みです。

飛行型だけが正解ではない

下水道は「常に水が流れている」「満水区間がある」「延長が長い」という特殊な環境です。

飛行ドローンがすべての条件に適合するわけではありません。現場によっては、別の方式のほうが合理的なケースが多くあります。

  • WaterSlider(水上走行・浮流式):管路内の水面を利用して移動しながら撮影する方式。操縦用の無線通信を必要としないため、管路内での電波途絶リスクがなく、水が流れたままの供用中調査に適します。国内では下水道コンサルタント大手NJSグループの技術を起点に機体開発が続いています。
    下水道管路点検用の水上走行・浮流式ロボット WaterSlider
    WaterSlider(画像出典:株式会社NJS「ドローン・ロボティクス」
  • 自走式TVカメラ・クローラーロボット:管底を走行しながら高精細映像を取得する、従来から実績豊富な方式。診断・帳票作成との連続性に強みがあります。
  • 水中ROV(遠隔操作型無人潜水機):満水管路や伏せ越し、処理場の水槽など、飛行型・走行型ではアクセスできない「水の中」をカバーします。
  • 浮体型ロボット:流下する下水の浮力を利用して長距離を効率的に調査する方式。広域スクリーニングに向きます。

国土技術政策総合研究所も、こうした多様な調査機器を体系的に整理した「下水道管路調査機器カタログ」を公開しています。国の研究機関が機器選定の実務資料を出す段階まで、この分野は来ているということです。

SKYLINK INSPECTION SOLUTIONS

その現場、どの機体が合うのか。

SkyLinkは、管路の口径・水位・延長・進入条件と、求める成果品(動画・点群・診断データ)に合わせて、複数メーカーの機体から最適な構成をご提案します。

機材選定について相談する

「どの現場に、どの方式か」を整理する

ここまで紹介した機体・方式を、特性と現場適性の2つの表に整理しました。

項目ELIOS 3IBIS2ASIO X浮流・水上走行式
(WaterSlider等)
自走式TVカメラ水中ROV
方式球体ガード付き飛行超小型飛行ケージ付き飛行水面浮上・走行管底走行水中航行
サイズ感中型(約2kg級)超小型(243g)中型小型〜中型中型〜大型小型〜中型
稼働時間最大約12分最大約11分最大約20分長時間可ケーブル給電で長時間ケーブル給電で長時間
主センサー4K+サーマル+LiDARFHD高感度カメラ4K級+LiDAR+ガス検知カメラ高精細展開カメラカメラ+ソナー等
3D点群取得◎ リアルタイムSLAM△ 後処理◎ LiDAR搭載△ 一部機種△ ソナー併用

表1:機体タイプ別の特性比較

現場条件ELIOS 3IBIS2ASIO X浮流・水上走行式自走式TVカメラ水中ROV
大型管路・幹線(口径2m以上)
狭小管路(人が入れない口径)
冠水・流水がある管路
満水管・水中部×××××
長距離連続調査
三次元化・点群取得
高精細動画取得
AI解析との連携

表2:現場条件別の適性マトリクス(◎=特に適する ○=条件により適する △=限定的 ×=不適)

※適性はあくまで一般的な目安です。実際の適合性は口径・水位・延長・進入条件によって変わります。個別の現場については、実証飛行を含めた事前検討をおすすめします。

価格帯の目安 ― 高・中・低で整理する

導入を検討するうえで気になるのが費用感です。各メーカーとも価格は構成・オプションにより変動するため公表されていませんが、相対的な価格帯として整理すると、おおよそ次のようになります。

機体・方式初期導入コスト運用・維持コスト主な導入形態
ELIOS 3中(保守・解析ソフト)購入/リース/調査委託
IBIS2低〜中購入/リース/調査委託
ASIO X購入/調査委託
浮流・水上走行式(WaterSlider等)調査委託が中心
自走式TVカメラ(クローラー)中〜高
車載システムは高
調査委託が中心
水中ROV低〜中
産業用グレードは中
購入/調査委託

表3:価格帯と導入形態の目安(高・中・低は本記事で扱った機体・方式間の相対比較)

ここで押さえておきたいポイントは3つあります。

1つめは、機体価格だけで比べないこと。操縦者の育成、解析ソフトのライセンス、予備バッテリー、保守契約まで含めたトータルコストで見ると、順位が入れ替わることがあります。

2つめは、高機能機ほど1回の調査で取れるデータが多いこと。ELIOS 3クラスであれば映像と3D点群を同時に取得できるため、「単価は高いが、調査あたりの情報量で見ると割安」というケースも少なくありません。

3つめは、最初から購入する必要はないということ。まずは調査委託やリースで小規模に始めて、効果を確認してから保有へ移行する。自治体・企業を問わず、この段階的な進め方が主流になりつつあります。

※具体的な費用は機体構成・オプション・保守内容により大きく変わります。個別のお見積りや、購入・リース・委託の比較検討についてはお問い合わせください。

ここまでの整理から見えてくる結論はシンプルです。

単一の機体・方式で、下水道点検のすべてはカバーできない。

大口径幹線の三次元把握にはSLAM搭載飛行型。小口径のスクリーニングには超小型機や浮流式。満水部にはROV。詳細診断には自走式TVカメラ。この「適材適所の組み合わせ」こそが、実務における最適解になります。

国の政策は、はっきりと「ロボット」を向いている

この変化は技術トレンドではなく、制度の流れです。

国土交通省は2020年、ドローンによる調査を「飛行式カメラ調査」として公式に位置づけました。そして八潮市事故後の対策検討委員会(2025年7月)では、人が管路に入らない点検・調査技術を5年程度で実用化するという目標を掲げます。2025年度の全国特別重点調査では実際にドローンが活用され、北九州市・神戸市・千葉市などで実績が報告されました。

今後は2026〜2027年度にビジネスモデルの検討を進め、2028年度から普及フェーズへ移行する工程が示されています。

後押しする政策は、下水道分野の外にもあります。

  • i-Construction 2.0:2040年度までに省人化3割・生産性1.5倍を目指す建設現場のオートメーション化施策。上下水道管路の点検・調査技術開発もこの枠組みに位置づけられています。
  • 上下水道DX:取得データを施設情報と紐づけて共通プラットフォーム上で管理する方向性が明示され、「上下水道DX技術カタログ」には点検調査・劣化予測・施設情報管理などの119技術が掲載されています。
  • AI活用:管路内映像のAI劣化診断は実用化初期の段階へ。ビッグデータとAIによる管路リスク予測診断は、すでに約50事業者へ導入されています。

点検データの蓄積が進むほど、AIの精度は上がります。つまり早くデータを取り始めた事業体ほど有利になる構造が、すでに生まれているということです。

※点検基準の見直しも予定されています。ロボット・ドローンによる調査データを前提とした維持管理体系への移行は、自治体にとって中期的に避けて通れないテーマになりつつあります。

下水道点検の未来 ― 「撮る」点検から「予測する」維持管理へ

ここが、本記事でいちばんお伝えしたい部分です。

ドローンやロボットの導入は、それ自体がゴールではありません。本質は、点検が一本の「データパイプライン」に変わることにあります。

ドローン・ロボットによる管路内調査
高精細動画・静止画の取得
LiDAR・SLAMによる点群データ取得
3Dモデル生成管路内面の三次元形状
AI解析
  • クラック(ひび割れ)の自動抽出
  • 腐食・劣化度の判定
  • たわみ・変位の解析
過年度データとの差分比較劣化進行の定量把握
維持管理データベースへの蓄積
補修・改築の優先順位提案リスクベース・メンテナンス
下水道デジタルツインの構築

下水道点検のデータパイプライン ― 取得から解析、予測型維持管理まで

各段階で何が変わるのか。順に見ていきます。

AIが「診断の目」になる

従来のTVカメラ調査では、取得した映像を人が見て異常箇所を判定し、帳票を作成してきました。AIによるクラック自動抽出・腐食判定が実用化すれば、判定の属人性が排除され、診断のスピードと再現性が大きく向上します。熟練技術者の「目」をAIが補完し、技術者はより高度な判断に集中できるようになります。

点群データが劣化を「数値」にする

LiDARで取得した点群からは、映像では分からない断面変形・たわみ・堆積量を定量的に把握できます。「ひびがある」という定性情報から、「断面が◯mm変形している」という定量情報へ。この一歩が、その先のすべてを変えます。

過年度比較 ― 点検が「予測」に変わる瞬間

同一区間の3Dデータを年度をまたいで比較すれば、劣化の進行速度が数値で見えてきます。

進行が速い区間に資源を集中し、健全な区間の調査周期は延ばす。これがリスクベース・メンテナンスであり、限られた予算で50万kmの管路を守るための、おそらく唯一の現実的な戦略です。

そして、デジタルツインへ

管路の三次元形状・劣化状態・補修履歴・流量といったデータを仮想空間上に統合した「下水道デジタルツイン」が構築されれば、陥没リスクのシミュレーション、補修計画の最適化、災害時の影響予測までが机上で可能になります。

八潮市の事故で問われた「見えないインフラをどう可視化するか」。その技術面での答えの一つが、ここにあります。

重要なのは、この未来像が遠い構想ではないことです。SLAM搭載ドローンによる点群取得も、AIによる劣化診断も、リスク予測データベースも、個々の要素技術はすでに現場投入が始まっています。残っているのは、これらを現場条件に合わせて「つなぐ」仕事です。

SkyLinkの考え方 ― 機体ではなく、現場から出発する

SkyLink Japanは、特定メーカーの機体を売ることを目的とした会社ではありません。産業用ドローン・ロボティクスのソリューションプロバイダーとして、複数メーカーの機体・センサー・解析手法を扱っています。

だからこそ言えることがあります。「最適な機体」は、現場ごとに違うということです。

口径、延長、水位、進入条件、そして求める成果品が動画なのか、点群なのか、診断帳票なのか。ELIOS 3が最適な現場もあれば、IBIS2やASIO Xが適する現場も、浮流式・走行式ロボットやROVを組み合わせるべき現場もあります。特定の機体ありきではなく、現場条件から逆算した中立的な機材選定。それが私たちの基本姿勢です。

そして機材の導入は、スタート地点にすぎません。LiDAR点群の処理、AI解析との連携、既存の管路台帳・維持管理システムとの接続。取得したデータをどう維持管理計画へつなげるかというデータ活用の設計こそが、点検DXの成否を分けます。

まとめ

下水道点検はいま、大きな転換点にあります。本記事の要点を整理します。

  • 現在地:八潮市事故を受けた全国特別重点調査で、748kmの管路に対策が必要と判定。耐用年数超過管は20年後に約4割へ増加する
  • 限界:酸欠・硫化水素・狭小空間・人材不足。人による点検には構造的な限界があり、国も「人ができる限り管路に入らない点検」を方針として掲げた
  • 機体:ELIOS 3・IBIS2・ASIO Xなどの飛行型に加え、浮流式・走行式・水中ROVまで、方式ごとに得意分野は異なる。適材適所の組み合わせが実務の最適解
  • 本質:点検の価値は「ロボットが飛ぶこと」ではなく、動画・点群・AI解析・過年度比較・維持管理DBがつながるデータパイプラインへの進化にある
  • 未来:その先に、補修優先順位の最適化とデジタルツインによる予測型維持管理 ― 下水道インフラ管理のDXがある

人が危険な場所へ行く時代から、ロボットがデータを取得する時代へ。そしてAIが解析し、データが維持管理を導く時代へ。

この流れは、もう始まっています。

よくあるご質問

下水道管の中で、ドローンは本当に安定して飛べるのですか?
GPSが届かない管路内でも、LiDARやビジョンセンサーを用いたSLAM技術で自己位置を推定し、安定飛行する機体が実用化されています。ELIOS 3やASIO Xはその代表例で、衝突保護構造により接触時も墜落しにくい設計です。
どのくらいの口径から調査できますか?
機体によります。超小型機のIBIS2(幅約20cm)なら小さな開口部からの進入が可能で、大口径幹線ではELIOS 3クラスが三次元計測まで含めて力を発揮します。口径・進入条件に応じた機体選定が重要です。
水が流れている供用中の管路でも調査できますか?
可能なケースが多くあります。飛行型は水面上を飛行でき、浮流式・水上走行式(WaterSlider等)はむしろ流水を利用して移動します。止水・水替えが不要になれば、コストと社会的影響を大きく減らせます。
満水の管路や伏せ越し部はどうするのですか?
飛行型では対応できないため、水中ROVやソナー搭載機器を用います。「飛行型+ROV」の組み合わせで管路全体をカバーする設計が現実的です。
従来のTVカメラ調査は不要になりますか?
すぐに置き換わるものではありません。自走式TVカメラ調査は診断・帳票の体系が確立しており、詳細診断では引き続き中心的な手法です。ドローン等は「人が入れない区間のスクリーニング」から普及が進み、段階的に役割分担が変わっていくと考えられます。
国の制度上、ドローン調査は正式に認められていますか?
国土交通省は2020年にドローンを「飛行式カメラ調査」として位置づけており、2025年度の全国特別重点調査でも活用されています。点検基準の見直しを含め、制度面の整備は加速しています。
導入コストはどの程度かかりますか?
機体購入のほか、リース・調査委託など複数の導入形態があります。機体価格だけでなく、操縦者育成・解析ソフト・保守を含めたトータルコストでの比較が重要です。小規模なパイロット調査から始める自治体・企業が増えています。
操縦にはどんな資格・訓練が必要ですか?
屋内(管路内)飛行は航空法の規制対象外となるケースが多いものの、安全運用には機体ごとの操縦訓練が不可欠です。狭小空間の操縦は難易度が高いため、トレーニングの受講や、経験豊富なオペレーターへの調査委託が現実的です。
点検データはどのように診断へつながりますか?
動画・画像はAIによるクラック抽出・腐食判定へ、LiDAR点群は断面変形・堆積量の定量把握へつながります。将来的には過年度比較による劣化予測、維持管理DBと連動した補修優先順位づけへ発展していきます。
何から始めればよいですか?
まず「どの管路区間で、何を把握したいか」の整理をおすすめします。そのうえで対象区間の条件に合う方式を選び、小規模な実証調査で映像・点群の品質を確認するのが定石です。既存のストックマネジメント計画との整合も、初期段階で検討しておくとスムーズです。
SKYLINK SEWER INSPECTION

見えない管路を、データに変える。

SkyLinkでは、ELIOS 3・IBIS2・ASIO Xをはじめとする各種点検ドローンから、走行式ロボット、水中ROV、LiDAR、AI解析まで、複数メーカーの技術を組み合わせた下水道・インフラ点検ソリューションを取り扱っています。現場条件に応じた機材選定や実証実験については、お気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら
出典・参考
  • 日本下水道協会「下水道展’26東京」公式サイト https://www.gesuidouten.jp/
  • 国土交通省「下水道管路の全国特別重点調査の結果を公表します」 https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo13_hh_000731.html
  • 国土交通省「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」 https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_000987.html
  • 八潮市で発生した道路陥没事故に関する原因究明委員会 中間取りまとめ(2025年9月) https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001914198.pdf
  • 国土交通省「管路メンテナンス技術の高度化・実用化に向けた取組方針」 https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001902090.pdf
  • 国土交通省「下水道の維持管理」 https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/crd_sewerage_tk_000135.html
  • 国土技術政策総合研究所「下水道管路調査機器カタログ 第2版(令和7年6月)」 https://www.nilim.go.jp/lab/ebg/pdf/kanrochousakiki_catalog_R7.pdf
  • Flyability「ELIOS 3」 https://www.flyability.com/elios-3 / ブルーイノベーション https://www.blue-i.co.jp/elios3/
  • Liberaware「IBIS2」 https://liberaware.co.jp/ibis2/
  • Flybotix「ASIO X」 https://www.flybotix.com/asio-x/
  • 株式会社NJS「ドローン・ロボティクス(Water Slider)」 https://www.njs.co.jp/ja/services/inspection/drone.html
  • ドローンジャーナル「下水道分野におけるドローン活用の動向」 https://drone-journal.impress.co.jp/docs/special/1188123.html

本記事の数値・制度情報は2026年8月時点の公表資料に基づきます。最新の情報は各出典元をご確認ください。

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