防衛省が求める次の国産ドローン。組立用のモーター・バッテリー・制御基板と、洋上の複数ドローンを監視する画面を描いたAI生成イラスト。

防衛省が求める次の国産ドローンとは?新公募に見る迎撃・国内製造部品・AI監視

防衛省が求める次の国産ドローン。モーター・バッテリー・制御基板と、洋上の複数ドローンを監視する画面を描いた説明用イラスト。
AI生成の説明用イラスト。実在の機体・装備や防衛省の資料を示すものではありません。

国産ドローンは、必要なときに必要な数を作り、使い続けられるでしょうか。

防衛装備庁が2026年10月2日に始めた防衛省版SBIRの公募には、機体性能と並んで、主要部品の国内製造、複数機を扱うAI、量産までの費用計画が示されています。焦点は、試作に成功した先の供給と運用です。

このブログでは、迎撃用UAVと洋上警戒監視AIの公募資料、10月15日付の公式FAQを読み解きます。国内メーカーや部品・ソフト企業の参画方法から、企業・自治体が産業用ドローンを選ぶ際の確認点まで、事実と編集部の考察を分けて整理します。

公式資料の確認日:(JST)。公開日時とは別の、情報確認日です。

このブログの要点
  • 迎撃用UAVでは、官側が指定する主要構成品に国内製造品を使い、製造・改修・整備を国内で継続できる体制が求められます。
  • 洋上監視のテーマは、複数機の任務を調整するAIと、人が判断を確認・修正する操作画面の開発です。
  • 採択は研究開発の入口です。量産取得や配備は、成果・予算・調達手続きなどを踏まえた別の判断になります。

防衛省版SBIRは、何を開発する制度か

SBIRは、スタートアップ等の研究開発と事業化を支援する制度です。防衛省版SBIRでは、防衛省・自衛隊が抱える課題を「トピック」として示し、その解決に向けた研究開発を委託します。UAVは無人航空機を意味し、このブログではドローンを含む呼び方として使います。

令和8年度の公募は7トピックです。迎撃や対処用の機体に加え、洋上監視AI、補給倉庫の運用改善、騒音対策まで対象が広がっています。

令和8年度の7つのトピック

No.トピック名(公募資料の名称)活用する組織開発対象の要点
トピック1国内製造の部品・構成品を活用した対処用小型UAVシステム陸上自衛隊多様な目標に対処する、大量生産できる小型UAV
トピック2国内製造の部品・構成品を活用した迎撃用UAVシステム陸上自衛隊自爆型の中型UAVに対処する迎撃用UAVと運用ソフト等
トピック3極小型の情報収集システム陸上自衛隊狭所・危険な環境での長時間の情報収集
トピック4国内製造の部品・構成品を活用した水上艦対処用小型UAVシステム海上自衛隊艦艇への対処を想定した小型UAV
トピック5複数UAVによる洋上警戒監視の運用を最適化するAIシステム海上自衛隊監視用UAVに載せるAIと操作画面
トピック6補給倉庫の保管状況把握用ハードウェア(カメラ・センサ等)及び補給倉庫運用最適化支援ソフトウェアの開発航空自衛隊倉庫のセンサー類と業務改善ソフト
トピック7航空機騒音ノイズキャンセリング装置等の開発航空自衛隊執務室の航空機騒音を下げる装置

トピック名は公募ページ・各トピック資料の表記です。要点は編集部の要約です。

機体開発を扱うトピック1・2・4は、名称に「国内製造の部品・構成品を活用した」と掲げています。一方、トピック5は運用を支えるAIが中心です。ハードウェアの供給基盤と、複数機を使うためのソフトウェアという、異なる課題が並んでいる点に注目しました。

公募の日程(日本時間)
公募期間
2026年10月2日(金)13:00〜11月2日(月)正午
提出方法
e-Radによる電子申請のみ
採択結果通知
2026年12月上旬(予定)
契約締結
2027年2月中旬(予定)

2026年10月19日時点。予定は変更される場合があります。e-Radは研究機関・研究者の事前登録が必要で、登録完了までに日数を要する場合があります。

この節の出典・参考資料

迎撃用UAVで問われる、国内で作り続ける力

トピック2は、自爆型の中型UAVに対処する迎撃用UAVシステムの国産開発です。陸上自衛隊による活用を想定し、機体に加えて運用ソフトウェア、操作端末、通信機材なども開発対象に含みます。

安く調達できても、補充が止まれば使い続けられない

資料は、安価な無人機に高額なミサイルで対処する費用の不均衡と、ミサイルの製造期間・消耗を課題に挙げています。海外製装備の調達期間や供給リスク、迅速な改修の難しさも、国内生産基盤を整える背景です。

私たちが注目するのは、購入価格だけでなく、消耗した分をどのくらいの期間で補えるかが問われていることです。試作品が飛ぶことと、同じ品質で作り続けることは、別々に確かめる必要があります。

「国内組立」から、主要部品の製造・調達先へ

トピック2では、民生品(COTS:一般に流通する製品)を活用しながら、国内製造の部品を可能な限り使います。モーター、バッテリー、フライトコントローラー(飛行制御装置)、映像伝送モジュールなど、官側が指定する主要構成品は国内製造品を使用する条件です。

海外製部品を使う場合は供給リスクと低減策を示し、国内で安定製造・迅速な改修・維持整備ができる体制を構築します。開発初期から製造国・企業名を含む部品一覧を示し、量産に向けて国内製造部品への切替えも調整します。

編集部の見立て

完成品を国内で組み立てるだけでは、部品の供給停止まで解決できません。どの部品に依存し、代替すると何を再評価するのか。国内生産を考える企業には、製造だけでなく調達・品質管理・改修まで説明できることが強みになりそうです。

この条件は個別の公募要件です。日本の「国産ドローン」全体に共通する定義ではありません。言葉の違いと調達上の確認点は、国産ドローンの定義を考えるブログで整理しています。

量産単価の目標と、運用全体の費用を分ける

資料が期待する量産単価は、迎撃用UAVが1機あたり数十万円以下、UAVを除く装置一式が1,000万円以下です。初期量産は約500機と装置約10式を想定しています。いずれも目標・想定であり、実績や発注確定数ではありません。

運用側から見ると、機体価格に加え、訓練、保管、通信、整備、ソフト更新まで費用を見積もる必要があります。迎撃ドローンの基本と費用の非対称性は、迎撃ドローンと自爆型ドローンの違いを解説したブログでも扱っています。

この節の出典・参考資料
  • 防衛装備庁「令和8年度 防衛省版SBIR トピック2 国内製造の部品・構成品を活用した迎撃用UAVシステム」p.1(概要・背景)、p.1〜2(研究開発内容)、p.3(国内製造の部品・構成品、その他条件、期待する量産単価)、p.3(量産予定量)、p.3〜5(フェーズごとの内容)、p.5(接続仕様の取扱い) https://www.mod.go.jp/atla/sbir/koubo/r08/r8_sbir_koubo_topic02_2610.pdf(確認日:2026年10月19日)
  • 防衛装備庁「令和8年度 防衛省版SBIR トピック1」p.3、「トピック4」p.3(国内製造の部品・構成品に関する同様の条件) トピック1/トピック4(確認日:2026年10月19日)

※ページ番号は各PDFの文書内表記です。

洋上監視AIが担う、複数機の運用支援

トピック5は、海上自衛隊の洋上警戒監視を支えるエッジ型AIと操作画面の開発です。エッジ型とは、クラウドだけに頼らず機体側で処理する方式を指します。監視用UAVは官側が別に整備するため、このトピック自体は機体開発を目的としていません。

AIが任務を調整し、人が確認・承認・修正する

想定するのは3〜10機程度による継続監視です。AIが任務や気象、取得情報などを踏まえて飛行計画と役割分担を作り、状況に応じて見直します。通信が制約・途絶した場合にも、機体側で一定の処理を続ける構想です。

操作画面には、AIの判断内容を確認し、計画を承認・修正・再生成できることが求められます。自然言語などの直感的な指示入力も要件です。ここでのAIの役割は警戒監視の運用最適化であり、攻撃判断のシステムとして説明されているわけではありません。

編集部の見立て

1機の操縦が自動化されても、交代の判断や情報確認を人がすべて担うなら、機数とともに負担が増えます。省人化を測るときは、自動飛行の有無に加え、人が何を確認し、何回介入するのかまで見る必要があると考えます。

量産単価の目標はAI・UIソフトウェア取得費1,000万円以下、AI導入費1隻あたり1,000万円以下です。保守運用、機能改善、追加学習などの継続支援費は含みません。導入費と使い続ける費用を分ける考え方は、民生のシステム選定にも参考になります。

トピック2と5は別の研究課題です。両者を一つの迎撃システムとして解釈することはできません。機体とデータ・判断をつなぐ仕組みの関係は、ドローンの競争軸をシステムの視点から考えたブログも参考になります。

この節の出典・参考資料

※ページ番号は各PDFの文書内表記です。

部品・ソフト企業はどう参画できるか

防衛装備庁の10月15日付FAQは、要素技術を持つ企業の応募、費用計画、研究セキュリティの扱いを補足しています。部品が優れていることと、公募全体の課題を解けることは分けて考える必要があります。

提案するのは、トピック全体の解決計画

FAQ問14は、自社技術でトピック全体をどう解決するか、具体的な研究開発計画を求めています。単独で体制を組めない場合は、応募要件を満たす代表企業と再委託先による共同応募が可能です。

代表企業は日本に登記された中小企業者等で、原則設立15年以内などの要件を満たす必要があります。大企業や大学・国立研究開発法人も再委託先として参加できますが、代表企業にはなれません。代表企業の業務額は全体の50%以上です。

代表企業が全体の開発計画をまとめ、部品企業、ソフト・AI企業、大学・研究機関・大企業などが再委託先として参画する説明図。代表企業の業務額は全体の50%以上。
図1 誰が、何を担う?代表企業と再委託先の役割代表企業が全体計画をまとめ、部品・ソフト企業などが再委託先として加わる構成例です。AI生成の説明用図解で、実在の応募体制・庁舎・企業を示すものではありません。タップ・クリックで原寸画像を開けます。

部品企業なら量産時の供給能力と品質保証、AI企業なら機体・センサーとの接続と評価方法まで、相手が全体計画に組み込める情報を示すことが大切でしょう。防衛装備庁が協業先を紹介する仕組みはないため、役割分担は各社で具体化する必要があります。

費用・資本関係・製造条件を混同しない

FAQ問4は、応募時にフェーズ1〜3の全体費用計画と量産費用計画を求めています。フェーズ2・3と量産は単価と費目別の積算根拠も必要です。試作費だけでなく、量産を成立させる条件まで早期に検討する制度設計です。

問7・17では、外国資本等との関係だけで一律に除外せず、研究セキュリティなどのリスクを確認するとしています。応募企業の資格、資本・情報管理のリスク、部品の国内製造条件は別々の確認事項です。外国資本との関係が認められることだけで、部品要件も満たすとは判断できません。

この節の出典・参考資料

日本市場への影響:供給と運用をどう評価するか

以下は公募資料からの編集部の考察です。今回の公募だけで、国内市場の成長率や民生製品の値下がりを予測することはできません。一方、部品調達と運用ソフトにどんな能力が必要かは、具体的に見えてきます。

国内メーカーには、供給力を説明する機会が生まれる

部品の製造国、供給能力、改修への対応を示せる企業は、システムをまとめる企業に対して役割を提案しやすくなると考えます。ただし、国内製造だけで品質や価格競争力が保証されるわけではありません。想定生産量で品質を維持できるか、部品変更時の試験を誰が担うかまでが事業上の論点です。

企業・自治体は、購入後の業務から逆算する

防災や点検では、機体を所有することよりも、必要な日に必要な成果を得られることが重要です。予備電池の納期、故障時の修理期間、ソフトウェアの支援期限、通信が切れた際の動作を、選定時に確認したいところです。

運用実証では、飛行時間だけでなく、準備・監視・データ整理にかかる人員と時間も記録すると、導入効果を比較できます。ただし、これは民生分野への実務上の示唆です。本公募の条件が自治体の調達基準になるわけでも、開発成果をそのまま民生利用できると決まったわけでもありません。

今後の展望:採択から量産・配備までの距離

制度は原則3段階です。フェーズ1は概念実証・実現可能性調査(5か月以内)、フェーズ2は研究開発・試作(2年以内)、フェーズ3は大規模技術実証(最長5年以内)。各段階の審査に合格したものが次へ進み、契約も段階ごとに結びます。進捗に応じてフェーズ2を省略する場合もあります。

公募・採択、フェーズ1の概念実証、審査、フェーズ2の研究開発・試作、審査、フェーズ3の大規模技術実証、最終審査。量産取得・配備は成果・予算・手続きで別途判断され、採択や審査合格で保証されない。
図2 採択と配備は、別の段階原則的な開発段階を示したAI生成の説明用図解です。フェーズ1には実現可能性調査も含み、進捗によりフェーズ2を省略する場合もあります。量産取得・配備は、成果・予算・手続きなどを踏まえて別途判断されます。タップ・クリックで原寸画像を開けます。

公募要領は、採択や審査合格が将来の装備化・量産取得を保証しないと明記しています。研究成果、試験評価、ニーズ、予算措置、調達手続きなどを踏まえた別の判断です。トピック2は2031年6月頃のフェーズ3終了を想定しますが、これも変更され得る予定です。

2026年10月19日時点では公募受付中で、令和8年度の採択課題は公式ページに掲載されていません。別枠の迎撃ドローン早期取得プログラムではメーカーによる実証通過発表もありますが、今回のSBIRとは区別して読む必要があります。

今後は、採択企業名だけでなく、部品の調達先や量産体制、AIの評価結果がどこまで公表されるかに注目しています。国内製造の要求が安定供給に、運用AIが人の負担軽減につながるかは、これからの検証で判断することになります。企業ごとの接点は、防衛省・自衛隊と接点があるUAVメーカーのブログでも段階別に整理しています。

この節の出典・参考資料

よくある質問

防衛省版SBIRに採択されれば、量産・配備が決まりますか?

決まりません。採択は研究開発の開始に向けた段階です。審査の合格後も、量産取得は成果・予算・調達手続きなどを踏まえて別途判断されます。

「国内製造部品を使う」は、すべての部品を国産にする意味ですか?

トピック2では、官側が指定する主要構成品は国内製造品を使い、その他も可能な限り国内製造品を活用します。海外製部品を使う場合のリスク説明も求めています。一律の「全部品国産」と同じ意味ではありません。

モーターやソフトウェアの企業だけでも参加できますか?

自社技術を使ってトピック全体を解決する計画が必要です。単独で必要な体制を組めなければ、適格な代表企業と再委託先による共同応募が可能です。個別の適格性は公募要領と審査で判断されます。

洋上監視AIは、人の判断をすべて置き換えるのですか?

資料は、人がAIの計画を確認・承認・修正できる操作画面を求めています。機体側の自律処理を目指しますが、人が関与しない運用を意味するものではありません。

民生用ドローンの選定にも参考になりますか?

部品供給、修理、ソフト更新、人の作業負担まで含めて比較する視点は参考になります。ただし、防衛向け公募の条件と、民生の調達要件・利用条件は個別に確認する必要があります。

よくある質問の出典・参考資料

制度に関する回答は、公募要領1.1、トピック2 p.3、トピック5 p.2〜3、公式FAQ問14をもとに編集部が要約しました。最後の回答は編集部の考察です。各資料のURLは末尾の出典一覧に掲載しています。

まとめ:使い続けられる条件を選ぶ

今回の公募を読むと、機体性能の先に、部品を供給する力と、複数機の運用を支える仕組みが求められていることが分かります。目標の単価や機数だけを見て、量産や配備が決まったと捉えるのは早計です。

産業用ドローンの導入でも、カタログの比較から一歩進めて、部品が届くか、修理できるか、担当者が運用を続けられるかまで確認したいところです。機材を選ぶ段階から、その後の業務を一緒に考えることが、長く使える仕組みにつながります。

産業用ドローンの選定・調達要件の整理を相談する

SkyLink Japanでは、点検・測量などの用途に合わせた機材選定、自治体・官公庁向けの調達要件の整理、導入後の保守・定期点検のご相談を受け付けています。製品が決まっていない段階からご相談いただけます。

お問い合わせ・ご相談はこちら

防衛省版SBIRの応募要件や手続きに関するご質問は、防衛装備庁の公式FAQと問い合わせ窓口をご確認ください。

出典・参考資料

出典・参考資料の一覧(確認日:2026年10月19日)

防衛装備庁(制度・公募)

防衛装備庁(トピック資料)

政府SBIR特設サイト

メーカー発表

  • テラドローン株式会社「国産迎撃ドローン『Terra B1』が防衛装備庁の実証試験を単独で通過」2026年8月25日 https://terra-drone.net/28439

※PDFのページ番号は各資料の文書内表記です。公募要領は節番号で示しています。

※このブログは、2026年10月19日時点で確認した公開資料に基づく解説です。採択、契約、量産、配備の結果を保証・予測するものではありません。日程や要件は変更される可能性があるため、応募を検討する場合は必ず防衛装備庁の最新の公募資料をご確認ください。

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