下水道管内を飛行する点検ドローンと点群データ、タイトル「ドローンで見つけるだけでは、下水道は守れない」

9月10日は「下水道の日」|ドローンで「見つける」だけでは、下水道は守れない

9月10日は「下水道の日」。私たちの目に触れない地下には、全国で約50万kmの下水道管が張り巡らされています。点検は、人が管内へ入る方法から、ドローンやロボットがデータを持ち帰る方法へ変わり始めました。
けれど、異常を「見つける」だけでは、補修の優先順位も次の点検時期も決められません。このブログでは、点検結果を維持管理へつなぐために何が必要かを考えます。

9月10日「下水道の日」から考える、50万kmの維持管理

今年で66回目となる「下水道の日」。下水道の役割である「雨水の排除」にちなみ、台風シーズンにあたる立春から220日目が選ばれています。

台所やトイレの排水も、道路に降った雨も、地下の管路が毎日受け止めています。その延長は全国で約50万km。一方、標準耐用年数の50年を過ぎた管路は約7%(2024年度末)で、20年後には約45%に増える見込みです。

出典:国土交通省「下水道の維持管理」/狭山市「9月10日は「下水道の日」

ドローン・ロボットを活用した下水道点検については、以前のブログで詳しく紹介しています。

前回お伝えしたのは、「人が下水道管に入って点検する」方法から、「ドローンやロボットが入り、必要なデータを取得する」方法への変化でした。

では、ドローンで異常を見つけられるようになれば、それで下水道を守れるのでしょうか。

1|「人が入らない点検」は現実になり始めている

2025年1月の八潮市の道路陥没事故を受けて始まった「全国特別重点調査」。2026年6月末時点で、対策が必要な管路は807km(緊急度Ⅰ:218km/緊急度Ⅱ:589km)と判明しています。

点検の方針もはっきりしてきました。国土交通省は2026年4月、「管内NoEntry」の実現に向けた基本的な考え方を示しています。

POINT|「管内NoEntry」の基本方針(要旨)
  • 飛行式ドローン、浮流式カメラ、自走式テレビカメラなど、人が管内に入らない方法を最優先で導入する
  • 作業員が管内に入る「潜行目視」は、調達が難しい場合や精度を確保できない場合に限る

あわせて、飛行式ドローン・浮流式カメラの普及ロードマップも公表され、自治体での試行から本格実施、操縦士の研修や資格制度までが段階的に描かれました。

ドローンやロボットは「実証する技術」から「現場で使う技術」へ移りつつあります。

出典:国土交通省「全国特別重点調査結果詳細(令和8年6月末時点)」/「『管内NoEntry』の実現に向けた下水道管路点検の推進に関する基本的考え方」/「飛行式ドローン・浮流式カメラ技術の普及に向けたロードマップ

管路内部を飛行する防護フレーム付きドローンからの点検記録
人が入りにくい管路内部を、映像や点群として記録する閉鎖空間点検の例。SkyLink Japan「インフラ・設備点検ソリューション」掲載画像。

2|しかし、「見つける」だけでは下水道は守れない

ドローンやロボットの映像からは、クラック、腐食、変形、浸入水、堆積物、接合部の異常などを見つけられます。

ただ、見つけた時点で維持管理が終わるわけではありません。補修を発注し、優先順位を決めるには、次の3つがそろっている必要があります。

問い維持管理に必要な情報映像だけの状態
どこにマンホールから何m地点の、管のどの位置か「動画の12分34秒あたり」
何が異常の種類と判定の根拠見る人で判断が分かれる
どの程度ひび割れの幅・長さ、変形量、範囲「大きめのひび」

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

意外と見落とされるのが「どこに」です。管路の中にはGNSS(衛星測位)の電波が届きません。名古屋市上下水道局も、過去のドローン実証が「位置情報が推定できない問題」などから実用化に至らなかったと説明しています。

出典:Hatch Technology NAGOYA「地下に潜む危険をゼロに -無人点検×AI診断で下水道管調査DXの高度化実証-」(名古屋市上下水道局)

「動画の○分○秒に映っている」を、「位置情報を持った維持管理データ」に変える。点検の次のハードルはここにあります。

3|映像を「記録」から「データ」に変える

ドローンが持ち帰る情報は、段階を踏むほど使い道が広がります。

国の2026年度「AB-Cross」実証に採択された、ドローンとAIを組み合わせる事業(リベラウェア、管清工業、日水コン、アキュイティー、千葉市)では、異状箇所の位置を延長誤差±5%以内で特定し、幅2mmのクラックを安定して数値化することを目標に掲げています。

出典:国土交通省「上下水道の革新的技術を新たに採択」/株式会社Liberaware「No Entry実現に向けた概略点検・詳細点検併用型ドローン×AI実証事業

ここで大切にしたいのが、点検データを、将来も比較できる状態で残すことです。

  • 前年より、クラックの幅は何mm広がったのか
  • 変形は進んでいるのか、止まっているのか
  • 浸入水の範囲は広がっているのか

1回の点検で分かるのは「いまの状態」だけ。回を重ねて初めて「進み方」が見え、手を打つタイミングを判断できます。

現場では

撮影時の速度や照明、カメラの向き、判定基準が毎回違うと、前回のデータと比べられません。機材選びと同時に、「同じ条件で撮る・同じ基準で記録する」ルールを決めておくことが、数年後の判断を支えます。

制度も同じ方向を向いています。2026年に成立した改正下水道法には、診断基準の法制化と、維持管理状況(診断結果等)の公表の義務付けが盛り込まれました。

出典:国土交通省「「下水道法等の一部を改正する法律案」を閣議決定

点群データで再現した下水道管内と異常箇所
管内形状を点群データとして再現し、走行軌跡と異常箇所を位置情報付きで記録するイメージ。(AI生成)

4|InspectionからMaintenanceへ、6つの工程をつなぐ

今回のブログの中心となる考え方が、次のサイクルです。

STEP名称やること次に渡すもの
1Inspection(調査)ドローン・ロボットで調べる映像・点群
2Detection(発見)異常を見つける異常候補の一覧
3Diagnosis(診断)位置・大きさ・進行度を把握する位置付きの損傷データ
4Decision(判断)補修・更新の必要性と優先順位を決める対策計画
5Maintenance(対策)補修・清掃・更新を行う施工記録
6Monitoring(経過確認)再び調べ、経年変化を追う時系列データ

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

↻ そして、再びSTEP 1へ。

ポイントは、各STEPが残したものが、次のSTEPの材料になることです。STEP 3で位置があいまいなら、補修班は現場で異常箇所を探し直すことになります。施工記録がなければ、STEP 6で見えた変化が劣化なのか補修の跡なのか見分けられません。

埼玉県とNTT東日本などの共同研究では、点検・解析・補修・データ管理の工程を共通プラットフォームでつなぐ「工程一体化DXモデル」の実証が、2026年8月以降本格化しています。

出典:NTT e-Drone Technology「埼玉県下水道管路マネジメントシステムの共同研究にて、「工程一体化DXモデル」の実証を本格化

このサイクルが回り始めると、「壊れてから直す」から「壊れる前に対応する」予防保全へ移っていける可能性が見えてきます。

POINT

ドローンやロボットの価値は、最初の調査だけではありません。STEP 6で同じ場所を、同じ条件で、繰り返し見に行けることにもあります。

5|「人が入らない点検」から「人が入らない維持管理」へ

いま進んでいるのは、No Entry Inspection=人が入らない点検です。

SkyLink Japanは、その先にNo Entry Maintenance=人が入らない維持管理という考え方があるのではないか、と考えています。

補修や更新まで無人で完結する段階には、まだありません。ただ、補修箇所をデータで事前に絞り込み、人が管内に入る回数と時間を最小限にすることは、現実的な第一歩になり得ます。

そのために必要なのは、ひとつの万能な機械ではありません。水位や流速、管径、取得したいデータに応じて、飛行式ドローン、走行ロボット、浮流式ロボット・カメラ、水中ロボット/ROV、LiDAR・3Dデータ、AI解析などを組み合わせることになります。2026年度のAB-Cross実証にも、フロート式点検ロボットや、管の背面の空洞を調べる天井走行ロボットなど、方式の異なる技術が並んでいます。

大切なのは「ドローンを使うこと」ではなく、「人が入らずに必要な情報を取得し、維持管理につなげること」です。

6|ドローンが向かうのは、空だけではない

「ドローン=空撮」のイメージは根強いものです。けれどインフラの現場では、さまざまなロボティクスが人の代わりに現場へ向かっています。

  • 空を飛ぶ――橋梁、法面、屋根
  • 構造物の内部を飛ぶ――タンク、ボイラー、トンネル
  • 管路の内部を移動する――下水道管、暗渠
  • 水上を移動する――水路、ため池
  • 水中を移動する――満水の管路、水中構造物

共通する価値はひとつです。人が行くことを前提としていた仕事を、機械が行き、必要なデータを持ち帰る仕事へ変えること。

SkyLink Japanは複数のドローン・ロボティクス技術を扱っているからこそ、特定の機体ありきではなく、現場の条件と「何のデータが必要か」から方式を選ぶことを大切にしています。

7|まとめ|「見つける」は、ゴールではない

ドローンで異常を「見つける」ことは、ゴールではありません。

見る。
測る。
記録する。
比較する。
判断する。
直す。
そして、もう一度確認する。

このサイクルをつなげて初めて、ドローンやロボティクスは下水道の維持管理に本当の価値を生み出します。

「人が入らない点検」は、ゴールではなく入口なのかもしれません。

「人が入らない点検」から、
「人が入らない維持管理」へ。

下水道点検に活用される具体的なドローン・ロボットや、それぞれの特徴については前回のブログをご覧ください。

人が立ち入りにくい場所の点検、何から考えればよいか分からない段階でもご相談ください

下水道、暗渠、ボックスカルバート、地下構造物など、人が立ち入りにくい環境での点検方法についてお困りの場合は、SkyLink Japanまでご相談ください。

特定の機体を前提にするのではなく、現場の条件(管径・水位・距離など)と「どんなデータを、何の判断に使いたいか」をうかがったうえで、飛行式・浮流式・走行式などの方式や、データの残し方を一緒に検討します。

「いまの点検方法で足りているのか確認したい」「取得したデータを補修計画に活かしきれていない」といった段階からでも構いません。

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