ドローン通信が2.4GHzからLTE・5G、衛星通信へ進化することを示すヒーロー画像

ドローン通信は2.4GHzからLTE・5Gへ、そして衛星へ|日本の安全運航を支える次世代通信

調査基準日:2026年8月28日

日本で飛んでいる産業用ドローンの大半は、いまも2.4GHz帯の直接無線で操縦信号と映像を送っています。操縦者の目が届く範囲で空撮や点検をするなら、軽くて安く、通信料もかからないこの方式で十分です。

事情が変わるのは、距離が伸びた瞬間です。目視外飛行(BVLOS)、さらに遠隔・自動運航へ進むと、2.4GHzでは距離・遮蔽・干渉のどれも吸収しきれません。ここから先はLTE、そして5Gが主回線になります。

そのさらに外側に、山間部、海上、離島、災害現場があります。携帯電話の基地局そのものが届かない場所です。地上インフラに依存しない通信手段、つまり衛星通信が最後に残ります。

衛星通信は2.4GHzやLTE・5Gを置き換えません。近距離は2.4GHz、通常の遠隔運航はLTE・5G、圏外と災害時は衛星。この三層構成が、日本でもっとも現実的で安全な将来像です。

日本のドローン通信は3段階で進化する

ドローン通信の発展は、次の3段階で整理できます。

表1:ドローン通信の3段階

段階 主な通信 適する飛行 主な弱点
第1段階 2.4GHz帯などの
直接無線
目視内、
現場周辺
距離、遮蔽、
干渉
第2段階 LTE・5G 携帯電話エリア内の
遠隔・BVLOS
圏外、上空の通信品質、
基地局の障害
第3段階 衛星通信 山間部、海上、離島、
災害地域
端末価格、通信料金、
認証(現時点)

段階が進んでも、前の段階は消えません。回線が増えるほど、1本が切れたときに残る選択肢が増える。これがドローン通信の進化の本質です。

第1段階:2.4GHzで見える範囲を飛ばす

市販の小型ドローンは、操縦信号も映像伝送も2.4GHz帯でまかなうのが一般的です。強みははっきりしています。

  • 端末が小型・軽量
  • 機体価格に含まれていることが多い
  • 通信契約や月額料金が不要
  • 近距離では低遅延で操作しやすい
  • 現場で機体と操縦者を直接つなげる

弱点も同じくらいはっきりしています。建物や山、森林の陰に入れば通信品質は落ちますし、周囲のWi-Fiとの干渉、アンテナの向き、飛行高度、地形にも左右されます。

つまり2.4GHzは、操縦者が現場にいて機体を目視できる用途のための回線です。離島物流、海上監視、長距離のインフラ点検のように操縦者から遠く離れる運航の基盤には、そもそも設計されていません。

ただ、その前に「日本は2.4GHzしか使えないから不利だ」という説明について、制度面を整理しておきます。ここを誤解したまま機材を選ぶと、海外で当たり前に使える構成が国内で使えない、という事故が起きます。

「日本では2.4GHzしか使えない」は正確にはどういう意味か

正しくは、一般の市販ドローンを、利用者が個別の無線局免許を取らずに全国で使える主流帯域が2.4GHz、という意味です。

日本にも、免許を取得して使う産業用の2.4GHz帯や5.7GHz帯があります。LTE・5Gを利用するドローンもあります。日本のドローン通信そのものが2.4GHzだけに縛られているわけではありません。

表2:日本でドローンに使われる主な周波数帯と制度上の位置付け

周波数帯と制度上の位置付け 主な手続き ドローンでの使われ方
2.4GHz帯
小電力データ通信システム
(2400〜2483.5MHz)
技術基準に適合した機器なら、
利用者ごとの無線局免許が不要
市販ドローンの操縦、
映像伝送、データ通信
2.4GHz帯
無人移動体画像伝送システム
(2483.5〜2494MHz)
無線局免許と
運用調整が必要
産業用の制御、
映像伝送
5.7GHz帯
無人移動体画像伝送システム
(5650〜5755MHz)
無線局免許と
運用調整が必要
産業用の高品質映像、
制御、データ通信
5.8GHz帯
(5755〜5815MHzの一部)
2026年4月から、
告示された地域・期間・出力に限る
特定実験試験局
海外仕様との調和と
既存無線との共用を検証中。
全国一律の免許不要帯ではない

2.4GHzが主流になったのは、世界中でWi-Fiなどに使われてきたからです。半導体、アンテナ、通信方式が量産され、小型・軽量・低価格の機器を作りやすい。日本でも2400〜2483.5MHzの小電力データ通信は、定められた出力と電波品質を守る技術基準適合機器であれば、利用者が1台ずつ無線局免許を取る必要がありません。使いやすさと部品の量産効果が、市販ドローンの標準帯域を決めました。

技適は「海外製品を締め出す法律」ではなく、免許不要利用を支える仕組み

「技適」は法律の名前ではありません。電波法に基づく技術基準適合証明・工事設計認証と、その適合表示を指します。無線機の周波数、出力、不要な電波などが日本の基準に収まっているかを製品側で確認する、無線機の事前検査だと考えると分かりやすいはずです。

電波は、同じ場所で多くの人や設備が共有する限られた資源です。出力や周波数がルールから外れた無線機は、ほかのドローンだけでなく、携帯電話、ETC、レーダー、防災・公共通信にも干渉しかねません。かといって、Wi-Fiや市販ドローンの利用者全員に個別の無線局免許と干渉試験を求めるのは現実的ではありません。

この二つを両立させるのが技適です。機器が技術基準を満たすことを事前に確認しておけば、技適マークのある対象機器は利用者ごとの無線局免許なしで使えます。規制というより、多数の利用者が手続きなしで安心して使うための入口です。

機材選定での注意点米国のFCC認証や欧州のCE表示があっても、それだけで日本の技術基準に適合したことにはなりません。海外仕様の送信機が日本と異なる周波数や出力を使う場合、あるいは技適表示がない場合、日本国内で電波を発射すると電波法に抵触するおそれがあります。

世界で普及する5.8GHzを、日本でそのまま使えない理由

米国や欧州をはじめ、多くの市場では各国の技術基準に従って5.8GHz帯がドローンの映像伝送や操縦に使われています。2.4GHz帯の混雑を避けやすく、映像用の帯域を確保しやすいのが利点です。周波数が高いぶん遮蔽物を回り込みにくく、距離や見通しへの配慮は必要になります。

日本で海外仕様の5.8GHz機器をそのまま使えない理由は単純で、その周波数帯が空いていないからです。同じ帯域やその近傍を、ETC・DSRC、レーダー、アマチュア無線がすでに使っています。海外と同じ周波数・出力を全国一律で開放すれば、道路交通や既存無線に干渉しないかを確かめる作業が先に必要になります。

日本では2016年から、5650〜5755MHzの5.7GHz帯を「無人移動体画像伝送システム」として制度化してきました。産業用ドローンで高品質映像を送れる一方、無線局免許と運用調整が前提です。海外の市販ドローンで一般的な、免許不要の5.8GHz運用とは別物と考えてください。

制度は動いている総務省は米国・欧州で広く使われる5.8GHz帯との国際調和を検討し、2026年4月1日から2027年3月31日まで、5755〜5815MHzの一部を、告示された地域や出力などの条件に従う特定実験試験局で利用できるようにしました。既存のETCなどと共存できるかを確かめるための制度であり、2026年8月時点で5.8GHz帯が全国どこでも免許不要で使えるようになったわけではありません。

なお、5.8GHz帯のFPV送信機をアマチュア無線局として使う方法はあります。ただし無線従事者資格、無線局免許、使用できる周波数・機器などの条件が付き、業務用ドローン通信の代替制度にはなりません

日本が2.4GHzを選んだのは、ドローンの性能を意図的に抑えるためではありません。免許不要で広く使える便利さと、既存の無線を干渉から守ることを両立させた結果です。5.8GHzは技術的に使えないのではなく、共存の条件を整えている最中です。

制度面をまとめると、当面、免許不要で全国的に使える主流帯域は2.4GHzのままです。だからこそ、距離と遮蔽を超える手段は、別の層に求めることになります

第2段階:LTE・5Gで広域運航へ進む

距離と遮蔽の問題を引き受けるのが、携帯電話網です。操縦者と機体が直接電波をやり取りする必要がなくなり、インターネット経由で、離れた運航センターから機体を監視・操作できます。

  • 既存の携帯電話インフラをそのまま使える
  • 映像や画像をリアルタイムで送りやすい
  • クラウド型の運航管理システムと接続できる
  • 複数機体を一つの拠点から管理できる
  • 衛星専用端末より端末・通信料金を抑えやすい

ただし携帯電話網は、もともと地上の利用者を中心に設計されています。上空では複数の基地局の電波を同時に受けたり、地上では圏内でも高度や飛行ルートによって通信が不安定になったりします。「携帯がつながる場所=ドローンが飛ばせる場所」ではありません。

当面の主役はLTEです。5Gへの拡張は期待されていますが、2026年8月時点で国内3社が公開している上空通信プランは、いずれも4G LTEです。それでも都市部、工業地帯、道路周辺のようにサービスエリア内であれば、衛星専用通信より経済的な選択になります。

国内3社のドローン上空利用料金

地上向けSIMを機体に挿しても、上空で自由に使えるわけではありません。上空利用に対応した専用SIMや料金プランを契約し、飛行する日時・場所などを事前に申請する必要があります。

表3:国内3社の代表的なドローン向け上空通信プラン(2026年8月28日時点の公開情報)

事業者・プラン 公開料金(税込) 容量・回線 主な利用条件
NTTドコモ
LTE上空利用プラン
  • 定額無制限:49,800円/月
  • 従量:12,500〜49,800円/月
  • 定額型は無制限
  • 従量型は最大120GB。
    超過後は最大1Mbps
  • Xi(4G LTE)のみ。
    5Gは対象外
専用サイトで、
利用日時・場所・台数・高度などを
事前に予約
KDDIスマート
ドローン

上空電波パッケージ
  • 月額型:49,800円/月
  • 年額型:480,000円/年
    (月あたり40,000円)
  • 従量型:基本料150,000円/年
    +利用月ごとに
    0円/24,800円/49,800円
  • 定額型は使い放題
  • ただし大量通信時は
    速度制限の可能性
  • 4G LTEのみ。
    5Gは利用不可
対応機体と通信モジュール
および飛行前の
上空利用申請が必要
ソフトバンク
LTE上空専用プラン
(SoraBase)
49,800円/月
  • 120GB
  • 4G LTEの専用プラン
  • 上り通信は
    最大3Mbpsに制御
飛行ごとの申請と、
指定の通信モジュールが必要

※料金や容量の定義、付帯サービス、対応機体は各社で異なるため、価格だけの同条件比較にはなりません。通信モジュール、機体、クラウド、運航管理、閉域接続、保険、導入支援などの費用が別途必要になる場合があります。

上空LTEは、地上利用に比べるとまだ高い

定常利用向けの公開価格は、3社とも月額4万〜5万円台に並びます。地上向けスマートフォンやIoTの通信契約と比べれば、上空LTEはまだ高額です。月額49,800円の回線を10機ぶん常時契約すれば、通信回線だけで月額498,000円になります。

この価格差には理由があります。上空では地上よりも遠くの複数基地局が見通しに入りやすく、1機の電波が複数の基地局や地上利用者へ影響しかねません。そのため各社は、専用SIM、対応モジュール、送信電力と上り速度の制御、飛行エリアや日時の申請、台数管理を組み合わせています。上空専用サービスの利用者が地上向けほど多くないことや、法人向けの運用支援が必要になることも、価格が下がりにくい背景です。

各社が原価内訳を公開しているわけではありませんが、これは単なるデータ容量の料金ではなく、地上の携帯電話に干渉させずにドローンを上空で動かすための管理コストを含んだサービスだと捉える必要があります。実際、ドコモは周囲の携帯電話への電波影響が懸念される場合に予約を承諾しない可能性を明記し、ソフトバンクは上り速度を3Mbpsに抑えています。

LTEは衛星通信より導入しやすい一方、2.4GHzのように追加の月額料金なしで使える通信ではありません。上空LTEの月額負担を抑えつつ、低価格の衛星バックアップを組み合わせられること。それが、複数機を常時運航するための次の条件になります。

LTE・5Gだけでは日本全国をカバーできない

日本は国土の多くを山地が占め、長い海岸線と多数の離島を持ちます。その結果、ドローンの需要が高い場所ほど携帯電話がつながりにくいという構造が生まれます。

圏外になりやすい3つの現場

  • :捜索救難、送電線・ダム・河川上流の点検、森林管理と山火事監視
  • :離島間の物流、海上・沿岸監視、洋上風力発電設備の点検
  • 被災地:地震・台風・洪水後の被害調査と初動

さらに厄介なのは3つめです。地震や水害で基地局、電源、地上回線が止まれば、LTE・5Gを前提にしたドローンも飛ばせなくなります。

災害対応に使いたいドローンが、災害によって通信できなくなる。この矛盾を解く唯一の手段が、地上インフラに依存しない衛星通信です。

第3段階:衛星通信が最後まで残る安全回線になる

衛星通信の価値は単純です。地上の基地局からどれだけ離れても、つながります。

この第3段階が現実味を帯びてきたのは、端末、速度、遅延、価格という4つの前提が同時に動き始めたからです。何が変わったのかを掴むには、衛星通信が「誰と誰を、どんな端末でつないできたか」を時系列で見るのが早道です。

これまでの衛星通信はどう進化してきたのか

初期の衛星通信は、巨大な地上局同士を宇宙で中継する仕組みでした。やがて船舶や航空機、衛星電話が直接つながるようになり、いまは家庭や移動体が高速インターネットへ接続できます。次の段階では、通常のLTE端末やIoTモデムが衛星へ直接つながろうとしています。

衛星通信が巨大地上局から移動体通信、LEO、Starlink・NTNへ進化した歴史

図1:衛星通信は、固定された巨大地上局の中継から、移動体通信、LEOブロードバンド、地上LTEと衛星の一体化へ進化しています。

歴史上の名前だけでは接続の違いが見えにくいので、現在につながる4つの代表的な方式を、電波が通る順序で示します。青い矢印は通常の通信経路、黄色い点線は衛星間通信や圏外時に使う経路です。

静止衛星、L帯移動体通信、Starlink、NTNの4つの接続経路を比較した図

図2:従来方式では専用アンテナから遠い衛星や地上局へ接続します。Starlinkは近い衛星を自動で切り替え、NTNは地上LTEと衛星を同じ端末で切り替える方向へ進みます。

表4:衛星通信の主な世代と、その都度変わったこと

時期 主な方式 通信の形 変わったこと
1962年 Telstar
(中軌道)
巨大地上局 ↔ 衛星
↔ 巨大地上局
宇宙で電波を中継できると
実証した
1965年以降 静止衛星
(GEO)
固定アンテナ ↔ 衛星1機
↔ 固定アンテナ
国際電話とテレビを
常時つないだ
1976〜1979年
以降
L帯
移動体衛星通信
衛星 ↔ 船舶・航空機・
衛星電話
移動する端末へ
安全通信を届けた
1998年以降 Iridium
(LEO)
携帯端末 ↔ 移動する
多数の衛星
衛星を切り替えながら
全球をカバーした
2011年以降 GEO・HTS Ka帯スポットビーム
↔ 小型アンテナ
衛星インターネットを
高速・大容量にした
2019年以降 Starlink
(LEO)
電子走査アンテナ ↔
多数の低軌道衛星
低遅延化と
端末の量産化を進めた
2022年以降 3GPP NTN
Direct-to-Cell
LTE/IoT端末 ↔ 衛星 専用端末を減らし、
地上網と統合し始めた

1962年衛星は「宇宙に置いた中継器」だった

1962年7月に打ち上げられたTelstar 1は、電波を受けて地上へ送り返す能動型の通信衛星でした。大西洋を越えてテレビ映像を中継し、宇宙を経由したリアルタイム通信が成立することを示しました。

ただしTelstarは地球に対して動く中軌道衛星で、地上局から見える時間しか通信できません。両側には巨大なパラボラアンテナが必要でした。この時代の衛星通信は、一般利用者が衛星へつながるものではなく、地上の通信拠点同士を結ぶものでした。

1965年静止衛星が国際電話とテレビを常時接続した

1965年のIntelsat I「Early Bird」が、初の商用通信衛星として運用を開始します。静止衛星は赤道上空約35,786kmで地球の自転と同じ周期を持つため、地上からは空の同じ位置に止まって見えます。地上アンテナを固定でき、少数の衛星で広い地域を常時カバーできる点が大きな利点でした。

代償は遅延です。電波は地上から約3万6,000km先の衛星まで往復するため、経路だけで往復約500ミリ秒が生じます。放送やファイル伝送には向いていても、ドローンの即時操作には不利です。

1970年代後半衛星通信が「移動する端末」へ広がった

1976年のMarisat、1979年に設立されたInmarsatによって、衛星通信は固定地上局だけでなく、航行中の船舶へ安全情報や遭難通信を届ける移動体通信へ広がりました。のちに航空機や衛星電話も加わります。

この流れで主役になったL帯は、降雨の影響を受けにくく、小さなアンテナでも安定した通信を作りやすい一方、速度は限られます。現在のUAV用小型衛星端末が動画ではなくC2や位置情報、テレメトリーを重視するのは、この系譜にあるからです。

1998年Iridiumが多数のLEO衛星を切り替える方式を実用化した

Iridiumは、地球の周囲を動く多数のLEO衛星を使い、利用者の上空から衛星が離れる前に次の衛星へ通信を引き継ぐ方式を商用化しました。1998年11月に世界規模の衛星電話サービスを開始し、大型の固定アンテナがない場所でも、全球で音声と小容量データを扱えるようになりました。

一方、当時の端末と通信料金は高く、地上の携帯電話が急速に普及したため、最初の事業モデルは行き詰まります。技術的につながることと、量産価格で大きな市場を作ることは別でした。その後は海洋、航空、防災、IoTなど、地上網がない場所で確実につなぐ用途へ軸足を移しています。

2011年HTSが衛星インターネットを高速化した

2010年代には、Ka帯の細いスポットビームと周波数再利用を使うHTS(High Throughput Satellite)が普及します。2011年に打ち上げられたViaSat-1は、当時世界最大の140Gbpsという衛星容量を実現し、家庭や航空機向けの衛星インターネットを高速化しました。

ただし衛星自体はGEOにあるため、遅延は残ります。移動する小型ドローンで使うには、衛星を正確に追尾するアンテナ、電力、空力、熱設計も必要でした。

2019年Starlinkは衛星だけでなく「システム全体」を変えた

Starlinkは高度約550kmのLEOへ多数の衛星を配置し、利用者側の電子走査アンテナが、頭上を移動する衛星をソフトウェアで追尾して次々に切り替えます。GEOの約35,786kmに対して衛星までの距離が大幅に短く、衛星ブロードバンドでありながら地上回線に近い低遅延を実現しやすくなりました。

本当の変化は速度ではありません。SpaceXが打ち上げ、衛星製造、地上端末、ネットワーク運用を垂直統合し、再使用ロケットで衛星を高頻度に投入し、衛星と端末を継続的に量産・更新する仕組みを作ったことです。「高価な衛星を少数、長期間使う」産業から、「多数の衛星を量産し、ソフトウェアで一つのネットワークとして運用する」産業へ移りつつあります。

2022年衛星はLTE・5Gネットワークの一部になる

3GPP Release 17でNTNが標準化され、衛星通信と携帯電話通信は別々の世界ではなくなり始めました。Starlink Direct to Cellは、衛星上の装置を「宇宙のLTE基地局」として動かし、既存のLTEスマートフォンや一般的なLTE IoTモデムを直接つなぐ方向へ進んでいます。

ドローンにとっての意味は大きい。専用の衛星モデムと大きなアンテナを追加するのではなく、通常のLTE/IoT通信モジュールに近い構成のまま、地上基地局と衛星を切り替えられる可能性が生まれます。端末と通信料金が量産効果で下がれば、衛星通信は特別装備ではなく、通信断に備える標準的な安全回線になります。

Telstarが中継を証明し、GEOが世界を常時接続し、InmarsatとIridiumが移動体をつなぎ、HTSが高速化し、Starlinkが低遅延・量産型ネットワークへ変えた。そしてNTNが、その衛星網をLTE・5Gの延長線上へ組み込もうとしています。衛星通信は「大型施設や特殊な乗り物のための高価な通信」から、小型UAVにも積める通信へ近づいています。

小型UAVでは、どこまで実用化しているか

すでに海外では、1kg未満の衛星通信端末をUAVへ搭載した飛行実証が行われています。

SKYTRACのDLS-100は、Iridium衛星を利用する重量約743gの端末です。2021年にはPlatform Aerospaceの長時間滞空UAV「Vanilla」に搭載され、アラスカから北極海上約130マイルの飛行中、衛星経由でC2とテレメトリーを維持しました。NASAもミッションの成功を確認しています。

ここで重要なのは、衛星で常に高画質映像を送ることではありません。映像が一時的に止まっても、次の情報さえ残れば機体は安全に管理できます。

  • 位置、高度、速度、方位
  • バッテリー残量
  • 飛行モードと警告
  • 経路変更指令
  • 帰還・着陸指令
  • lost-link時の状態

安全運航に必要なC2・テレメトリーは、動画よりはるかにデータ量が小さくなります。通常はLTE・5Gで映像を送り、圏外時には衛星で最低限のC2を維持する。この構成なら、通信料金を抑えながら安全性を高められます。航空通信の標準でも、安全飛行に関わるC2/CNPCと、カメラ映像などのミッション用通信は明確に区別されています。

現在検討できる2つのUAV向けL-band端末

ここまでの話は、将来構想だけではありません。SkyLink Japanでは、地上通信網の外側でC2やテレメトリーを維持するためのUAV向けL-band衛星通信端末として、機体規模の異なる2製品を紹介しています。

2製品の位置付けと公開仕様

製品 主な搭載対象 公称重量・外形 主な役割
Gotonomi
Velaris 200
搭載重量・電力の制約が厳しいUAV、AAMを含む搭載検討 580g
直径145×高さ85mm
最大200kbps
C2、テレメトリー、機体状態監視、音声、強圧縮映像
Thales
AVIATOR 210U
中・大型UAV、戦術UAV 約1.45kg
約240×160×64mm
最大200kbps
C2、テレメトリー、機体状態監視、ミッションデータ、強圧縮映像
搭載重量と消費電力を抑えたい機体へ

Gotonomi Velaris 200は、アンテナとGNSSを一体化した直径145mmの端末です。公称重量580g、双方向70kbps通信時の公称消費電力15Wで、搭載重量と電力の制約が厳しい機体から検討しやすい選択肢です。現時点で対応が確認されているサービスはViasat Regional Class 4です。

Velaris 200の特長・仕様・搭載条件を見る →

中・大型UAVの長距離・広域運航へ

Thales AVIATOR 210Uは、中・大型UAVや戦術UAVを想定した一体型端末です。約1.45kgの搭載余裕を確保でき、長距離の海上監視、災害対応、広域警備などで、C2とテレメトリーの経路を地上網から分離したい場合の候補になります。

AVIATOR 210Uの特長・仕様・搭載条件を見る →

※両製品とも、高画質映像を常時送るブロードバンド端末ではありません。最大通信速度は実効速度を保証するものではなく、機体への搭載可否、日本国内の電波法上の取り扱い、航空法上の運航承認、利用できるサービスとカバレッジは個別の確認が必要です。

衛星通信はなぜまだ標準装備ではないのか

有望であることと、いま積めることは別です。現在の小型ドローンに衛星通信が広く搭載されていない理由は、大きく4つあります。

端末価格と通信料金

業務用UAV向け衛星端末の多くは個別見積もりです。2.4GHzや一般的なLTE端末に比べると、端末、アンテナ、通信契約、機体統合のいずれにもコストがかかります。

重量と消費電力

L帯端末は1kg以下へ小型化していますが、アンテナ、ケーブル、電源変換、放熱部品まで含めると、機体への影響は公称端末重量より大きくなります。

通信容量

現在の小型L帯端末は、C2やテレメトリーには十分でも、HD動画の常時伝送には向きません。高速なKu・Ka帯端末は、そのぶん重量と消費電力が増えます。

航空・電波上の承認

衛星につながる端末であっても、そのまま日本のドローンへ搭載して商用運航できるとは限りません。無線局免許、国内サービス条件、機体への統合、安全評価、BVLOS運航承認を一つずつ確認する必要があります。

検証事例の読み方に注意Starlink MiniをUAVへ搭載した研究では高い通信速度が確認されていますが、Starlinkの公式情報ではMiniを機体へ固定搭載することは認められておらず、民間航空当局の認証も受けていません。「通信できたこと」と「正式な航空通信として使えること」は、分けて評価してください。

NTNと衛星直接通信が価格を下げる

衛星通信の価格と端末サイズを大きく動かしそうなのが、3GPP NTNとDirect-to-Device/Direct-to-Cellです。

3GPP Release 17では、5G NRを衛星へ拡張するNR-NTNと、NB-IoT・eMTCを衛星へ拡張するIoT-NTNが標準化されました。Release 18では、衛星アクセスの5Gシステムへの統合、IoT、移動管理などが強化されています。

Release 17/18で何が変わるのかは、電波の通り道を並べると一目で分かります。

従来の2系統通信と、地上網・衛星を一体化するNTNの機体側構成を比較した図

図3:従来は、セルラー用と衛星用で無線が二重になっていました。NTNでは衛星が「宇宙の基地局」として同じ携帯コアネットワークに入るため、機体側は1系統のモジュールとeSIMのまま、圏内と圏外をハンドオーバーで切り替えられます。

従来は衛星事業者ごとに専用モデムとアンテナが必要でした。NTNが普及すれば、地上のLTE・5Gと衛星通信が同じモバイル通信のエコシステムに入り、既存の半導体、SIM/eSIM、ネットワーク管理技術をそのまま活かせます。

その兆しはすでに製品に出ています。Iridium Certus 9704は重量12gの衛星IoTモジュールで、Iridiumは用途として無人航空機のC2を挙げています。動画用ではありませんが、位置、状態、警告、緊急指令を送る小型の安全回線としては十分です。

KDDIは圏外上空でStarlink Directによる飛行制御に成功

日本でも、衛星通信をドローンの安全回線にする具体的な動きが始まっています。KDDIとKDDIスマートドローンは2026年5月18日、茨城県高萩市の携帯電話が届かないエリア上空で、「au Starlink Direct」とドローンを接続した飛行制御に成功しました。KDDIによれば、Starlink Mobileとドローンの直接通信で飛行制御を行った国内初の事例です。

これは、Starlink Miniのような衛星ブロードバンド用アンテナを機体へ載せ、大容量インターネットへつなぐ方式とは異なります。「au Starlink Direct」は、Starlink衛星を宇宙の携帯電話基地局のように使い、機体側のモバイル通信を衛星へ直接つなぐ考え方です。

通常の上空LTEドローン ↔ 地上のLTE基地局 ↔ 通信ネットワーク ↔ 運航側
基地局が届かない山間部や被災地では、LTE回線が途切れます。
KDDIの衛星直接通信実証ドローン ↔ Starlink衛星 ↔ 通信ネットワーク ↔ 運航側
地上基地局がなくても、衛星経由で飛行制御を継続できる可能性があります。

実証で衛星経由の送受信が確認されたのは、機体を動かすための制御信号と、位置や飛行状態を知らせる動態情報(テレメトリー)です。携帯電話の基地局がない場所でも、ドローンへ指示を送り、機体の状態を地上側で確認しながら飛べることを示しました。

まだ実証されていない、または公表されていないこと

  • 高画質映像を常時送れるか
  • 通信速度、遅延、通信可用性
  • 対応する機体・通信モジュール
  • 上空利用の料金と商用提供時期
  • 通常のBVLOS運航としての承認

したがって、この成果は全国で直ちに使える商用プランではなく、圏外でもC2と機体状態の通信を残せる可能性を確認した飛行実証と捉えるのが正確です。

今後は、通常のモバイル通信と「au Starlink Direct」を飛行中に切り替えるハンドオーバーや、携帯電話圏外での目視外遠隔運航を検証する計画です。用途として、災害地域の状況確認、山間部での捜索、獣害対策、橋梁などのインフラ点検、地域の見守りを想定しています。両社は将来目標として、平時・災害時を問わず、全国どこでも10分以内にドローンが遠隔操縦で駆け付けられる社会基盤を掲げています。

この実証が示したのは、衛星で大容量映像を送れたことではありません。圏外でも飛行制御と機体状態の通信を残せる可能性です。衛星通信を「最後の安全回線」として使う考え方に、もっとも近い国内事例の一つです。

この方式が成熟すれば、専用の衛星端末を積まずに、セルラーモデムに近い小型・低価格の構成で衛星へつなげるようになります。

最終形は2.4GHz・LTE/5G・衛星の三層構成

衛星通信が安くなっても、2.4GHzやLTE・5Gの出番はなくなりません。それぞれの長所を層として重ねることが、安全性にも経済性にも効きます。

表5:三層構成における各回線の役割

通信 将来の役割 運用上の位置付け
2.4GHz帯などの直接無線 離着陸、現場周辺、
操縦者との直接接続
近距離の基本回線
LTE・5G 日常的な遠隔運航、映像伝送、
クラウド接続
通常時の主回線
L帯・IoT-NTN C2、位置、機体状態、
緊急指令
圏外・障害時の安全回線
LEO・Ku/Ka帯 HD動画、画像、ISR、
センサーデータ
必要時の大容量回線

この考え方には裏付けもあります。FAAの支援で行われた通信試験では、C帯、LTE、Starlinkを自動リンク管理で組み合わせた結果、試験上の通信可用性が99.98%まで改善しました。各回線を航空安全リンクとして一括認証した結果ではありませんが、単一回線に依存しない設計の有効性を示しています。

将来の競争力は、もっとも高速な通信端末を持っているかでは決まりません。複数回線を常時監視し、切断する前に別回線へ移せるかで決まります。

日本で先に普及する用途

安価な衛星通信が手に入ったとき、日本で効果が大きいのは次の領域です。いずれも「圏外だから飛ばせない」が現在の律速になっています。

  • 災害時の初動:地上通信網が落ちている状況こそ、機体を確実に帰還させる回線が要る
  • 離島物流と医薬品輸送:航路の大半が海上で、途中に基地局がない
  • 山岳捜索救難:谷筋や樹林帯で圏内・圏外が細かく入れ替わる
  • 海上・沿岸監視:岸から離れるほど通信が切れ、監視時間が制約される
  • 長距離のインフラ点検:送電線、ダム、河川、森林は一筆書きで数十kmに及ぶ
  • 洋上風力発電設備の点検:設備自体が圏外に立地する
  • 長時間滞空UAVとHAPS:滞空時間が長いほど地上網に依存できない
  • 防衛・海上保安:通信途絶と妨害を前提に冗長性が求められる

日本企業にとっては、衛星端末そのものの開発以外にも事業機会があります。

国内プレーヤーの参入余地

  • 海外衛星端末の国内認証と機体統合
  • 2.4GHz、LTE・5G、衛星の自動切り替え
  • UAV用のアンテナ配置、電源、熱、EMI/EMC設計
  • C2の可用性監視と安全評価
  • 通信契約、運航管理、保守を束ねた月額サービス

まとめ:安価な衛星通信がドローンを社会インフラに変える

日本のドローン通信は、2.4GHzで操縦者の見える範囲を飛ぶ段階から、LTE・5Gで携帯電話エリアを遠隔運航する段階へ進みました。次に必要になるのは、山、海、離島、被災地を含めて全国で通信を残す衛星通信です。

現時点では、端末価格、通信料金、重量、認証が壁になっています。ただしLEO衛星、3GPP NTN、Direct-to-Device、衛星IoTモジュールの量産が進めば、この壁は順に下がります。そのとき衛星通信は、一部の大型・防衛用UAVだけの装備ではなく、小型の産業用ドローンを安全に帰還させる標準的な手段になります。

本命は衛星通信の単独利用ではありません。安価な衛星通信を最後の安全回線として備えた三層構成が実現したとき、ドローンは「通信エリアの中だけで使える機械」から「日本全国で安全に運航できる社会インフラ」へ変わります。

参考資料・出典

参考資料・出典を表示(30リンク)

このブログで参照した主な一次資料・公式情報を、本文に登場する順にまとめています。

日本の周波数制度・技適・5.8GHz

  1. 総務省「ドローンによる電波利用について」、2017年3月24日日本無人機運行管理コンソーシアムの制度案内、2026年8月28日閲覧
  2. e-Gov法令検索「電波法」第3章の2、2026年8月28日閲覧総務省「海外から持ち込まれる携帯電話端末・BWA端末、Wi-Fi端末等の利用」、2026年8月28日閲覧
  3. 総務省「ドローン等に用いられる5.8GHz帯の周波数の利用に係る制度整備」結果、2026年2月25日総務省告示第43号、2026年2月25日
  4. JARD「ドローンで使用する無線設備について」、2026年8月28日閲覧

国内の上空LTE料金

  1. NTTドコモ「LTE上空利用プラン」、2026年8月28日閲覧KDDIスマートドローン「上空電波パッケージ」、2026年8月28日閲覧SoftBank「SoraBase」、2026年8月28日閲覧

衛星通信の歴史と低軌道衛星

  1. NASA Telstar 1解説、2012年7月10日
  2. NASA通信衛星史ESAの静止軌道解説ITUの衛星通信遅延解説
  3. NASA通信衛星年表Inmarsat公式沿革、2026年8月28日閲覧
  4. Iridium商用サービス20周年、2018年11月1日Iridium事業史、2023年10月31日
  5. Viasat公式沿革ViaSat-1打ち上げ発表、2011年10月20日
  6. Starlink技術解説、2026年8月28日閲覧
  7. 3GPP NTN解説、2023年5月Starlink Direct to Cell公式情報、2026年8月28日閲覧

UAV搭載・航空衛星通信

  1. SKYTRACのNASA関連飛行事例
  2. RTCA DO-362Aの概要(UAS指令統制データリンクの最小運用性能基準、2020年12月発行)
  3. Starlink Aviation公式情報

NTN・衛星直接通信

  1. 3GPP Release 18の概要
  2. Iridium Certus 9704発表、2024年12月12日
  3. KDDI「国内初、圏外エリアでの衛星直接通信ドローン飛行実証に成功」、2026年7月22日

ハイブリッド通信

  1. FAAハイブリッド通信試験報告、2024年10月29日

ドローンの通信・遠隔運航についてご相談ください

SkyLinkでは、産業用ドローンの機体選定、通信構成、遠隔運航、実証実験についてご相談を承っています。山間部、離島、海上、災害対応など、既存の通信だけでは運航が難しい現場も、目的と安全要件から構成を検討します。

導入・実証について相談する

※本ブログは2026年8月28日時点の公開情報を基に作成しています。通信サービスの提供地域、端末仕様、航空・電波制度、事業者の利用条件は変更される可能性があります。実運用では、通信事業者、総務省、国土交通省航空局等へ個別に確認してください。

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