写真測量ルートの作成方法
(Photogrammetry area)
対象範囲を囲むだけで飛行ラインと撮影タイミングが自動生成されますが、 成果物の精度を決めるのはGSD・オーバーラップ・高度モードの3つの設定です。 ここでは各パラメータの意味と、どの値をどう決めるかの判断基準までを解説します。
対象:UgCS v6.0.5 (10192)PRO / EXPERT / ENTERPRISE GSD計算ツール付き成果物の精度と飛行時間を決めるのはGSD・オーバーラップ・高度モードの3つです。オルソ画像なら前後80%・側方80%から始め、GSDは判読したい対象の3〜5分の1で逆算し、高度モードは現場の地形で選んだうえで、計算後に標高断面で離隔を確認する。この順で決めれば大きく外しません。残りのパラメータは、この3つを決めたあとの調整です。
- 判読したい対象が GSD の3〜5ピクセル分になるよう逆算します
- 幅5cmのひび割れを判読したいなら 1〜1.5cm/px が目安
- GSDを半分にすると撮影枚数はおよそ4倍になります
- オルソ画像:前後80%/側方80%(公式が明示している値)
- 樹林・草地・水面:前後85〜90%/側方80%以上
- LiDAR:20%前後。写真測量とは要求がまったく異なります
- 平坦(高低差が飛行高度の10%未満):AMSL または AGL
- 緩やかな起伏:AGL(対地高度)
- 急峻な斜面・崖際:Smart AGL(EXPERT以上)
- 標高データが不確かで対応機体がある場合:距離計
この操作でできること
Photogrammetry area は、地図上で囲んだ範囲を写真測量用に撮影するための飛行経路を生成するツールです。 カメラの実焦点距離・センサー寸法・画素数と、指定したGSD(地上分解能)または飛行高度、 前後および側方のオーバーラップから、次を自動的に決定します。
- 飛行高度(GSDを指定した場合)、またはGSD(高度を指定した場合)
- 飛行ラインの間隔と本数
- 撮影を行う間隔(距離ベースのシャッターアクションが自動で付与されます)
- カメラの向き(真下向き90度の姿勢設定が自動で付与されます)
- 地形に沿った高度制御(選択した高度モードに応じたウェイポイント)
つまり「どの高さを、どの間隔で、何メートルおきに撮るか」を、成果物の要求分解能から逆算してくれるのがこのツールです。 機体付属アプリの簡易マッピングとの最大の違いは、地形データを反映した高度制御と、 オーバーラップを明示的に指定できる点にあります。
利用できるエディション
| 機能 | PRO | EXPERT | ENTERPRISE |
|---|---|---|---|
| Photogrammetry area | ○ | ○ | ○ |
| 高度モード AMSL / AGL | ○ | ○ | ○ |
| 高度モード Smart AGL | — | ○ | ○ |
| 高度モード Rangefinder | 対応機体のみ(ArduPilot機、DJI M300 / M350 / M400) | ||
| Photogrammetry corridor(線状対象) | ○ | ○ | ○ |
| Lidar area / Lidar corridor | — | ○ | ○ |
PROでも写真測量そのものは問題なく行えます。 急峻な斜面で「飛行ライン直下だけでなく周辺地形からの離隔も確保したい」という要求が出てきたときに、 Smart AGLのあるEXPERTが必要になります。エディションの詳細な違いはこちら
事前に必要なもの
- 機体プロファイル(Vehicle profile)の登録。最大高度、速度、ウェイポイント数の上限などがルート計算の制約になります。
- ペイロードプロファイル(Payload profile)の登録。これが最重要です。
Photogrammetry areaは、次の値がすべて0より大きい値で設定されていないと使用できません。
カメラ・ペイロードの登録手順へ(近日公開)実焦点距離
True focal lengthカメラレンズの実際の焦点距離(mm)を入力します。35mm判換算焦点距離ではありません。換算値を入力すると、UgCSが算出する飛行高度とGSDが大きくずれます。センサー幅/高さSensor width / height撮像センサーの物理的な幅と高さ(mm)を入力します。画像のピクセル数ではなく、メーカー仕様表に記載されたセンサー寸法を使用します。水平/垂直解像度Sensor horizontal / vertical resolution撮影画像の横・縦それぞれの画素数(px)を入力します。総画素数ではなく、例「8192 × 5460」のような横幅と高さの値です。最短撮影間隔Minimum triggering intervalカメラが連続して撮影できる最短の時間間隔を入力します。ルート上でこれより短い間隔の撮影が必要になると、シャッターが追いつかず撮り逃しが発生します。 - 対象範囲の標高データ。AGLまたはSmart AGLを使う場合、標高データが取得できていることが前提です。 標高データの設定へ(近日公開)
- 成果物の要求仕様。required GSD(何cm/pxが必要か)、必要な精度、後工程で使うソフト。ここが決まっていないと設定値が決まりません。
操作手順
- プロジェクトを開き、「Add new route」から「Create from scratch」を選択します。 ルート名を入力します。顧客名や案件名をそのままルート名にしないでください。 プロジェクトはエクスポートされて社外に渡ることがあります。
- Vehicle profile を選択します。ここで選んだ機体の性能値がルート計算の制約になります。 機体を後から変更するとルートの変換処理が走り、条件によってはエラーになるため、最初に確定させてください。
- ツールバーから「Photogrammetry area」を選択します。
- 地図上で対象範囲を囲みます。 配置はダブルクリックまたはShift+左クリックです。3点以上で面になります。 配置後は中心点をドラッグして移動、外縁(rim)を掴んで回転できます。
- Camera を選択します。複数のカメラを機体プロファイルに割り当てている場合、どれを使うか選びます。
- 「Set altitude using」で GSD または Flight height を指定します。 成果物の要求分解能が決まっているならGSD(cm/px)で指定するのが基本です。高度は自動で算出されます。 逆に飛行高度に制約がある現場(150m未満に抑える、など)では Flight height を指定し、 得られるGSDが要求を満たすかを確認します。
- 前後オーバーラップ(Forward overlap)と側方オーバーラップ(Side overlap)を指定します。 それぞれ1〜90%の範囲で設定できます。値の決め方は推奨値と判断基準を参照してください。
- 高度モードを選択します。海抜高度 / 対地高度 / スマート対地高度 / 距離計から選びます。 起伏のある現場では、対地高度などを選ばないと、対地高度が場所によって変わりGSDが不均一になります。
- 必要に応じて詳細設定(Advanced parameters)を調整します。 地形追従の許容差(AGL Tolerance)、走査方向(Direction angle)、撮影ライン端の延長(Overshoot)、交差グリッド(Double grid)などです。詳細は設定項目の意味へ。
- 編集を止めて数秒待ちます。UgCSは編集が終わると自動でルート計算を開始します。
- ルートのステータスを確認します。 緑のチェック=計算完了・転送可能、黄色のドット=未計算(クリックで計算開始)、 赤の感嘆符=エラーを含んだ計算結果、です。赤が出た場合は転送せず、原因を解消してください。
- 標高断面(Elevation)で地表クリアランスを確認します。 上部バーの「Elevation」ボタンで開きます。白い縦線がウェイポイントです。 断面上でカーソルを動かすと、地図上の対応区間がハイライトされます。 この確認を省略しないでください。数値上の設定が正しくても、断面を見れば地形との離隔が足りない箇所は一目で分かります。
- 撮影枚数と撮影間隔を確認します。
Photogrammetryツールを使うと
Camera by distanceアクションが自動(Auto)で付与され、 計算結果はログウィンドウに表示されます。算出された撮影間隔が、カメラのMinimum triggering intervalと飛行速度から見て 実現可能かを必ず確認してください。
設定項目の意味
UgCS画面の英語名と日本語訳を併記しています。画面上の項目を照合しながら、設定の意味と成果物への影響を確認できます。
基本設定(Basic parameters)
| 設定項目日本語/英語 | 意味 | 飛行・成果物への影響 |
|---|---|---|
カメラCamera | 撮影に使うカメラプロファイル | 登録済みの焦点距離・センサー寸法・解像度を使って、GSD、飛行高度、ライン間隔、撮影間隔を計算します。実機とプロファイルの値が違うと、以降の計算結果もすべてずれます。 |
GSDで高度を設定Set altitude using: GSD, cm | 必要な地上画素寸法(cm/px)から飛行高度を自動計算 | 値を小さくするほど画像は細かくなりますが、飛行高度が下がり、ライン本数・撮影枚数・飛行時間・処理時間が増えます。成果物に必要な解像度から決めます。 |
飛行高度で設定Set altitude using: Flight height, m | 飛行高度(m)を直接指定し、得られるGSDを自動計算 | 高度制限や運用上の指定高度がある現場に向きます。計算後に表示されるGSDが、成果物の要求精度を満たすか確認します。 |
前後オーバーラップ率Forward overlap (%) | 進行方向に連続する写真同士の重なり率(1〜90%) | 低すぎると特徴点のマッチングに失敗し、点群に穴や段差が生じます。高くすると復元は安定しやすくなりますが、撮影枚数と処理時間が増えます。 |
側方オーバーラップ率Side overlap (%) | 隣り合う飛行ライン間の写真の重なり率(1〜90%) | 低すぎるとライン間に隙間が生じ、オルソ画像に縞状の欠損が出ます。高くするとライン本数と飛行時間が増えます。 |
高度モードAltitude mode | 海抜高度(AMSL)/対地高度(AGL)/スマート対地高度(Smart AGL)/距離計(Rangefinder) | どの基準で飛行高度を保つかを選びます。起伏のある現場では、地表からの高さを保てるモードを選ばないとGSDが場所ごとに変わります。詳細は地形追従と標高データ(近日公開)へ。 |
詳細設定(Advanced parameters)
日本語名の下にUgCS画面の英語名を併記しています。何が変わるかと設定時の注意点を比較できます。
| 設定項目日本語/英語 | 何を調整するか | 使いどころ・注意点 |
|---|---|---|
地形追従の許容差AGL Tolerance, m | 地表との高度差をどこまで厳密に保つか |
|
走査方向Direction angle | 主走査ラインの向き(既定は南から北へ) |
|
撮影ライン端の延長Overshoot, m | 各撮影ラインの両端に確保する直線区間 |
|
延長区間の速度Overshoot speed, m/s | 撮影ライン端の延長区間を飛ぶ速度 |
|
撮影タイミングAction execution | 写真を撮る区間・タイミング |
|
交差グリッドDouble grid | 主グリッドに直交する2本目のグリッドを追加するか |
|
撮影ウェイポイントAdditional waypoints | 撮影位置ごとの中間ウェイポイントを生成するか |
|
部分計算Allow partial calculation | 制約違反区間があっても、計算可能な部分だけ生成するか |
|
カメラ上端の向きCamera top facing forward | 画像の上端を進行方向として扱うか |
|
GSDと飛行高度の計算
UgCSは次の考え方でGSDと飛行高度を相互に換算しています。横方向と縦方向のそれぞれで必要な高度を求め、 そのうち低いほうを採用します(=要求GSDを両方向で満たすため)。
飛行高度[m] = 実焦点距離[mm] × GSD[cm/px] × 画素数[px] ÷ ( センサー寸法[mm] × 100 )
横方向(センサー幅・水平画素数)と縦方向(センサー高さ・垂直画素数)の両方で計算し、小さいほうを採る。
お使いのカメラの値を入力してください。数値は入力と同時に再計算されます。 この試算は設計の目安です。実際のルートはUgCS上でプロファイルを設定して確認してください。
※ 入力例の数値は計算の動作確認用です。実際の機材の仕様値は、必ずメーカーの仕様書でご確認ください。
推奨値と判断基準
オーバーラップ
| 目的 | 前後(Forward) | 側方(Side) | 根拠・考え方 |
|---|---|---|---|
| オルソ画像の作成 | 80% | 80% | 公式ドキュメントが明示している値です。「少なくとも前後80%・側方80%」と記載されています。まずここから始めてください。 |
| 平坦な地形・単純な地物 | 75〜80% | 65〜70% | 側方を落とすとライン本数が減り、飛行時間を短縮できます。ただし後工程の失敗リスクが上がるため、 初回現場では標準値のまま飛ばし、実績を見てから削るのが安全です。 |
| 樹林・草地・水面など特徴点の少ない対象 | 85〜90% | 80%以上 | マッチングに使える特徴点が乏しいため、重なりで補います。ここをケチると点群に穴が空きます。 |
| 建物・構造物の3Dモデル | 80%以上 | 70%以上+Double grid | 直下視だけでは側面情報が不足します。Double gridの併用、または後述のCirclegrammetryを検討してください。 |
| LiDAR測量(参考) | 20%前後 | 写真測量とは要求がまったく異なります。LiDARで70〜80%を設定すると、飛行時間が無意味に伸びます。 LiDARミッションへ(近日公開) | |
※ オルソ用の80/80は公式記載値です。それ以外の行は、公式に推奨値の記載がないため、 一般的な写真測量の実務にもとづく目安として示しています。案件の要求精度と後工程のソフトに応じて調整してください。
GSDの決め方
GSDは「撮りたい対象の最小サイズ」から逆算します。 一般に、判読したい対象がGSDの3〜5ピクセル分の大きさになるよう設計します。 たとえば幅5cmのひび割れを判読したいなら、GSDは1〜1.5cm/px程度が目安になります。
ただしGSDを小さくすると飛行高度が下がり、必要な飛行ライン数と撮影枚数が急激に増えます。 GSDを半分にすると、高度が半分・被写域が縦横それぞれ半分になるため、撮影枚数はおよそ4倍になります。 飛行時間、バッテリー本数、後工程の処理時間、ストレージのすべてに効いてくるため、 「必要以上に細かくしない」ことが実務では重要です。
高度モードの選び方
現場の地形と利用できるデータから候補を選び、最後に標高断面で離隔を確認します。
| 現場の条件 | 推奨モード | 選ぶ理由・確認点 |
|---|---|---|
| 平坦な現場高低差が飛行高度の10%未満 | 海抜高度(AMSL)または対地高度(AGL) |
|
| 緩やかな起伏丘陵地・緩い斜面 | 対地高度(AGL) |
|
| 急峻な斜面・段差崖際や周辺地形の影響が大きい場所 | スマート対地高度(Smart AGL) EXPERT |
|
| 標高データが不確か対応機体で地表までの距離を実測できる場合 | 距離計(Rangefinder) |
|
そのほかの目安
まず目安から設定し、計算後の標高断面・ウェイポイント数・飛行時間を見て調整します。
| 設定項目 | 最初の目安 | 調整の判断 |
|---|---|---|
地形追従の許容差AGL Tolerance | 緩やかな地形:大きめ複雑な地形:小さめ |
|
撮影ライン端の延長Overshoot | 旋回半径+数メートル |
|
走査方向Direction angle | 対象の長辺方向強風時は風向も考慮 |
|
交差グリッドDouble grid | 3Dモデル:使用オルソ画像:通常は不要 |
|
撮影タイミングAction execution | 通常:すべてのポイント不要写真を減らす:往路のみ |
|
Area scan との使い分け
UgCSには似たツールとして Area scan もあります。公式にも判断基準が示されています。
| Photogrammetry area | Area scan | |
|---|---|---|
| 主なパラメータ | GSD または飛行高度+オーバーラップ(%) | 飛行高度+ライン間隔(Side distance, m) |
| カメラ設定 | 必須(焦点距離・センサー寸法・画素数) | 不要 |
| オーバーラップ指定 | できる | できない |
| 向いている用途 | 写真測量・オルソ・3Dモデル生成 | 撮影以外の面走査(センサー計測、目視点検の飛行など)、ライン間隔をメートルで直接決めたい場合 |
写真測量が目的なら Photogrammetry area を使ってください。 Area scan はライン間隔をメートルで直接指定したい場面、たとえば計測機器の走査幅が決まっている場合に向いています。
注意点
- ペイロードプロファイルの「実焦点距離(True focal length)」には、レンズの実焦点距離を入力します。 35mm換算値を入力すると、算出される飛行高度が実際の必要高度と大きくずれます。 測量成果の分解能が要求を満たさない原因として最も多いのがこれです。
- ルートのステータスが赤の感嘆符のまま転送しないでください。 計算エラーを含んだルートは、意図しない経路を含む可能性があります。
- 部分計算(Allow partial calculation)をオンにしたまま本番運用しないでください。 制約に抵触した区間が生成されないまま、見た目には計算が通ります。
- DJI機へは、隣接するウェイポイント間および最初と最後のウェイポイント間が2000mを超えるルートを転送できません。 広範囲を1ルートで設計した場合に該当することがあります。ルート分割で対応します。 ルート分割の手順へ(近日公開)
- DJI Pilot 2形式で書き出したルートは、離陸点からの相対高度になります。 最初のウェイポイントと異なる標高の地点から離陸すると、地表クリアランスが設計どおりになりません。
- 撮影間隔がカメラのMinimum triggering intervalを下回る設計は成立しません。 飛行速度を落とすか、GSDを見直してください。
- 高度150m以上の飛行、人口集中地区、目視外飛行などは、いずれも別途の許可・承認が必要です。 UgCS上でルートが計算できることと、その飛行が実施できることは別問題です。
よくある失敗
該当する症状を探し、原因を確認してから上から順に対処してください。
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 写真測量エリア(Photogrammetry area)が選べない |
|
|
| 成果物のGSDが設計値より粗い |
|
|
| オルソ画像に縞状の欠損が出る |
|
|
| 点群に穴が空く |
|
|
| 飛行ライン端の写真が傾く |
|
|
| ルート計算に失敗する赤い感嘆符が表示される |
|
|
| 写真枚数が想定より極端に多い |
|
|
| 撮影が飛び飛びになる |
|
|
| 斜面でGSDが場所により変わる |
|
|
| 機体へルートを転送できない |
|
|
次に行う操作
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- コリドー・垂直面・周回撮影(近日公開) — 線状対象や建物側面はこちら
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