「クマが出ました」——その連絡を受けてから、人が山へ探しに行く。
いまも多くの地域で続いている対応ですが、早朝や夜間、見通しの悪い林の中へ向かうのは、対応する職員や猟友会にとって大きな危険を伴います。しかも、現場へ着いたときには、クマはすでに別の場所へ移動しているかもしれません。
それなら、人より先にドローンを飛ばし、安全な場所から状況を確認できないだろうか。
今回は、現在使われているクマ対策の技術を調べながら、ドローンポートを使った「人が探しに行かない監視」の形を考えてみます。
最初に、この記事の前提です。
この記事でご紹介するドローンポート型のクマ監視は、2026年7月時点で特定の自治体に導入済みの事例ではありません。環境省・農林水産省・国土交通省・自治体などが公表している対策と、すでに存在するドローン技術を組み合わせた、SkyLink Japanの提案モデルです。

クマ対策を調べて、最初に感じたこと
クマ対策というと、まず「捕獲」や「追い払い」が思い浮かびます。ところが実際の現場では、その前に確認しなければならないことがたくさんあります。
- いま、どこにいるのか
- 住宅地や通学路へ向かっているのか
- 同じ個体が繰り返し現れているのか
- 人を現場へ入れても安全なのか
つまり必要なのは、単に追い払う道具ではなく、「見つける」「追う」「判断する」「知らせる」までをつなぐ仕組みでした。
現場では、すでにこんな技術が使われています
センサーカメラ——通った瞬間を記録する
赤外線センサー付きのカメラは、クマが通過したときに自動で撮影できます。出没時間や移動方向を知るには、とても有効です。
ただし、分かるのは基本的にカメラの前を通った瞬間まで。画角の外へ出たクマを、そのまま追い続けることはできません。
サーマルドローン——暗闇の熱源を上空から探す
夜間や早朝の捜索で力を発揮するのが、サーマルカメラを搭載したドローンです。可視光では見えにくい暗闇でも、動物の体温を熱源として捉えられます。

とはいえ、「サーマルなら必ず見つかる」というわけではありません。木の葉や下草に遮られれば見えにくくなりますし、気温、飛行高度、時間帯でも映り方は変わります。クマらしい熱源を見つけても、人やシカではないかを可視光映像と合わせて確認する必要があります。
地上の追い払い装置——近づいた動物を音や光で威嚇する
地上では、動物の接近をセンサーで検知し、音・光・動きで威嚇する装置も使われています。決められた場所を継続して見張れる一方、監視できる範囲は設置地点の周辺に限られます。追い払った後、どちらへ移動したかまでは分かりません。

調べていて驚いたのが「クマよけスプレー搭載ドローン」です。
報道によると、宮城県石巻市は2026年1月、遠隔からクマよけスプレーを噴射できるドローンの導入を発表しました。ただし、公開されたデモは着ぐるみを使った練習段階です。風による飛散や誤噴射、動くクマへの接近など、実運用の検証はこれからです。先行事例として今後を注視したい技術です(朝日新聞デジタル・2026年1月20日)。
それでも空いているのが、「現場へ着くまで」の時間です
センサーカメラも、サーマルドローンも、追い払い装置も、それぞれ役に立ちます。では、なぜ対応はまだ大変なのでしょうか。
大きな理由は、目撃情報を受けた後に機材を準備し、人が現場へ移動してから捜索を始めることです。
- 到着までにクマが移動してしまう
- 早朝・夕方・夜間ほど対応者の危険が大きい
- 山間部ほど電源や通信回線を確保しにくい
- 対応する職員や猟友会の人手が足りない
いちばん変えたいのは、「人が現地へ行かなければ、状況が分からない」という部分です。
そこで考えたのが、ドローンポートを「無人の見張り台」にすること
ドローンポートは、ドローンを格納し、遠隔から離陸・飛行・帰還・充電まで行える自動格納庫です。
これを自治体の庁舎ではなく、クマが現れやすい「人里と山の境界」に置く。そうすれば、出没情報が入ったとき、職員が車で向かうより先にドローンを飛ばせます。
- 検知する
住民からの通報やセンサーカメラの通知を受ける - 先に飛ばす
ドローンポートからサーマルドローンを遠隔離陸させる - 動きを確認する
住宅地へ向かっているのか、山へ戻っているのかを映像で確認する - 関係者へ共有する
自治体、警察、猟友会などが同じ状況を見て対応を決める

出没が多い時間帯に定期巡回させれば、通学路、農地、果樹園、ごみ集積所、河川敷などを遠隔から見守る運用も考えられます。
目指しているのは、ドローンを飛ばすことではありません。人が危険な場所へ入る前に、判断材料をつくることです。
電源も通信もない山間部では、どうする?
ドローンポートを置きたい場所ほど、商用電源や固定回線がない——。これは山間部で必ず出てくる課題です。
SkyLink Japanでは、太陽光発電、蓄電池、Starlinkなどの衛星通信を組み合わせた独立電源構成も検討しています。もちろん、日照、積雪、強風、樹木、通信の安定性によって必要な設備は変わるため、現地調査をしたうえで設計します。

DJI Dock 3とEVO Nest。どちらでも構成できます
「ドローンポートなら、どの製品を使うのか?」という質問もよく出ます。
SkyLink Japanでは、DJI Dock 3とAutel Robotics EVO Nestの両方を扱えます。どちらか一方に決め打ちするのではなく、必要なカメラ、飛行範囲、情報セキュリティ要件、気象条件、既存設備との相性から選びます。
DJI Dock 3
DJIの機体・運用環境を生かしたい現場で有力な選択肢です。機体とドックを含めた運用設計を一体で検討できます。
Autel Robotics EVO Nest
Autel Robotics製の対応機体を格納し、遠隔離陸・飛行・帰還・自動充電まで行えます。サーマルカメラ搭載機との組み合わせも含め、山間部の遠隔監視に合わせた構成を検討できます。

大切なのは製品名ではなく、「どこを、いつ、誰が、どのように見守るか」を先に決めること。その条件が決まってから、適したドローンポートと機体を選ぶのが順番です。
ただし、ドローンを置くだけではクマ対策は完成しません
ここは、かなり重要です。
- 木の葉や下草で、サーマルカメラからクマが見えない場合がある
- 目視外飛行や市街地上空など、運用条件に応じた航空法上の整理が必要
- 積雪・低温・強風を踏まえた設置と保守が必要
- 通信が切れた場合の安全設計が必要
- 発見後に誰が判断し、警察・猟友会・住民へどう連絡するかを決めておく必要がある
クマ対策は「機体の導入」ではなく「運用の設計」です。
検知、確認、判断、情報共有、住民への注意喚起までがつながって、初めて現場で使える仕組みになります。
だから、最初は小さなPoCから
地域によって、地形も植生も積雪も、クマの出没傾向も違います。いきなり広い範囲へ導入するより、まずは出没の多いエリアを一つ選び、実際に飛ばして確かめる方が現実的です。
- 現地を見る
出没地点、離着陸場所、樹木、電源、通信を確認する - 小さく飛ばす
時間帯や高度を変え、どこまで見えるかを検証する - 運用を決める
通知を受ける人、映像を確認する人、その後の連絡手順を整理する
SkyLink Japanでは、現地調査、ドローンポートと機体の選定、飛行ルート設計、通信・独立電源の検討、PoCの実施、導入後の保守まで一貫して支援できます。
「クマを捕まえる」だけでなく、「人が近づく前に知る」対策へ
クマの出没をゼロにするのは簡単ではありません。それでも、住宅地や通学路へ近づいていることを少しでも早く把握できれば、注意喚起、通行規制、警察や猟友会への連絡を早められます。
危険な場所の確認は、まず機械に任せる。人は安全な場所で映像を見て、次の対応を判断する。
クマ対策を「人が探しに行く」から「遠隔で見守る」へ。
ドローンポートは、その転換を支える「無人の見張り台」になれるかもしれません。
まずは、その地域で成立するかを確かめませんか?
「山間部でも通信できるのか」「サーマルでどこまで見えるのか」「DJI Dock 3とEVO Nestのどちらが合うのか」——。まだ構想段階でも大丈夫です。現場条件を伺い、PoCから一緒に組み立てます。

▶ クマ出没対策・鳥獣被害対策へのドローン活用をご検討中の自治体・企業のご担当者様は、SkyLink Japanへご相談ください。




