合格率わずか7%の超難関ドローン操縦技能認定試験を突破した、ドローン操縦のトップガンであるPROパイロット。
SkyLinkでは2016年からRave Projectと共催でPROパイロット技能認定会を開催しており、これまで37名もの合格者を輩出してきました。(2023年5月現在)
本シリーズは、そんなドローン操縦のスペシャリストたちにインタビューをしていく企画です。
第五回は、沖縄でドローン事業の会社を立ち上げたばかりのPROパイロット・砂川 盛孝 氏にインタビューしました。ドローンに触れ始めた頃のお話や将来のビジョンについてなど話していただきました。
■まずは自己紹介を簡単にお願いします。
ドローンフュージョン株式会社 代表の砂川盛孝といいます。生まれも育ちも沖縄県です。
元々本業は個人で土木関係の事業をやっていて、重機のバックホー(ショベルカー)などを取り扱う仕事をしておりました。
学生の頃からラジコンが好きで、小学生の頃はラジコンカーで遊んでいました。中学生になると空もの——飛行機やヘリに興味を持ち、成人を過ぎてもラジコン好きは変わらずその延長としてドローン事業を始め、昨年2月に法人化しました。
現在はまだ土木関連の業務が多いですが、ここ数年で測量や現場における進捗管理の撮影でドローンを使用する機会が増えました。
今は“沖縄県でドローンを使って何ができるのか”ということを仲間たちと一緒に考えながら試行錯誤している段階です。
■ドローンをはじめたきっかけとドローン歴を教えてください。
僕が興味を持った15年くらい前は、まだ“ドローン”という名称ではなく“マルチコプター”と呼ばれていました。元々空を飛ぶものが好きだったこともあって、マルチコプターで撮影された動画を見て「こんなものもあるのか」と思って手を出したのが始まりです。
当時まだ市販のドローンはなく、DJIですらAce Oneというラジコンやヘリコプターに搭載するGPSしか売っていませんでした。
そのときはドローンを仕事にするというイメージはなく、機体にガラケーを両面テープで取り付けて飛ばしてみたり※1、アームがクロスしている部分にプロペラを取り付けて本当に飛ぶのか試してみたり、仲間たちと遊び感覚でやっていただけでした。
毎日そのことばかりを考えていて、今思うとあの時が一番楽しかったですね。現在当たり前に飛ぶドローンですが、その頃は何が正しいのか、どうすれば飛ぶのかなんて分からなかったですから。
ドローン歴としては、工作しながらの時代を含めると17年くらいでしょうか。その頃をカウントしていいのか分からないですが(笑)。
その過程で請川さんの存在を知って、MG-1※2がまだ世に出る前にプロトタイプのデモ会でお会いしました。SkyLinkを立ち上げたばかりの須田社長にお会いしたのもその時だったと思います。その後ご縁もあって、SkyLinkのアライアンスパートナー※3として繋がらせていただきました。その頃は依頼があればドローン撮影を行うぐらい…年に数回程度とかでしたが、それを機にドローン事業を本格化していきました。
※1…携帯電話をドローンに搭載し飛行する場合は、電波法により携帯事業者に上空利用手続きが必要。詳細→無人航空機等における携帯電話等の端末の利用。
※2…DJIが開発した農業用ドローン。
※3…SkyLink沖縄としてアライアンス提携。そのほか全国にSkyLinkアライアンス企業が点在する→アライアンス一覧
■PROパイロット認定会に挑戦しようと思った理由と実際受けてみた感想を教えてください。
実は挑戦しようと思って受けたのではなくて、沖縄でPROパイロット技能認定会をするからホストをしてくれないかと請川さんと須田社長から頼まれて、そのついでに僕も試験を受けたという経緯です。その頃は沖縄県内にドローンスクールなどはありませんでしたし、PROパイロット技能認定会自体もまだ開催3回目で、本当に人は集まるのだろうかと半信半疑でした。ところが、県内の人にも声をかけたこともあってか結果数十名ほど集まりましたね。
受けてみた感想としては、みんなが見ている中で演目をやるというのはやっぱり緊張しました。ですが、沖縄の慣れ親しんだフィールドだったこともあって一発合格できました。
ずっと趣味でラジコンをしていましたので、感覚の慣れというのはあったかもしれないですね。
また、当時の試験は屋外だったので天候の影響があったのですが、自然の音が聞こえる環境は屋内で音一つしないような緊張感の中でやるより、僕はリラックスできたなと思います。
■これまでやってきたドローン業務/今やっているドローン業務はなんですか?
今のところは測量が一番業務として多く、土木コンサル会社さんと共同で業務を行なっています。工事の仕様書の中に含まれているので、進捗状況などの撮影がここ数年で増えてきたなと思います。
請け負う仕事は紹介が多いですね。特に土木系・測量系は横のつながりが多いので、ご縁で仕事を依頼していただくことが多いです。
そのほかCMやミュージックビデオなどの空撮業務なんかも請け負っています。
■主に使用しているドローンはなんですか?
ドローン自体、12〜3機ほど所有しています。DJIはInspre 2やMavic 3 Enterpriseなど、DJI以外はAutelや大型機のALTA Xを所有しています。ALTA XはFreefly Systems社というアメリカ製のドローンで、ペイロードが大きいのでシネマカメラを搭載して運用しています。
稼働率に関してはやっぱりInspire 2が多いですが、測量での業務ではPhantom 4 RTKの運用が多いです。
■得意とする飛行・撮影シチュエーションを教えてください。
考えたことなかったな(笑)。強いて言えば、車を追う撮影やスピードが速いものの撮影は得意かもしれません。
あとは、監督やカメラマン、プロデューサーなどからコンテ上でレクチャー受けてその要望通りにこなすことも得意な方だと思います。
ただ、大型機の場合はツーオペになりカメラオペレーションとの意思疎通が必要ですし、僕一人の能力というよりか相手の人あってのことなんですよね。
だから僕は仲間に恵まれているなと感じています。それが僕の一番の強みかもしれません(笑)。
面白いもので、ドローン撮影で「今の失敗したな…」と自分で思っても意外と評判が良かったり、実際にそのカットが採用されたりすることが多いんですよね。
現場には魔物が住んでいますから、全てにおいて正解なんてないんです。日々僕らも勉強の身。到達地点はないし、完璧はないと思っています。
結局、PROパイロットという名前も肩書きのひとつに過ぎないわけで、現場に入れば「できて当たり前」とフラットに見られる世界だから、気は抜けないし精進し続けないといけないなと思います。
■将来のドローン業界やドローンに期待することはありますか?また、個人的な目標などがあれば教えてください。
夢を描くのはいくらでもできるんですが、大事なのは“今何ができるのか”ということを模索しつつ、新しい技術や分野に入っていけたらいいなと思ってはいます。
沖縄は海に囲まれた離島ということもあって、ドローンの使用率は今後高まっていくと思っています。たとえば、ドローンでの物流に関しては今も2〜5kgの物資を運ぶというのがあるけれども、それがどう進化していくのか。そういった関連する業界全体がこれからどう進んでいくのか注視しながら、ドローン業界も進化していければいいのかなと思います。
個人の目標はありすぎて、話し出したら日が暮れちゃう(笑)。
今やっている測量や撮影はこれまで通り進めていきたいと思っていますが、その傍らでエンタメに寄った“魅せるドローン”の分野にも挑戦してみたいと思っています。
というのも、官邸にドローンが墜落した事件であったり、ウクライナでの戦争にドローンが使われていたり、どうしても世間での“ドローン”の印象がマイナスであるのが現状です。
でも使い方ひとつでその印象を変えることができると僕は思っているので、ドローンショーとかに挑戦し、人を感動させるとまではいかなくても負の印象を変えるようなことをやってみたいと考えています。
ドローンフュージョン株式会社 代表
砂川 盛孝
生まれ育った沖縄でドローンフュージョン株式会社を設立。ラジコン操縦の経験から、PROパイロットに一発合格しただけでなく、ドローンの指導員・検定員資格や沖縄で開催されたドローンレース優勝など華々しい経歴を持つ。
ドローンフュージョン株式会社HP:https://okinawa-drone.jp/
PROパイロット一覧
ドローン操縦技能認定試験(現在合格率7%)を突破した、ドローン操縦のトップガンをご紹介します。GPSを利用しない飛行においても、自転車のごとくドローンを操縦できるパイロットのみが試験を通過します。