ドローンPROパイロットインタビュー -Vol.8 HanaDrone 花房 浩二 氏

■まずは自己紹介を簡単にお願いします。

HanaDroneという屋号で個人事業を営んでいる花房といいます。
ドローンに携わっている人の中で異色だと思うのですが、前職は公立学校教員を20年以上やっていました。教職をやっていてこの業界に入ってきたという人間は、僕が出会った中で1人もいないですね(笑)。

元々出身は埼玉ですが、へき地教育をやりたくて大学卒業後北海道に渡りました。
「へき地教育」とは、地域と保護者や子供たち、そして学校の先生とが密着して行う教育のことです。
そうして北海道で20年以上教員をやっていたのですが、埼玉で一人暮らしをしている父が高齢になってきたこともあり、自分の家族と相談をして生まれ故郷である埼玉に戻りました。 
そのときに埼玉でも教員をするという選択肢もあったのですが、いや待てよと思い立ちまして(笑)。最近ドローンという言葉をよく聞くなと。そんな未知なる世界に入ってみても面白いんじゃないかと思い、飛び込みました。

PROパイロットの人たちもそうですが、ドローンをやっている人ってもともとIT系の人とかラジヘリ(ラジコンヘリ)をやっていたとかそういう人たちが多いと思います。そんな世界で僕はゼロ状態からスタートしたわけです。
おかげで前職の仕事を全く活かせないというね(笑)。あ、でも最近になって若干活かせるものが出てきたのですが、その件はちょっと後で話しますね。

そういった経緯でドローン業界に飛び込み、現在はドローンサービスを提供するHanaDroneを経営しています。

■ドローンをはじめたきっかけとドローン歴を教えてください。

なぜドローンだったのかというと、ドローンの動画などを見て未来がある産業だなと感じたからです。
地上を離れて上からものを見るということは、基本的に我々の日常にはないじゃないですか。地上カメラは日常の切り取りであると思っていますが、ドローンは日常にないものを見せてくれる、そういうものを自分でできたら面白いんじゃないかなと思ったんです。
教員に未練がないといったら嘘になりますが、それ以上に新しいことをやってみたいという気持ちの方が圧倒的に強かったです。

ドローン歴は、HanaDroneをはじめた頃なのでたかだか6年ぐらいです。もうその頃からドローンは色んな業界での利活用が期待されていたので、スタートとしては遅い方だったと思います。

■PROパイロット認定会に挑戦しようと思った理由と実際受けてみた感想を教えてください。

当時僕がインストラクターをしていたドローンスクールにPROパイロット認定会を受けた講師がいたこともあり、もともと存在は知っていました。
いつか挑戦したいと思ってはいたので、YouTubeに上がっている動画を見て演目を練習していました。
うまくなったらPROパイロットに挑戦しようと思っていたのですが、“うまくなったらって一体いつだ?”ってある時ふと思ったんですよね。
そもそもその“うまくなった”というのを誰が判断するのかって話でもあるし、自分の中で“うまくなったら”って思っていたらいつまで経ってもそれは来ないんじゃないかと思ったんです。
それだったらまずは受けてみて、仮にダメだったとしても自分のダメだったところが分かっていいかもしれないと思いました。その時に受かった人と自分の差も分かりますしね。
そんな軽い気持ちで受けちゃいました(笑)。

最初、予選の練習をしていたんですよ。まず予選を通過できるかどうかが分からなかったので、予選の練習を8割、決勝種目は2割ぐらいの割合で練習していました。
僕が受けたときは予選通過の順位を発表する制度があって、実は僕一位だったんですよ。「よっしゃ、これは一発で受かるんじゃないか?」って思った反面、ちょっと待てよと。「俺、決勝種目はあんまり練習してないぞ」って不安にもなりました(笑)。
いざやってみたら本選初っ端から演目を間違えちゃって、途中で間違えたことに気づいたもののもう後には引けず最後までやるしかないっていう状態でした。
その他の演目も結局できなくて全然ダメでしたね。

決勝種目も練習しないといけないという反省を活かして2回目に臨んだところ、まさかの予選落ち。予選はもう大丈夫だと決勝の練習ばかりしていった結果、予選で奥行きを間違えるという初歩的なミスでした。

3回目は予選も決勝も練習して臨み、そこでようやく合格しました。
多分これまで合格してきた人みんなそうだと思うのですが、受かる時ってもう自分で分かるというか。もう直前に練習しなくていいなっていう境地までいくんですよね。逆にそこにいくまでに練習はたくさんしましたけど。

あとやっぱり何よりもPROパイロット技能認定会を受けたことのメリットは、仲間ができたことだと思っています。
本気の人たちと繋がれたということが大きかったですね。

■上記に挑戦するにあたり、どのくらい練習をしましたか?

これね、難しいんですよ。
毎日1時間って決めてやれたかって言われるとそうじゃないし、そうかと思えば休みの日に一日中練習をしていたときもあるし。
ただ、かなり練習はしていましたね。長いときは朝から夕方までずっと飛ばして帰ってきても室内で飛ばしたり、シミュレーターで練習したり、とにかくずっとドローンに触れていました。

その他に、ドローンではなくラジヘリで8の字飛行等の演目練習をしました。もともとラジヘリをやっていた人はプロポ(送信機)の感覚がありますが、僕はやってきていないので感覚をつかむためです。
また、ドローンで練習して1年かかるものもラジヘリで練習すれば2ヶ月でできるよと検定員の方にアドバイスをいただいたことも、ラジヘリ練習のきっかけになりました。
ただ、ラジヘリとドローンの動かし方は微妙に違うので、ドローンも並行して飛ばしていました。
この練習方法は僕にとってはとても良かったですね。

■これまでやってきたドローン業務/今やっているドローン業務はなんですか?

メインは空撮でCM関連の業務が多いのですが、結構幅広く産業系も農業も関わらせてもらっていますね。
最近はゼネコンなど建設現場であったり、物流関係の会社や橋梁点検・プラント点検をしている会社からオファーをいただいたりしています。
農薬散布に関しては、今はほとんどお手伝い程度です。

また、今はドローンサービスを提供するHanaDroneとは別に、仲間と一緒にはじめたSKYというドローンスクール(国家資格の認定講習を行う)でインストラクターもやっています。
さっき教員時代の経験を活かせるようになってきたということをお伝えしたのは、このことです。
スクールに来る人は性格も技術も知識も違うという中で、それぞれの人がどういう人か理解するのは早いかもしれないです。
教える側として、みんな一律にやっていても僕はダメだと思っています。伝えることひとつとっても“この人は励ました方がうまくいくな”とか、“この人は課題を出して鍛えた方が燃える人だな”とか、その人のタイプを見極める感覚は20年以上教員をやってきたことで培われたことかなと思います。

あと僕は全くラジコンヘリとかを通らずにこの世界に入ってきたので、そういう意味ではスクールに来てくれる人たちと合致するんです。この人たちも同じ気持ちで入ってきて、そういう人たちに「ドローンってすごいよ」「こういう未来もあるよ、こんなこともできるんだよ」っていうことを伝えられる。「でもそのためには知識も必要だし、技術もあった方がいいよね」っていう。そういう話を同じ目線で伝えられるのは、僕が全く別の業界から入ってきたからこその良さなんじゃないかなと思います。

このように幅広く業務をやっていますが、何かに特化したいという思いもあります。それぞれの分野で極めたいとは思っていますが、やはり分野が多くなればなるほど極めきれなくなってしまうので、もう少し絞ってやっていくのもいいかなと思っています。
個人的には、空撮業務とインストラクター業は残していきたいと考えています。

■得意とする飛行・撮影シチュエーションを教えてください。

自動航行です(笑)。
という冗談は置いといて、自分が面白いと思う撮影でいえば、やっぱり“動きもの”ですかね。車や電車を追いかける撮影は何回もチャンスがあるわけじゃなく一発勝負であることも多いので、動いているものを撮影するのは面白いと感じます。だから得意というわけではないですがわくわく感はありますね。

ワンオペで撮るのもいいですが、ツーオペでカメラオペレーターとドローンオペレーターのふたりで呼吸を合わせて撮影することも好きです。
打ち合わせで話したこと全部をやれるわけではないので、お互いの呼吸を読み合って、いい絵が撮れた瞬間はすごく達成感がありますね。
仲間と一緒に阿吽の呼吸でやっていい形になると、ひとりで撮った時とまた違う達成感を得られます。

あとは得意な撮影ではないですが、先ほども言ったように人に教えるというのは嫌いではないかなと思います。
PROパイロット技能認定会を受けるために練習したことというのは、自分の中に引き出しを作った感覚なんです。追求したからこそ自分の中に引き出しができて、それを教える際に開けて、ひとりひとりに合った言葉を投げかけることができるようになったと思っています。
それが僕の得意分野かな。

■将来のドローン業界やドローンに期待することはありますか?また、個人的な目標などがあれば教えてください。

偉そうなことは言えないのですが、ドローンに触れる人は増やしていきたいとは思っていますね。

今“国家資格”というものができましたが、義務ではないじゃないですか。それがこれからどうなるか分からない。将来的にその資格がないと飛ばせなくなるかもしれないし、そうなると資格を取るのが大変だからドローンを飛ばすのを辞めようって思う人もいるかもしれない。だからこそ、そういう資格が必要・必要じゃないということを抜きにしても、ドローンというものに未来を感じて、ドローンをやってみたいっていう人たちが増えていくようにできたらいいなと思っています。
例えば今物流なんかでも認証機体ができてレベル4がいよいよ始まろうとしていますが、もし人の上に落ちたりしたらドローンの物流分野はそこで3年とか5年とか止まっちゃうと思います。
だからこそ機体のことを分かっている人が飛ばさなくてはいけないし、何かあった時のために技術を持っていなくてはいけない。そのために一等の免許ができて、第一種の機体認証というのができたのだと思うんですよね。
技術があれば自分の思い通りの撮影もできるし、何かあった時に安全に降ろすこともできる。そしてそれなりの知識も必要。それも教科書通りの知識ではなく、実際の経験や実務から得られた知識こそが必要だと思っています。

また先ほども言ったのですが、仲間ができたということは僕にとってすごく大きかったので、そういう人の繋がりというのも作っていきたいなと思っています。
そして繋がった人たちと知識や情報を共有していきたい。
正しい情報を伝えて、ドローンをやるみんなが嫌な目に遭わないように——やっぱり事故とか起こしちゃうと嫌な思いしちゃうじゃないですか。だから自信を持って皆さんが飛ばしてドローンって楽しいなって思えるように、そう思える人を増やしていきたいというのが大きいです。
そのためにも、まずは僕が第一線で飛ばしていかなきゃいけないと思っています。
例えば自分がもう引退してただのドローンおじさんとして偉そうに喋っていたら、もう駄目だと思います。そんな人の話を聞いても説得力ないじゃないですか。やっぱり自分が常にヒリヒリしているところで業務をして、そういうところで得た経験を皆さんにお伝えしていくっていうのがいいんじゃないかって思っているんです。
だから僕がHanaDroneでドローン業務を実際にやっていくこととスクールで生徒に教えていくっていうことは両輪だと思っています。どっちかのタイヤがないと前に進めない。
ふたつのタイヤがあってはじめて前に進めていけるものだと思っています。

ドローン業務を実際にやっていくことと、
スクールで生徒に教えることは両輪であって、
どっちかのタイヤがないと前に進めない。

HanaDrone
代表
花房 浩二

大学卒業後、北海道に渡り教職教鞭を執るが、出身地である埼玉に戻りドローン事業に参入。教職だった経験を活かしスクールや講習などに力を入れ、ドローン業界発展のためパイロット育成を志す。

HanaDrone HP:https://hana-drone.com/
SKYドローンスクール HP:https://skydroneschool.com/

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ドローン操縦技能認定試験(現在合格率7%)を突破した、ドローン操縦のトップガンをご紹介します。GPSを利用しない飛行においても、自転車のごとくドローンを操縦できるパイロットのみが試験を通過します。

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