ドローンPROパイロットインタビュー -Vol.7 株式会社ドゥー・アップ 野坂 和宏 氏

合格率わずか7%の超難関ドローン操縦技能認定試験を突破した、ドローン操縦のトップガンであるPROパイロット。
SkyLinkでは2016年からRave Projectと共催でPROパイロット技能認定会を開催しており、これまで37名もの合格者を輩出してきました。(2023年7月現在)
本シリーズは、そんなドローン操縦のスペシャリストたちにインタビューをしていく企画です。

第七回は、北海道・旭川に移住をし、会社を立ち上げたPROパイロット・ 野坂 和宏 氏にインタビューしました。旭川に移住をするに至った経緯や今後のドローン業界についての考えなどお話しいただきました。

■まずは自己紹介を簡単にお願いします。

株式会社ドゥー・アップの野坂と申します。今は北海道の旭川市でドローン関連と映像関連の仕事をしています。
出身は京都でして、余談ですが実は偶然にも須田社長と同じ高校出身なんです(笑)。
21歳のときに上京し、長年東京でテレビ番組のロケなどを撮影するカメラマンをやっていました。1999年に仲間とテレビの撮影会社を作り、NHKや民放各局の番組撮影に携わってきました。その後ドローンと出会ったことがきっかけで2020年に旭川に移住し、個人事業という形でドローン事業を行なっていましたが、本当につい先日、知人の協力もあって会社設立に至りました。

PROパイロットを受けるきっかけとなった請川さんに色々と話を聞かせていただいて、農薬散布の需要はこれから増えていくだろうと考えました。また自分の年齢や経営している会社の状況などを考慮して、もう一段階新しいことをしてみるのも面白いかなと思い、旭川の地を選び移住を決めました。色々タイミングがうまいこと合ったということも大きかったですね。

■ドローンをはじめたきっかけとドローン歴を教えてください。

テレビのロケ撮影でカメラを担いでヘリコプターに乗ることが多く、その場合ドア全開で機体から身を乗り出して空撮をするのですが、僕もともと高所恐怖症なんですよ(笑)。ファインダー越しだと意外と大丈夫ですが、それでも何度か怖い思いをしたこともありました。

カメラマン時代の野坂さん。ヘリコプターではドアを開けて撮影を行う

そんな中2000年ぐらいにハリウッド映画にラジコンヘリが使われ始めたということを聞きつけ、ロスに実物を見に行きました。社長に導入できないかと提案したのですが、当時日本はラジコンで空撮という時代ではなかったですし、安全面を考えたときにリスクが高すぎるということで却下されてしまいました。あの時に空撮をはじめていたらドローン業界の第一人者になっていたでしょうね(笑)。

それからドローンが普及し、カメラマン仲間などもPhantomで空撮するようになってきました。
その後発売されたMavicを見て、いよいよこういう時代になってきたんだなと実感したことを覚えています。
会社に導入するよりまずは自分で撮影してみようと思い、Mavicを買って練習しはじめたのがきっかけですね。

ドローン歴でいうと初代のMavicが出てきてからなので、 6、7年ぐらいになります。
そこからは会社にもドローンを導入して、空撮専門というよりも「オプションとしてドローンも使えますよ」という形の営業をしたり、撮影に付随してドローンカットも撮ってほしいという相談などに乗ったりするようになりました。
“ドローン専門の撮影会社”というよりも“ドローンも扱える撮影会社”という方が分かりやすいですかね。

■PROパイロット認定会に挑戦しようと思った理由と実際受けてみた感想を聞かせてください。

Mavicを買って空撮をはじめ、業界の情報収集をしていくうちに請川さんの名前をよく聞くようになりました。彼が空撮のパイオニアだということを知り、一度会っておきたいなと思って請川さんが開催されていたドローンの撮影研修に申し込んで北海道に会いに行きました。
初めて話した時から本当に気さくな方で、PROパイロット技能認定会のことやドローンでの農薬散布のことなど色んな話をしてくださって興味を持ちました。
私は性格的になんでもやってみないと気が済まないタイプなので、すぐに農薬散布のライセンスを取得するスクールに参加しましたし、PROパイロットも腕試しのつもりで受けました。それがPROパイロット認定会に挑戦したきっかけです。
実際手先は器用な方だし、民間のドローンライセンスは割とすんなり受かっていたので、PROパイロットがどんなものか分からないけれど、まあいけるだろうと思っていました。
ところが1回目はあっけなく予選落ち。PROパイロット技能認定会で求められる技能や精度の高さに、“これはやばいな”と思いました。ハードルの高さを実感しましたね。

最終的に6回目で受かりましたが、期間としては1年かかってしまいました。受かるまで挑戦したのは意地もありますが、あの場の緊張感も含めてプロとしてお仕事いただくには最低限身につけておくべき技量や経験だと思ったからです。
そのため、自分の中でまずはPROパイロットを通過してからドローンで仕事をしようという目安のひとつにしていました。でないとお客さんからお金をいただいてドローンを飛ばすというのはなんとなく違うかなと、勝手に自分で線引きをしていました。
北海道に行ってドローンの仕事をしてみようと思うきっかけのひとつにもなったので、受かるまでの1年が次のステップに繋がったのは間違いないと思いますね。

PROパイロット技能認定会は、
北海道に行ってドローンの仕事をしてみようと思うきっかけのひとつにもなったので、
受かるまでの1年が次のステップに繋がったのは間違いない。

上記に挑戦するにあたり、どのくらい練習をしましたか?

当時はまだ東京に住んでいて都内に練習できる場所がなく、千葉のドローン施設まで片道1時間半かけて通っていました。PROパイロットを受けようと思ってから合格までの1年半、毎週のように練習に行っていましたね。

Phantom 4を購入し週1〜2回程度、“うまく綺麗に飛ばす”よりも“いかに高い精度で制御できるか”をイメージして練習に臨んでいました。審査では数センチ単位の精度を求められているのを痛感していたので、そこは意識していました。
練習場の千葉までわざわざ行って、朝から晩までずっと一日中ホバリングだけをしていた日もあります。一点にじっと機体を止めるホバリングは基本中の基本ですからね。
施設の人に「野坂さんいつ見てもホバリングしているね」って言われるくらいでした(笑)。

そのほかにはFPVのマイクロドローンを飛ばしたり、いい練習になると聞いてラジコンヘリを買って練習したり、これらは非常に意味のある練習でした。

これまでやってきたドローン業務/今やっているドローン業務はなんですか?

本業はテレビの撮影屋なので、東京時代からテレビ番組の空撮はやってきました。
北海道に来てからはPROパイロットに受かったおかげもあって請川さんのカメラオペレーターとして呼んでいただけることも多くなり、これまで経験できなかったような大きな案件や難易度の高い現場を経験させてもらっています。
空撮だけでなく、もちろん地上での撮影や映像編集・制作などもやっています。

あとは農業の請負散布ですね。年々散布面積も増え、着実に実績を積ませていただいています。
ドローンスクールや農薬散布機の講師ライセンスを持っているので、スクール講師をやることもあります。今後は教える側・伝える側も目指したいと思っています。

話していると色々やっているように見えるかもしれませんが、自分ではあれもこれもやっている感覚ではなく、全て続いているような、繋がっているようなイメージでやらせてもらっていますね。

得意とする飛行・撮影シチュエーションを教えてください。

なかなか得意なシチュエーションってないんですけどね。
撮影でいうと、監督やディレクターの頭の中にあるイメージを汲み取るというか、理解してその通りに飛ばすということは、長年カメラマンをやってきていますから得意な方かもしれません。
動く被写体を撮るのはやっぱり難しいと今でも思うのですが、PROパイロットのおかげである程度自然に指が動くようになり余裕ができました。飛ばしながらスタッフとコミュニケーションを取ったり周辺の安全に気を配ったり、そういったことができるようになったと感じています。

あと、得意とかじゃないですが、北海道の広い大地の雄大な景色の中で大きな農業ドローンを飛ばすのは本当に気持ちがいいです。

将来のドローン業界やドローンに期待することはありますか?また、個人的な目標などがあれば教えてください。

機体に関してはやはり国産機に興味があります。
たとえばソニーのAirpeak S1やNTT-eDrone TechnologyのAC101はどちらもこれまでの国産機と比べると遥かに完成度が高く、はじめて見た時は驚きました。
海外メーカーと比べ、どんどん新しい製品を出すというよりもひとつの製品をブラッシュアップして運用していくというスタイルなのでなかなか難しいかもしれませんが、今後小型撮影機や大型散布機など展開していくことを期待しています。

業界全体の話をしますと、今後ますますドローンが有効活用される場が増えていき、これからドローンを始める人も出てくると思います。そういう人がちゃんと安全にドローンを運用できるようにPROパイロット技能認定会のような自分の技量を確認できる場が増え、ドローンを安全に飛ばすための技量や知識などがもっと広く伝わるといいですね。しかるべき人がちゃんとジャッジしてくれる認定会が増えて、そういう意識を持って運用する人が増えたらいいなと思います。

そしてここからは個人的な目標に繋がってきますけれども、PROパイを受けた僕らのような——受かったからといって別に偉くもなんともないですが——そういう人たちと触れることができる機会や、経験を積んできたことを伝えられる場を作りたいと思っています。
自分自身ももう若くはないので、人を育てるということも考えながらやっていきたいと思っています。
たとえばPROパイロット合格者を輩出できるような、日本一厳しくて難しいスクールというのを開校してみるのもいいかもしれませんね。「あのスクール、入学はできるのになかなか卒業できないぞ」みたいな(笑)。
全国にさまざまなドローンスクールがある中で、そんなスクールがあっても面白いのかなと思っています。

野坂 和宏

株式会社ドゥー・アップ
代表
野坂 和宏

京都出身。上京しテレビ番組のロケカメラマンとして活躍後、ドローンと出会い北海道・旭川へ移住。今年5月に株式会社ドゥー・アップを立ち上げ、旭川を拠点に空撮中心をはじめ、請負散布やスクールなどドローンに関わる実務を精力的に行う。

株式会社ドゥー・アップ HP:https://www.do-up.pro/

PROパイロット一覧

ドローン操縦技能認定試験(現在合格率7%)を突破した、ドローン操縦のトップガンをご紹介します。GPSを利用しない飛行においても、自転車のごとくドローンを操縦できるパイロットのみが試験を通過します。

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