出光興産様の油槽所にてEVO MAXを用いた実証実験を行いました。

先日、アポロリンク株式会社様及び出光興産株式会社様が実施された「油槽所における災害時のドローン活用を検討する実証実験」にドローン機材の提供とオペレーションで当社も参加いたしました。

課題と背景

日本全国には、ガソリンスタンドと製油所の物流を円滑にするため、油槽所と呼ばれる一時貯蔵施設が数多く存在します。

今回の実証実験は、出光興産株式会社様が運営する福岡県の油槽所で実施しました。 油槽所では、地震が発生時、倒壊、火災、漏出による二次災害を防ぐため、施設の被害状況を速やかに点検する必要があります。しかし、災害発生下の点検業務には、所員の安全管理に関する懸念がありました。

解決策としてのドローン

この災害発生時の所員による巡回点検の負担を軽減するため、ドローンでの巡回点検が検討されました。そして今回は、優れた飛行安定性と携行性を備え、夜間での飛行にも対応する最小クラスのナイトビジョンカメラを搭載したEVO MAXが検証用ドローンに選ばれました。

災害はいつ何時発生するかわかりません。航空法に定められた手続きを簡略化し、昼夜を問わず迅速に対応できるよう、係留飛行での運用方法が選択されました。

補足:係留飛行とは

無人航空機を30m以内の範囲で十分な強度を有する紐等(30m以内)で係留し、飛行可能な範囲内への第三者の立入管理等の措置を行えば以下の特定飛行にあたる飛行の許可・承認が省略できる制度です。 ・人口密集地上空における飛行 (航空法第132条第1項第2号)
・夜間飛行 (法第132条の2第1項第5号)
・目視外飛行 (法第132条の2第1項第6号)
・第三者から30m以内の飛行 (法第132条の2第1項第7号)
・物件投下 (法第132条の2第1項第10号)

出典:国土交通省 航空局:無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の 安全な飛行のためのガイドライン

使用機材について

画像左がEVO MAX、右奥が係留装置のドローンスパイダー

〇EVO MAX 4T (光学ズーム、サーマルカメラ搭載ドローン)

Autel Robotics社製小型汎用産業ドローン、4Tジンバルカメラには8倍光学ズーム、赤外線カメラ、ワイドカメラ、レンジファインダー機能が組み込まれ、飛行時間は最大41分。上部ポートへのRTKモジュールやライトスピーカーの装着や、EVO NESTと併用してのドローンポート用途への拡張が可能。製品情報はこちらから

〇EVO MAX 4N (暗視、サーマルカメラ搭載ドローン)

基本情報は4Tと同じ、ジンバルカメラのみが異なる。スターライトカメラ、赤外線カメラ、ワイドカメラ、レンジファインダー機能が搭載されている。スターライトカメラを搭載する商用ドローンでは最小。

〇ドローンスパイダー (ドローン係留装置)

空撮技研株式会社製の無人航空機係留装置[ドローンスパイダー]。リードラインに一定のテンションを張り、たわみによってプロペラに係留線が接触しない機構を持つ。軽量な係留装置では地面に固定するための工夫が必要であるが、当製品はある程度の重量があるため設置場所を選ばない利点がある。

検証での運用シーン

災害が発生したと仮定し、事前に定めた離陸ポイントまでドローンケースと係留装置を運搬します。

機材の重量は合計20kg程度のため一人で携行が可能です。ただし、足場が悪い状況が想定されるためオプションのバックパックを使用して片手を空けるのが有効だとわかりました。

ポイントに到着し機材を展開し、2分程度で飛行を開始できる状態になりました。 EVO MAXの底部にはアクセサリー用のネジ穴が用意されており、アタッチメントを事前に取り付けておけば係留装置への接続も非常にスムーズになります。

さて、実際のフライト開始です。まずは30mの高度まで機体を垂直に上昇させます。サルカンで係留装置と接続しているため、機体の動きに制限は生じません。EVO MAXは優れた飛行能力でRTKが無くても抜群の安定感でホバリング飛行を行います。

送信機に予めTeamsをインストールし、カメラビュー画面を共有することで、別拠点を想定した参加者とドローンの映像を用いたスムーズなコミュニケーションが行えました。

4Nカメラ、4Tカメラ共にサーマルカメラが標準装備されており、温度変化のある箇所を速やかに発見することが可能です。アプリでは2つのカメラ映像を同時に表示することができるため、変状箇所の早期特定が行えます。

夜間の飛行では、照明がある箇所は広角カメラでも視認できますが、照明のないエリアは視認性が悪く状態が確認できません。4Nカメラのスターライトカメラを使用することで、そういった箇所をはっきり映し出し、通常のカメラでは見渡せないエリアの確認が可能になりました。

光学ズームカメラは8倍までの光学ズームが可能で、50m程度の距離から計器の針の動きを十分確認することができました。

結果と考察

プラントや工場における災害対策や日常巡回点検業務において、ドローンの導入事例は数多くありますが、その汎用性の高さと取り扱いの手軽さからEVO MAXは最適な組み合わせだと再確認することができました。

現行販売されている産業用ドローンでスターライトカメラを搭載する機種はそう多くなく、大型で組み立てに時間を要するものが一般的ですが、EVO MAXでは小型折り畳みドローンと同じように手軽に運用が行えることもポイントです。

今回は災害時の巡回点検にフォーカスした検証でしたが、このセットが一つあれば、警備や設備の点検、工事進捗の管理といった様々なシーンに活用することができます。皆様の働く現場のツール、万が一の備えとしてご検討頂ければ幸いです。

上部へスクロール
Share via
Copy link
Powered by Social Snap