合格率わずか7%の超難関ドローン操縦技能認定試験を突破した、ドローン操縦のトップガンであるPROパイロット。
SkyLinkでは2016年からRave Projectと共催でPROパイロット技能認定会を開催しており、これまで37名もの合格者を輩出してきました。(2023年6月現在)
本シリーズは、そんなドローン操縦のスペシャリストたちにインタビューをしていく企画です。
第六回は、大阪でブライダル会社の空撮事業部として代表を担うPROパイロット・西岡 俊介 氏にインタビューしました。ドローンパイロットになった意外な理由や今後のドローン界に期待することなどお話しいただきました。
■まずは自己紹介を簡単にお願いします。
はい、わたくしSkyVisionPro TVの西岡俊介と申します。
基本的にブライダル業界での業務に携わり、神社やチャペルでの結婚式を撮影しております。その中でSkyVisionProTVという空撮事業部を立ち上げ、ドローンを使った撮影や映像の編集などを行なっております。結婚式をはじめ、結婚式の前撮りなどもドローンで撮影しています。
空撮事業は2015年頃から始めたのですが、元々は大学を出たあと東京に出てきて役者をしていました。年齢も30歳を超えた頃、お金にならない役者業でこの先どうしようかと考えていたとき、大阪でブライダル企業を経営している父親から“大阪に戻ってこないか”と言われたことがきっかけで帰ってきたんです。そこからこの業界に足を踏み入れました。
■ドローンをはじめたきっかけとドローン歴を教えてください。
前述しました通り父親がブライダル企業を経営している中で、婚礼での撮影にドローンが使えるのではないかと当時Phantom1を買ってきて飛ばし始めたんです。
はじめは「ラジコンで遊んでいるなあ」としか思っていなかったのですが、いつの間にか空撮を行ったり、その撮影した映像を編集したりするようになっていました。僕自身が、大学時代に映画サークルで映像編集などをしていたこともあって、父親のサポートとして手伝い始めたのがドローンとの出会いです。
とはいえ、墜落することを考えると僕自身は飛ばしたくなかったので、当初は全く操縦していませんでした。扱いも分からなかったですし。
補助者としてサポートをしているうちに、父親が撮ってきたものを「俺やったらこう撮るな」と徐々に考えるようになって、はじめてドローンに触りました。そこからは頭の中に描いた絵を実際にドローンで撮影して、それをまた自分で編集して、全て自分で完結するという一連の流れでやるようになりました。
はじめて触ったドローンがPhantom4だったので、僕のドローン歴はPhatom 4の歴史と同じです(笑)。
ラジコンヘリとかの延長でドローンをはじめる方が多いと思うのですが、僕はそういう分野から来たわけじゃないんです。PROパイロットの中でも結構珍しいタイプだと思いますね。
■PROパイロット認定会に挑戦しようと思った理由と実際受けてみた感想を教えてください。
ドローンを触っていくうちに、認定証や免許について囁かれはじめたのが2016年あたりとかだったと思います。
空撮事業をやっていくうちに別の会社の方々と関わることが増えて、その中で技量って目に見えないからこそ、目に見えるものとして認定証等を取得することが必要なのではないかと思ったわけです。
そして、せっかく受けるのであれば受かったことに対して価値が出てくるものが良いと思い、調べていくうちにPROパイロットに行き着きました。
PROパイロットの合格率は当時2〜3%だったと思うのですが、これに受かったらすごいんじゃないか?と思っていた矢先、翌々日に旭川でやるという情報を仕入れ、弾丸で北海道まで飛びました。
その頃はもうドローンの映像も自分の中では納得する撮影ができていたし、操縦にもある程度の自信はあったのですが、まあ見事に鼻っ柱を折られました。
旭川の次が箱根開催だったのですが、そこでも予選通過すらできず…。
悔しさはもちろん、「ドローンってこんなに難しかったっけ」と思うくらい、自分の中で操作に自信を持てなくなりましたね。
ただそこで諦めるよりかは自分の中でやりきったと言えるまでやって、それでもダメだったら諦めようと思いました。
今振り返ると、あのときに鼻っ柱を折っていただいたからこそ、自分に足りないものってなんだろうと自分自身と向き合える時間ができたと思います。
■上記に挑戦するにあたり、どのくらい練習をしましたか?
仕事の合間を見つけては、近くの空いている施設を借りて自作のコーンや旗を使ってATTIで飛ばし続けました。
あとは、PROパイロット技能認定会で知り合った仲間と四国の大きい体育館を借りて2人で練習したりもしましたね。ただ練習するのではなく、練習メニューを課すようにもなりました。
遊びの時間を全部ドローン操縦に注ぎ込むほど練習した結果、挑戦3回目の試験で予選を通過し、本線は落ちたものの次回のシード権を獲得しました。
そしてその次の札幌検定でついに合格を果たして、北海道にはじまり北海道で終わるという結果になりました(笑)。
かけた時間や努力の分、受かったときは本当に嬉しかったですね。
自分自身の技術向上はもちろんですが、同業者の方々と出会えたということもPROパイロットを受けて良かったと感じることのひとつです。
■これまでやってきたドローン業務/今やっているドローン業務はなんですか?
自己紹介のところで話したようにブライダル関係がメインの仕事ではありますが、そのほかにも観光協会から依頼を受けてそのPR映像作成のためにドローンを飛ばしたり、遺跡の発掘調査——掘り切った現場を空から見て、土地のつながりとか地形を確認するためにドローンを飛ばしたりしています。ほかには農薬散布の請負もしています。
また昨年の夏は、子供向けにドローンアスレチックというイベントを企画して主催しました。
ホビー用のドローンであれば室内でも安全性が確保できるということで、G-FORCEのSQUARED※1という機体を使用して、箱の上にダーツボードのようなものを置いて、真ん中に着陸したら50点とか、脚立を立ててその間をフライトしてタイムを競うとか、ゲーム性をもたせた内容ですごく盛り上がりました。
子供は飲み込みが早くてびっくりしますよ。「もうそんなに飛ばせんの!?」みたいな(笑)。
こんな風にさまざまな仕事をしていくうちに、色んな方と出会えてそこからまた仕事が生まれて、“ドローンのよろず屋”みたいな感じなんですよね、僕。いや、もうドローンだけでもなく「映像作ってほしい」とか「屋根を見てほしい」とかそういう依頼もあるので普通の“よろず屋”かもしれない(笑)。
ドローンの事業をやられている方は産業寄りの方も多いと思いますが、僕がエンタメ寄りなのはやっぱりヘリとかラジコンからドローンを始めたわけではないからかもしれませんね。
※1…室内用の小型ホビードローン。→G-FORCE 製品ページ
■得意とする飛行・撮影シチュエーションを教えてください。
婚礼関係の撮影においては被写体である新郎新婦さんが主役なので人そのものであったり、その日の挙式会場の景色とか前撮りのロケとか景色を撮ったりというのが好きですね。
特に景色の撮影は好きですね。他人が見たことないものを撮りたいと思っているので、そういうアプローチをしていきたい気持ちは常にあります。
と言いつつ、結局ゆっくりまっすぐ進むだけの映像が一番綺麗だったりするんですけどね(笑)。
■将来のドローン業界やドローンに期待することはありますか?また、個人的な目標などがあれば教えてください。
はじめてドローンを触った時に思ったことは、使う人によってドローンは良くもなるし悪くもなる。僕は敬愛と尊敬を持って「鉄人28号※2」と呼んでいました(笑)。
正しく使えるようにしっかりとしたルールが必要だと思っていた矢先、首相官邸への落下事故や菓子撒きのドローン落下事故※3などがあり、それでルールが整えられるようになりました。ただ、ルールが強化されるということは、ちゃんと手順を踏めば飛行できる道筋が立てられているということだと僕は思うんです。
さらに免許制がはじまって、ルールが確立されてきたじゃないですか。これから僕らみたいなドローンを扱う人がそのルールに則って正しく使用・飛行させることで、ドローンを知らない人にも正しく広まり、より良い空撮ライフができればいいなと僕は思っています。
まず目標としては、撮影したい場所が“ちゃんと許可を取れば撮影できるんだよ”ってことを広めていきたいです。
機体に関しては、理想はドローンで飛ばして見ている景色を360度のVRカメラで中継できるスカイウォークみたいなドローンが出てきてほしいです。
普通に飛ばすだけで空の旅が楽しめるので、安全に観光地を巡ることができるじゃないですか。
そのためにはもちろん法制度の整備が必要不可欠ですが、そういう空の旅ができるドローンがあるといいなと思います。
※2…1956〜1966年に連載されていた横山光輝の漫画作品。鉄人28号とはロボットで、そのリモコンを保持する人次第で善にも悪にもなるという物語。
※3…2015年首相官邸にドローンが落下した事件および2017年イベントで菓子撒きドローンが落下し負傷者が出た事故。
SkyVisionProTV
代表
西岡 俊介
株式会社アイランドブライダル空撮事業専門「SkyVisionProTV」の代表。ブライダル撮影のみならずドローンイベントの企画・撮影や観光協会などの映像制作を手掛ける。2021年にはドローン映像プロチームを結成。
SkyVisionProTV HP:https://dronetv.babyblue.jp/
PROパイロット一覧
ドローン操縦技能認定試験(現在合格率7%)を突破した、ドローン操縦のトップガンをご紹介します。GPSを利用しない飛行においても、自転車のごとくドローンを操縦できるパイロットのみが試験を通過します。