測量業務におけるドローンの利活用は、建設業界における労働力不足や、高齢化による生産性の低下などの課題を解決するための手段の一つとして近年急速に普及してきました。国土交通省が推進する、ICTを活用した建設現場の効率化と生産性の向上を目的とした取り組み、i-Construction(アイ・コンストラクション)による後押しもあり、今やドローンによる3次元測量は建設業界においてスタンダードなものになりつつあります。
従来より、有人機で行われていた航空測量よりも低コスト、そして低高度から撮影できるドローンだからこそ取得できる高精細なデータにより、精度の高い3次元データを生成できるというメリットがあるわけですが、ドローン測量には主に2つのデータ取得方法が存在します。
一つは、カメラにより取得したデータを用いる「写真測量」、もう一つは、レーザースキャナにより取得したデータを用いる「レーザー測量」です。
今回はこの「写真測量」と「レーザー測量」の違い、それぞれの特徴と得意とするシチュエーションをご紹介したいと思います。
■データ取得の方法と取得できるデータの特徴
ドローンによる写真測量とレーザー測量は、共にドローン機体に搭載したセンサーにより空中からデータを取得します。一般的には、事前にデータ取得範囲の上空に飛行ミッションを組み、ドローンは指定したルートを自動飛行を行いながらデータ取得を行います。
写真測量:
・デジタルカメラを使用して画像(写真)を取得する。
・写真に写っている対象物を記録する。
・光量が不足している環境下や写真に写っていない部分(樹木の下の地面など)の情報は取得できない。
レーザー測量:
・レーザースキャナを使用して点群を取得する。
・地形や物体にレーザー光線が反射して戻ってくる時間を計測することで、距離や反射強度の情報を取得する。
・樹木の隙間を通って地面に反射したデータも取得できる。
■精度
精度は、使用する機材のスペックや撮影技術、計測対象、天気などの撮影環境に影響されるため、絶対的な数値で表すことは難しいですが、写真測量の場合、公共測量マニュアルでは±5㎝以内の要求精度、レーザー測量の場合、作業規程の準則での要求精度は±5㎝以内と、双方ともに±5cm以内の精度が求められており、精度を上げるためにGCPの設置やPPK/RTKの活用を行うという点は共通しています。
写真測量:
・要求精度:±5cm以内
レーザー測量:
・要求精度:±5cm以内
■向いているシチュエーション
写真測量では写真同士の特徴点をつなぎ合わせていくことで処理を行うことから、特徴のないのっぺりした表面の対象物や、反射により写真ごとに写り方が違ってしまう光沢の強い対象物は不向きであり、そういった対象物はレーザー測量の方が適しています。また地表面が遮蔽物に遮られている場合も写真に映らないため、その場合はレーザー測量が適しています。
レーザースキャナにより取得されるデータは距離や反射強度の情報を持った点の集まりのため、色情報を持っていません。現場の3Dモデルに色が必要な場合やオルソ画像の生成をする場合は写真測量が適していると言えます。
写真測量:
・土木、工事現場
レーザー測量:
・山間部、植生下(計測対象が遮蔽物で覆われている環境)
■導入コスト
導入コストは、取得したい情報や求める精度によって使用すべき機材が変わりますので一概には言えませんが、レーザー測量はレーザースキャナ自体が高価であることと、重量がある程度あるため搭載するドローンも比較的大型になることから、写真測量と比較して大きな初期投資が必要になります。
写真測量:安価
・ドローン(中〜大型) : 20万円〜
・カメラ・レンズ : 0(ドローンに標準搭載)〜数百万円
・ソフトウェア : 50万円前後
・(+) 追加機器(PPK後処理ソフト等)
・(+) 導入トレーニング、サポート・保険費用
レーザー測量:高価
・ドローン(大型) : 100万円前後〜
・レーザースキャナ : 1,000万円前後〜
・ソフトウェア : 50万円前後
・(+) 追加機器(PPK後処理ソフト等)
・(+) 導入トレーニング、サポート・保険費用
*価格は目安です。
■まとめ
上記でご紹介した写真測量とレーザー測量の特徴はあくまで一般的な話であり、実際に使用する機材のグレード等によって得られる結果やワークフローは異なります。
ドローンによる「写真測量」と「レーザー測量」は、どちらが優れている、というものではなく、予算や計測対象、取得したい情報により適材適所で使い分けるべきである、と言えます。
SkyLink Japanでは、お客様の使用用途やご予算に応じて測量に使用できるツールの複数の選択肢から最適な組み合わせでご提案が可能です。
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