合格率わずか7%の超難関ドローン操縦技能認定試験を突破した、ドローン操縦のトップガンであるPROパイロット。
SkyLinkでは2016年からRave Projectと共催でPROパイロット技能認定会を開催しており、これまで37名もの合格者を輩出してきました。(2023年2月現在)
本シリーズは、そんなドローン操縦のスペシャリストたちにインタビューをしていく企画です。
第二回は、フリーで活躍されているPROパイロット・近藤 弘 氏にインタビューしました。技能認定会の難しさや苦労したこと、現在その技術を活かしてどのような業務を行っているかなどお話ししていただきました。
■まずは自己紹介を簡単にお願いします。
はじめまして、近藤です。
もともと本業は、携帯の通信基地局の保守工事や点検をやっていました。今はもう息子に継いだのですが、その業務にドローンが使えないだろうかと思ったことがはじまりでした。
今はフリーランスでドローンパイロットとして活動をしています。
フリーになってからは、最初はPROパイロット繋がりでヘリ防除のナビゲーターをやらせてもらっていました。
ですが、いつまでもそれだけではダメだと思い、オペレーターの資格を取り、農業関連の事業をしようかと考えていた矢先、とある企業さんからご縁で仕事をいたただいたことがきっかけで、今も一緒にやらせていただいています。
■ドローンをはじめたきっかけとドローン歴を教えてください。
上述した通り、仕事に活かせないかと思ったのがはじまりです。それでネット検索をしたところ、請川さん※1と知り合い、PROパイロット技能認定会に誘われました。
はじめに認定会を受けたのが2016年のことだったので、ドローン歴としては7年くらいでしょうか。
※1…有限会社RAVE PROJECT代表。空撮の第一人者。SkyLinkと共催でPROパイロット技能認定会を開催し、パイロット育成にも力を入れる。
■PROパイロット認定会に挑戦しようと思った理由と実際受けてみた感想を聞かせてください。
挑戦しようと思ったのは、請川さんに誘われたからですね。
そのためにSkyLinkさんでPhantom 4を買って、とりあえず10時間フライト※2させてから臨みました。そのままPROパイロット技能認定会に突撃で参加したのですが、見事に木端微塵にされましたね(笑)。
その次の認定会までになんとかしようと、時間を見つけて練習を重ねました。
おかげで次の開催では予選※3を通過したのですが、その後の本選はとてもじゃないが飛ばせる気がせず辞退しました。当時はもったいないという声も上がりましたが、墜落や事故になってからでは遅いですし、今でもあそこで辞退したのは間違いではなかったと思っています。
その次の認定会は、本選から参加できるシード権で参加させてもらいました。……ですがまたダメで…というのを繰り返し、その後6回目だったと思うのですが、そこでようやく合格しました。
5回目の認定会で落ちたあと、当時の試験官であった一人に「何かアドバイスをくれませんか」と聞いたのですが「アドバイスできるレベルじゃない」とはっきり言われてしまい(苦笑)、結構落ち込みました。だいぶ後から聞いた話では「わざと諦めさせようと思ったんだよ」って笑っていましたけど。
ですが、その方はそのあと特別講習を開いてくださって合格まで導いてくれました。とても感謝しています。
※2…PROパイロット技能認定会の受験条件に「10時間の飛行実績」がある。
※3…1日の認定会の中で予選と本選に分かれており、試験官2人が合否を決め、午前の予選を通過した人が午後の本選に進める。
※4…Attitude(姿勢)からきており、GPSや障害物センサーが無効化されたモード。マニュアル操縦となるので高い技術が必要となる。
■上記に挑戦するにあたり、どのくらい練習をしましたか?
とにかく時間を見つけて練習に練習を重ねました。
特に5回目と6回目の間は数ヶ月期間が空いたので、より一層練習に励みましたね。
通常の仕事もありますので、朝は4時に起きて、車のライトを付けて操縦の練習をしました。仕事にもドローンを持って行って昼休憩の合間にフライトシミュレーターをやり、夜は仕事帰りに山とかで飛ばせるところがあれば飛ばし、家に帰ってからも時間があれば田んぼに行って飛ばし…。とにかく毎日触らなきゃだめだと思って練習していました。
練習方法もそれまでとやり方を変えました。それまでは試験の演目だけをやみくもに練習していましたが、“何を使って、何本バッテリーを使って、どんな練習をして、自分の弱点や苦手なポイントは何か”といったことを毎日ノートに書くようにしました。それを書いて、今日はこうだったから次回はここを重点的に練習しようといった風に分析するようになりました。
それほどまでして、なぜ僕が続けられたのかというと、一番の理由は途中で諦めたくなかったからですかね。
「このままやって意味があるのかな?」という声もやっぱり仲間内ではありましたよ。
だけど意味があってもなくても、「これ意味なかったよね」ということを合格してから言うのであれば分かるけれど、合格しないまま辞めるのは違うと個人的には思ってやり続けました。
事実、PROパイロットに合格したからこそ今に繋がっていることがたくさんあるように思います。
やっぱりPROパイロット認定会って業界の中では難しいと有名ですから、「あの認定会に合格しているのであれば」ってことで実際に仕事をいただいたこともありますしね。
こうやってドローン業界に関わるようになったのはPROパイロットを受けたきっかけを与えてくださった請川さんのおかげだと思っています。彼の影響力や発信力は本当にすごいと思いますし、今でも感謝しています。
なぜ僕がPROパイロット認定会を受け続けられたのかというと、一番の理由は途中で諦めたくなかったから。
■これまでやってきたドローン業務/今やっているドローン業務はなんですか?
現在メインでやっている業務はドローンで物を運ぶというものです。それも、5kgぐらいのものを宅配するといったことではなく、現場で15〜50kgほどの重量のものを運ぶということをしています。
電力工事の鉄塔の現場に山の麓から機材を運んだりとか、林業の苗木とかを山の上まで運んだりとか、そういった物流業務を行っています。
僕が使っている機体はMAX55kgのペイロードで、全長が3mぐらいかな。
メーカーは秘密です(笑)。仲間が開発しているオリジナルのドローンなんですよ。
FPV※5がついていない機体もあるので、そういうときはツーオペでやっています。山の麓と山の上にそれぞれオペレーターを置き、無線でお互い連携を取りながら操縦を行います。
そもそも現場は車が通れないような場所なので、これまでは人が背負って山の中まで資材を運んでいたんです。
ただ滑落をはじめとした労災事故が多く、運ぶ人の体重の3分の1以下のものしか運んではだめだという決まりができたんです。ただそれだと何度も往復しないといけなくなる。そこでドローンで運べないかという話になり試したところ、見事うまくいきました。その結果「楽だし早いし安全だしいいじゃん!」という結論になり、その後も継続的にドローンで運搬することになったという経緯です。
これこそまさにドローンの正しい使い方なのではないかと僕自身は思っています。
※5…First Person Viewの略。ドローンの一人称視点という意味で、基本的に機体に付いていることが多い。
■得意とする飛行・撮影シチュエーションを教えてください。
上記のような重量物を運ぶ飛行でしょうか。
重いものを運ぶ場合、操縦感としては反応が鈍くなります。しかも離陸地点の標高が高いと気圧が関係しているのかもしれないのですが、反応がさらに遅くなります。そうのため、操縦は一般的なドローンを操縦する時よりも気を遣っています。
あとは、違和感を早く見つけることですかね。
やっぱり運んでいるものが運んでいるものなので、事故や怪我に繋がりかねないじゃないですか。そのうえ重量物を運ぶドローンはオリジナルの機体が多い。そのため、さっき飛ばしたときと違うところはないか、挙動がおかしいところはないかなど注意深く確認して、そういう違和感に早く気づけるよう心がけています。
あとは離着陸のときにGPSを切ってATTIモードにしないといけなかったりするので、それなりに技術も必要です。
でもそれでもPROパイロットの試験の方が断然難しかったですよ(笑)。
■将来のドローン業界やドローンに期待することはありますか?また、個人的な目標などがあれば教えてください。
ドローン業界に関わらずですが高齢化、人手不足が進んでいるので、どれだけ若い人たちに後継していけるか、それが業界・自分自身の課題であると感じています。
僕の息子もドローンでの業務をやりたいと言ってくれているので、今後は指導側に回っていくことも考えています。自分が以前プロパイの試験官にそうしてもらったように。
今はフリーでドローンパイロットをやっていると言いましたが、ゆくゆくは会社にしていこうという動きもしています。そうでないと自分だっていつまでできるか分からないですしね。特に今の業務は山を登っていかなくてはならないので体力が必要です。
そこを若い人たちに継いでもらって人手不足な業界を少しでも緩和できたらいいなと考えています。
ドローンを活用した点検や測量は比較的浸透してきたと思うけれど、物流という面ではまだまだこれからだと思います。
業界内ですら、“ドローンで重量物を運ぶ”という仕事自体はまだ浸透していないように感じています。人が運ぶよりも人件費がかからず、安全かつ早いので需要は高まってきているにもかかわらず、機体やパイロットの面でどうしても遅れをとっているのが現状です。とはいえ、今仲間が開発している物流機はかなり性能が良く、これから日本で活躍できるのではないかと期待しています。そして僕もパイロットとして物流ドローンの普及に一端を担っていければと思っています。
近藤 弘
フリーランスで生計を立てるドローンパイロット。
現在は、まだ全国的に見ても数少ない重量物運搬パイロットとして重役を担う。後継者育成も視野に入れ、これからのドローン業界を牽引する存在を目指す。
PROパイロット一覧
ドローン操縦技能認定試験(現在合格率7%)を突破した、ドローン操縦のトップガンをご紹介します。GPSを利用しない飛行においても、自転車のごとくドローンを操縦できるパイロットのみが試験を通過します。