~電源・通信がない環境下・山間部でのドローン基地を利用した砂防施設点検の現地実験~
近畿地方整備局紀伊山系砂防事務所は、砂防施設点検の効率化及び省力化を目指し、三重県名張市の谷出砂防堰堤群で可搬式UAV(無人航空機)基地を利用した、全自動UAV飛行での砂防施設点検を想定した実証試験を実施しました。この業務の受注者、株式会社建設技術研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:西村達也)と再委託先、株式会社WorldLink & Company(本社:京都市北区、代表取締役社長:須田信也)は、電源・通信がない環境下でのドローン基地を用いた砂防施設の遠隔点検システムの現地運用実験に成功したことをお知らせ致します。
近年、日本各地で発生しているゲリラ豪雨、土砂災害に伴い、山地での砂防ダムなどの砂防施設の役割・重要性が増しています。日本国内にはおよそ9万基の砂防ダムがあり、一部の施設においては老朽化が進み対応が必要となっています。
これらの砂防施設点検は、主に人力によって実施されているが、近年ドローンを用いた点検も実施されています。ドローンによる点検は人力点検に比べて、効率性、安全性、点検精度の面で様々なメリットがある一方、ドローン発着点までのアクセス、特に山奥などのアクセス困難な場所での繰り返し点検において、負担が大きいことが課題として挙げられています。
この課題に対して、アクセスが困難な場所に、①持ち運びできるドローン基地の確立、②外部給電不要な蓄電システム、③衛星通信を利用したドローン基地における繰り返し点検できる運用体制、について検討し実証実験を行いました。
持ち運びできるドローン基地
ドローン基地の構成は、ドローンポート、衛星通信システム、太陽光発電システム、蓄電システム、監視カメラの5つとし、これらの機材を1台のバンに詰め込み搬送できる形にしました。これにより、ドローン基地の運用範囲が、車のアクセスが可能な範囲へと拡張されることが期待されます。

外部給電不要な蓄電システム
2025年2月の冬の期間での検証において、簡易的に設置したソーラーパネルによる発電と蓄電池のみで、ドローンポートおよび周辺機器の電源を確保可能であることが確認されました。これにより、電源が確保できない場所においても、十分運用できるドローン基地/システムとして機能することが示されました。


衛星通信を利用したドローン基地の運用
現地に設置したポータブルの衛星通信機器により、ドローン基地と接続し、遠隔からの操作が可能であること、監視カメラ等モニターを通して現場の状況が目視できることが確認され、撮影されたデータについてもネットワーク経由でダウンロード、利用可能であることが示されました。また、取得された画像についても十分点検可能な解像度があり、3Dデータを生成できるデータであることが確認されました。

以上より、電源・通信がない環境下においてドローン基地を用いた遠隔点検ができるシステムの有用性が確認されました。
今後は、実運用にむけて、ユーザーの使い勝手に即したより良いシステムのパッケージ確立を進めていきます。