空を飛ぶドローンの運用を行う上で常にリスクとして付きまとうのが、墜落・事故の可能性。
ドローン使用者側の安全管理はもちろんのこと、ドローンには様々なフェイルセーフ(機械やシステムが異常状態に陥った場合でも、安全な状態に自動的に切り替わる機能や仕組みのこと)機能が備わったものもありますが、人間の誤認や操作ミスというのは100%なくすことは難しい上に、絶対に壊れない機械というものも存在しません。
数百gから数十kgに及ぶ大型のドローンが空から落ちたり何かに衝突すれば、ドローン自体の破損はもちろん、物への損害も発生しますし、当然人命に関わる事故になる可能性もあるでしょう。
ドローンを運用する場合は、事故の可能性を極力排除できるよう細心の注意を払って運用しなければいけませんが、今回は、万が一事故が起こってしまった場合、パニックにならず、落ち着いて行動するために、「事故の際は何をすればいいのか」取るべき対応についてご説明したいと思います。
■ケガ人の救護
ドローンでの事故発生時に最も優先順位が高いのはケガ人の救護対応です。負傷者がいる場合は安全な場所に移動させ、負傷の度合いによって救急車を呼ぶ、応急救護処置を行うなど必要な対応をとりましょう。
大型ドローンとの接触や回転するプロペラとの接触は、ちょっとした怪我では済まない可能性が高いです。止血方法や心臓マッサージ、人工呼吸など、重傷の場合のケガ人への応急処置の基本的な知識は身についておいた方がいいでしょう。
■安全確保
墜落地点や事故のシチュエーションによってはまだドローンの電源がついておりモーターが回っていたりする場合も考えられます。また道路など第三者が通る可能性のある場所に墜落する可能性も考えられます。
二次被害を起こさないために、まずはドローンの電源を落としバッテリーを取り外す、破片などが散乱している場合は現場周辺への立ち入りを制限する、安全な場所に移動させるなど、墜落現場の安全を確保し、さらなる事故が起きない状況を作ることが大切です。
■警察・消防への連絡
「事故」「重大インシデント」が発生した場合は、管轄の警察署への連絡を行いましょう。
バッテリー発火等が発生し火災が発生している場合は速やかに消防への連絡や消火活動を行いましょう。
■事故の証拠保存
墜落地点の状況や、機体や破損させた物の状態写真など、事故証拠となる写真を撮っておく必要があります。関係各所への事故報告のほか保険請求にも必要になる場合があります。
■国土交通省、地方航空局及び空港事務所への事故報告
国土交通省「無人航空機の事故及び重大インシデントの報告要領」によると、無人航空機の事故は以下のように「事故」と「重大インシデント」の2つに大きく定義されています。
【事故】
・無人航空機による人の死傷(重傷以上)又は物件の損壊
・航空機との衝突又は接触
【重大インシデント】
・飛行中航空機との衝突又は接触のおそれがあったと認めたとき
・無人航空機による人の負傷(重傷以上を除いたもの)
・無人航空機の制御が不能となった事態
・無人航空機が発火した事態(飛行中に発生したものに限る。)
無人航空機の「事故」「重大インシデント」が発生した場合は、法令違反の有無にかかわらず、下記の報告先への報告が要請されています。
▼平日09:00~17:00
東日本:東京航空局
西日本:大阪航空局
公海上:国土交通省
▼平日09:00~17:00以外の時間
東日本:東京空港事務所
西日本:関西空港事務所
基本的にはドローン情報基盤システム(DIPS2.0)を通して事故報告を行う形になりますが、書面での報告も可能です。
事故報告書の様式と飛行場所によって異なる事故報告先の連絡先などの詳細は以下のページより入手できますので、確認の上事故報告を行うようにしましょう。
国土交通省HP 無人航空機による事故等の情報提供:https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_ua_houkoku.html
■都道府県農薬指導部局への事故報告(農薬等の空中散布に係る事故時のみ)
これまでご紹介した事故対応は全てのドローンに共通して必要な対応ですが、農薬散布ドローンに関しては上記に加えて追加対応が必要な場合があります。
空中散布中の実施区域外への農薬⾶散(ドリフト)、農薬流出等の農薬による事故については、実施区域が所在する都道府県農薬指導部局まで事故報告書を提出する必要があります。
事故報告書(無人マルチローターによる空中散布に伴う事故報告書)の様式は以下のページより入手できますので、確認の上事故報告を行うようにしましょう。
農林水産省HP 無人航空機による農薬等の空中散布に関する情報:https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/120507_heri_mujin.html
■まとめ
ご紹介したようにドローンの墜落・事故発生時はするべき対応が多くあります。事故を未然に予防するための安全対策や日々の機器メンテナンスは運用者としてもちろんする必要がありますが、事故の起こる可能性は絶対にゼロにはなりません。
万が一の事故発生時にも冷静に対応が行えるように、ドローン運用者としてとるべきアクションを頭に入れておきましょう。