空を飛ぶドローンを運用する上で考慮すべき「風」は、ドローン運用者にとって安全運行のために常に意識しておかなければならない重要な外部環境の一つです。
今回はドローンを安全に飛ばせる風速と、一般的なUAVの耐風性能、安全にドローン飛行ができる風速の判断基準についてご紹介したいと思います。
■風力レベルの基準
風力をレベル分けした標準尺度として世界的に用いられているのが「ビューフォート風力階級」という尺度です。
風力を0から12までの13段階に区分しており、各段階における陸上及び海上の状況が表された表で、世界気象機関 (WMO)や日本の気象庁の標準尺度として採用されています。
風力 | 相当風速(m/s) | 相当風速(ノット) | 備考 |
---|---|---|---|
0 | 0.0 から 0.3未満 | 1未満 | |
1 | 0.3 以上 1.6未満 | 1以上 4未満 | |
2 | 1.6 以上 3.4未満 | 4以上 7未満 | |
3 | 3.4 以上 5.5未満 | 7以上 11未満 | |
4 | 5.5 以上 8.0未満 | 11以上 17未満 | |
5 | 8.0 以上 10.8未満 | 17以上 22未満 | |
6 | 10.8 以上 13.9未満 | 22以上 28未満 | |
7 | 13.9 以上 17.2未満 | 28以上 34未満 | 海上風警報に相当 |
8 | 17.2 以上 20.8未満 | 34以上 41未満 | 海上強風警報に相当 |
9 | 20.8 以上 24.5未満 | 41以上 48未満 | 〃 |
10 | 24.5 以上 28.5未満 | 48以上 56未満 | 海上暴風警報に相当 |
11 | 28.5 以上 32.7未満 | 56以上 64未満 | 〃 |
12 | 32.7 以上 | 64以上 | 海上暴風警報または海上台風警報に相当 |
■ドローンの耐風性能
我々が使用するドローンの機械的な耐風性能の限界はどれくらいなのでしょうか?
以下にいくつかのドローン機種のメーカー公称の耐風性能を一覧にしてみました。
機種 | 最大耐風性能 |
---|---|
SONY Airpeak S1 | 20 m/s(ペイロード無し時) 15 m/s(a7SIII+SEL24F14GM搭載時)*飛行時突風耐性 |
NTT e-Drone Technology AC101 | 8 m/s |
Aurelia X6 MAX | 約8.8 m/s |
Aurelia X8 MAX | 約8.8 m/s |
Skydio 2+ | 約11 m/s |
Parrot ANAFI Ai | 離着陸:12 m/s 飛行中:14 m/s |
DJI Mavic 3 | 12 m/s |
DJI Inspire 3 | 離着陸:12 m/s 飛行中:14 m/s |
Autel Robotics EVO Ⅱ V3 | 風力レベル8相当 |
FIXAR 007 | 離着陸:12 m/s 飛行中:15 m/s |
■現場で風速を計測する方法
ドローンを飛行させる現地の風速を最も手軽に計測する手段としては、小型の「風速計」を用いることが一般的です。
数千円程度〜の価格で入手でき、小型軽量で持ち運びにも便利なため、ドローン一式の装備の一つとして常に携帯しておくことをオススメします。使用方法は簡単で、基本的に電源を入れて頭上で数秒静止させながらスクリーンに表示させる風速を確認するのみです。
注意点としては、風速は絶えず強弱の変動があるということ、地形や周辺の建物などに大きく影響されるということです。また、平均風速に対して瞬間風速は1.5〜3倍以上になることもあるということも知っておかなければなりません。空中を自在に移動できるドローンが実際に飛行する地点の風速は地上で計測した風速よりも強い風が吹いている場合も多いということを頭に入れて安全飛行のための判断を下す必要があります。
■ドローンのスペックの最大耐風性能の風速までは飛行させてもいいのか?
国土交通省航空局 無人航空機飛行マニュアルでは、無人航空機を安全に飛行させる際の基本的な体制として、”風速5m/s以上の状態では飛行させない。”ということが明記されています。
また、人により感覚は様々ではありますが、ドローン操縦者としては、ドローンを飛行させるにあたって恐怖を感じるボーダーラインが一般的に風速5m/s程度であるとも言えます。
先述の通り、一般的にドローンが実際に飛行する上空の風速は地上の風速よりも強い風が吹いている場合も多いため、地上で計測した風速に余裕を持たせた風速を判断基準とした方がいいでしょう。
現実的な運用としては、メーカー公称の最大耐風性能ギリギリまで飛行可能と判断することはまずなく、標準飛行マニュアルに記載の通り、またオペレーターが操縦にあたり心理的な不安を感じない風速、5m/sをボーダーラインとすることが基本的な運用となります。