工事現場での測量

測量に使われる機器の種類とそれぞれのメリットデメリット

■測量機器の基本知識

近年、建設現場での人材不足に加え、若手入職者の不足により働き手が減少している状態で、低コストで効率的に精密な測定を完成させる必要性から、新技術を用いた計測手段が開発されています。

従来、レベルやトランシット、トータルステーションといった測量機器を用いて行われていた測量業務の一部を、ドローンやモバイル端末などのデジタル機器を使った三次元化によって置き換え、補完する動きが進められています。

この章では測量機器の基本知識として従来から活用されているレベル、トランシット、トータルステーションの3つの測量機器についてそれぞれ説明していきます。

1. レベル

レベルとは、建設現場である地点の高さを求めたいときや、複数地点の高低差を測りたいときなどに使用する「高さ」を計測する測量機器です。

レベルを覗く人
  • 特徴:レベルを据え付ける三脚とスタッフと呼ばれる標尺と組み合わせて、地点間の高低差を直接観測できる。
  • 使用場面:建築・土木問わず幅広い現場で高さを測る時、使用されています。

メリット:
・測点の標高や地盤高を求める際の測量精度が優れている

デメリット:
・作業に2名以上必要
・取扱にノウハウが必要 

2. セオドライト(トランシット

セオドライト(別名:トランシット)は、「経緯儀」とも呼ばれる、「角度」を測定する機械のことです。

セオドライト

セオドライトは光学セオドライト、レーザーセオドライト、デジタルセオドライトの三種類に分けれらます。

①光学セオドライト

内蔵の特殊なデジタルマイクロメーターで、レンズで目標点をとらえながら目標点までの角度の測定値を読み取ることができます。また、基本的に測定値が数字で表示されるので、測定値を読み取りやすいという特徴があります。

  • 使用場面:光学トランシットは、建築現場や地形測量などで使用されている
  • 特徴:建築現場で距離を測ることはできないが、角度を精密に測れる

②レーザーセオドライト

レーザートランシットとは、半導体レーザーダイオードが組み込まれたトランシットで、目標点にレーザーを照射して電子的に角度を計測します。レーザーの出力調整などによって、精度の高い計測が可能です。

  • 使用場面:地下工事やトンネル工事における位置出しや方向制御、建築工事などで使用されている
  • 特徴:レーザー照射機能、集光ビームと平行ビームを1つの機械で出せるものがあったり、レーザー出力の多段階調整ができたり、高精度な測角を測れる

③デジタルセオドライト

デジタルトランシットとは、基準点から目標点の鉛直角と水平角を電子的に測定できます。

  • 使用場面:地形測量や水平出し、勾配設定やカネ振りなどで使用される
  • 特徴:小口径のレーザーを長距離までボタン一つで行えるものや、視準軸方向に照射できたり、墨出し作業をひとりで行えたりするため、作業の効率化をより図ることができる

メリット
・測量の現場で「角度」を精密に測ることができる

デメリット
・測量する時に平坦な場所が必要

3. トータルステーション

トータルステーションとは、光波距離計と電子トランシットを組み合わせた測量機です。一台の機械で「角度」と「距離」を同時に計測することが出来ます。
ターゲット(プリズム)を使用して2名で作業を行うものと、ターゲットを使用しないレーザー光で測定するモデルがあります。ターゲットを自動追尾してくれるモデルもあり、その場合一人で作業を行うことが可能です。また測量業務に必要な電子野帳のプログラムが内蔵された機種もあります。

トータルステーション
  • 特徴:セオドライトが角度を計測する機器なのに対してトータルステーションは一台の機械で角度と距離を同時に計測することが出来るためコスト削減・作業効率の向上が図れる。自動追尾型などのモデルを使用すれば一人での作業も可能。
  • 使用場面:トータルステーションは、地形の測量や建設現場の位置管理、起工測量や定点測量など、幅広い分野の測量で使用されている

メリット
・一台の機械で角度と距離を同時に計測することが出来るため作業の効率化が図れる
・測定データを外部機器に出力することが可能

デメリット
・光を用いるという都合上、天候に極めて強い影響を受ける
・光を使っているため、円柱状のような物を測定するのは非常に難しい
・非常に高価
・使用にはある程度知識と技術を身につけておく必要がある

■GNSSを用いた計測技術

ドローンやモバイル計測技術は、衛星(GNSS)を使用した測位技術です。

①ドローン

ドローンとは、遠隔操作や自動制御によって、無人で飛行できる航空機のことを指します。

飛行するドローン
  • 特徴:ドローンを使って、人の立ち入りが困難な場所でも計測することが可能
  • 使用場面:広大で開けた土地(採石場、発掘・工事現場、農場など)や、災害現場のような人の立ち入りが困難な危険箇所で力を発揮する

メリット
・地上で行われる測量に比べ、広い範囲を短時間で計測することが可能
・カメラやLiDARスキャナーを用いて三次元点群データを取得可能
・航空測量と比較して精細なデータ取得が可能

デメリット
・広大な面積を測量する場合には、バッテリーの頻繁な交換作業が必要
・法律の制限がある
・地上の測量に比べ精度が劣る

②モバイル計測機器

モバイル計測機器とは、スマートフォンやタブレットのようなモバイル端末を使用することで、小型あるいは薄型、軽量で簡単に持ち運ぶことができる計測機器です。

vidoc rtk rover

メリット
・携帯性に優れ、誰でも簡単に扱うことが出来る
・安全面、法律面からドローンが飛ばせない現場での代替手段として活用出来る

デメリット
・GNSSを補足できなければ、精度の保証が出来ない
・地上の測量に比べ精度が劣る
・人が歩いてデータ取得するため広範囲には向いていない

第2章:主なモバイル計測機器とその比較

1. モバイル計測機器の比較

モバイル計測機器として以下の3つを表を用いて比較します。

  • viDoc RTK Rover(PIX4D)
  • Geo Scan(OPTiM)
  • 快測Scan(KENTEM)
製品名viDoc RTK roverGeoScan快測scan
初期費用¥950,000
(viDoc本体 + モバイル端末)
¥232,800
(GNSSレシーバー + モバイル端末)
¥205,000
(メタルプレート + モバイル端末)
ランニングコスト¥286,000
(PIX4Dcloud年プラン + 高精度測位サービス利用料)
¥1,008,000
(GeoScan年プラン + 高精度測位サービス利用料)
¥270,600
(ライセンス + KSデータバンク)
通信費/年¥84,000(¥7,000/月と仮定)¥84,000(¥7,000/月と仮定)
その他使用にあたって必要な機器・ソフト費用scan X – ¥450,000/年測量機器
5年間契約の概算コスト比較¥2,118,800¥5,272,800 + scan X¥1,558,000 + 測量機器
製品名viDoc RTK roverGeoScan快測scan
測量精度±50mm±50mm±50mm
NETIS×(申請中)×
出来形管理要領
(±50mmの精度)

NETISとは?:
民間事業者等により開発された有用な新技術を公共工事等において積極的に活用していくため、新技術に関わる情報の共有及び提供を目的として、国土交通省が整備したデータベースシステム。

出来形管理要領とは?:
3次元計測技術を土木工事に適用し施工管理を行う場合に必要な事項をとりまとめたもの

2. それぞれのモバイル計測機器の特徴

比較した3つの製品についての特徴をそれぞれ説明していきます。

■ viDoc RTK Rover(PIX4D)

モバイル端末にviDoc RTK Roverを取り付け、ネットワークRTKを用いて高精度な計測を行える。 

メリット
・写真を用いたSfM処理とLiDARを組合せている
・Android、iPhone、iPad Proなど対応機種が多い
・PIX4DcloudやPIX4Dmaticなど処理用ソフトウェアとのシームレスな連携

デメリット
・インターネット環境が必要
・室内などのGNSSが補足出来ない場所では位置座標を取得出来ない(位置情報のない3Dモデルは作成可能)

■ Geo Scan(OPTiM)

iPhone Proシリーズ/iPad ProシリーズのLiDARセンサーとGNSS RTKレシーバーの位置情報を組合せて手軽に計測を行う。

メリット
・GNSS RTKレシーバーを用いる事で正確な計測が可能
・トータルステーションと連携させる事で衛星電波が届かない場所でも高精度な計測が可能

デメリット
・インターネット環境が必要
・計測時GNSSレシーバーを標定点ごとに地上に設置する必要がある

■ 快測Scan(KENTEM)

iPad ProシリーズとQRコードを用いて計測を行う。

メリット
・インターネット接続不要、電波が届き辛いところでも計測可能
・QRコードで標定点を自動認識

デメリット
・iPad Pro専用アプリ(iPhone ProやAndroidは非対応)
・QRコードは測量機器で計測する必要がある

第3章:まとめ

以上のように現在活用されている測量機器、GNSSを用いた計測技術にはそれぞれの得意不得意があり、高さのみを測る場合と複数地点の高低差を測りたい場合では「レベル」、角度を精密に測りたい場合は「トランシット」、地形の測量や建設現場を測量する場合は「トータルステーション」など、取得したいデータの種類や現場の状況によって適切な機器は変わってきます。

近年計測の現場に普及しつつあるドローンやモバイル計測技術を組み合わせることで、従来の測量機器では出来なかったような広範囲の計測、スキルに依存しない汎用性、業務負荷、時間を軽減する携帯性、効率性をもたらすことができ、これまでの測量のワークフローを置き換える機器となりつつあります。

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