2022年12月5日より、無人航空機の免許制度(国家資格)が開始されました。
この免許制度を理解するためには、新設された「無人航空機操縦者技能証明」「機体認証」「運航ルール」について理解を深める必要があります。
今回は、この国家資格の詳細と、どういう人・場合に資格取得が必要なのかなど、新制度の内容についてご紹介していきます。
■ 免許制度について
【3つのポイント】
① 無人航空機操縦者技能証明
② 機体認証
③ 運航ルール
免許制度というと表現がややこしくなってしまいますが、正確に言うと上記の3点が今回新設され運用がスタートした制度となります。
① 無人航空機操縦者技能証明
これまでは、ドローン操縦に関連する資格としては民間のスクールが独自に認める民間資格のみが存在していましたが、今回、無人航空機を飛行させるために必要な技能(知識及び能力)を有することを証明する資格制度(国家資格)として、「無人航空機操縦者技能証明」制度がスタートしました。
無人航空機操縦者技能証明は、「一等無人航空機操縦士」と、「二等無人航空機操縦士」の2つに区分され、等級により特定飛行に該当する飛行を行う際の第三者の立入管理措置の必要性や飛行許可・承認申請の要否が変わります。
■ 無人航空機操縦者技能証明書の取得は必須なのか?
無人航空機操縦者技能証明書の取得は、必ずしも必須事項ではありません。
一等及び二等の無人航空機操縦者技能証明書は、
一等操縦者技能証明:カテゴリーⅢ飛行を行う場合に必要
二等操縦者技能証明:許可・承認申請を省略してカテゴリーⅡ飛行の一部を行う場合に必要
といえ、逆にいうとカテゴリーⅡ以下の飛行で必要に応じて許可・承認申請を都度行う場合は無人航空機操縦者技能証明書の取得は必要ないと言えます。
■ 飛行カテゴリーとは?
ではこの飛行カテゴリーとは一体なんなのでしょうか。
飛行カテゴリーとは、国土交通省が設定したリスクに応じた飛行形態のことで、下記3つのカテゴリー(リスクの高いものからカテゴリーⅢ、Ⅱ、Ⅰ)に分類されます。
該当する飛行カテゴリーに応じて操縦士技能証明、機体認証の要否や飛行許可・承認の必要性が異なります。
カテゴリーⅢ | 特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じないで行う飛行。(=第三者の上空で特定飛行を行う) |
カテゴリーⅡ | 特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じたうえで行う飛行。(=第三者の上空を飛行しない) |
カテゴリーⅠ | 特定飛行に該当しない飛行。 航空法上の飛行許可・承認手続きは不要。 |
飛行のレベル分けとは別物であり、混同しないように注意しましょう。
レベル4飛行(有人地帯における補助者なし目視外飛行)は上記のカテゴリーではカテゴリーⅢに分類されます。
■ 特定飛行に該当する飛行とは?
では特定飛行とはどんな飛行のことを指すのかというと、下記の飛行空域・飛行方法が該当します。
【飛行する空域】
・人口集中地区の上空
・高度150m以上の上空
・空港等の上空
・緊急用務空域
【飛行の方法】
・夜間飛行
・目視外飛行
・人又は物件と30m以上距離を確保できない飛行
・催し場所上空での飛行
・危険物輸送
・物件投下
上記の特定飛行に該当する飛行のうち、赤字で記載した飛行については操縦士技能証明(国家資格)の有無に関わらず許可・承認申請が必要になります。
■ ドローン操縦者技能証明(国家資格)と民間資格の違いは?
それではこのドローン操縦の国家資格と民間資格はどのように違うのでしょうか?
大きな違いとしては、一等操縦者技能証明を取得する事によって、有人地帯における補助者なし目視外飛行であるレベル4飛行を含むカテゴリーⅢ飛行が可能になるという点です。
また、二等操縦者技能証明以上を取得する事によって飛行許可・承認申請が必要だったカテゴリーⅡ飛行の一部を、許可・承認不要で飛行する事が出来る点も大きな違いになります。
■ 操縦者技能証明だけでは意味がない
注意したいのが、この一等及び二等操縦者技能証明は、もう一つの新設制度である機体認証もセットで取得して初めて、カテゴリーⅢ飛行及び許可・承認なしでのカテゴリーⅡ飛行が可能になるという点です。
② 機体認証
機体認証は操縦者技能証明とともに新設された制度で、特定飛行を行うことを目的とする無人航空機の強度、構造及び性能について、設計、製造過程及び現状が安全基準に適合するか検査し、安全性を確保するための認証制度です。
原則、操縦者技能証明とセットで考える必要があり、先述の一等及び二等操縦者技能証明はそれぞれ第一種機体認証及び第二種機体認証を取得して初めて、カテゴリーⅢ飛行及び許可・承認なしでのカテゴリーⅡ飛行が可能になります。
第一種型式認証(有効期間3年) 第一種機体認証(有効期間1年) | 立入管理措置を講ずることなく行う特定飛行を目的とした機体 (カテゴリーⅢ飛行) |
第二種型式認証(有効期間3年) 第二種機体認証(有効期間3年) | 立入管理措置を講じた上で行う特定飛行を目的とした機体 (カテゴリーⅡ飛行) |
■ 機体認証と型式認証の違い
機体認証と似たような認証に型式認証というものがあります。
簡単に違いを説明すると、
型式認証:ドローン機体メーカーが取得する認証(メーカー等が設計・製造する量産機が対象)
機体認証:ユーザーが取得する認証(ドローンの使用者が所有する一機毎の機体が対象)
といえ、型式認証を受けた型式のドローンは、ユーザーが機体認証を申請する際に検査の全部または一部が省略出来るというメリットがあります。
■ 機体認証の取得は必須なのか?
こちらは先ほどの操縦者技能証明と同じく機体認証の取得は必須ではありません。
操縦者技能証明と機体認証はセットで取得して初めて下記の飛行が可能になるため、操縦者技能証明と機体認証どちらか一方だけを取得しても下記の飛行が可能になるというメリットは受けられないことになります。
一等操縦者技能証明 + 第一種機体認証 → カテゴリーⅢ飛行(レベル4飛行)が可能
二等操縦者技能証明 + 第二種機体認証(以上) → 許可・承認不要でカテゴリーⅡ飛行の一部が可能
■ 機体認証と無人航空機登録制度を混同しないように注意
似たような制度として混同してしまいそうな制度が2022年6月20日より義務化された「無人航空機の機体登録制度」です。
無人航空機の機体登録は、屋外を飛行させる100g以上のすべてのドローン・ラジコン機が対象で、飛行場所や飛行方法に関わらず登録は必須です。
機体認証とは別物ですので、混同しないように注意が必要です。
③ 運航ルール
最後に紹介するのは操縦者技能証明、機体認証とともに新設された「運航ルール」です。
・飛行計画の通報
・飛行日誌の記載
・事故・重大インシデントの報告
・負傷者発生時の救護義務
の4つのポイントで構成されており、
特定飛行を行う場合は、飛行計画・飛行日誌の記載の通報が必須となり、飛行計画はドローン情報基盤システム2.0(DIPS2.0)を通じて行います。
特定飛行以外の飛行を行う場合においても上記の対応は推奨されており、事故・重大インシデントの報告、負傷者発生時の救護義務は特定飛行かどうかに関わらず全てのユーザーが対応するべきこととなっています。
■ まとめ:ドローン免許(操縦者技能証明+機体認証)が必要な人
結論としては、一等操縦者技能証明 + 第一種機体認証を持っていないとカテゴリーⅢ(レベル4)飛行は認められないため、現時点で必ず国家資格の取得が必要な人は、カテゴリーⅢ(レベル4)飛行を行う人に限定されると言えるでしょう。
ドローンを取り巻く法律・制度は非常に変化が多く今後変わる可能性もありますので、ドローン運用に関わる皆様は国土交通省HPなどで常に最新の情報をチェックして適切な運用を行っていけるように対応していきましょう。