NTT e-Droneによる国産農薬散布機AC101の魅力〜新入社員のデモフライト会放浪記〜

NTTイードローンによる、国産農薬散布ドローンAC101の魅力 〜新入社員の放浪記〜

「あれ、自分何しに来たんだっけ」

そう一人ごちたのは、新潟県上越市の畦道の上でのことでした。紺碧の空が頭上に広がり、南西の彼方には群馬と新潟を隔てる三国山脈の山々が、まるで空から流れ落ちた雲を頂いたかのように純白の雪で覆われていました。肥料用に撒かれた牛糞の匂いで、朝方の眠気を覚まされた私の五感は、圧巻の絶景をしばし堪能しており、自分に与えられた仕事をつい失念していたのです。ふと周りを見渡すと「NTT e-Drone Technology」とプリントされた、のぼり旗が風にはためいていました。そして足元には、これから飛行する田畑を見つめるかのように佇む、農薬散布ドローンAC101の姿が。

◎本記事をおすすめしたい方

  • AC101や国産ドローンに興味がある方
  • デモフライトに行くことができなかったため、説明会の様子を知りたい方
  • 農薬散布ドローンの課題を知りたい方

◎本記事を読むメリット

  • 国産農業用ドローンAC101の魅力がわかる
  • AC101開発の裏側がわかる
  • 今回のデモ会の詳細や裏側がわかる
  • 農業用国産機の現状がわかる

SkyLinkでの初めての大仕事は2週間のデモ会出張 

私が仕事を忘れてしまったことも無理からぬこと…とできればご容赦いただきたい。というのも私入社してからまだ2か月にも満たない、ばちばちの新入社員なんです。

自己紹介が遅れましたが、総合企画部マーケティング課の大賀といいます。

「大変だろうけどよろしく!」と、配属早々課せられた私へのファーストミッションは、農薬散布ドローンAC101デモフライト説明会への、約2週間に渡る東日本への出張帯同でした。ドローン業界についても、自社のビジネスモデルについても、まだまだ半可通な私にまず必要なのは現場を知ること!…というのは至極当然の流れなのですが、今回のデモ会はSkyLink史上最大級のスケールということもあり、心の準備ができていなかったというのが正直なところです。

国産農業用ドローン「AC101」とは 

AC101は、2021年2月1日、当社並びに、東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、株式会社オプティムの3社による合同出資で発足した新会社、NTTイードローンが展開する農業用ドローンです。「軽量」「コンパクト」「低燃費」の3つをコンセプトにかかげ、日本の農業の現場に基づいて開発されました。
項目スペック
寸法(アーム展開時)W935mm×D935mm×H676mm
寸法(アーム折たたみ時) W611mm×D560mm×H676mm 
重量 7.3kg(バッテリー除く) 
バッテリー大容量インテリジェントLiPoバッテリー
 最大離陸重量20kg
散布速度15km/h、20km/h(GPS制御時)
タンク容量 9L ※最大積載量 8L
 吐出量0.7L-1.3L/min
【AC101特設サイト】 https://skylinkjapan.com/solution/agricultural-solutions/ac101/

上記のカタログスペックだけでは伝えきれない、実機ならではの魅力を、実際の飛行を通してお届したいという思いで企画されたのが今回の「AC101デモフライト&説明会」です。第一回、第二回の二度に分け2021年2月~3月にかけて、農作物の生産地として中心的な役割を担う、西日本と東日本の各地域で開催されました。私は下記の計13箇所の地域に帯同させていただきました。

AC101デモフライト&説明会 開催スケジュール

初めてAC101の実機を見た感想

「軽量」「コンパクト」「低燃費」の3つのコンセプト…正にTHE・国産といったドローンなんだろうなというのが、一通り口頭で商品説明を受けたときの正直な心証でした。しかしそれに反して私が初めて実物を目にしたときに、抱いた感想は全く違ったものでした。

「日本製なのに自己主張が強い」

まるで自分の存在を警告するかのような威容を放つ、黄色と黒を基調としたボディー。起動と同時にアームの先端で眩い光を放つ赤と緑のLEDライト…ビジュアルをしばらく矯めつ眇めつ眺めた後、「本当に日本の農業の現場に基づいて開発されたの?」と私の中で疑問符がつきました。しかし後に説明会をお客様と一緒に拝聴することで、いかに私が表層的にしかこのドローンを見れていなかったかを、痛感することになります。

農業用ドローンのエンドユーザー様向けにもかかわらず… 

西日本での開催分も合わせると、なんと総勢で約600名の方にご参加いただきました。足を運んでいただいた皆様、ありがとうございました。私は現地で会場の設営と受付を担当していたのですが、想定以上のご来場者の方々の対応でてんやわんやでした。特に群馬会場ではなんと60名近くの方にご来場いただき、説明会の進捗より密を避けることに気もそぞろなほどでした。

ご来場された方の過半数は現地の個人の農家様でしたが、他にも様々なお客様がいらっしゃいました。生産系の法人様はもちろん、請負散布業者の方や販売を検討されている代理店の方。農業、ドローン関連以外ですと、航空会社や県庁の職員の方など。個人に目をやりますと、純粋にドローン飛行を見たいという理由で、お子様を連れてこられた親御様でしたり、あとは今年就活を控えドローン業界への就職を希望する大学生の方まで。

今回のデモ会は主に、エンドユーザー様に向けての内容だったにもかかわらず、ここまで多様な方にお越しいただき、あらためて本機の注目度の高さを実感しました。私もせっかくの機会だったので色んな方とお話してみたかったのですが、初めての会場設営と撤去作業で手いっぱいだったこともあり、なかなか時間を作ることができませんでした。後にも言及しますが、これについては今でも惜しい気持ちでいっぱいです。

徹底した現場志向、NTT e-Drone Technologyは折れない 

デモ会も順風満帆に進んだわけではなく、途中様々な障害に阻まれました。秋田、岩手では雨天、宮城では風速10m以上の突風に苛まれました。

会場によっては体育館もあり屋内での飛行も可能でしたが、そんな中あくまでも現場スタッフは屋外での飛行に拘り続けました。幸いスタッフの判断が光り、不安定な天気の合間を縫って全会場でつつがなくフライトさせることができました。先輩諸氏の老練な判断の数々に尊敬の念を抱いたものの、私はそれよりも「なぜここまで屋外の飛行に拘るのか?」というところに序盤からずっと疑問を感じていました。しかしその疑問も説明会のレクチャーを何度も聞くにつれ、時間とともに氷解していきます。

秋田会場でのことです。

説明者であるスタッフが、飛行するAC101の奥手にある小高い丘を指さしてこう述べました。

「とあるユーザー様はあのような丘を挟んで農地を所有していたのですが、あろうことか迂回をせずに横着をして、丘を一足飛びに散布をしようとしたのです。」

新潟会場でのことです。

今度は前述とは別のスタッフが、畑を挟んで畦道の反対側を通る公道の電柱を指してこう述べます。

「ドローンによる農薬散布では、風による散布薬への影響を考慮せず、散布に誤差が発生してしまう自動航行は向いていません。そのため目視でマニュアル操作せざるを得ないのですが、ああいった電柱は往々にして操縦者にとって不安材料になります。」

会場現場の地理環境を余すことなく使い、常に具体的な農業現場の課題をイメージしてもらいながら、機体の説明をする。私は様々な会場での説明を聞くにつれ、このような徹底した現場目線というコンセプトを強く感じました。

また奇しくも上記の2つの説明は、「農業用ドローンの事故率の高さ」という同じ命題に言及しています。農薬散布用ドローンは地上に近いところを飛ばすため、産業ドローンの中でも、群を抜いて事故率の高いカテゴリーになります。当社調べ過去2年間の統計ですと、およそ36%のユーザーが何らかの事故に遭遇しています。この事故率の高さは各農業地域における独自の地理的要因と、少し普遍性を帯びた人的要因によって引き起こされるものです。今回はその辺りの専門的なお話は割愛させていただきますが、この事故率の高さという、農業用ドローンユーザーが抱える喫緊の課題へ寄り添うという姿勢も、一貫してデモ会から感じたことです。そしてこのユーザーの課題解決というコンセプトを前提に、AC101を改めて見直すと、私が感じていた機体への違和感はたちまち解消されたのでした。前述した、日本製の一般的なイメージにそぐわない自己主張の強いビジュアルも、その視点から見れば合点がいきます。ボディーの色合いやLEDライトは、薄暗い早朝や夕方でも視認性、引いては操縦の安全性を確保するための、きめ細やかなユーザビリティの結晶だったのです。もちろんこれだけではありません。例えば農薬を積載するためのタンクについて、今回新潟と群馬の会場にてご登壇いただいた、日本トップクラスの散布実績を誇るRave Project代表 請川博一氏はこう語ります。

「散布飛行中に農薬の残量を視認できるように、タンクには透明性の高い材質のものを採用しています。そんなこと大々的に言うようなことなのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、こんなことすら配慮できている商品は今の農業用ドローン市場には少ないのです。私がこの問題を現場から聞き出し、商品開発に取り入れるまで僅か2週間しかかかりませんでした。」

現場が抱える課題をヒアリングし、その課題をもとに常に現場目線で商品を開発する。きめ細やかな配慮が行き届いたサービスの実現と、その循環のスピーディさ。私は初見の印象とは打って変わって、AC101はむしろ国産らしさ全開の純然たる国産ドローンであると認識を新たにしたのでした。

今後のデモフライト&説明会開催について 

「マーケティングとは魅力的な商品やサービスを開発し、顧客に継続的に購買、使用していただく活動である。」もはや漬物石がわりぐらいにしかならないだろうと、自室の隅に放置していた分厚い教本には、マーケティングの定義がそう綴ってありました。

マーケティング課の人間として、更なる商品やサービスの質向上を目指して私が取り組むべきことは、現場の方の声にもっと耳を傾けることだったのは間違いありません。しかしそれに気づいた時には、すでにデモ会も終わりに近づいていました。今思うとなんて貴重な機会を逸してしまったのだろうと、後悔の念に堪えないのですが、とはいえ終わったことをぐちぐち言っていても仕方ありません。今回のデモフライトは大変ご好評いただいたこともあり、弊社にお問い合わせいただければ、ご要望に応じて今後も開催することがすでに決定しております。

※すでに4/24(土)鳥取県にて、開催を予定。

詳しい内容とお申込みは、ページ下部の特設サイトリンクをご参照ください。

私もできる限り足を運び、今度は参加者の皆様とたくさんお話したいと思っております。AC101という商品について手前味噌な文章になってしまいましたが、とはいえまだまだ発展途上であることは間違いありません。今後はより各生産地域の環境に即した、ローカライズをすすめていくでしょう。それにあたって私もマーケティング活動をしていく上で、ユーザーの皆様に一方的にサービスを提供するのではなく、ユーザーの皆様の課題を汲み取ることで、「現場と一緒に作り上げる」という視点は常に忘れずにもっておきたいです。

今回ブログタイトルには、あてもないという意味で「放浪記」と銘打ちましたが、今の私なら次回以降は「デモ会紀行」とでもつけられそうですね。マーケティング課大賀の次回作にご期待ください。

▼さらに詳しい製品紹介や、次回以降のデモ会について知りたい方はこちら▼

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