2022年12月5日の改正航空法の施行により開始された、無人航空機の操縦者技能証明、機体認証とともに新設された運航ルールの一つである、「飛行日誌の記載」。
今回はこの飛行日誌について、「飛行日誌とは何か?」「飛行日誌の作成をしないといけない対象者」「飛行日誌の記載事項」「飛行日誌を作成しなかった場合の罰則」に関してご紹介したいと思います。
■飛行日誌とは?
そもそも飛行日誌とは何なのでしょうか?
飛行日誌とは、
無人航空機を特定飛行させる者が、飛行・整備・改造などの情報を記載したもの
であり、下記の3種類の記録で構成されています。
① 飛行記録:1飛行毎の実績が記載されたもの
② 日常点検記録:ドローンを飛行させる前に行う飛行前点検等の日常点検の結果が記載されたもの
③ 点検整備記録:定期的な点検整備、修理、改造の内容が記載されたもの
■飛行日誌の作成が義務付けられる対象者
飛行日誌は、「無人航空機を特定飛行させる者が、飛行・整備・改造などの情報を記載したもの」ですので、
特定飛行を行う人
が飛行日誌作成の義務がある対象者となります。
■無人航空機の特定飛行とは?
特定飛行については別記事でも何度もご紹介しているためご存知の方も多いかもしれませんが、改めておさらいをしておくと、特定飛行とは下記の飛行空域・飛行方法でドローンを飛行させる場合のことを指します。
【飛行する空域】
・人口集中地区の上空
・高度150m以上の上空
・空港等の上空
・緊急用務空域
【飛行の方法】
・夜間飛行
・目視外飛行
・人又は物件と30m以上距離を確保できない飛行
・催し場所上空での飛行
・危険物輸送
・物件投下
■飛行日誌には何を記載するのか?
まず、先述の通り飛行日誌は下記の3種類で構成されています。
① 飛行記録:1飛行毎の実績が記載されたもの
② 日常点検記録:ドローンを飛行させる前に行う飛行前点検等の日常点検の結果が記載されたもの
③ 点検整備記録:定期的な点検整備、修理、改造の内容が記載されたもの
3種類の様式それぞれに記載すべき事項があり、順にご紹介していきます。
① 飛行記録
▼無人航空機の概要として飛行記録の冒頭にまとめて記載する事項
・無人航空機の登録記号(試験飛行機等で登録記号を受けていない場合は当該試験飛行に係る届出番号。以下同じ。)、種類及び型式(型式認証を受けた型式の無人航空機に限る)
・無人航空機の型式認証書番号(型式認証を受けた型式の無人航空機に限る)
・機体認証の区分及び機体認証書番号(機体認証を受けた無人航空機に限る)
・無人航空機の設計製造者及び製造番号
▼飛行記録の各ページに記載する事項
・無人航空機の飛行に関する次の記録
- 飛行年月日
- 操縦者の氏名及び無人航空機操縦者技能証明書番号(無人航空機操縦者技能証明書の交付を受けている場合に限る)
- 飛行の目的及び経路
- 飛行させた飛行禁止空域及び飛行の方法
- 離陸場所及び離陸時刻
- 着陸場所及び着陸時刻
- 飛行時間
- 製造後の総飛行時間
- 飛行の安全に影響のあった事項の有無及びその内容
・不具合及びその対応に関する次の記録
- 不具合の発生年月日及びその内容
- 対応を行った年月日及びその内容並びに確認を行った者の氏名
② 日常点検記録
▼無人航空機の概要として日常点検記録の冒頭にまとめて記載する事項
・無人航空機の登録記号(試験飛行機等で登録記号を受けていない場合は当該試験飛行に係る届出番号。以下同じ。)、種類及び型式(型式認証を受けた型式の無人航空機に限る)
・無人航空機の型式認証書番号(型式認証を受けた型式の無人航空機に限る)
・機体認証の区分及び機体認証書番号(機体認証を受けた無人航空機に限る)
・無人航空機の設計製造者及び製造番号
▼日常点検記録の各ページに記載する事項
・日常点検に関する次の記録
- 実施の年月日及び場所
- 実施者の氏名
- 点検項目ごとの日常点検の結果
- その他特記事項
③ 点検整備記録
▼無人航空機の概要として点検整備記録の冒頭にまとめて記載する事項
・無人航空機の登録記号(試験飛行機等で登録記号を受けていない場合は当該試験飛行に係る届出番号。以下同じ。)、種類及び型式(型式認証を受けた型式の無人航空機に限る)
・無人航空機の型式認証書番号(型式認証を受けた型式の無人航空機に限る)
・機体認証の区分及び機体認証書番号(機体認証を受けた無人航空機に限る)
・無人航空機の設計製造者及び製造番号
▼点検整備記録の各ページに記載する事項
・点検、修理、改造又は整備に関する次の記録
- 実施の年月日及び場所
- 実施者の氏名
- 点検、修理、改造及び整備の内容(部品を交換した場合にあっては、当該交換部品名を含む)
- 実施の理由
- 最近の機体認証後の総飛行時間
- その他特記事項
なお、ドローンの操縦者は飛行を行う際に、上記3種類の飛行日誌を紙もしくはデジタル形式で常時携行し、確認事項が発生した際に参照又は提示が可能な状態としておく必要があります。
飛行日誌は原則として上記の各様式(様式1~3)を用いて作成する必要がありますが、記載すべき各事項が網羅されており、各様式と同じような形で表示又は印刷が可能であれば、独自様式の書類や専用アプリを使用した記録及び管理も認められています。
■飛行日誌を作成しないとどうなるのか?
特定飛行を行うドローン運用者の義務の一つとなったこの飛行日誌の作成ですが、違反した場合はどうなるのでしょうか。
国土交通省WEBサイトの説明では、
特定飛行を行う際に飛行日誌を備えない、飛行日誌に記載すべき事項を記載しない又は虚偽の記載を行った場合、航空法第157条の11に従い、10万円以下の罰金が科せられます。
としています。
飛行日誌の記載に関して、現時点で義務として課されているのは特定飛行を行う場合のみですが、特定飛行以外の飛行を行う場合においても、飛行日誌の記載を行うことが推奨とされています。
業務でドローンを運用していれば特定飛行に該当する飛行を行うシチュエーションも少なからず発生するでしょう。特定飛行を行わない場合でも日頃の習慣として飛行日誌の作成を行なっていれば、作成忘れの防止や安全な運用の助けとなるでしょう。
■まとめ
飛行日誌の作成・管理はドローン運用者にとって負担の増大であることは確かですが、ドローンが普及し事故や重大インシデントもその分増加しつつあった近年の背景から、より安全なドローン運用と社会実装を目指しこのような制度が開始されたことは時代の流れとも言えます。
各メーカーやサービス事業者から、飛行日誌の作成を半自動化するような機能やツールも出てき始めていますが、秘匿性の高い業務を行う事業者は外部に飛行記録を出すことが難しい場合もあるでしょう。
飛行日誌の作成方法に関しての詳細は国土交通省HP「無人航空機の飛行日誌の取扱いに関するガイドライン」を参考にしていただき、然るべき対応を行なっていきましょう。