BIM/CIM原則適用におけるドローン活用の可能性

BIM/CIM原則適用におけるドローン活用の可能性

2023年1月に開催された、国土交通省 第9回BIM/CIM推進委員会にて、令和5年度BIM/CIM原則適用の具体的な実施内容が発表されました。

このBIM/CIM原則適用で大きな鍵を握るのが3次元モデルであり、3Dモデル作成の元となるデータ取得ツールであるドローン地上計測機器の建設業での役割はますます大きくなっていくものと思われます。

今回はこのBIM/CIM原則適用により、どのような変化が建設業務にもたさられるのかを簡単にご紹介したいと思います。

■BIM/CIMとは?

そもそも、BIM/CIM(ビムシム)とは、Building Information Modeling(建物情報モデリング)/ Construction Information Modeling(建設情報モデリング)の略で、3次元モデルや参照資料(2次元図面、報告書等)を情報共有の手段として用い、建築・建設プロセスをデジタル化することにより、事業全体の効率化や生産性の向上、品質の向上、コスト削減などを図ることを言います。

BIMは”Building”の名が示す通り、建築物を対象に建物のデザイン、建設、保守などのライフサイクル全体を支援するために使用されるデジタル技術を指すのに対して、CIMは土木領域も含めた橋やダム等のインフラなどのより広い範囲の建設プロセス全体を対象にした言葉で、地形や構造物等のデジタル化全体を「BIM/CIM」として名称が整理されました。

2023年までに小規模工事を除くすべての公共事業にBIM/CIMを原則適用することが国土交通省により決定されています。

■令和5年度BIM/CIM原則適用の実施内容

データ活用・共有による受発注者の生産性向上を目指す、令和5年度BIM/CIM原則適用の具体的な実施内容として発表されたのは大きく分けて以下の2点です。

・活用目的に応じた3次元モデルの作成・活用
・DS(Data-Sharing)の実施(発注者によるデータ共有)

■活用目的に応じた3次元モデルの作成・活用

一つ目の、「活用目的に応じた3次元モデルの作成・活用」では、発注者が業務・工事の特性に応じて設定した「活用目的」に応じた3次元モデルを受注者が作成・活用します。

「活用目的」は、「義務項目」と「推奨項目」から発注者が選択します。

義務項目:「視覚化による効果」を中心に未経験者も取組可能な内容とした活用目的。原則すべての詳細設計・工事において、発注者が明確にした活用目的に基づき、受注者が3次元モデルを作成・活用する

推奨項目:「視覚化による効果」の他「3次元モデルによる解析」など高度な内容を含む活用目的であり、一定規模・難易度の事業において、発注者が明確にした活用目的に基づき、受注者が1個以上の項目に取り組むことを目指す(該当しない業務・工事であっても積極的な活用を推奨)

●活用目的(義務項目)

・出来あがり全体イメージの確認
・特定部*の確認(2次元図面の確認補助)*複雑な箇所、既設との干渉箇所、工種間の連携が必要な箇所等
・施工計画の検討補助
・2次元図面の理解補助
・現場作業員等への説明

●活用目的(推奨項目)

・重ね合わせによる確認
・現場条件の確認
・施工ステップの確認
・事業計画の検討
・施工管理での活用
・不可視部の3次元モデル化

●対象とする業務・工事の範囲

3次元モデルの活用の義務項目/推奨項目が適用される業務・工事は以下とされており、詳細設計工事については3次元モデルの活用を義務項目として必ず行なっていくことが求められます。

・土木設計業務共通仕様書に基づき実施する設計及び計画業務
・土木工事共通仕様書に基づく土木工事(河川工事、海岸工事、砂防工事、ダム工事、道路工事)
・上記に関連する測量業務及び地質・土質調査業務

測量
地質・土質調査
概略設計予備設計詳細設計工事
3次元モデルの活用
義務項目
3次元モデルの活用
推奨項目
◎:義務 ○:推奨

なお、下記の業務・工事に関しては、3次元モデルの必要性が薄い、もしくは緊急性が高い業務・工事として対象範囲から除外されています。
・単独の機械設備工事・電気通信設備工事、維持工事
・災害復旧工事

■DS(Data-Sharing)の実施(発注者によるデータ共有)

二つ目の、「DS(Data-Sharing)の実施(発注者によるデータ共有)」では、測量、地質・土質調査、概略設計、予備設計、詳細設計、工事を対象に、業務・工事の契約後速やかに発注者が受注者に設計図書の作成の基となった情報の説明を実施します。以下は記載例となります。

(記載例) ○○工事の設計図書の基となった参考資料

対象説明内容
設計図「R1○○詳細設計業務」と「R2××修正設計業務」を基に作成しています。「R1○○詳細設計業務」を基本としていますが、
△△交差点の部分は「R2××修正設計業務」で設計しています。
中心線測量「H30○○測量業務」の成果を利用して作成しています。
法線測量「H30○○測量業務」の成果を利用して作成しています。
幅杭測量「R1○○測量業務」の成果を利用して作成しています。
地質・土質調査 「H28○○地質調査業務」の地質調査の成果と「H30××地質調査業務」の地下水調査の成果を利用しています。
道路中心線「H28○○道路予備設計業務」において検討したものを利用しています。
用地幅杭計画「H29○○道路予備設計業務」において検討したものを利用しています。
堤防法線「R2○○河川詳細設計業務」において検討したものを利用しています。
参照:第9回 BIM/CIM推進委員会 資料1

DSの実施は、過去の成果を確認し最新の情報を明確にすること、検討経緯、資料の新旧等に留意して説明することが求められています。

また、これまでCD等のメディアで納品されていた成果は、電子納品保管管理システムの利用を通してインターネットによる受け渡しに移行することによって、発注者の資料検索の効率化、受け渡しの手間・時間の削減、受注者による成果品の検索が可能になることが期待されます。

■BIM/CIM適用業務へのドローン・モバイル計測機器活用

上記のような国の強い推進もあり、建設業における3次元モデル活用への対応は待ったなしの状況となってきており、ドローンや地上計測機器などはデータ取得ツールとしてますます存在感が高まってきています。

ドローンに搭載した高解像度カメラやレーザースキャナー、またドローンが使用できない現場ではより小回りが効くモバイル計測機器を活用し、取得したデータから建築物、 構造物の計測・3Dモデリング、 起工測量や出来形計測、地形図作成など、あらゆる業務プロセスで活用されることが期待されます。

3dモデル
複雑な配管の3Dデータも簡単に取得可能

■まとめ

簡単にまとめると、「そもそも何のために3次元モデルを作成するのか」という活用目的を発注者が明確にすることが第一となり、その目的が達成できる範囲・精度の3Dモデルを受注者は作成する必要がある、ということになります。

BIM/CIM適用業務は予定よりも早いペースで推進されており、将来的には設計図書も含めて全面活用が目指されています。ドローンや地上計測ツールによるデータ取得、3次元モデル化は建築・建設事業においてますます重要度が高まってきていると言えるでしょう。

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参考資料:国土交通省 第9回 BIM/CIM推進委員会「令和5年度BIM/CIM原則適用について」https://www.mlit.go.jp/tec/content/001510002.pdf

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